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リリィ編 > 10



闇を切り裂く銀の月の光が、ビルからビルへと飛び移っていく人影を映すのを目撃し、軽く舌打ちする。
「あ~~~!!!ホーロー行っちゃったですぅ!行っちゃったですよぉ、シルバーレイン!」
結局、寝間着に上着を羽織っただけのリリィが、指を指しながら騒いでいる。雪のように白い髪の上に、三角の帽子が揺れていた。
「……うるさい。言わなくても、わかってる」
すぐに追跡を開始するが、ドグマの中でも最速の足を持つ改造人間は面倒だ。
「『ヘルメス=ギア』オープン」
自身の能力を発動させる。
量子化された光が脚を包み、翼の装飾が施された膝下まである銀の靴が展開された。
「あいわらずの魔法少女ですねぇ~って、きゃあ!」
うるさいリリィの腰を掴み、跳躍する。
戦闘者として鍛えられた脚に、空気を蹴る靴が加わってようやく互角の速さとなる。
まあ、互角以上にならないのが、私の能力の欠点ではあるのだが。
「あ!帽子落ちました、帽子!止まって下さい!」
「……放っておけ」
少し焦りながら答える。
ビルの向こうに見え隠れするホーローは、少し気を抜けば見失ってしまいそうだ。
夜風に髪を靡かせながら追いかけていく。
「う~、頭が寒いですぅ。なんでホーローなんかを追い掛ける必要あるんですかぁ~?」
いわゆるお姫様だっこされた形となったリリィが、私を恨めしそうに見つめてくる。
「……私だって、あんなやつの護衛などしたくはない。犯罪集団に加担している男など

「彼を死なせたら許さないから」

はっと、腕の中のリリィを見つめる。
きょとんと疑問符を浮かべた顔をしたリリィが見つめ返してきた。
すぐに視線をホーローに戻す。少し離されてしまっていた。
「……言われなくても分かってるよ、ツバキ……」
誰に言うでもなく、白い吐息と共に呟いた。



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最終更新:2011年02月19日 21:55
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