呼び込まれた暗影 - ressenrowa @ ウィキ

い、いやだ…！でれたってのに……！！
あの生き地獄の地下から脱出できた…！！
なのになんで俺はまた…！
見なくちゃいけないんだ！こんなところで……地獄を…！

あああ！！抜け落ちる…！！でも落ちるのは金じゃない…
マジに魂そのものだ！んなの集めて…なにになるんだ…
やめろ…やめろ……やめろ……
死んじま…………抜け……

……………
……………

◆

１００人でも数え切れないほどの人間が入り込めるほど広い観客席
縦横無尽に広がりグラウンドに一寸の不備もなく整えられた芝生
選手やバトルを照らすために設備された無数のライト、
その開放感が溢れるシュートスタジアムの中心に
いくぶん豪壮でありながらも妖しげなローブをまとい
表情は深い黒闇に覆われ
漆黒から瞳を光らせる者が佇んでいる。
その男は明らかに人間ではなかった。
名はミストバーン、大魔王バーンに数千年のものあいだ仕えている。

参加者にはポケナビや食料など確定で支給される物から
ランダムで支給される支給品もある、
そんなミストバーンは一つのランダム支給品を見ていた
鼻やアゴがやけに鋭い見知らぬ男の苦悶顔が書かれた奇妙なコインだった。

「こんなものが役に立つとは思えんな。」

そのコインへの感想は特にない、
あるとすればどうしてこんな役に立ちそうもないガラクタをよこしたのかと
主催者サカキに問いたいだけだ。

捨てようとも考えたが一応なんらかの役割があり、
異能のエネルギーや魔力が込められ役に立つ状況があるのかもしれない。
バックにコインをしまった。

「こんな場所で道草を食う暇はない、いらぬ茶番にまきこみおって」

この殺し合いにおいて最も重要なのは少しでも早く脱出し、
元の世界へ帰還することだ。指示もなく本拠地から離れ
バーン様からみれば意味不明な独断専行にしか思えないはず、
今頃お怒りになっているかもしれない、バーン様のもう一つの肉体を管理している
自分に何かあり、取り返しの付かない事態に及んでも不思議ではない。

「まさかとは思うがあの者は今の私をも無力にできるのか…？」

殺し合いを承諾した記憶やあの妙な個室に閉じ込められた瞬間の記憶もない。
これが意味するのは凍れる時の秘法による完全停止を無視して
干渉できる魔導や技術をサカキは掌握していることになる。

本来ならばあらゆる干渉を受けずミストバーン自身が
敵対者の思うようになることはまずありえないが、
今は例外であり、自在にコントロールできてしまうとしか思えない。

「いや、それ以外には…まさか」

二つ目の可能性を想像した。
停止した肉体にとりついたミストをまず分離させ、その後記憶を改ざんし
あの個室に、からとなった肉体を配置してから再び憑依させたさのではないのか、
こちらだとすれば憑依状態を強引に解除できる上に、
思念だけの状態、つまり肉体をもたない存在の記憶までも
自在に操ることができることになるのだ。

「どちらの手段が可能だとしても…
サカキの利用している技能は常識を超えているわけだ。」

ただの人間にみえる男が、全く知らぬ未知の技能を思うように操る事実には
全てを超越した神ごときの強者や神々による三界の創世など
耳にすればほとんどの者が
驚愕し疑うような情報を持つミストバーンでもさすがに驚いた。

「迂闊なまねをするわけにはいかん、もはや何が起きようとも矛盾はない、
魔王軍最強の私すらも超えかねぬ傑物が暗躍しているかもしれないとは…」

主のバーン様は予測が不可能な事象や
未知数の敵対者には注意を払い警戒を怠らない。
バトルロワイヤルに巻き込まれた状況ではそのような用心深さと
慢心を捨てることがどんなアイテムよりも役に立つ。
慎重になりすぎて動かないのも考え物だが、わずかな油断や
一瞬のミスが破滅へ直結する。

大魔王様の全盛期の肉体を操る己に近いまたは匹敵するような
化け物も殺し合いに誘われている可能性も視野にいれて臨まなくてはならない。
バーン様と同格の冥竜王ヴェルザーや神造兵器のようなバランのように
ただ強くても凍れる時の秘法で干渉無効の停止状態にあるミストバーンを殺せはできない。

しかし何よりも最も警戒しなくてはならないのは
凍れる時の秘法の法則を無視したり、対処できるような者の存在だ。
最悪の場合二度と再起ができない状況に追い込まれてしまうだろう。

わずかな油断や刹那の気の緩みで滅ぼされるような
バトルロワイヤルの世界はまさに地獄である。

「帰還にはやはり優勝が最も確実であろうな…」

優勝し幹部となって願いを思うがままにすることにはまるで興味がない
ミストバーンはたった一人を除きどんな強大な存在にも忠誠を誓うことはない。
大魔王バーンこそミストバーンが今も
これからも忠義を誓い続けるお方なのだ。
ゆえに願いはともかく、
幹部就任は何があっても受け入れる訳にはいかなかった。

次にミストバーンはポケナビを取りだし説明書をよみつつ操作し名簿を閲覧した。

「バーン様が不参戦だと？」

名簿画面に表示された人選が妙としか思えなかった。
まず仕えているバーン様がいないのは不幸としか思えない、
この肉体の真の力を解き放つ許可をいただくことができないのだ。
持てる力を全て解放するには許しが絶対に欠かせない。

バーン様は慎重に事を進めるお方であり、
ミストの憑依している肉体が大魔王の全盛期のボディという事実を見破られて
完全対処されてしまえば、バーン様は未来永劫に全盛期の力を振るえず
永遠の命も崩れ去ってしまう。
そのような取り返しの付かない事態を避けるためにも
正体をあかすのは避けてきた。

本領を完全発揮することそのものは
ミストだけの手で行えるが
そんなことをすれば信頼は地に墜ち
独断の罪を清算するためにも処刑となるだろう。

だからバーン様が殺し合いの世界に呼ばれていた方が
ミストにとっては都合が良かったのだ。

闇の衣をまとった状態では太刀打ちできない怪物に
苦戦を強いられたときにはさすがに許可をくださるだろうが
そういうわけにも極力いかなくなった。
バーン様は寛大なため話せば理解してくださる可能性も皆無という訳ではないが。

「まさかサカキはここまで読んでいたというのか？」

的確な計算を持って主催者サカキはバーン様を
召喚しなかったというのあり得るがさすがに確信までは持てなかった。

「アバンの使途とその仲間たちに関する者がほぼ不在なのも妙だ、
あやつらを誘えば殺し合いの流れは円滑になりそうだが…」

魔王軍と苛烈な闘争を繰り広げているアバンの使途やその関係者たちを呼べば
最終的には殺し合いの崩壊や脱出を目指すものの
バトルロワイヤルに召喚されている自分やキル、死んだはずのザムザ、フレイザード、
旧魔王軍のガンガディアを進んで狙い、
戦うことになるため途中までは実質殺し合いに乗った状態になり
一時的に殺し合いのペースをあげるため、
呼んだ方がメリットになるが
意外なことにアバンの使途は誰一人召喚されていなかった。
一応魔王軍離反者にして勇者ダイの実父であるバランは
現状において魔王軍の敵であるが、

解せないことがあまりに多く正直に殺し合いに乗っかるよりは
情報収集を優先すべきだろう。

今は優勝し、幹部となって優勝時の願いで帰還する以外に方法はない。
現在の方針は帰るために
優勝することであるが、それ以外で効率の良い手段が
もし見つかれば迷わず実行するつもりだ。

ヴェルザーから派遣されているとはいえ親友のキルはもちろん、
ダニ同然なザボエラの子であるが進んで体を張り
勤勉な努力家で裏切る要素も少なく
魔王軍の力となれるだろうザムザやガンガディアも殺害するのは極力避けたい。

フレイザードは恐らく自分は逆恨みしているだろう、
デッドアーマーに憑依してもダイを倒せなかったことを
実力不足を棚に上げて憤り、その上仮にも救い出した自分に怨恨を向けてきた
苛烈で残虐な性格上憎悪の赴くままにたたきのめしに来るだろうが
また踏みにじって消し去ば済むことだ。

「サカキよ…聞こえているなら聞け、
何が起きようが貴様の思うように…
新幹部へ就任する気などは微塵もないっ！」

魔界の頂点に君臨し、太陽の輝きという真の恵みをもたらし
神々の大罪を償わんとする大魔王バーン様こそ絶対の主だ。

どんなに妙で狂気染みた展開になろうがサカキなどというわけのわからぬ輩の
傘下に下るのは例え幹部就任記念の願いで真の実体を
得ることができても願い下げであった。

「肉体がなく誕生した私の絶望を利用し、
配下に引き込もうとしても無駄なことだ…」

ミストは肉体がなく鍛錬で強くなることが絶対にできず、
強者に憑依して寄生虫のような振る舞いをするしかない寄生虫のような
人生だったがバーン様は
そんなミストを本心から認めて
全盛期の肉体を保存し管理するという大任をさずけてくださったお方だ。

余に仕える天命を持って生まれたというお言葉はどんなに時が流れても忘れることはない。

そのため優勝の願いで本当の実体を得られる可能性をぶら下げても無意味であり
むしろ、エサさえあれば貴様は思うように動くだろうと
軽く見られコケにしているようにしか思えなかった。

レインボーロケット団の幹部部下には意地でも就任しないと魂の芯から誓い
サカキへの敵意をたぎらせた。

【H-8　シュートスタジアム/未明/一日目】
【ミストバーン＠DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
[状態]：健康
[装備]：
[道具]：基本支給品。ランダム支給品0～2
[思考・状況]基本行動方針：脱出優先、手段がない場合は優勝も視野に入れる。
1：手っ取り早く脱出できる方法をさがす。
2：ザムザやキルバーン、ガンガディアとの合流を目指す。
3：フレイザードは恐らく自分を逆恨みし、始末しにかかると思われるので消す。
[備考]
参戦時期は超魔生物ハドラーがハドラー親衛騎団をバーンに紹介したあとです。
新ＴV版で言えば４５話直後です。

【支給品解説】
カイジのコイン＠うろ覚えで振り返る承太郎の奇妙な冒険
伊藤カイジの魂が封印されたコイン、PART35にて登場した。
カイジはどこかでダニエル・Ｊ・ダービーとの
ギャンブル対決に臨んだものの返り討ちに遭ってしまったようだ。

【施設紹介】
シュートスタジアム＠ポケットモンスターソード
ガラル地方最大の大都会シュートシティに建造された巨大なジムスタジアム
他のジムスタジアムと同じくダイマックスのための
パワースポットでもあり条件を満たせばダイマックスができる。

PREV	029	NEXT
マスクウーマン誕生！！の巻	投下順	何もないさすらい
	時系列順
GAME START	ミストバーン	パンドラボックス/デンジャラスマシンTYPE－13