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リリィ編 > 8


金属の弾く音。這い蹲った姿勢の俺の目の前に、必殺の斧を受け止めている黒い短剣が浮かんでいた。
「わりぃわりぃ。やっぱ殺すの無しだわ」
部屋の扉に寄りかかっていたのは、ドレッド頭のチャラそうな男。腕を組んで、面白そうな様子で俺を見ていた。
醸し出す異様な雰囲気が、ジュセルイザナミとは何かが違う。
「そ、うか。お前が……」
「勝手に喋ンなよ。ガキ」
頬に感じる風。一瞬で俺の傍らにエデンが立っていた。驚く間もなく頭を黒いブーツで踏みつけられる。
「ぐ……」
「なっっつかしいなぁ。レギオンシステムのプロトタイプじゃん。とっくに廃棄されたと思ってたのによぉ」
レギオンシステムと言う言葉は聞いたことがない。だが、プロトタイプと言うのは俺の躯の事か。
「エデン……何を知っている?」
踏みつけられた姿勢で睨み付けるも、エデンは俺を見下し白い歯を剥き出しにして嗤う。
「てめぇのちっせぇ頭で考えられないような事……全てだ」
頭を蹴飛ばされる。衝撃で壁に体が叩きつけられ、口の中を切る。出血と激痛で、いまにも意識を失ってしまいそうだ。
「おーい。参の目、入ってこい」
エデンの声が遠くの山から聞こえたように響く。目を開けるも、朱色の和服の少女が入ってきたことしか認識できない。
「参の目。こいつの心覗け」
何を、言っているのか聞こえづらい。
和服女は、赤い髪をしていて、赤い唇と、赤い眼が印象的だった。
その額が割れ、人にはありえない三つ目の紅の眼が俺を覗き込んでいた。
「<agr>検索終了。過去に記憶を弄られた形跡あり。過去三年分のデータを参照可能です</agr>」
「ドグマのアジトは何処だ?」
「なっ……!」
「<agd>座標、X:8291961、Y:0260340、Z:00923。そこがドグマの本拠地です</agd>」
まさか、心を読まれたのか!?
「ま、待て!」
体中が軋みをあげ、痛みで意識を失いそうだが起き上がり、エデンを呼び止める。
「……ごちゃごちゃウッセーぞ、クソガキ。てめぇ……悪党名乗ってんならこんな事ぐらい覚悟しといただろうが」
エデンが右腕を俺に向ける。複数の黒い短剣が宙を飛び、俺の腕、肩、脚を壁に縫いつける。
まさかこれは――
「固有……磁場……?エ、デン……なんでお前が……」
「おとなしく寝てろや、ホーロー。てめぇはカケラの実験道具にしてやるよ」
背を向けて歩き出すエデン。その後に続くジュセルとイザナミ。和服の女。
「ま……て……」
常人では既に死んでいる負傷を、俺の躯は何とか持ちこたえていた。だが、流石に限界が来ていた。部
エデンが居なくなった部屋に白衣の研究員達が恐る恐る入ってくる。
意識が完全に暗くなる前に、俺は第三の時計のスイッチを入れた。


「ドグマは皆殺しだ」


エデンが嗤った。

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最終更新:2011年01月09日 17:05
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