「何者だ」
服の下に冷や汗をかきながら、俺は問う。
何か危険だ。まるで
シルスクや
ラツィームと対峙した時のような。
「俺ハ、“機関・第二十八席次・
ジュセル”」
「……よりによって番号付きかよ」
俺は瞬時に撤退を選択した。番号付き。つまり席次がある者は機関に属する腕利きの者達。
クロスに代表されるような機関の精鋭たちだった。
俺が顔を動かさず目だけで扉の位置を再確認していると、ジュセルが言葉を紡ぐ。
「何ヲしに機関ニ進入しタ?コの隕石ノ欠片が目的カ?」
隕石の欠片?ジュセルの視線を追うと、彼が立ち上がった手術台の隣に、黒いビー玉のような物があった。
正八面体に切り取られた黒い宝石の輝きに、俺は視線を奪われた。
「……とコろデ、オ前。“能力を否定スる能力”を持ッテいるソウだな」
男の言葉で意識を取り戻す。
「何故それを」
情報が漏れている。……いや、仕方ないか。
バフ課と機関は協力関係だったな。
「そノ能力で……コノ俺と、遊んデミルか?」
瞬きをした瞬間、奴は俺の目の前に居た。
「……!!!!!!」
“比翼連理”!
左右に構えた短剣の電力を最大限に発生。双剣から発生し、融合した雷の流れがジュセルの首を襲う!
電流の鞭をジュセルは後退することで回避。さらに追撃するも、包帯男の残像を叩くだけ。
「っ、速い!」
「機関でハこノ位、当たり前ダ」
俺の雷撃が空しく緑色の機械を破壊したときには、ジュセルは壁、そして天井を蹴っていた。
強烈な跳び蹴りを胸に喰らい肋骨が歪む。衝撃で右の短剣を手放し、電流が消滅する。
「がっ」
呼吸が出来ず、がむしゃらに振った左手の短剣は宙を切った。
「……弱イな」
俺の動きを冷静に観察していたジュセルは回し蹴りを胸に放つ。
俺の身体が浮かび上がる程の鋭く重い一撃。
受身を取るも、胸郭が軋んで息が出来ない。這いつくばったままの姿で無様に包帯男を睨み付ける。
「……こレが“ドグマ”?お前ノ他の仲間モ程度が知れルナ」
「……ざけんな、てめぇ」
“能力を否定する能力”!
青い霧が俺の周囲から広がり、研究室全体まで広がる。
これでジュセルがどんな能力を持っていようが、この能力の効果範囲内で刺せば死ぬ。
全身を貫く痛みや、仲間を侮辱された怒りで脳髄が沸騰していた。
自分自身で、この精神状態はおかしいと感じながらも機能を発動させた。
「“固有磁場”発動……死ね」
赤い血が跳ねた。
包帯男の厚い胸板を、一本の黒い短剣が貫かれていた。
研究室の中央で黒い宝玉が鈍く輝いた。
登場キャラクター
最終更新:2011年01月02日 20:52