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HAL・スクリーミング・ショウ(後編)

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HAL・スクリーミング・ショウ(後編) ◆DiyZPZG5M6



 やる夫が6/と合流する数分前の事。
 ハルヒの前を歩いていたやる夫が突然足を止めた。

「何よ……いきなり立ち止まらないでよ」
「あれを見るお……」

 やる夫は静かにその方向を指差す。

「もう何よ……? ―――っ!?」

 ハルヒの視線がそれに釘付けになる。
 道の真ん中で座り込む三人の少女。
 その中央の座するショートカットの少女に注がれる視線。

 ―――柊つかさ

「かがみんに……つかちゃんに……魅音だお……みんなやる夫の……ハルヒのクラスメイトだお」
「そう」
「ハルヒとつかちゃんに何があったかやる夫は知らないお……」
 目の前にクラスメイトがいる。
 死んでしまった友達がすぐそこにいる。
 やる夫の声は今にも泣きそうなものだった。

「お願いだお……ようやく再会できたんだお……今だけでいいからつかちゃんと仲直りしてほしいお……」
「……そうね」
「ハルヒ!?」

 意外なハルヒの返事。
 だけどやる夫はその答えがとても嬉しかった。

「せっかく再会できたんでしょ? 今はそれを喜びましょ」



      ..____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \  やっと……やっとハルヒはわかってくれたんだお……  
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  やる夫は今とても嬉しいお…… 
  |     (__人__)    |  
  \     ` ⌒´     /


 流れる涙を拭うやる夫。
 そして満面の笑顔で三人の名前を呼んだ。


「おおーーーい! かがみ~~~ん! つかちゃ~~~~ん! 魅ぃ音~~~! 無事だったんだお~~~!」



 ☆



 合流を果たした五人。
 そしてやる夫の口から語られる衝撃の事実だった。

「まさか私達がクラスメイトだったなんて……」
「信じられないわね……(やはりやる夫もらき☆すたメンバーと関係があったか……)」
「うーん……おじさんは学校休んだおかげで助かったなんて……複雑な気分だねぇ」
「ま、信じられないのも無理はないわ。私も最初は信じられなかったんだもの」

 ハルヒもやる夫と一緒にやる夫が経験した出来事を説明する。
 あの時起きた悲劇も全て。

「ハルヒの言う通りだお……信じられないかもしれないけど本当のことだお。だからこうしてみんなと再会できてとても嬉しいお……」
「魅ぃちゃん……お姉ちゃん……やる夫君、きっと嘘は言ってないと思う……」
「そうね……」
「確かに……圭ちゃんが名簿に二人いるんだから、やる夫の言ってることもあながち嘘とは言えないかもね」
「みんな……ありがとうだお」

「話の腰を折るようで悪いけど……あんたたちこれからどうするか決めてるの?」
 どこかつまらなげな表情でハルヒは言う。
 その言葉に6/も魅音もうーんと考え込む。

「本当は百貨店に行きたかったけどもうすぐ禁止エリアなのよね……おまけに変な爆発があったし」
「確かに……じゃあ放送局に行ってみない? 私の知り合いがそこにいるはずなんだ」
「知り合い……?」
三村信史って奴なんだけどね」
「決まりね。じゃあ早く行きましょ」
「みんないくおー!(ハルヒもみんなと馴染んでくれてるお……嬉しいお……)

 放送局を目指す五人。
 まずは南東の橋へ向かって歩みを進める。
 やる夫とハルヒにとっては元来た道を引き返す事になる。
 やる夫は「こっちだおー」先頭に立って道案内をしている。
 その後ろを魅音、つかさ、6/と続き、最後尾をハルヒを歩くという形になっていた。

 ハルヒは気だるげに首を回し前の四人を冷ややかに見つめている。
 やがて、誰にも聞こえないような声で呟いた。




「―――けひひ」




 ドンっと言う音があたり響く。
 誰かが倒れる音。

「な、何だお!」

 振り返ったやる夫の視線の先には右の太ももを押さえて蹲る6/の姿があった。
 おびただしい量の鮮血が太ももから流れ出し地面に赤い水溜りを作っていた。
 そしてその6/の背後にはこれ以上ないというほど邪悪な笑みを湛えたハルヒがレイジングハートを構え立っていた。

「かがみッ!」
「お姉ちゃんっ!?」

「がっ……ああっッ……ハルヒ……何を……!」

 右の太ももにはまるで杭を打たれたかのような大穴が開いてる。
 ぽっかり開いた穴からは赤い血が止まる所を知らずに流れだしていた。
 傷の原因はレイジングハートから放たれた光だった。

「ハ、ハルヒ……なっ何をしているんだお!」
「いやあサーセンサーセンwwwちょっと手がすべちゃった。いやあ~演技するのも疲れるわ~けひひひひひひひひ!」
「演技って……そんなハルヒ……じゃあさっきのは」

「ほんっとやる夫のお人好しぶりは天然記念物モノよねー! ワシントン条約でレッドリストに加えてあげたいぐらいの希少種よあんた。ひゃはは!
第一、神が下賎な人間共と仲良くするはずなんてありえないじゃない。きひひひひひひひ」

 耳障りな笑い声と自らを神と自称するハルヒ。
 間違いない、このハルヒは―――
「てめぇ……HALか……糞ォッ!」
「ええ、真・神聖究極魔神HALとは私のことよ。きひひひひ」

 ハルヒは蹲る6/の傷口を思いっきり踏みつける。
「ぐが……あああっ!」
「嫌ぁ! お姉ちゃんッッ!」
「ハルヒ……! あんたは……ッ!」
「少しの間じっとしてくれない? ―――拘束せよ、レイジングハート」
『Restrict Lock』

 何も無いところから現れた光の輪が一瞬の内につかさと魅音の身体を拘束する。

「離して……! 離してよぉっ!」
「レイジングハートッ! 何でお前がこんなクソ外道に素直に従ってる!?」

 6/の誤算はレイジングハートがハルヒと共にいたことだった。
 彼女の性格を考えれば神(笑)に素直に従うなんて絶対にありえない。
 あんな外道に従うぐらいなら自らの破壊を願う。そんな高潔な意志の持ち主だったはず。
 だからこのハルヒは神(笑)ではなく対主催ハルヒだと思い込んでいた。

「あんたが何でこれの事を知ってるか知らないけど……これね、前の世界で私が改造した奴なのよ。今は立派なHAL厨として私を手助けしてくれるのよぉ」
「クソッ……あの時のレイジングハートなのか……っ」
 そんな状態で支給されるなんて全く予想もしていなかった。
 そしてそれがハルヒの手に渡ることも。
 ハルヒはにたにたと笑いながら、唯一身体の自由なやる夫に視線を移す。

「ねぇやる夫~? なんで私があんただけ自由にしてるかわかるかしらぁ?」
「わ、わかるわけないお!」
「あんたをさあ……この場にいる唯一の男と見込んでお願いがあるのぉ。けひひひひ」
「な、何をやる夫にさせる気だお……」
「男なら誰にでもできる簡単なことよぉ」

 ハルヒはにたにたと笑い嘗め回すように6/の身体を見つめ言った。


「―――柊つかさの目の前で柊かがみを犯せ」


 その言葉にハルヒを除く全ての人間が声を失った。

「身動きの取れない女を力ずくで意のままに手篭めにする。男の浪漫じゃないかしら?」
「そんなこと……できるわけないおっ!」
「聞こえなかったかしら……やる夫、犯せ。こういう時でもないと使う機会なんて訪れないわよぉッ! きひひひひひ!」
「いくら……ハルヒでも……それだけはッ! それだけはやる夫の……男のプライドが許さないおッ!」
「はぁ……私ね、こう見えてあんたのこと気に入ってたのよ。HAL厨にしておくのが勿体無いぐらいにね。だけどもうおしまい」

 ハルヒはゆっくりとやる夫に近づいて静か微笑んだ。
 これまで一度も見せたことのない満面の笑みで。




「 死 ね 」




 とすっとあっけない音をたててナイフがやる夫の胸に沈み込む。
 やる夫は自らの胸に生えたナイフの柄を呆然と見つめていた。
「ハ、ルヒ……」
 ゆっくりと地面に崩れ落ちるやる夫。
 やる夫の白い身体がみるみるうちに朱に染まってゆく。

「やる夫君……? いやああああああ!!!!」
「ハルヒぃぃぃぃ!! お前ってやつはぁぁぁぁぁ!!!」
「粗大ゴミを処分しただけなのに大げさよねぇ……けひひひ」

 ハルヒはやる夫から離れ拘束されているつかさの所にやってくる。
 その瞳にはいつもの常に人を見下した態度は感じられず、ただ憎悪の炎だけが浮かび上がっていた。

「ようやく、あんたに会えたわ。柊つかさ」
「ハルちゃん……どうして……どうしてこんなひどいことを……」
「『ひどい』? あんたがしたことに比べれば何てこともないじゃない。私が受けた絶望。私が受けた苦痛。全てあんたのせいよッ!」
「何を言ってるのか全然わからないよぉ……」
「そりゃそうよ。この世界のあなたは何もしてないもの……でもそんなの関係ないわ。あなたが柊つかさである限り罪を背負うべきなのよ……永遠にねェッ!」

「やめ、ろぉぉぉ!! つかさに指一本触れてみろ……! 絶対許さねぇ……!」
「吠えるな駄犬。ほんと妹思いのお姉ちゃんねぇ……? 安心しなさい……つかさはまだ殺さないわよ。私の受けた絶望と苦しみを受けてもらわないと駄目なんだから」

 そう言ってハルヒはつかさの拘束を解き放つ。



「まずはあんたの肉体に痛みと恐怖を刻み込む」



 ハルヒはつかさの胸倉を掴み挙げるとその可憐な顔を思いっきり殴りつけた。
 いきなりのグーでのパンチを受けたものだからたまらない。
 つかさはそのまま地面に崩れ落ちる。

「助けて……! お姉ちゃん! お姉ちゃぁぁぁぁぁん!」
「無理無理。お姉ちゃん足に大怪我してるから助けられないわぁ」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 さらにハルヒは懐から一振りの鞭を取り出し、見せ付けるようにつかさの鼻先に突きつける。

「いや……いやぁ……」
「鞭って最高よねぇ……? これだけ痛いのに死ぬような怪我なんて絶対しないもの。さあ―――豚のような悲鳴を上げろ」

 ヒュンと風きり音とともに鞭がつかさの丸みの帯びた尻に叩きつけられた。

「ひぎぃ…っ! 痛い! 痛いよぉぉぉぉぉやだぁぁぁぁぁぁ!!!」
「げひゃひゃひゃひゃ! リアルで『ひぎぃ』なんて初めて聞いたわ! そう、それよ! まさに至福の悲鳴よ!」
「つかさ……ごめん……俺がいながら……こんなことに……畜生……チクショウぉぉぉおぉぁぁぁぁぁぁぉぉお!!」
「泣け! 叫べ! 嘆け! 世界を! 理不尽なこの世界を呪うがいい! この私のように! あはははははははは」
「つかさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 6/の慟哭が辺り一面に響き渡る。
 目の前で守るべき人を傷つけられながらも何もできない自分。
 足を撃ち抜かれ立つことすらもできない自分。
 そんな6/の心の叫びですら今のハルヒにとって甘美な美酒にすぎない。
 ハルヒが鞭を打つ度につかさは泣き、叫ぶ。
 何度も。
 何度も。

「痛いよぉ……お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

 うわ言のように姉の名を呼ぶつかさ。手や足に浮かぶ鞭の痕がひどく痛々しい。
 ひとしきり鞭を打ちつけたハルヒは満足したのかその手を止める。
 つかさは制服のあちらこちらが鞭で叩かれ破れてしまっている。
 それでもつかさは姉の所へ行こうと痛みを堪え必死に地面を這いずる。

「きひひ……なにその逃げ腰は? 愉快に尻振って……男でも誘ってんのぉ? まあ、男と言えばやる夫ぐらいしかいないけどねぇっ!」


「もう……やめるんだお……ハルヒ……お願いだから……」

 血溜まりに沈むやる夫が息も絶え絶えに声を発する。まだやる夫はかろうじて生きていた。
 ハルヒは意外な物を見るかのように冷ややかな目線でやる夫を見つめる。
「ああ、あんたまだ生きてたの。しょうがないわねえ……おっいいものみっ~~けwwww」
 そう言ってハルヒはつかさのデイバックの中から拳銃を取り出していた。
 ごく普通のオートマチック拳銃。だけど死に損ないを始末するには十分過ぎる物。

「ねえつかさ、そこの産業廃棄物を片付けてくれないかしら」
「ひぃっ……」

 ハルヒは拳銃をつかさに差し出す。
 ずっしりとした重みがつかさの手のひらに伝わっていた。
 銃。純粋に人を殺すためだけの道具。
 それを使ってやる夫を殺せとハルヒは言い放つ。

 今ならこの悪魔を。
 人の姿をした悪魔を。
 つかさは従うふりををして銃を握り締める。
 そして―――乾いた銃声が―――高速で飛来する銃弾がハルヒに―――


『―――Active Protection』


 キィンと甲高い音がして、潰れた弾頭が地面にカランと落ちる。
「ナ~~イスタイミングよレイジングハート! このタイミングッ! 少しでも速くても遅くてもだめ。私を始末できると思ったたらキィンよキィン! あっひゃひゃひゃ!
『HAL様、あまり危険なパフォーマンスを私にさせないで下さい』
「バッカじゃないのぉ? そんなこと私がさせると思うぅ? ちょっとはココ使いなさいよコ・コ」
 ハルヒはトントンと自らの頭を人差し指で叩く。
「もう一度いうわ。あの生ゴミを、やる夫を片付けなさい。今度は私が手伝ってあげるから、ね?」
「あっ……あ……」
 ハルヒは拳銃を握るつかさの手を握り締める。
 そしてやる夫に向けて照準を合わせてあげる。
「照準は私が合わすから。引き金を引くのはあんたよ。きひひ」
「やだっやだ……」
 つかさの銃から、ハルヒの手から何とか手を振りほどこうとするが、
 ハルヒの握力は思いのほか強くまったく引き剥がせそうにもない。
 引き金にかかるつかさの指の上にハルヒもまた自らの人差し指を重ね合わせる。
「いやぁっ……いやあっ!」
 ぐいぐいと押し込まれるハルヒの指。
 必死に抵抗するも無駄だった。

 パンッと音がしてやる夫の身体がビクリと痙攣する。
 続けざまに二発、三発、四発の銃声。
 銃声が止んだ頃にはやる夫はもう動かなくなっていた。

「はあ~い粗大ゴミ処理完了ーーぅ! あーあ。可哀想にやる夫死んじゃったww何故殺たしwwwww」
「あ……ああああああああああああああっ!!」

 殺した。
 殺した。
 やる夫を殺した。
 何故殺した。
 つかさの耳元でハルヒが囁く。
 涙すらも枯れ果てたつかさは虚ろな目でハルヒの呪詛を聞かされていた。

「ま~だ壊れるのは早いわよぉ? お楽しみはまだまだこれからなのよぉ……ねぇレイジングハート?」
『Yes, MasterRestrict Lock』
 レイジングハートの声と共に再び光の輪が現れる。
 今度は6/の身体を宙に磔にするような形で拘束していた。

「お……お姉ちゃん!」
「つかさ……逃げろ……」
 足からの大量の出血が6/の意識を朦朧とさせる。
 だがここで意識を失うわけにはいかない。
 唇を噛み、必死に意識を繋ぎ止める。
「いい格好ね~お姉ちゃぁ~~~ん? 私の靴を舐めてHAL様万歳と懇願すれば命だけは助けてあげてもいいのよぉ? けひひ」
「バカが……勝手に言ってろ……こいつは俺からのプレゼントだ取っとけ」
 ぺっと血が混じった唾をハルヒに向かって飛ばす。
 べちゃっと頬に唾が付く。
「けひひ……っ」
「くくく……っ」
「あっひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「あっはははははははははは!」

「―――神に向かって唾吐いてんじゃねぇぇょ! この罰当たり野郎がぁぁぁぁぁぁッ!」

 ハルヒは6/の頭を思いっきりレイジングハートで殴りつけた。
 ぱっと鮮血が飛び散り彼の顔が赤く染まる。

「やめてぇぇぇぇ!!」
「おー……今のはさすがに効いたぜ……世界広しと言えどもレイジングハートで殴られた奴なんて俺ぐらいじゃね? レアな体験だぜ……へっへっへ……」
『マスター。私を鈍器として扱わないで下さい。ボディが痛みます』
「だとよ。道具はもっと丁寧に扱うんだな」
「あんたその出血でよくそんなへらず口が叩けるわねえ」
「血の気が多いからな……これぐらい抜いてもらったほうが調子いいんだよ……けけけ」
「じゃあもっと抜いてあげるわ。そうね……何しようから」

 ハルヒは何か使えそうな物がないか辺りを見回す。
 すると地面に放置されているデイバックから一本の剣が顔を覗かせていた。

「良い剣ね。少し借りるわよ」
「汚い手でカリバーンに触るんじゃねぇよ……そいつはてめぇみたいな糞が持って良いような剣じゃねぇんだよ……」
 煌く刀身をうっとりと眺めるハルヒ。
 何と美しい剣なのだろう。まさに神である自分に相応しい剣だ。
「良いこと思いついた。あんたの運命は彼女に決めてもらおうかしら? その彼女とは? さっきからずっと空気な園崎魅音ちゃんでぇーーーっす!」
 そう言ってハルヒは指をパチンと鳴らすと拘束されていた魅音の身体が自由になる。
 魅音はうつむいた顔のまま一言も言葉を発していなかった。

「魅ぃちゃん!」
「魅音ッ! 頼む……つかさを連れて逃げてくれ……!」
「………ぃ」
 ぼそりと魅音は呟く。
「魅音……?」
「わからない……もう私は何を信じればいいの……」
「何を言ってるんだ魅音……ッ!」
「私が知ってるかがみって……あんたのように男みたいな言葉で喋らないんだよ……女の子が自分のことを『俺』なんていうわけないじゃん……」
「あ―――」
「あんた……誰なのさ……?」
「頼む……魅音ッ! 俺はどうなってもいいッ! つかさを……つかさを……」
「プールの時からおかしかったんだよ……あのコスプレ男と知り合いみたいだったし……やっぱり三村君の言うとおり柊かがみは魔女だったんだ……」
「違うの魅ぃちゃん! この人は……この人はそんなんじゃ―――」

「嘘だっ!! つかさはそいつに騙されてるんだ! 実の妹すらも騙して……! そうだ……つかさを守らないと、魔女から守らないと……守らないと……」
 熱にうなされた様につかさを守ると連呼する魅音。
 その虚ろな目はつかさしか見ていなかった。

「ハルヒィィィイイイイッッ! 魅音に何をしたァァァァ!!!!」
「あら……何でもかんでも私のせいだと言うの? 陰謀論乙wwwwwwあんたが彼女に何か隠し事してたせいじゃないのぉ? やあねぇ。仲間に隠し事するなんて」

 ハルヒは手に持っていたカリバーンを魅音の足元に投げる。
 からんと金属質の音がして聖剣は魅音の傍に横たわる。

「ほらぁ……つかさを守るんでしょぉ。ならそのつかさを誑かす魔女を殺さないといけないわよねぇ……今つかさを守れるのはあなただけ何だもんねぇ……ききき」
「うん……つかさを魔女の手から守ってあげないと……」
 魅音はふらふらとした足取りでカリバーンを手に取りその切っ先を6/に向ける。
 聖剣は何も言わずただ曇り一つない刀身に太陽の光を受け続けているだけだった。

「つかさ……もう俺のことはいい……逃げろ」
「いやだよぉ……お姉ちゃんも魅ぃちゃんも残して一人だけなんて……」
「もう魅音は……壊れちまった……すまねえ……俺がもっと早くあいつに正体を明かしていれば……こんなことに……」

 もし魅音に自分の事を話していればこんなことは回避できたのだろうか?
 もう、後悔しても全てが遅い。
 今自分にできることはもはや何もなかった。

「つかさ……ハルヒはおそらく魅音を殺さない……あいつは自らの下僕になる人間を常に探し回ってる。生きてさえいればいつかは正気に戻せるかもしれねぇ……」
「じゃあお姉ちゃんは……!」
「俺か……? 俺はもうこの傷じゃ無理だ。第一ハルヒが俺を生かしておくはずがねえ……」
「やだよぉ……お姉ちゃんも一緒じゃないとやだよぉ……」

 泣きじゃくるつかさ。
 目の前で泣いている少女の涙を拭ってやりたい。
 抱き締めてあげたい。
 抱き締めて大丈夫だよと優しい声をかけてあげたい。
 だけどそれは適わぬ夢で。
 魔杖が操る光の輪はそんな些細な願いですらも彼には与えない。

「おいおい……まだ俺を『お姉ちゃん』と呼んでくれるのかよ……お前の本当のお姉ちゃんは柊かがみだろ……? 俺は6/というさえない男だぜ……?」
「でもっ……でもっ!」
「いいかつかさ……っ! かがみはまだ生きてる! こなたもゆたかもみなみも黒井先生もまだ死んじゃいねぇッ! だからお前は生きろ!
どんなに辛いことがあっても絶望するな! 希望を捨てるな! 簡単に人生投げ出したら一生呪ってやるからな! だから生きろぉぉぉお!」
「うぐっ……うぇっ……うあああ」

 枯れ果てていたと思っていた涙が溢れ止まらない。
 ここで……ここで終わるわけにはいかない。
 6/の……やる夫の想いを無駄にはできない。
 涙を拭いて、痛む全身を必死に堪えて、つかさは立ち上がる。

「さよならは言わないよ……お姉ちゃん……ううん、―――6/さん」

 つかさは静かに6/の頬に軽く口付けを交わす。
 別れのキスなんかじゃない。再会を誓うキス。

「つかさ……」
「えへへ……また、続きができるといいなっ」
「ああ!」
「魅ぃちゃん……ごめんね! 必ず迎えにいくからっ!」

 そばに落ちていた自分のデイバッグを拾い上げる。
 これは希望への逃走劇。
 勝利条件はつかさが無事にこの魔女の釜の底から逃げ出せる事!

「ちょっと……パーティーの主賓はあんたなのよ。逃げるなんて許されると思ってるわけ? レイジングハート、死なない程度に痛めつけなさい」
『イエス、マスター。Divine―――』
「きゃあッ!」



 突然足元のバランスを崩し転ぶハルヒ。
 不測の事態でレイジングハートも魔法の発動を中断させてしまう。
 ハルヒは驚愕する。
 自らの足をがっちりと掴む白い腕。



「つか……ちゃんはやらせ……ない、お……」
「この死に損ないがァァァァァァァァァァッ!」



 完全に死んだと思っていたやる夫が足を掴んでいる。
 死人とは思えないほどの力でハルヒの足を締め上げていた。


「やる夫君……!」
「ふ、ふひひ……やる夫もつかちゃんとキス…がしたいんだお……」
「離れろこの豚がぁぁぁぁぁ!」
「つかちゃん……死体が動いたんだお……ラッキーなん……だお」
 ハルヒは何度もレイジングハートでやる夫を殴りつける。
 それでもやる夫はハルヒの足を離そうとしない。

「つかちゃん……ハルヒに負けるなお……ファイトだ、おー」
「やる夫君も……!」

 やる夫は視線の先には6/がいる。
 6/もやる夫と視線を合わせ二人は頷き合う。

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!! つかさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「行くんだおぉぉぉぉぉぉ!!!! つかさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 二人の漢の魂の叫びが街に木霊する。
 つかさは無言で、一度も振り返らずに走る。
 運動はさほど得意ではないし、全身は鞭で叩かれ足を動かす度に激痛が走る。
 それでも決して立ち止まらずにひたすら走る。
 彼らの想いを無駄にしないためにも……!





【F-4/道路/1日目-午前】


【柊つかさ@原作】
 [状態]:顔面打撲、全身に鞭の痣。精神的にダメージ
 [装備]:
 [持物]:不明支給品x1~2
 [方針/目的]
  基本方針:6/とやる夫の想いを無駄にしないためにも生きる
  0:とにかくハルヒから逃げる



 ☆



 ハルヒは完全につかさを見失ってしまっていた。
 そして勝ち誇った表情の男二人。
 命を賭して彼らはつかさを逃がすことに成功した。

「勝ったお……やる夫たちは……勝ったんだお……」
「じゃあさっさと死ね」

 ハルヒは落ちていたつかさの拳銃―――ベレッタM92を拾い上げると、
 やる夫の頭に残り全ての弾を撃ち込んだ。
 最初に打ち込んだ4発を差し引いた残り11発。
 二度と生き返らないように、徹底的にやる夫に放つ。
 やる夫はもうぴくりとも動かなくなった。

「きひひ……手間かけさせるんじゃないわよ」
「やる夫……お前は本物の漢だったぜ……」

 ハルヒはやる夫の手を引き剥がし拘束されている6/の前に立つ。

「どうしたハルヒ? さっさと殺れよ。もう俺に用なんかないだろ……」
「言われなくてもわかってるわよ! 魅音!」

 カリバーンを持ったままの魅音はぼうっと立ち尽くしている。
 何をすればいいのかうまく解っていないようだ。

「そうだ……つかさを守らないと……一人じゃ危ないから……」
「だったら目の前の……! つかさを惑わす魔女を殺せぇぇぇっ!」
「こいつは……つかさを惑わす……魔女……柊かがみ……」
「そうよ! 柊かがみを殺せばつかさは救われるのよ!」

 ゆらりと魅音はカリバーンを腰溜めに構える。
 でもその手がガタガタと震えている。

「でも……かがみを殺したらつかさが哀しむよ……」
「何を言ってるんだこの馬鹿がぁぁぁぁ! こいつは魔女だ殺せぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ああっああああああああああああああああああああ!!!!!」

 魅音はカリバーンを突き出し一気に6/に向けて突進する。
 そして―――

 二人の影が重なり合う。
 6/の背中から生える聖剣の刃。
 6/の胸から生える聖剣の柄。

 6/はごぼっと口から大量の血の塊を吐いて、魅音にそっと囁いた。

「魅音―――俺は……いつかお前が正気に戻ることを信じてる。だから……その時はまたつかさを守ってやってくれ……」

 ずるりと刃が引き抜かれたと同時に6/の拘束も解かれる。
 力なく、糸の切れたマリオネットのように地面に崩れ落ちた。
 彼もまたやる夫と同じく二度と動くことは無かった。


「きひひ……処女喪失おめでとう」
「私は……私は……」
「つかさを守りたいんでしょう? なら神たる私と共に来ない?」
「ハルヒは……神……?」
「これからはHALと呼びなさい。神の力は無限。そして力を封じられた私だがその力の一部を取り戻した!」
「つかさを守れるんなら……私はHALに着いていく……」
「そして柊つかさの敵、柊かがみを殺すのよ! きひひひひひ」

 ハルヒはやる夫と6/のデイバッグを拾い上げる。
 最期まで神に抵抗した愚か者共だがその道具は神が有効活用してやろう。
 やがて来る新世界のために―――

 魅音はハルヒの後を従者のように付いて行く。
 聖剣を携えた守護騎士は虚ろな瞳で神の後を追う。


「征くわよ、レイジングハート」
『Yes, My Master……いつまでも、何処までも―――』



【やる夫@やる夫ロワ 死亡】
【6/氏(かがみ)@オールロワ 死亡】




【F-4/道路/1日目-午前】



涼宮ハルヒ@ニコロワ】
【状態】神(笑)
【装備】レイジングハート@ニコロワ
【持ち物】支給品一式×3、ナイフ@現実、マッチ@現実、ランプ@現実、青龍偃月刀@現実 ルイズの首輪、ゴマモンの首輪
      コルト・ガバメント(0/7)@なのはロワ コッペパン@らき☆すた 不明支給品×1
【思考・方針】
[基本方針]
主催者と邪魔者を殺して神として君臨する。 経験を生かし、慎重に立ち回る。
1、柊つかさに絶望を与え殺す。
2、外撲を集めて、情報を集めて、首輪を分解する
3、6/(神)をいつか神の力が戻って来た時、潰す
4、レイジングハートゲットだぜ! 腋巫女ざまあwwww


【園崎魅音@ニコロワ】
 [状態]:右腕打撲 、精神錯乱、HAL厨
 [装備]: カリバーン@アニロワ2nd
 [持物]:デイパック、支給品一式、包帯@現実、不明支給品x1
 [方針/目的]
基本方針:つかさを守るため魔女かがみを殺す。
1、つかさを守らないと……
2、HALに従う


※やる夫の死体のそばにベレッタM92(0/15発)が落ちています。


【レイジングハート@ニコロワ】
ご存知高町なのはのデバイス。ニコロワ本編では博麗霊夢に支給される。
霊夢と共に最終決戦まで活躍するがハルヒに奪われHAL厨へと改造されてしまう。
らきロワではHAL厨状態で登場。


088:HAL・スクリーミング・ショウ 投下順 089:Dawn(暁、夜明け)
時系列順 089:Dawn(暁、夜明け)
やる夫
涼宮ハルヒ 101:魅音の不幸とラッキースターワンダーランド(前編)
園崎魅音 101:魅音の不幸とラッキースターワンダーランド(前編)
6/氏(外見かがみ)
柊つかさ 089:Dawn(暁、夜明け)



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