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東方香霖堂 ~白い仮面と黒い『矢』~

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shinatuki

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外の世界とは隔絶した世界、幻想郷。
今日も今日とて鴉天狗はネタを探して幻想郷を飛び回るそんな日々。
魔法の森の奥深く、普通の店では取り扱わないような品物を扱っているお店がある。
香霖堂と呼ばれるその場所で店主の森近 霖之助は悩んでいた。

「ふむ……。」

目の前には黒い石と白い石でできた仮面があった。

彼は『未知の道具の名称と用途がわかる程度の能力』と言う道具屋向きの能力を持っている。

その二つの道具は彼の見立てによると

黒い石
名前:『矢』
用途:『能力を与える程度の能力』

白い石でできた仮面
名前:『石仮面』
用途:『種を超越する程度の能力』

と言うことらしい。

「これは興味深いな。」
霖之助はそう言って、その二つを手に取る。
霖之助はまず『種を突破する程度の能力』について考えてみる。
この幻想郷には様々な種族が住んでいる。
人間、妖怪、妖精、吸血鬼、宇宙人、鬼や神様までいる。
それらをこの仮面は変える能力を持っているのだろうか?

だとすればこのアイテムはとんでもないアイテムと言うことになる。
人間を妖怪に変えたり、また吸血鬼が人間になると言うのならばそれは、幻想郷に混乱を招くだけに過ぎない。

「非売品だな。」

そう言って、その仮面を倉庫に持っていく。海岸まで持っていってハンマーで壊すなんてまねは道具屋の霖之助にはできない相談だ。
もっとも幻想郷には海岸は無いが。

もうひとつの『能力を与える程度の能力』についても考えてみる。

こちらに関しては霖之助はそれほど深刻には考えていない。

幻想郷には様々な能力を持った人物がいるからだ。

例えば空を飛ぶ巫女
例えば普通の魔法使い
例えば時間を操るメイド
例えば境界を操る妖怪

そういった物を与えると言うだけの能力だろう。使い方に関して言えばまあ、おいおい考えていくつもりだ。
こちらの方はそれほど危ない道具じゃないな。
そう考えて僕はその『矢』を店頭に並べようと棚の方へと向かった。

「……………」

置こうとしたした時に、何も無い空中に空間が……否隙間が開く。
無数の目がこちらを見つめる隙間より現れるのは一人の少女。

「あら、『それ』売るつもりなのかしら?」

何もない空間から声がした
「………???」

ぼくは目をぱちくりさせた。売ってはいけない代物だったのだろうか?

「目的だけではわからないんでしょうけど……使うと死ぬときがあるのよ。その道具。」

そう言って彼女はその『矢』を手に取る。彼女は無数の目の空間からこちら側に姿を出す。

「売ってくれないかしら。これ」

霖之助は少し考える。この『矢』を彼女に売るべきか、それともここにおいて置くべきかと考えて彼女に売ることにした。
自分は道具屋であり、彼女がそれを欲しがってるのならば売るしかないだろう。
「では、御代はここに。それと『石仮面』はレミリアにでも見せてみてはいかがかしら。」
そう言って彼女は空間の隙間からポリタンクを取り出す。これで冬が越せるな。と判断する

彼女は入ってきたときと同様に空間の隙間へと消えていった。
「ふう、やれやれ。」
霖之助はため息をひとつつくと店番へと戻る。

彼はとめどなく考える。境界を操る力を持つすきま妖怪。彼女は一人一種族という珍しい妖怪だ。

すきま妖怪は境界を操る。彼女は現実と幻想の境界を操ってこの幻想郷を維持している。
彼女の力はそれだけにとどまらない。隙間妖怪の操る境界はそれだけにとどまらない。

虚実、天地の境界をも操り、妖怪の賢者と呼ばれる彼女は幻想郷でも強い妖怪だ。

「………………待てよ。」

霖之助はそこで自分の考えに疑問を抱く。

『すきま妖怪は境界を操る。』

この考えが前提と言うのが実は間違ってるのではないだろうか?

『境界を操る程度の能力を得たからすきま妖怪になった』

こちらが正しいのではないだろうか?
一見ばかばかしい理論にも思えるかもしれないが、矛盾はしていない。
そうなると、彼女が一種一妖怪という理由も見えてくる。

『境界を操る程度の能力を持ったのが彼女だけだった』

だとすれば、あの『矢』のように人に能力を与える存在は無数に存在するのだろうか?

あるに決まっている。
神託を受けた人物が様々な奇跡を起こせるようになったようになるという話は世界中のどこにでも存在する。
もし、それを可能とする道具があるのなら、それは『神器』と同じレベルの力を秘めていると言う事になる。
彼女が『矢』を危険視するのもわからないではない。
『結界を破壊する程度の能力』なんてものが生まれたのならこの幻想郷は消えてしまうだろう。

「ふう…………。」

『能力を与える程度の能力』についてさらに詳しく考えてみる。

『人には人の能力があり、妖怪には妖怪の能力がある。』

と言う考え方があるが、この考え方を逆にしてみる。

『人の能力があるから人であり、妖怪の能力があるから妖怪である。』

能力がその存在を形作る。

時間を操るゆえに完全で瀟洒なメイドになれるように。境界を操るゆえにすきま妖怪と呼ばれるように。

能力ゆえにその姿を形作る。

与えられた能力は存在を変える。自分が『道具の名前と用途がわかる程度の能力』を持っていなかったらこの店は開いていなかっただろう。
能力とはそれほどまでに運命を左右させると考えられる。

ならば、何故彼女は『境界を操る程度の能力』を持ったのだろうか?

この『矢』のように何かに能力を与えられたのか。それとも生まれた時から持っているか。
あるいは、何か目的があって、その能力を手に入れたのか。

本当の答えは彼女しか知らない。

僕は戸を開けて空を見上げる。
彼女はこの幻想郷の管理をしている。
『境界を操る程度の能力』を持っているからそれをしているのか。
あるいはそれがしたいから『境界を操る程度の能力』を持ったのか。

彼女については何もわからない。

もしかすると、彼女は『ちょっと境界を操れて寿命の長い只の人間』なのかもしれない。

そこまで考えて苦笑する。何を馬鹿な事を考えてるんだ。発想が飛躍しすぎだ。
霖之助は店に戻って調べていない道具の検分を開始する。


ここにある無数の道具。これ等も又、人に能力を与えるものだ。
だがその能力は決められている。

「能力を与える程度の能力」と言うのはある意味無限の道具とほぼ同等の価値を持っていると言って良い。
では、あの石は何故できたのだろうか? 誰かが作ったのか。それとも偶然できたのを誰かが使い始めたのか。

彼女に渡した『矢』の正体について考えながら、他の道具を見て回る。

あるいは、あの『矢』が彼女に『境界を操る程度の能力』を与えたのかもしれない。

ならば、『境界を操る程度の能力』を持つ前の彼女は一体何者か。

境界を操る力を持っていない彼女は『すきま妖怪』と呼ばれることはない。

『境界を操る程度の能力』を持った彼女は恐ろしく、倫理観に欠ける。

『境界を操る程度の能力』を持っていない彼女を想像した瞬間、僕はぞっとした。

金色の髪の只の少女。何も力がなく、人となんら変わりのないお話が好きな少女。

これは紫ではないという否定する意見と、力がなければこうも変わるはずだという肯定する意見。
そのどちらもが説得力を持っている。

彼女はこう言っていた。『矢』を使うと死ぬときがあると。
『ある種の事柄は死ぬことよりも恐ろしい。』

何らかの本で読んだことがある。自分が自分で無くなる事。自分であるのに不必要な能力を付け加えられた存在は消えるしかない。
つまり死ぬわけだ。

よくよく考えてみれば、あの『矢』がどういう能力を与えるのかよくわからなかった。
『矢』が選ぶのか、『使用者』に選ばせるのか、それとも『運命』なのか。

それを確認する術はもうここにはない。
ゆえにとめどなく思考は流れていく。僕はその思考の流れに飲まれながら無意識の渦へと落ちていった。


               東方香霖堂 ~白い仮面と黒い『矢』~ (完)

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