夜雨戦線 -Emotional Storm- ◆6XQgLQ9rNg
大地と空気が焼ける焦げ臭さを残して、黒と白の雷が織り成す狂宴が終わる。
その臭いが雨で流され始めた頃、ジョウイは細長い息を吐く。
宙に浮かび上がる黒き刃と輝く盾の幻像が、徐々に薄れていく。
あらゆるものを切り裂き引き裂き焼き焦がす雷の群れを迎撃したのは、先ほどと同じく、分かたれた始まりの紋章だった。
黒き刃が白き雷を切り落とし、輝く盾が黒き雷を受け止めた。
咄嗟だった。
暴虐的な力の奔流を前に、ジョウイは反射的に、全力で紋章の力を解放した。
後ろに、横に、前に誰がいるかも分からないままに、だ。
「無事、ですか……?」
だから問う。
まず右から、茶髪の少年の声がする。
「ああ、なんとかな」
次いで左から、黒髪の青年が少し面白くなさそうに返答する。
「こっちも無事だよ。ついでに、アナスタシアも無事みたいだね」
後ろを一瞥すると、青い髪の女性が一人佇んでいた。
彼女はジョウイと目が合うと、ぽつりと呟いた。
「あの人は……?」
気を失っていたはずの女性の姿が、いつの間にか消えていた。
捜そうと視線をくゆらせるジョウイの目に、入ったのは、彼女の姿ではなく。
野獣のように突っ走ってくる、たった一人の少年だった。
「揃いも揃って、そんなに、そんなにアナスタシアが大事なのかよぉ――ッ!」
レゾンデートルの代わりに縋った、御しきれない感情に衝き動かされた少年――ユーリルが、幼子のように喚く。
端整な顔を憎しみで埋め尽くし表情を歪めた彼の、痛々しさすら覚える殺意が、誰彼構わず撒き散らされる。
圧倒されるほどに強い感情を押し留めようともせず、剣を叩き込んでくる。
会話すら通用しなさそうな様子は、同じ人間とは思えず、ジョウイは戦慄を覚えずにはいられなかった。
ユーリルは相変わらず、執念と妄執に取り憑かれアナスタシアだけを目指して行く。
邪魔する障害を斬り捨てて、憎悪の対象へと至るために地を蹴り飛ばす。
家族だと思っていた少女を屠ったその手で剣を振るい、憎しみに染まった声色で呪文を唱える。
血走り赤黒く濁った眼は、ただアナスタシアだけを見つめていた。
その強烈なひたむきさとある種の純粋さと盲目っぷりは、まるで。
まるで、心の底から強く、恋焦がれているかのようで。
止まない雨も、その淀んだ灼熱を冷ますことはできないようだった。
【C-7橋の近く 一日目 夜中】
【ユーリル(DQ4男勇者)@ドラゴンクエストIV】
[状態]:疲労(極)、ダメージ(中)、精神疲労(極)、アナスタシアへの強い憎悪、押し寄せる深い悲しみ
[装備]:最強バンテージ@LIVEALIVE、天使の羽@FFVI、天空の剣(開放)@DQⅣ、湿った鯛焼き@LIVEALIVE
[道具]:基本支給品一式×2(ランタンは一つ)
[思考]
基本:アナスタシアが憎い
1:アナスタシアを殺す。邪魔する人(
ピサロ、魔王は優先順位上)も殺す。
[備考]:
※自分と
クロノの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は六章終了後、エンディングでマーニャと別れ一人村に帰ろうとしていたところです。
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。
その力と世界樹の葉を組み合わせての死者蘇生が可能。
以上二つを考えました。
※アナスタシアへの憎悪をきっかけに
ちょことの戦闘、会話で抑えていた感情や人間らしさが止めどなく溢れています。
制御する術を忘れて久しい感情に飲み込まれ引っ張りまわされています。
※ルーラは一度行った施設へのみ跳ぶことができます。
ただし制限で瞬間移動というわけでなくいくらか到着までに時間がかかります。
【
アナスタシア・ルン・ヴァレリア@
WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(大)。自己嫌悪。
[装備]:絶望の鎌@
クロノ・トリガー、賢者の石@ドラゴンクエストⅣ
[道具]:不明支給品0~1個(負けない、生き残るのに適したもの)、基本支給品一式
[思考]
基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。
1:あらゆる手段を使って今の状況から生き残る。
2:施設を見て回る。
3:ちょこにまた会って守ってもらいたい。
[備考]
※参戦時期はED後です。
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。
例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。
尚、黄色いリボンについては水着セットが一緒に入っていたため、ただのリボンだと誤解していました。
※アシュレーも参加してるのではないかと疑っています。
【アキラ@
LIVE A LIVE】
[状態]:テレポートによる精神力消費、疲労(大)、ダメージ(中)。
[装備]:パワーマフラー@クロノトリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:清酒・龍殺し@サモンナイト3の空き瓶、
ドッペル君@クロノトリガー、基本支給品一式×3
[思考]
基本:オディオを倒して殺し合いを止める。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える
2:
無法松との合流。
3:
レイ・クウゴ、アイシャ・ベルナデット(カノン)、
ミネアの仇を取る。
4:どうにかして首輪を解除する。
[備考]
※参戦時期は最終編(心のダンジョン攻略済み、魔王山に挑む前、オディオとの面識は無し)からです
※テレポートの使用も最後の手段として考えています
※超能力の制限に気付きました。
※
ストレイボウの顔を見知っています
※カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※名簿の内容に疑問を持っています。
【
イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、ミラクルシューズ@FFIV
[道具]:不明支給品0~1個(本人確認済み)、基本支給品一式×2
ドーリーショット@
アークザラッドⅡ、
ビジュの首輪、
[思考]
基本:感情が整理できない。自分と大きく異なる存在である
ヘクトルと行動し、自分の感情の正体を探る。
1:ピサロ、ユーリルを魔剣が来るまで抑える
2:次にセッツァーに出会ったときは警戒。
[備考]:
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
【ジョウイ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:キラーピアス@
ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
[道具]:回転のこぎり@
ファイナルファンタジーVI、ランダム支給品0~1個(確認済み)、基本支給品一式
[思考]
基本:更なる力を得て理想の国を作るため、他者を利用し同士討ちをさせ優勝を狙う。(突出した強者の打倒優先)
1:生き残るために利用できそうな者を見定めつつ立ち回る。可能ならば今のうちにピサロ、魔王を潰しておきたい。
2:座礁船に行く。
3:利用できそうな者がいれば共に行動。どんな相手からでも情報は得たい。
4:僕の本当の願いは……。
[備考]:
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所で
2主人公を待っているときです。
※
ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています
※ピエロ(ケフカ)とピサロ、ルカ、魔王を特に警戒。
※制限の為か、二人が直接戦わなかったからか、輝く盾の紋章と黒き刃の紋章は始まりの紋章に戻っていません。
それぞれの力としては使用可能。また、紋章に命を削られることはなくなりました。
紋章部位 頭:バランス 右:刃 左:盾
◆◆
打ち付ける雨粒が痛いと思えるのは初めてだった。
降りしきる水は冷たくて、それに触れるだけで体力を奪われるようだった。
だからピサロは、その背中で全ての雨粒を受け止める。
一粒一粒が、腕の中の愛しい女性の命を削り取るような気がした。
二色の雷に打たれた女性――
ロザリーをピサロは強く抱く。
その両手からは、癒しの輝きが絶え間なく溢れ出ていた。
傷を癒し体力を回復させる光は、絶え絶えの呼吸を苦しげに繰り返すロザリーを包み込む。
ピサロは希求し乞い願い、呪文を詠唱し続ける。
ピサロの手から光は消えない。消すわけにはいかなかった。
必死だった。
ロザリーが助かるならば、自分の命が立ち消えてもよいとさえ思う。
そんなピサロに、無慈悲な雨が打ち付けられる。
攻撃魔法は、一瞬にして生命を脅かすというのに。
回復魔法は、その効果を忘れてしまったかのようで。
閉ざされたロザリーの目を、薄く開かせる程度の効力しか発揮してはくれなかった。
「ロザリーッ!」
喉が張り裂けそうなほどの声で、名を呼ぶ。
すると、ロザリーの顔が動いて。
笑みを、形作る。
「ピサロ、様……。お会いしとう、ございました……」
可憐な蕾のような小さな口が、開く。
声音はとても弱弱しい。
一言一言が、ロザリーの生命力を零しながら紡がれているようだった。
あれほどまでに聴きたかった声なのに。
耳にするのが、辛かった。
「喋っては駄目だッ! 喋っては――」
命が危うい。
そう続けようとして、ピサロは唇を噛んだ。
言えなかった。
言ってしまったら、避けられぬ現実になりそうな気がしたから。
ピサロは項垂れる。
項垂れ震え、ベホマの光をロザリーに与え続ける。
そんなピサロの頬に、細く柔らかな手のひらが添えられる。
優しい触感に、顔を上げる。
ロザリーは変わらず、微笑んでいた。
「そんなお顔を、しないでくださいませ……。ピサロ様が辛く悲しく苦しいと、ロザリーも、笑えなくなってしまいます……」
華奢な身体を、強く強く抱きしめたい衝動が湧きあがる。
そうすれば、自分の顔をロザリーに見せずに済みそうだったから。
だがピサロは、息を呑み込んでその衝動を制する。
そんなことをしてしまっては、ロザリーの身が折れてしまいそうだった。
ロザリーの手が、ピサロを撫でる。
子供をあやすように、慰めるように、優しく優しく、撫でる。
それが切なくて、胸がぐっと締め付けられてしまう。
「ロザリー……ロザリー……ッ!」
溢れそうになる涙を堪える。
泣き叫びそうになる喉を留める。
悲痛なその様子は、幾千幾万もの魔物たちを従えあまねく人間に恐怖を与える魔族の王――
デスピサロのものではない。
愛しい人を必死で救おうとする、たった一人の、ピサロという男だった。
「はい、ピサロ様。ロザリーは、ここに、おりますわ……」
だから大丈夫だと、言外に告げるように。
ロザリーは、ピサロを撫で続ける。
不意に。
ピサロの手から、癒しの光が消失する。
魔王といえど、魔力は決して無尽蔵ではない。
さまざまな強敵とピサロは戦い続けてきた。
回復魔法で疲労をごまかし続け、ロザリーを探し回った。
激情に流され惜しみなく魔力を解放した。
死に瀕するロザリーを救うべく、魔力を注ぎ込んだ。
ほぼ丸一日、絶え間なく魔法を使い続けてきたのだ。
魔法の源となる力が尽きるのは、自明の理だった。
ピサロを撫でる手が、徐々に弱まっていく。
美しい宝石のような瞳が、瞼の裏に隠れていく。
「私の大切な、ピサロ様……」
それでもロザリーは、微笑んでいた。
嬉しそうに、幸せそうに。
そして少しだけ、本当に少しだけ、哀しそうに。
「どうか、どうか――……」
願いを口にすべく、唇を動かす。
それが形になる前に。
ピサロの頬から、ロザリーの手が、離れる。
そして、声の代わりに。
再び閉ざされてしまった瞳から、雫が一滴、流れ落ちる。
「……あ、あぁぁぁあぁああぁぁぁぁぁああぁああ――ッ!!」
もう、限界だった。
ピサロの口から絶叫が迸り双眸からは涙が溢れ出る。
耐え切れず、抱きしめた。
そんなことをしても、もはやロザリーはどんな反応も返してはくれなくて、喪失感を深めるだけにしかならなかった。
その、絶望でカタチ作られた荒々しい嘆きを。
たった一つのルビーだけが、聴いていた。
【ロザリー@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち 死亡】
【残り22人】
【C-7中心部 一日目 夜中】
【ピサロ@ドラゴンクエストIV 】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(極大)、MP0、人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感
[装備]:ヨシユキ@LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WILD ARMS 2nd IGNITION
[道具]:基本支給品一式、データタブレット@WILD ARMS 2nd IGNITION
[思考]
基本:優勝し、魔王オディオと接触する。
1:茫然自失
[備考]:
※参戦時期は5章最終決戦直後
※以下の物がC-7中心部に落ちています。
クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2
双眼鏡@現実、基本支給品一式
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最終更新:2010年08月16日 09:22