湖につつまれて ◆G/G2J7hV9Y
☆ ☆ ☆
湖や ゴマモン飛び込む 水の音
(詠み人知らず)
――――ぽちゃん。
☆ ☆ ☆
……ゴマモンは、そしてようやく僅かながらに理性を取り戻した。
全身を包む冷たい水が、疲れた身体に心地よい。
浮力に体重を支えられ、酷使しきった腕からやっと力が抜ける。
元より地上での行動にはやや不向きな身体だが、水中はまさしく彼のためのフィールド。
コンクリートの上、延々身体を引き摺って出来た擦り傷が染みるが、その痛みさえも今は有難い。
全身を包む冷たい水が、疲れた身体に心地よい。
浮力に体重を支えられ、酷使しきった腕からやっと力が抜ける。
元より地上での行動にはやや不向きな身体だが、水中はまさしく彼のためのフィールド。
コンクリートの上、延々身体を引き摺って出来た擦り傷が染みるが、その痛みさえも今は有難い。
そう。
ひたすらに謝罪しつつ、漠然と「誰か」を探していた彼は、自然と島の中央に向かって進んでいたのだった。
しかし、市街地を這うようにして抜けた先、島の中心にあったのは、大きな湖。
そして湖畔に張り出すように作られていた遊歩道から、ロクに前も見ずに這い進んだ挙句……転落した。
落ちた先がそれなりの深さのある湖だったから良かったようなものの、一歩間違えれば大怪我だ。
控えめに言っても、運が良かったと言えるだろう。
ひたすらに謝罪しつつ、漠然と「誰か」を探していた彼は、自然と島の中央に向かって進んでいたのだった。
しかし、市街地を這うようにして抜けた先、島の中心にあったのは、大きな湖。
そして湖畔に張り出すように作られていた遊歩道から、ロクに前も見ずに這い進んだ挙句……転落した。
落ちた先がそれなりの深さのある湖だったから良かったようなものの、一歩間違えれば大怪我だ。
控えめに言っても、運が良かったと言えるだろう。
彼自身は知る由もないが……
ここまでほとんど誰にも会わずにこれたことも、相当稀な偶然と言っていいだろう。
それを「幸運」と呼ぶべきか、「不運」と呼ぶべきかは判断が分かれるだろうが……
これが例えば、近くの百貨店の方に向かってしまっていたら、そこで戦闘に巻き込まれていた可能性が高い。
ラッドはゴマモンのことを見逃してくれたが、果たして相羽シンヤはどういう判断をしたことか。
それに彼らがゴマモンに干渉しなかったとしても、近くにいればその余波に巻き込まれたに違いないのだ。
ここまでほとんど誰にも会わずにこれたことも、相当稀な偶然と言っていいだろう。
それを「幸運」と呼ぶべきか、「不運」と呼ぶべきかは判断が分かれるだろうが……
これが例えば、近くの百貨店の方に向かってしまっていたら、そこで戦闘に巻き込まれていた可能性が高い。
ラッドはゴマモンのことを見逃してくれたが、果たして相羽シンヤはどういう判断をしたことか。
それに彼らがゴマモンに干渉しなかったとしても、近くにいればその余波に巻き込まれたに違いないのだ。
だがしかし一方で、柊つかさや6/、園崎魅音と遭遇し、保護されていた可能性もあるわけで……
「黒くない」つかさとの遭遇は、彼の魂に真の救いをもたらした可能性もあったわけで……。
道1つ違えただけで彼らと遭遇しそびれたゴマモンは、やっぱり不運なのかもしれない。
「黒くない」つかさとの遭遇は、彼の魂に真の救いをもたらした可能性もあったわけで……。
道1つ違えただけで彼らと遭遇しそびれたゴマモンは、やっぱり不運なのかもしれない。
ともかく結果として、ゴマモンはラッドに「見逃された」後、誰とも出会うことなく、こうして湖の中にいた。
落下した直後こそ、混乱のままに無駄に手足をばたつかせもしたが……。
やがて落ち着いた彼は、ゆったりとその身を湖に浮かべ、天を仰ぐ。
呆然と天を仰いで、誰にともなく呟く。
落下した直後こそ、混乱のままに無駄に手足をばたつかせもしたが……。
やがて落ち着いた彼は、ゆったりとその身を湖に浮かべ、天を仰ぐ。
呆然と天を仰いで、誰にともなく呟く。
「ごめんなさい……ごめん、な、さい……」
だが、「誰に」謝れば許して貰えるのだろう。
この新しい殺し合いの場には、かがみとつかさもいて――
でも、その2人は自分の知っている2人ではない可能性があって。
許されなければならない。
許されなければならない。
許されなければならない。
自分が殺してしまったかがみについて、許して貰わねばならない。
でも――誰に?
その「誰か」を探さねば、と強迫観念に駆られて「人のいそうな場所」……島の中心までやってきたが。
辿り着いて気がつけば、そこは人などいるはずのない、静かな湖面があるばかり。
彼は顔だけを水面から出して、溜息をつく。
溜息と共に、一人呟く。
この新しい殺し合いの場には、かがみとつかさもいて――
でも、その2人は自分の知っている2人ではない可能性があって。
許されなければならない。
許されなければならない。
許されなければならない。
自分が殺してしまったかがみについて、許して貰わねばならない。
でも――誰に?
その「誰か」を探さねば、と強迫観念に駆られて「人のいそうな場所」……島の中心までやってきたが。
辿り着いて気がつけば、そこは人などいるはずのない、静かな湖面があるばかり。
彼は顔だけを水面から出して、溜息をつく。
溜息と共に、一人呟く。
「これから……どうしよう……」
「もし、そこなおぬし」
「!?」
「もし、そこなおぬし」
「!?」
独り言だった、はずだった。しかしそこに唐突にかけられたのは、聞き慣れぬ声。
慌ててゴマモンは周囲を見回す。
誰か近くにいるのだろうか。「誰か」が岸辺から声をかけたのだろうか。
その「誰か」はゴマモンが謝るべき「誰か」だろうか。
そう思って湖畔を振り返るが、しかし誰も居ない。
やはり幻聴か、と思ったその時。
慌ててゴマモンは周囲を見回す。
誰か近くにいるのだろうか。「誰か」が岸辺から声をかけたのだろうか。
その「誰か」はゴマモンが謝るべき「誰か」だろうか。
そう思って湖畔を振り返るが、しかし誰も居ない。
やはり幻聴か、と思ったその時。
「えーい無視するでない。おぬしとて人ならざる身、人間ばかり探してどうする」
「……え?」
「こっちじゃ、こっち」
「……え?」
「こっちじゃ、こっち」
背後から。
そう、湖の側から背を叩かれ、振り返ったそこには。
1匹の蛙が……「蛙」、としか呼びようのない生き物が。
ゴマモンと同じように、水面から顔だけを出し、佇んでいた。
そう、湖の側から背を叩かれ、振り返ったそこには。
1匹の蛙が……「蛙」、としか呼びようのない生き物が。
ゴマモンと同じように、水面から顔だけを出し、佇んでいた。
☆ ☆ ☆
深く考えることなく島の中央、無人の湖に到達してしまったのは、かえるとて同じだった。
人を探すため、という目的も、また同じ。
水中を己の得意フィールドとする、という点も同様。
だから、その湖にゴマモンが転落した際、真っ先にその存在に気づいたのも、かえるだった。
人を探すため、という目的も、また同じ。
水中を己の得意フィールドとする、という点も同様。
だから、その湖にゴマモンが転落した際、真っ先にその存在に気づいたのも、かえるだった。
「しかしゴマモンどん、と申したか。
どこの絵巻物の出かは知らぬが、海獣の身で水に落ちて恐慌(ぱにっく)とは、らしからぬざまだの」
「……?? あ、ご、ごめんなさい……」
どこの絵巻物の出かは知らぬが、海獣の身で水に落ちて恐慌(ぱにっく)とは、らしからぬざまだの」
「……?? あ、ご、ごめんなさい……」
絵巻物?というかえるの言葉に少し首を傾げつつ、『ゴマモン』と名乗った獣は頭を下げる。
水に落下したからパニックに陥った、というかえるの推測は、実のところ正しくはない。
陸を貼っていた時からゴマモンはパニック状態で、水に落ちてかえって冷静になったくらいなのだ。
だがそんな事情を知らぬかえるは、うむ、と鷹揚に頷くだけだった。
水に落下したからパニックに陥った、というかえるの推測は、実のところ正しくはない。
陸を貼っていた時からゴマモンはパニック状態で、水に落ちてかえって冷静になったくらいなのだ。
だがそんな事情を知らぬかえるは、うむ、と鷹揚に頷くだけだった。
ちなみに2人とも、揃って湖の中央に向かって泳ぎながらの会話である。
つい先ほど、湖岸よりさほど離れてない市街地で、派手な爆発があったためである――
実のところそれは、ラッドとテッカマンエビルの激突の余波だったのだが、2人、いや2匹の知る所ではなく。
とりあえず今は岸辺から離れた方が良さそうだ、と野生の勘で判断しただけのことだった。
つい先ほど、湖岸よりさほど離れてない市街地で、派手な爆発があったためである――
実のところそれは、ラッドとテッカマンエビルの激突の余波だったのだが、2人、いや2匹の知る所ではなく。
とりあえず今は岸辺から離れた方が良さそうだ、と野生の勘で判断しただけのことだった。
「さて、ところでゴマモンどん。ちょいと聞きたいことがある」
「な、なんだい? かえる……でいいのかな?」
「いやなに、大したことではないのだが。私には大事な探し人がおってだなあ」
「な、なんだい? かえる……でいいのかな?」
「いやなに、大したことではないのだが。私には大事な探し人がおってだなあ」
並んで泳ぎながら、かえるは改めて話を切り出す。
ノリと勢いで行動しがちな彼ではあったが、しかし学習能力がないわけではない。愚かというわけでもない。
事実、「前の殺し合い」においては、強大な死亡フラグを事前に察知し逃げるような知恵も見せている。
ゆえに、先の衝撃のアルベルトとの遭遇の経験を生かし、まずは情報を、と思ったわけだった。
一方的にこちらだけが喋った挙句に弾き飛ばされるような事が続くようでは、『嫁』との合流もままならない。
ノリと勢いで行動しがちな彼ではあったが、しかし学習能力がないわけではない。愚かというわけでもない。
事実、「前の殺し合い」においては、強大な死亡フラグを事前に察知し逃げるような知恵も見せている。
ゆえに、先の衝撃のアルベルトとの遭遇の経験を生かし、まずは情報を、と思ったわけだった。
一方的にこちらだけが喋った挙句に弾き飛ばされるような事が続くようでは、『嫁』との合流もままならない。
見たところ、この『ゴマモン』という海獣。人は良さそうだ。
いや、それは生来の性格というより、激しい消耗によるものだろうか?
向こうの事情は分からぬが、しかし、今なら聞けば何でも答えてくれそうな雰囲気がある。
しめしめこれは儲けものだのお、と、かえるはそのコミカルな顔に悪人じみた笑みを一瞬だけ浮かべて。
いや、それは生来の性格というより、激しい消耗によるものだろうか?
向こうの事情は分からぬが、しかし、今なら聞けば何でも答えてくれそうな雰囲気がある。
しめしめこれは儲けものだのお、と、かえるはそのコミカルな顔に悪人じみた笑みを一瞬だけ浮かべて。
「……っと、いかんいかん。顔に出てしまったか」
「??」
「ええい、ともあれ。私の『嫁』になってくれる予定の、大事な人物なのだ。
で、ひょっとしたらゴマモンどんが会ってはおらぬかと思ってなあ」
「??」
「ええい、ともあれ。私の『嫁』になってくれる予定の、大事な人物なのだ。
で、ひょっとしたらゴマモンどんが会ってはおらぬかと思ってなあ」
そしてかえるは、深く考えることもせずに『その名前』を言ってしまった。
気づけと言う方が酷だろう。
予想しろという方が無理だろう。
しかしそれでも、よりにもよって、としか言いようのない『この相手』に、『その名前』を言ってしまった。
はっきりと、言ってしまった。
気づけと言う方が酷だろう。
予想しろという方が無理だろう。
しかしそれでも、よりにもよって、としか言いようのない『この相手』に、『その名前』を言ってしまった。
はっきりと、言ってしまった。
「柊かがみ、通称『かがみん』と申すのだが」
☆ ☆ ☆
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ちょっ、どうしたのだ、ゴマモンどん!?」
「ちょっ、どうしたのだ、ゴマモンどん!?」
『その名前』を聞いて、たっぷり5秒もの沈黙の後。
いきなり謝罪の言葉が、機関銃のように放たれる。
対するかえるは、面食らう。
それはそうだ。いきなり「ごめんなさい」と言われても何のことやら訳が分からない。
何故、と聞こうと口を開こうとした、その瞬間。
いきなり謝罪の言葉が、機関銃のように放たれる。
対するかえるは、面食らう。
それはそうだ。いきなり「ごめんなさい」と言われても何のことやら訳が分からない。
何故、と聞こうと口を開こうとした、その瞬間。
「ごめんなさい……オイラ……かがみを、殺しちまった……」
「――!?」
「――!?」
唐突な告白に、かえるの思考が凍りつく。
かがみを……かえるの嫁である柊かがみを、殺した、だって?
「前の殺し合い」で一度は1人は死なれて落ち込んで、でも「この殺し合い」で名前を確認できた「柊かがみ」。
それを……殺した? この人畜無害そうな海獣・ゴマモンが? 本当に?
意味が分からない。
意味など、分かりたくもない。
かがみを……かえるの嫁である柊かがみを、殺した、だって?
「前の殺し合い」で一度は1人は死なれて落ち込んで、でも「この殺し合い」で名前を確認できた「柊かがみ」。
それを……殺した? この人畜無害そうな海獣・ゴマモンが? 本当に?
意味が分からない。
意味など、分かりたくもない。
「オイラがっ……か、かがみの、胸を、貫い、て……! ……ッ!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
だが嗚呼、悲しいかな。
かえるは決して愚かというわけでもない。
ノリと勢いで行動しがちな彼ではあったが、しかし理解力がないわけではない。洞察力がないわけdもない。
目の前でひたすらに謝罪しつつ震えるゴマモンが、嘘をつける精神状態にないことも、見抜けてしまった。
ほんとうなのだ、と、分かってしまった。
かえるは決して愚かというわけでもない。
ノリと勢いで行動しがちな彼ではあったが、しかし理解力がないわけではない。洞察力がないわけdもない。
目の前でひたすらに謝罪しつつ震えるゴマモンが、嘘をつける精神状態にないことも、見抜けてしまった。
ほんとうなのだ、と、分かってしまった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな…………!?」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな…………!?」
そして、永遠に続くかと思えたゴマモンの謝罪の言葉の、その途中で。
かえるの視界が、真っ赤に染まった。
かえるの視界が、真っ赤に染まった。
☆ ☆ ☆
まっすぐな脇差でさみしい
(詠み人知らず)
――――さくっ。
☆ ☆ ☆
「――謝って済むと思うなこの若造がぁぁぁぁぁぁぁくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
「…………! …………!!」
「…………! …………!!」
水中はかえるとゴマモンにとって、本来のステージだ。下手すれば地上よりも得意な領域だ。
ゆえにかえるが腰に差していた脇差も、水の抵抗をほとんど感じさせない動きで抜刀され。
まっすぐに水を切って、鋭い突きが繰り出される。
ゆえにかえるが腰に差していた脇差も、水の抵抗をほとんど感じさせない動きで抜刀され。
まっすぐに水を切って、鋭い突きが繰り出される。
「おぬしが、かがみんを! かがみんを! かがみんを!
おぬしなんぞがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
おぬしなんぞがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
激情に駆られて、かえるは脇差を振るう。
いくらかえるが水中行動に長けていても、やはり抵抗の中で斬りつけるのは容易ではない。ゆえに突く。
とにかく、突く。
ざくざくざくざくざく。
刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き。
ゴマモンの頭、腕、胸、腹、腰、後ろ足。
ありとあらゆる所に、脇差が突き立てられる。
刺されて抜かれた衝撃で、水中のゴマモンの身体はクルクル回り、次の突きがまったく違う所に命中する。
いくらかえるが水中行動に長けていても、やはり抵抗の中で斬りつけるのは容易ではない。ゆえに突く。
とにかく、突く。
ざくざくざくざくざく。
刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き 刺しては引き抜き。
ゴマモンの頭、腕、胸、腹、腰、後ろ足。
ありとあらゆる所に、脇差が突き立てられる。
刺されて抜かれた衝撃で、水中のゴマモンの身体はクルクル回り、次の突きがまったく違う所に命中する。
「これはかがみんの分! これもかがみんの分! これもかがみんの分! これもかがみんの分!
これも、これも、これも、これも! 全部、かがみんの分だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
これも、これも、これも、これも! 全部、かがみんの分だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ぽきん。
十数回目の突きが、硬い骨にでも刺さったのか。
その先端をゴマモンの身体に残したまま、脇差の刀身が中途から折れる。
かえるの剣技とて素人とそう大差ないし、この脇差とて大した名刀でもない。
だからこうなるのも当然で、しかし、刀が折れてもかえるの怒りは収まらない。
短くなった脇差を逆手に持ち替え、なおもゴマモンを滅多刺しにする。
既にボロボロの、既に無傷な所など残っていない身体に、なおも振り下ろし続ける。
十数回目の突きが、硬い骨にでも刺さったのか。
その先端をゴマモンの身体に残したまま、脇差の刀身が中途から折れる。
かえるの剣技とて素人とそう大差ないし、この脇差とて大した名刀でもない。
だからこうなるのも当然で、しかし、刀が折れてもかえるの怒りは収まらない。
短くなった脇差を逆手に持ち替え、なおもゴマモンを滅多刺しにする。
既にボロボロの、既に無傷な所など残っていない身体に、なおも振り下ろし続ける。
「おぬしが! どれだけ! 謝ろうとも!
私は! 決して! おぬしを! 許しは! しないっ!
死んでも決して許さんぞゴマモォォォォォォォォォォォォォンッ!!」
私は! 決して! おぬしを! 許しは! しないっ!
死んでも決して許さんぞゴマモォォォォォォォォォォォォォンッ!!」
ひたすら許しを請うていたゴマモンに対する、完全否定の叫び。
だが、ゴマモンは既に、その声を聞いてはいなかった。
とうに、聞ける状態ではなかった。
だが、ゴマモンは既に、その声を聞いてはいなかった。
とうに、聞ける状態ではなかった。
ゴマモンは、かえるの放った最初の突きに喉を貫かれ、とっくの昔に、絶命していたのだった。
☆ ☆ ☆
かがみんや 嗚呼かがみんや かがみんや
(かえる)
――――ぷかぁーっ。
☆ ☆ ☆
静けさを取り戻した湖に、1つの塊が静かに浮いていた。
ゴマモン――と呼ばれたデジモンの、成れの果て。
空が白みはじめる。もう間もなく朝日が顔を出し、世界を光に満たすのだろう。
鏡のように静かな湖面にも、僅かに水のながれがある。
死によって全てから開放されたその死体は、やがてゆっくりと流されていき、そして、見えなくなった。
【ゴマモン@ニコニコ動画バトルロワイアル 死亡】
☆ ☆ ☆
ぺたり。ぺたり。ぺた……どさっ。
どこをどう泳いだのか、かえる自身も覚えてはいなかったが……
湖から這い上がり、2歩、3歩と進んだ所で、彼は力尽きたように倒れこんだ。
どこをどう泳いだのか、かえる自身も覚えてはいなかったが……
湖から這い上がり、2歩、3歩と進んだ所で、彼は力尽きたように倒れこんだ。
「かがみん……うう……かが、みん……」
激情の嵐が通り過ぎ、愛する嫁の『カタキ』を討った後に訪れたのは。
ぽっかりと穴の開いたような、空虚さだけだった。
今頃になって思い出したかのように、激しい疲労感がかえるの肩に圧し掛かる。
ぽっかりと穴の開いたような、空虚さだけだった。
今頃になって思い出したかのように、激しい疲労感がかえるの肩に圧し掛かる。
かえるは、未だに気づかない。
ゴマモンが「柊かがみを殺した」のが、「ゴマモンにとっての前の殺し合い」の中だったことに。
ゴマモンが殺した「柊かがみ」が、「この殺し合い」に呼ばれた「柊かがみ」とは「別人」であることに。
かえるは、とうとう気づかない。
ゴマモンが「柊かがみを殺した」のが、「ゴマモンにとっての前の殺し合い」の中だったことに。
ゴマモンが殺した「柊かがみ」が、「この殺し合い」に呼ばれた「柊かがみ」とは「別人」であることに。
かえるは、とうとう気づかない。
「復讐とは、虚しいものなのだなあ……」
かえるはそして倒れたまま小さく呟くと、静かにその目を閉じた。
意識が遠のく。無防備な姿のまま、眠りとも気絶ともつかぬ闇の中に落ちていく。
でも、もう誰に殺されても構わない。このまま目覚めなくてもいい。
そんな、捨て鉢な気持ちだった。
意識が遠のく。無防備な姿のまま、眠りとも気絶ともつかぬ闇の中に落ちていく。
でも、もう誰に殺されても構わない。このまま目覚めなくてもいい。
そんな、捨て鉢な気持ちだった。
☆ ☆ ☆
――それは、意識を手放す寸前だったのか、それとも手放した直後だったのか。
かえるは、夢を見た。
愛しのかがみんと、いちゃいちゃする夢だ。
かえるは、夢を見た。
愛しのかがみんと、いちゃいちゃする夢だ。
夢の中で、かがみはかえるに非常に感謝をしているようだった。
心の底から、かえるに惚れている様子だった。
そして同時に、深い心の傷を負っているようでもあった。
大丈夫かい。そう優しく慰めるかえるに、かがみはそれでも気丈に笑うのだった。
心の底から、かえるに惚れている様子だった。
そして同時に、深い心の傷を負っているようでもあった。
大丈夫かい。そう優しく慰めるかえるに、かがみはそれでも気丈に笑うのだった。
『 ……うん、大丈夫よ。
かえるが頑張って『生き返らせて』くれたこの命、大事に使って大いに楽しまないとね。
でないと、『あの殺し合い』で死んじゃったつかさたちも、浮かばれないもの 』
かえるが頑張って『生き返らせて』くれたこの命、大事に使って大いに楽しまないとね。
でないと、『あの殺し合い』で死んじゃったつかさたちも、浮かばれないもの 』
ああ……そんな設定もあったね。かえるは思い出す。
優勝者の権利。
どんな願いでも叶う。
たった1つだけ叶う。
ならば、死者を蘇らせることも、また――。
優勝者の権利。
どんな願いでも叶う。
たった1つだけ叶う。
ならば、死者を蘇らせることも、また――。
……って、あれ? これ、ちゃんと覚えておいた方がよくね?
まさか目が覚めたら全部忘れてるとかないよな? あ、そんなことを考えてるうちに、意識が、また……。
まさか目が覚めたら全部忘れてるとかないよな? あ、そんなことを考えてるうちに、意識が、また……。
☆ ☆ ☆
ロワに病んで 夢は二次嫁と かけめぐる
(詠み人知らず)
――――朝日が、間もなく昇る。
【D-3/岸辺/1日目-早朝】
【かえる@オールジャンルバトルロワイアル】
[状態]:全身各所に裂傷。失意。疲労(小)。気絶。夢の中。
[装備]:和服
[持物]:デイパック、基本支給品一式、不明支給品x1
[方針/行動]
基本方針:優勝してかがみを蘇らせて添い遂げる?
0:かがみん……。
【かえる@オールジャンルバトルロワイアル】
[状態]:全身各所に裂傷。失意。疲労(小)。気絶。夢の中。
[装備]:和服
[持物]:デイパック、基本支給品一式、不明支給品x1
[方針/行動]
基本方針:優勝してかがみを蘇らせて添い遂げる?
0:かがみん……。
[備考]
※オールロワ140話「B-5周辺顛末記」より参加。
※ゴマモンが「かがみを殺した」のはこの殺し合いの中だと誤解しています。
つまり、このロワ内で既に「柊かがみ」が死んでしまったと思い込んでいます。
※オールロワ140話「B-5周辺顛末記」より参加。
※ゴマモンが「かがみを殺した」のはこの殺し合いの中だと誤解しています。
つまり、このロワ内で既に「柊かがみ」が死んでしまったと思い込んでいます。
[備考]
D-4の湖に、折れた脇差が刺さったままの、ゴマモン@ニコロワ の惨殺死体が浮かんでいます。
水流の関係で、どこかの湖岸に流れ着く可能性があります。
あるいは3本ある川のどれかを下って流れていくかもしれません。海にまで到達するかもしれません。
D-4の湖に、折れた脇差が刺さったままの、ゴマモン@ニコロワ の惨殺死体が浮かんでいます。
水流の関係で、どこかの湖岸に流れ着く可能性があります。
あるいは3本ある川のどれかを下って流れていくかもしれません。海にまで到達するかもしれません。
074:Welcome to this crazy Time | 投下順 | 076:夢のかけら |
074:Welcome to this crazy Time | 時系列順 | 076:夢のかけら |
049:リバーワールド | かえる | 084:たった一人守れないで 生きてゆく甲斐がない |
054:衰弱と不満 | ゴマモン |