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ディスクブレイカー☆フラン第三話

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匿名ユーザー

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 ディスクブレイカー☆フラン 『薬を貰いに行こう』
「行ってきまーす!」
 レンガの壁を勢いよく粉砕して、フランは夕焼けの空へ飛び出した。
 空を飛ぶ彼女の手には藤の籠。
 目的場所は、永遠亭。
 何故永遠亭なのか? 答えは簡単。 パチュリーと小悪魔が患っている(?)筋肉痛の薬を貰いにいくためだ。
 藤の籠の中には、羊皮紙が一枚。
 これを永琳に渡せばいいと彼女は聞いている。
「まずは、妹紅さんか育郎さんを探すんだっけ」
 フランは人里の方へと頭を向ける。
 そこには竹林の案内人の藤原妹紅がいるからだ。
 さらに、この時間帯なら永遠亭から薬を持ってきている橋沢育郎、もしくは鈴仙・U・イナバが来ているかもしれない。
 しばらく風を切って飛ぶと、人里の明かりが見えてきた。
 踏み固められた道に降り立ち、寺子屋の方へと歩き出す。
 寺子屋には妹紅がよくいるからだ。
 歩いて寺子屋まで到着すると、そこには背の高い青年が、大きなつづらを背負って立っていた。
 橋澤育郎だ。
「育郎さーん! ちょっと永遠亭まで用があるんですけどー!」
 寺子屋の校庭から、フランは育郎の名を呼んだ。
 彼はその呼びかけに気づき、振り返ると、
「ちょっと待っててくださーい!」
 大きな声でフランに返事をする。
 その返事を聞いたフランは、今育郎が取り込み中だと思い、座って待つことにした。
 しばらく待つと、つづらを背負った育郎が走ってきた。
「やあ、今日はどうしたんだい?」
「パチュリーと小悪魔が筋肉痛になったから永遠亭に行け、ってお姉さまから頼まれた」
「パチュリーさんが筋肉痛? 喘息じゃなくて?」
 育郎は、驚いた。
 あのめったに運動をしない紫もやしが筋肉痛に苦しんでいるという事実に。
「そうなのよ。昨日ちょっとした騒動があって、パチュリーがなんか一子相伝の暗殺拳がどうとか言って小悪魔と取っ組み合ってたの」
「……あまり想像ができない光景だね」
「でも実際にあったからしょうがない」
「とりあえず、永遠亭に向かおうか」
「うん」
 頷いて、フランは育郎のつづらに座る。


「……危ないよ?」
「大丈夫、大丈夫」
 大丈夫じゃないんだけどなぁ……と育郎は呟いて、歩き出した。
 バイクの方に向かって。
「え? あれ? 竹林はそっちの方じゃ……?」
 フランは困惑して、育郎の進む方向とは逆の方向を指差す。
「僕は空を飛べないからね」
 背負っているつづらを荷台に置き、フランをひょいと持ち上げて地面に降ろす。
 荷ヒモでつづらを固定しバイクに跨る。
「えっと……それ、何?」
 フランは唖然とした表情で、バイクを指差した。
「バイクだよ。魔法の森に薬を売りに行った時、近くの古道具屋で見つけたんだ」
「へえ、それって凄いの?」
「結構な速さが出るね。さ、後ろに乗って」
 言われるままに、フランは育郎の後ろに座った。
 つづらと育郎に挟まれるという何とも言えないポジションである。
「しっかり捕まっていてね。落ちたりしたら大変だ」
 育郎のバイクが、咆哮を上げる。
 ブルブルとその巨躯を震わせ、走り出す瞬間を今か今かと待ちはじめる。
 育郎がそのアクセルレバーを捻ると、バイクは一際大きな唸りを上げて走り出した。
 方向転換をし、まっすぐに竹林方面へと向かって行く。
 人里の通りを抜け、田畑が並ぶ道を駆け、野原を走る。
 一面の草原の向こうに、竹林が見えてきた。
 これこそが永遠亭への入り口となる『迷いの竹林』。
 異常なスピードで成長する竹が作り出した天然の迷宮。
 刻一刻と変化を続ける竹林の中で迷わずにいられる奴はごくわずか。
 しかし育郎は知っている。
 永遠亭の『におい』を。
 彼は永遠亭の『におい』を嗅ぎ取り、その位置を掴み取ることが出来る。
 だから、彼は鈴仙や妹紅同様に竹林でも迷わずにすむのだ。
 竹林に入ると、すぐに育郎は永遠亭の『におい』を吸い込んだ。
「こっちだな」 
 ハンドルを切り、そこらじゅうに生える竹を避けてバイクは疾走する。
 やがて、永遠亭の門が見えてきた。

  永遠亭の門をくぐると、強烈な熱気が育郎とフランを出迎えた。
 二人は思わず目を見開き、熱気の出元を注視する。
「輝夜アァァーッ! アンタ今度はアタシの作っていたおはぎ全部食べたでしょォォーッ!」
 火柱を上げて怒り狂う妹紅と、
「…い、いや、私は違うわよ。おはぎって、何のことなのよ」
 珍しく慌てている輝夜。
 そして……
「さぁーッ! 張った張った! 第50万7584回目の姫様と妹紅の対決! 一口人参一本だよーッ!」
 賭け事を始めるてゐとその配下の妖怪兎たち。
 その様を見て、二人は唖然とした。
「……とりあえず、二人は放っておいて行こうか」
「そだね。とばっちりは嫌だよ」
 とばっちりを受ける前に、そそくさと永遠亭の中に入ることにした二人は、その場をかけて行った。


  永遠亭――永琳の研究室
 窓のない、密閉された部屋の扉が開いた。
 扉を開けたのは部屋の主、八意永琳。
「さて、この前捕まえたネズミは元気かしら?」
 ヒマワリの種が入ったビーカーを片手に、机の上にあるボールのような形をした籠を見る。
 永琳の顔が、青ざめた。
 床にビーカーが落ちて、ヒマワリの種が散らばった。
 いない。籠の中でおとなしくしているはずのネズミの姿がない。
 籠を持ち上げ、くるくると手の上で回す。
 すると、籠の一部が破れているのを彼女は見つけた。
「フェ……フェムトファイバーで作った籠が……破られている……」
 つまりは、逃げられた。
「いけないわ……あのネズミの『能力』を甘く見ていたわ……」
 永琳は頭を抱えた。
 床に落ちた籠の一部が、『溶けて破れていた』。
「っていうか、あのフェムトファイバー失敗作だったのかしら。やっぱり自作じゃなくて月から取り寄せた方が良かったかしら……」
 頭を抱え続けていると、どたどたと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「師匠! 何かありましたか!」
 足音の正体は、鈴仙だった。
「ああ~逃げられちゃった」
「逃げられちゃった? 何にですか?」
「ネズミに」
 その言葉を聞いた鈴仙も、青ざめた。
 ついこの前永遠亭の人(?)員総出で捕まえたあのネズミが逃げてしまったのだから。
 育郎のパワーと、スミレと鈴仙の探知能力、永琳とてゐの罠に妖怪兎たちの人海戦術そして輝夜の力を使った距離や時間の操作。
 それらを総動員し、半日かけてやっとのことで捕まえたネズミが、逃げた。
「し、師匠、どこか溶かされてませんか?」
「いや、私が来たときにはすでに籠が溶かされていたわ」
「籠って……ええ!? あのフェムトファイバーでできた籠を溶かしたんですか?」
「そうなのよ。とりあえず今日がネズミ追いに潰れるのは確実ね。
 二人は、ため息をついた。
 そんな二人の背後に、育郎とフランが立っていた。
「あの……永琳さん、どうかしたんですか?」
 育郎の質問に、永琳と鈴仙は口をそろえて、
「「ネズミに逃げられた」」
 と言った。
 育郎の表情が、固まった。
「ね、ネズミって……『あの』?」
「そう、『あの』ネズミ」


頭に手を当てながら、永琳が答えた。
育郎も、頭に手を当てた。
「今表で姫さまと妹紅が喧嘩している上にてゐが賭け事を始めています。どうにか止めて引っ張り出してきます」
フラフラと育郎は歩きだし、その場から立ち去った。
「ねえ、何があったの?」
事情を知らないフランが一人、永琳に質問をした。
「苦労して捕まえたネズミが逃げちゃったのよ。しかもただのネズミじゃないわ。人並みの『知性』を持ち、そして『特別な力』を持つネズミよ」
「それってすごいの?」
永琳の視線が逸れた。
 しばらく黙りこんで、
「……すごい」
 青い顔のまま答えた。
「で、そのすごいネズミはどこにいるの?」
「それがわからないから苦労してるのよ……」
 永琳は、腕を組んでため息をつく。
「こう、何か、ネズミを追い出すためのいい物があると嬉しいんだけどね……」
 二つ目のため息をついて、永琳は部屋から出ていく。
 そうして、部屋には鈴仙とフランだけが取り残された。
 鈴仙は、じっとフランを見つめている。
「どうしたの?」
 不審に思ったフランが、鈴仙の顔を見ると、鈴仙は何かを思い出しそうな表情をしている。
「えっと……どこかで会ったっけ?」
「えっと……この前の月ロケットのパーティーで迷ってた人?」
 フランの答えると、鈴仙はいきなり笑い出した。
 いきなり笑われたので、フランはむくれた。
「なに笑ってるのよ」
「あっははは……いや、あの影がアンタだったなんて……怖がってた私がバカらしい」
「む~。どういうことよ」
「そのままの意味よ」
 笑いながら、鈴仙は部屋を後にした。
「なにがあるのかな? ついて行ってみよっと」
 フランも、筋肉痛の薬のことを忘れ、鈴仙の後を追って行った。

 育郎が庭に駆けつけると、そこにはカラフルに染まった妹紅とアフロになった輝夜が立っていた。
 一体どういう戦いがあったのだろうか。
 その疑問を飲み下し、育郎は輝夜に駆け寄る。
「輝夜さん、緊急事態ですよ」
「な……なによ」
 息を切らしながら、輝夜は育郎を見る。
「例のネズミが逃げました」
 輝夜が、固まった。
「……さ、さーて盆栽の様子はどうかしら?」
 輝夜は振り返って歩こうとするが、
「てめーの相手はこのアタシだ」
 妹紅が道をふさぐ。
「妹紅さん、今緊急事態なんで、ちょっとお引き取り願いたいんですけど……」
「駄目だ。輝夜が泣くまで戦うのをやめない」
 怒り心頭の妹紅を前にして、育郎はため息をついた。
 このままだと自分までとばっちりを受けかねない。
 とりあえずこの二人は満足するまで放置しておくことにして、てゐの方へ向かう。
「てゐ、緊急事態なんだ」
「話はさっき聞かせてもらったわ。でもいやよ」
「……なんで?」
「あんなに罠にかからない奴を相手にしても楽しくない」
 またしても育郎はため息をつく。
 だが、その時彼は思い出した。
 ある古いイギリスの伝記にこう書かれていたことを。
『Think about the opposite when things do not go well.』
 つまり、『物事が上手くいかない時は逆に考えるべし』と。
 育郎は、さっきてゐが言ったことを逆手に取った。
「罠にかからないからいいじゃないですか。いかに罠にかけるかが楽しくなる」
 そう言われたてゐは、しばらく考え込んでから、
「そう言われればそうね。あのネズミめ……せっかくだから新作の罠にはめてやる」
 にやにやと策士の笑いを浮かべた。
 そしてラッパを取り出して、それを思いっきり吹く。
 すると、永遠亭中の妖怪兎たちが集まり、一斉に人の形をとる。
「隊長! 今日はなんですかー?」
 妖怪兎の一人が、手を挙げた。
 てゐは、コホンと咳払いをし、
「今日は、残念な知らせがある。例のネズミが逃げた」
 え~っ、という声が庭に広がった。
「またネズミ捕まえるんですか?」
「あの無駄に頭がいいネズミを? そんな無茶な」
「いやだよ~」
 文句たらしまくりの妖怪兎を、てゐは手を広げて止める。
「まあ待て。あの妖怪兎を捕まえた奴は最高級の高麗人参が永琳から授与されるウサ」
 その言葉に、妖怪兎たちは目を輝かせた。
 ざわめく妖怪兎たち。
 その中の一人が、こう言った。
「ところで、賭けの人参はどうなるんですか?」
 てゐは、黙って逃げ出した。
 恐らく、この混乱に乗じて人参を独り占めするつもりだったのだろう。
「隊長をひっ捕らえろー!」
 妖怪兎の副リーダー格の号令により、彼女たちは一斉にてゐを追いかけ始めた。
 その様を見ながら、育郎はひとり、
「駄目だこりゃ」
 と肩をすくめるのであった。


 一方、フラン、鈴仙、永琳の三人は診療室にいた。
「なるほど。フランドールさんはパチュリーが筋肉痛になったから、その薬を貰って来るためにここまで来たのね」
 フランからここに来た理由を聞いた永琳が、カルテにペンを走らせる。
「普段なら今すぐにでも薬を作れるけど……困ったわ」
 ペンを置き、またしても永琳はため息をついた。
「困ったことって、ネズミ?」
 フランの質問に、永琳はうなづく。
「今どこに隠れているか分からないし……どうにかしてこの広い永遠亭の中からあぶり出さないと……」
 思案にふける永琳の横で、鈴仙が何かを思いついた。
「そうだ、師匠。スミレちゃんに聞いたらどうです? 外から来たあの子なら何かいい策があるかも知れないですよ」
 鈴仙が言い終えると、診療室のドアが開いた。
 ドアを開いて入ってきたのは茶色い髪をポニーテールにした勝気そうな少女。
「家からネズミを追い出す手段、知ってるわよ」
「スミレ! いつの間にこの話を聞いてたの?」
 永琳が、スミレの方を向いた。
「聞いていた……と言うより『見た』の方が正しいわね。資料の整理をしていると、ネズミが逃げだしてそれに困っている永琳さんたちの『像』が見えたの」
 スミレと呼ばれた少女は、診療室のベッドに座る。
「家からネズミを追い出す方法の一つに、超音波があるわ。ネズミは約15キロヘルツから20キロヘルツの音波を嫌うの。それを永遠亭の敷地内にばらまけばいいわ」
 簡単にネズミ撃退法を言ってのけるスミレ。
 しかし、帰ってきたのは永琳の青色吐息だった。
「そんな音を出せるものがあればいいんだけどね……」
 そう言いながら、視線を鈴仙に送る。
「……私がそんな声出せると思ったら大違いですよ」
 鈴仙はジト目で視線を返す。
「音なら、あるよ」
 皆が悩む中、フランだけが、さらりと言ってのけた。
「「「……どこに?」」」
 スミレ、永琳、鈴仙は口をそろえてフランに質問する。
 フランは、ポケットから一枚のDISCを取り出す。
「音を操る手回しオルガンのスタンド、『ストレンジ・リレイション』だッ!」
 得意げな顔で、それを頭に差し込むと、フランの手元に手回しオルガンが現れる。
「「「おお!」」」
 三人は、目を皿にしてフランを見つめた。


「で、どうやってその15キロヘルツっていう音を出すの? ド? レ? ミ?」
 そしてキロヘルツという言葉を知らないフランの発言で揃ってひっくり返った。
「アンタの物でしょ! 自分の持っている道具の力ぐらい知っときなさいよ!」
 起き上がりと共にツッコミを入れたのは、鈴仙。
 流石ボケが多いこの永遠亭で一人ツッコミを続けてきただけのことはあった。
「……それで、その手回しオルガンで15キロヘルツの超音波って、出せるの?」
「出し方知らなーい。でも、これの音でガラス割ることができたから出来るかも」
 鈴仙の質問に、しれっと答えるフラン。
「……ちょっと貸してくれる?」
 そう言って、鈴仙はフランから『ストレンジ・リレイション』を渡してもらう。
「案外重くないのね」
 フランから借りた『ストレンジ・リレイション』の重さに感慨しつつ、鈴仙はハンドルに手をかける。
 古びた外見とは裏腹に、ハンドルは抵抗なく回り始めた。
 すると、『ストレンジ・リレイション』は音楽を奏で始める。
「ああ~結構いい音色じゃないの。こう、体がふにゃ~ん、てなって……って、いかんいかん」
 一瞬放心状態になりかけた鈴仙は、急いでハンドルを止める。
「とりあえず師匠。私とフランドールはこれで何ができるか考えておきます。師匠たちは早く姫様たちを……」
 鈴仙は振り向きつつ永琳とスミレの方を向こうとすると、
「どうしたんですか? 育郎さん」
 そこには育郎がいた。
 育郎の表情は、なんだか疲れ気味に見える。
「輝夜さんとてゐの件です」
 疲れ気味の育郎は、これまた疲れた声で言った。
「輝夜さんと妹紅さんの喧嘩は結局止められず、てゐは配下の兎に追われてどこか行きました」
 育郎の言葉に、場の空気が冷えた。
「姫様はとにかく、てゐがいないとなると人手が足りなくなるわね……」
 ついに永琳は目に手のひらを当て、ベッドに寝転んでしまった。
 外では妹紅の怒号と、何かが燃える音や輝夜の悲鳴が絶えず鳴り響いていた。
 もはやこの場の空気は完全に諦めムード一色になっている。
「とりあえず、ここから例のネズミを追い出すところから始めましょうか」
『ストレンジ・リレイション』を抱えた鈴仙が言うと、皆がうなづいた。
 こうして、なんだか煮え切らないテンションの中でネズミ捕獲作戦が開始されたのであった。
← to be continued

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