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ディスクブレイカー☆フラン第四話

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
 永遠亭は、完全に諦めムードだった。
「で、肝心のネズミをどう追い込むかよね……」
 自分の能力である、『波長を操る程度の能力』を使い、ネズミを探している鈴仙がため息をついた。
「前にネズミを捕まえたときは、どーやったの?」
 手回しオルガンのスタンド『ストレンジ・リレイション』を抱えたフランが、鈴仙の横に並んだ。
「てゐ軍団の人海戦術で永遠亭のネズミが入り込めそうなところの全てにパテを詰めて兵糧攻めにしたのよ」
「へぇ~大変だったでしょ」
「いや、ネズミは10時間何も食べないと死んじゃうから、待つのは割と楽だったわ。そんで、わざと一つだけ穴をあけてそこから出てきたところで、総力戦を仕掛けたわけ」
 鈴仙は、遠くを見るような目で天井を見る。
 しばらく目を閉じて、一か月前を思い出す。
苦労の思い出が次々と浮かんでくる。
 溶けていく自分の服。
 変な薬ひっかぶったせいで何故か自分に襲い掛かってくるてゐ。
 それをにやにやと眺める輝夜。
 育郎のせいで竹林に火がついて、大火事になりかけたり。
「我ながらひどい目にしか遭ってないわね……」
 燃える竹林を思い出したところで、鈴仙は思い出すのをやめてため息をつく。
「で、どうやってネズミを追い込むの?」
 フランが、鈴仙のブレザーを引っ張る。
「それについてだけど、前にやった時と同じ方法を取るわ」
 答えたのは、永琳だった。
 その答えに、輝夜と鈴仙と、スミレと、育郎の表情が苦虫を噛み潰したかのようなものに変わる。
「もしかして……てゐさん抜きでやるんですか?」
 育郎が手を上げて質問した。
 永琳は、笑顔でうなづいた。
「でも、以前パテで埋めたところが残っているから、そこはそのままにしといてパテが剥げていたり、新しい穴とかを埋めましょう」
 そう言って、永琳はビンと金ヘラを人数分取り出した。
 どうやら、これを使って永遠亭中の穴や隙間を埋めろということらしい。
「よーし! がんばろー!」
 フランだけが金ヘラを高く掲げていた。

 少年少女穴埋め中…………

 ネズミが通れそうな穴の全てを埋め終えるころには、空に三日月が輝いていた。
「つかれたぁ……」
 金ヘラを投げ出して、フランは廊下に座り込んだ。
「でも、これでネズミは出られないな」
 パテが入っているビンの蓋をふさぎながら、育郎は壁を見る。
「ネズミのにおいは……都合よくこの辺りだな」
「では、手っ取り早くネズミをあぶり出しちゃいましょう。フラン」
 永琳の言葉に、フランは黙ってうなづいて『ストレンジ・リレイション』を発動させる。
「それではお願いします」
 そしてそれを鈴仙に手渡しする。
「よ~し……」
 鈴仙がハンドルを握りしめ、思いっきり回す。
 しかし、肝心の音は出ない。
 しん、とした静寂が漂う。
 これが、超音波。人の可聴音域を超えた音。
「鈴仙さん、危ない!」
 いきなりスミレが叫んで、鈴仙を突き飛ばす。
「え?」
 鈴仙とスミレは、床に倒れこむ。
 床に何かが突き刺さる音がした。
 すると床はどろどろと溶けてしまう。
「上よ!」
 スミレはすぐに育郎の頭上を指差す。
 全員がその方向を見ると、天井の梁を伝って動くネズミの姿が。
「追いましょう!」
 永琳が弓を取り出して走り始めた。


 一方、夜の竹林に足を踏み入れる者が一人。
「紫の話によると、今夜ここで竹の花が咲くらしいな……」
 スケッチブックを抱えた人影は、風に揺れる竹を見る。
「その話が本当なら……フフフ、いいネタが得られそうだ……」
 彼は薄笑いを浮かべ、夜の竹林へと足を踏み入れた。


「いたッ! あそこだーッ!」
 育郎が、スミレの指差す先に向かって走る。
「待て~ッ!」
 その後ろを、赤い光の剣『レーヴァテイン』を持ったフランが走る。
 そして最後尾には、『ストレンジ・リレイション』のハンドルを回しながら走る鈴仙。
 三人が追いかけるネズミは、廊下の角を曲がる。
 先頭の育郎が角を曲がると、急に床が崩れた。
 いや、正確には床が溶けた。
「しまった!」
 育郎はすぐに抜け出そうとするが、溶けた床はすぐに煮凝りのように固まり、育郎の手足を絡めとる。
 上半身を床から出すといういどまじんのような格好になった育郎の頭の上を、ネズミはあざ笑うかのように踏んでフランの方へ走っていく。
 フランの股を抜けると、走りながらスタンドを出し、照準を鈴仙に合わせる。
「え……私!?」
 ネズミの標的になった鈴仙は、戸惑って足を止める。
 それが命取りとなった。
 ネズミのスタンド弾が、鈴仙の体へと撃ち出される。
 その数七発。
 全てが鈴仙に命中し、鈴仙の服が溶け出す。
「こ、これって……」
 鈴仙の服全てが溶けて、彼女は下着だけになってしまった。
「またかい!」
 困惑の叫びをあげて、鈴仙は胸の部分を隠す。
 彼女はつけていなかった。
「なにがまたなの?」
 鈴仙の叫びを聞いて、フランは振り返る。
「うわ、早着替えのかくし芸?」
「ちがうわよ! 仮にそのかくし芸を持っていてもここでやる意味がないわ」
「そっか。で、ネズミはどこ行ったの?」
「……しまったーッ! 見失っちゃったーッ!」
 鈴仙は頭を抱えて叫んだ。
 幸い、抱えていた『ストレンジ・リレイション』が危うい部分を隠していた。

 一方、煮凝りの床にはまってしまった育郎は、
「しまったな……動くに動けないぞこりゃ」
 両手で煮凝りの床からの脱出を図っていた。
 だが、プールから上がるようには行かず、煮凝りの床が胴や足に絡みついて抜け出せない。
 そのうち彼は脱出することをあきらめて助けが来るのを待つことにした。
――橋沢育郎:再起不能?


「またグダグダになっちゃったわね……」
 着替えを来た鈴仙は、ぐるぐると『ストレンジ・リレイション』を回し続ける。
 廊下でフランと二人きりであった。
「ねーねー、そんなに回していて疲れないの?」
「こう見えて鍛えているから大丈夫よ」
「鍛えているようには見えない細さですな」
 フランは鈴仙の二の腕をぷにぷにと揉む。
「やーらかーい」
「そんなことしてないでスミレちゃんにネズミの場所当てに行ってもらうわよ」
「アイアイサー!」
 二人は元来た道を戻って、スミレの予知能力を頼りにすることにした。
 そうしてスミレの所まで戻ると、彼女は腕を組んで二人を待ち構えていた。
「そろそろ来る頃だと思ったわ。ネズミは今庭に潜んでいるわ」
 スミレは庭の方を指差す。
 庭は妹紅の炎や輝夜の弾幕やらで小さな荒野と成り果てていた。
 これを庭として再生するには、枯山水にしなければならないだろう。
 フランと鈴仙は、『ストレンジ・リレイション』の超音波をまき散らしつつ庭に立つ。
 と、その時二人は地面に沈み込んだ。
「「なっ……!」」
 地面はネズミによって溶かされていた。
 どろどろの地面はすぐにぷるんぷるんに固まる。
 しかし、その程度で動きを止められるほどフランはやわじゃなかった。
「こうなったら! 練習の成果を見せてやるんだから!」
 フランはすぐにゼリー状となった地面を見つめた。
 そこにあるのは地面の『目』。
 フランは右手を開く。
 地面の『目』が引きずり出され、フランの手のひらの上に乗っかる。
「ギュッとして……」
 フランがそれを思いっきり握りしめると、
「どかーん!」
 地面は勢いよく弾け、二人を空中へと送り出す。
 二人は空中で姿勢を立て直すと、空から庭を見る。
「見つけた!」
 鈴仙は、岩陰に隠れているネズミを見つけた。
 すぐに彼女は指先に力を込め、赤い弾丸をネズミに向かって撃ち込む。
 今までフランたちをあざ笑うかのように立ち回っていたネズミもこれにはビビッて飛び上がる。
 そそくさとネズミは永遠亭の軒下に避難しようとするが、その鼻先にフランのレーヴァテインが突き刺さる。
 急遽ネズミは転進、竹林の方へと走り出した。
「よし、竹林ならもう隠れられないわ!」
 鈴仙は意気揚々とネズミを追いかけはじめる。
 フランも、鈴仙の後を追って竹林へと突入した。

 竹が乱立する迷いの竹林は、来る者にまるでその直線が永遠に続くかのように感じさせる。
 その竹を縫うように、鈴仙は飛行している。
 後ろからついてくるのはフラン。
「また見失っちゃったわね……」
 鈴仙は、周りをきょろきょろと見渡す。
 どういう訳か、周りには枯れ竹が乱立している。
 突然、二人目掛けて枯れ竹が倒れ掛かってきた。
「危ない!」
 先に反応したのはフランだった。
 フランの『レーヴァテイン』が、枯れ竹を切り落として鈴仙を守る。
 続けて二本、三本と枯れ竹が倒れ掛かってくる。
 フランは次々とそれを切り払い、ネズミを探す。
 ちょうど15本目を切り払ったところで、鈴仙はフランの肩を叩いた。
「どうしたの?」
「おかしいわ。竹はいつも青色のはず。なのにこの周辺の竹は枯れて茶色になっているわ」
「それがどうしたの?」
「竹はね、一年中青色で、葉を落としたりはしないのよ」
「それはおかしいねぇ」
「何かの病気かしら……」
 鈴仙はいぶかしげに周囲の枯れ竹を見る。
 ふと地上に視線を向けてみると、
「……いた!」
 竹の枯れ葉の山の上で、ネズミがスタンドの砲塔をこちらに向けていた。
 ボン、と火花と硝煙を撒いてスタンド弾が鈴仙へと向かう。
 鈴仙はそれを素早くよけて、ネズミに近寄ろうとすると、あることに気付いた。
「燃えている……」
 枯れ葉の山が燃えている。
 鈴仙はその原因にすぐ気付いた。
「あの弾が出る時に、火花が出て、それを引火させたんだわ……あのネズミとんでもない切れ者ね」
 ブレーキをかけて鈴仙は上空へと戻る。
 上空では、フランが冷や汗を流しながら竹林を見ていた。
「どうしよう、火に囲まれちゃったみたい」
 フランに言われて、鈴仙は周囲を見渡す。
 燃えていた。
 360度全方位が炎に包まれていた。
「これは……流石に危ないかも……」
 鈴仙の髪から、汗がしたたり落ちた。
 炎が、フランと鈴仙を取り囲んだ。
「これはヤバいかも……」
 フランは、額に汗を浮かべながら、炎を見る。
「くっ……追い詰めたつもりが追い詰められてたって訳ね。しかも丁寧なことに枯れてない竹を折って火事対策まで済ましているわ」
「でも、火に囲まれてるのはネズミだって同じでしょう? だったら都合がいいわ」
 フランは、レーヴァテインを大きく振るって、炎をはねのけて着地した。
 そしてネズミの姿を探すが、
「いない……ネズミがいないッ!」
 燃える枯れ竹を振り払うと、地面に一か所だけ色の違う所があった。
 フランはしゃがみこんで、その色の違う場所を触れてみる。
 まるでゼリーに触れたかのような感触だった。
「しまった……あのネズミ、地面を『溶かして』掘り進んで逃げたのね!」
 フランは、穴の周囲を見渡した。
 まだ固まり切っていないからそう遠くへは行ってないはずだ。
「しかし……この炎をすべて消すには……」
 炎が苦手な吸血鬼であるフランは、再び飛び上がった。
「やっぱり派手にどっかーんとするしかないでしょ!」
 そして、炎を直視する。
 炎の中に、揺らめく『目』を見つけたフランは、それを引き寄せる。
「ねぇ、今から何をする気なの?」
 鈴仙が、横で集中するフランを見た。
「この炎をぎゅっとしてどっかーん、ってしたら火が消えるかなーって思って」
 フランの返答に、鈴仙は疑問符を浮かべた。
「それって、庭でやった時と同じこと?」
「そういうこと」
 フランの手には、すでに『炎の目』が乗っかっていた。
 それを握りつぶすと、炎は勢いよく爆発した。
「「うわあぁ~ッ!」」
 こんなことになるとは予想もしていなかった二人は、吹っ飛んでいく。
 一方、地中から這い出てきたネズミも、その爆風で吹っ飛んでいく。
「あぶない、あぶない。まさかこんなことになるとは……」
 爆風のあおりを喰らったフランは、竹に捕まることで事なきを得、鈴仙もまた竹に捕まって地面に叩き付けられることを回避した。
 炎を消すことは、結果として成功した。
 消火の方法の一つとして、爆発を起こして周囲の空間の酸素を瞬時に消費させて消す方法がある。
 知らず知らずの内に、フランはこの方法で火を消したのだ。
「ひどい目に遭ったけど、結果オーライかな?」
 服についた煤を払い、フランは立ち上がる。
「いやいや、この爆発でネズミが死んじゃったらどうするのよ」
 鈴仙も立ち上がって、服についた埃を払う。
「鈴仙さん、ネズミなら大丈夫よ。あれを見て……」
 フランは、目の前を指差した。
 鈴仙が目を凝らしてみると、そこには岩を『溶かして』クッションにして事なきを得たネズミの姿が。
 よく見ると、ネズミは目を回している。
「あのネズミ、目を回しているわよ! 今がチャンスね!」
 そう言って、鈴仙は低空飛行でネズミへと向かった。
 もう即興の落とし穴にかかるなんてヘマは犯さない。
「捕まえたぁ!」
 ついに鈴仙はネズミを右手で掴んだ。
 衝撃でネズミは目を覚ますが、
「私の目を見ろォ!」
 鈴仙と目を合わせてしまい、鈴仙お得意の催眠術にかかってしまう。
「これでおとなしくなったわね……」 
 鈴仙は、左手で汗をぬぐい、一息つくと、
「いてっ!」
 鈴仙の右手にネズミが噛みついた。
 彼女は思わず手を離し、ネズミを開放してしまう。
「いてて……ネズミなのになんて精神力なの! 私の催眠術から逃れるなんて……」
 鈴仙はすぐに走るネズミを追いかけ出した。


「さて、竹の花のスケッチを終えたはいいが……今度は爆発音か。」
 緑のバンダナを巻いた青年――岸部露伴はスケッチブックを畳んで立ち上がった。
 彼の周りには竹の花びらが散っている。
「気になるぞ……人気のない竹林で突然の爆発ッ! 凄くッ! 気になるッ!」
 自身の中に沸き立つ衝動に身をゆだね、岸部露伴は走り出す。
 しばらくすると、小さい生き物がこっちに向かって走ってくるんが見えた。
 その後ろには鈴仙と、フランの二人が走っている。
「ちょっとそこの人! ネズミ捕まえてください!」
 鈴仙に言われて、露伴は自分に走り寄る小さな生き物を凝視する。
 確かに、ネズミだ。
 なぜ目の前の面妖な少女はネズミを追いかけているのか?
 その疑問を解決すべく、露伴は指をネズミへ向けた。
「ならばそのネズミを捕まえてやろう。『ヘブンズ・ドアー』! ネズミを本にしろ!」
 形容のできない音がして、ネズミは転ぶ。
「フフフ……どれどれ、どういう経緯でこのネズミが追いかけられている暴いてやろうじゃないか」
 露伴はにやにや笑いながら、ネズミをつまみ上げた。
「はぁ、はぁ、はぁ……やっと追いついた……ありがとうございます」
 息を切らして、鈴仙は露伴の前で止まる。
「ネズミ捕まったー?」
 フランも露伴の近くで止まる。
「君たちはこのネズミを追いかけていたみたいだが、どうだ? ネズミがなんで逃げたか知りたくないかね?」
 二人の前で、露伴は悪戯の成功した子供みたいな笑みを浮かべる。
 二人は、互いに見合わせて、
「「うん」」
 うなづいた。
 露伴は待ってました、と言わんばかりに、ネズミの肌に手をかける。
 すると、ネズミの本のページのようにめくれて、そこに『オレの名はネズミ。名前はまだない』の文字が現れる。
「これ、なんですか?」
 鈴仙は、目を丸くしてネズミを指差す。
「これはね、ネズミの『記憶』さ。ボクは『生き物の記憶を読み書きする程度の能力』を持っている」
 自信満々に露伴は鈴仙の質問に答え、ネズミのページをめくる。
『気が付いたら大けがして寺みたいなとこに倒れてた。もうあのハンバーグみたいな髪形の人間には遭いたくない』
「ふむふむ……仗助の事か?」
 めくる。
『オレはこのまま死ぬかと思ったが、ネズミと同じ雰囲気をした人間が助けてくれた』
「ネズミと同じ雰囲気をした人間……おいおい、そいつは人間じゃないと思うぞ」
 めくる。
『とにかく、ここがどこか確かめたかったから外へ出た。そしたら竹がたくさんある所で迷ってしまった』
「竹がいっぱいある所……ここか」
 めくる。
『とりあえずタケノコを『ラット』で折りながら食べてたら、空にいるトンビに見つかった。攫われる前にでっかい人間の家に隠れた』
「なるほど。永遠亭の事か」
 めくる
『でっかい人間の家で罠にかかった。オレながらマヌケだ。そこで鉄のオリに入れられたがオレの『ラット』で抜け出した。そしたらものすごい数の兎たちに追っかけられた』
「こいつ一度逃げようとしたのか」
 めくる。
「腹が減って動けなくなった所でまた捕まった。今度はヒモでできたオリに入れられたが、これが凄い。齧っても切れないし、『ラット』でも溶かせなかった。だが何回も『ラット』を撃ち込むと切れたから逃げ出せた』
「そうして今に至る……って訳か」
 露伴は、ネズミのページを閉じる。
 ネズミは露伴の手の中でぐったりとしている。
「あの……このネズミ死んだ訳でじゃないですよね……」
 鈴仙は、ネズミを指差した。
「ああ、気絶しているだけだ……それにしても逃げ出した動機が分からないなぁ」
 ネズミを前にして、露伴は腕を組む。
「ネズミが喋ればいいのにね」
 ネズミをつつきながら、フランがつぶやく。
 露伴の耳が、ピクリと動いた。
「それだ。それだよ! 分からないなら喋らせればいいじゃないか!『ヘブンズ・ドアー』ッ!」
 再び、露伴はネズミを指差した。
 そしてネズミのページにこう書きこむ。
『人間の言葉が喋れる』
 と。
 そして露伴はネズミをつつく。
「おい、ネズミ、起きろ」
「むにゃむにゃ……何ッスか?」
 ネズミの声は、意外と高かった。まるで少女の声。
「……ぎゃー!」
 目を覚まして、ネズミは叫んだ。
 目の前に追手が二人もいたからだ。
「ま、ままままだ追ってくるッスか? 一体なんなんッスかあんた達!?」
 ネズミは、後ずさりする。
「まあまあ、落ち着けよ」
 慌てるネズミに、露伴が声をかけてなだめる。
「まずは何で追われているか確認しようじゃないか」
 露伴の言うとおりに、ネズミは今までを思い出す。
「えーっと、なんかネズミっぽい雰囲気した女の子に助けられて、そのあとどっかほっつき歩いていたら竹林に迷い込んで、それでトンビの気配感じてでっかい家に入ったら捕まって……で、逃げだしたらまた捕まって、こうして逃げ出したら何故か人間の言葉話せるようになって……って、ええ~ッ!」
 今までを思い出して、ネズミは驚いた。
「オレ、人間の言葉が話せてる!」
「……それって驚くこと?」
 驚いてばかりのネズミに、フランが冷静なツッコミを入れる。
「とにかく、なんでオレの事を追いかけてくるッスか? オレに何の恨みがあるっていうんスか?」
 ネズミの質問に、鈴仙とフランは顔を見合わせた。
「そりゃ……逃げ出したから?」
 鈴仙は、さも当たり前のように答える。
「だったら、なんで捕まえたッスか?」
 ネズミの質問に、鈴仙は言葉を詰まらせた。
「それも……そうよね。ただのネズミなら追っ払って終わりよね……」
 腕を組み考えにふける鈴仙。
「師匠に聞いてみる必要があるかも」
 鈴仙は、振り返った。
「あんたは、どうするの? 逃げ出した所で、どこに行くか決めてるの?」
 ネズミに背を向けたまま、鈴仙は質問をする。
「うぐ……そういえば忘れてた……」
 ネズミは少し考え事をした後、鈴仙の肩に飛び乗る。
「まあ、話ができるなら師匠も悪い扱いはしないでしょ」
 そう言って、鈴仙は永遠亭の方へと歩き出した。
「これでやっと解決ね……あ、薬取り行かなきゃ」
 フランも、薬を受け取るために鈴仙へついていく。
「面白そうなことになってきたな……いいネタが掴めそうだ」
 純粋な好奇心に突き動かされ、露伴も二人についていくことにした。


 永遠亭に三人と一匹が到着すると、門の前で輝夜が力尽きていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 そしてその近くで妹紅が両手を上げて雄たけびを上げている。
 鈴仙とネズミとフランはその光景を無視して永遠亭に立ち入る。
「いったい何があったというんだ……?」
 露伴はその様をまじまじと見つめ、鈴仙たちが立ち去るのを見てそそくさとついていった。
「はぁ……やっと抜け出せたよ」
 玄関を開けると、育郎が靴を履いているところだった。
 どうやら、今から鈴仙たちの応援に向かおうとしていたところらしい。
「鈴仙さんにフランさん。ネズミはどうしたんですか?」
 育郎の質問に、鈴仙は自分の肩の上に乗るネズミを見せた。
「よぅ」
 肩の上のネズミは、気さくに声をかける。
「…………」
 育郎は目を丸く見開いて、鈴仙たちを見送った。
「ネズミが喋るなんて、夢じゃないよな……」
 彼は自分の頬を思いっきりつねった。痛かった。
「師匠、例のネズミ連れてきましたよ~」
 鈴仙は扉を開けて、永琳を呼んだ。
 永琳は、待ってましたと言わんばかりに鈴仙に近づく。
「やっと捕まえてくれたのね。助かるわ~」
 そう言って、永琳はネズミを覗き込んだ。
「おい、ナース服。何でオレをあんなせまっ苦しい所に閉じ込めてたんだよ」
 ネズミは、永琳を睨みつける。
「あら、人の言葉を喋れるまでに成長したのね」
 永琳は驚かず、懐から手帳を取り出してメモを取る。
「ネズミの話を聞けよ! な・ん・で! オレを閉じ込めてたんだよッ!」
「そりゃ珍しいからに決まってるでしょ。普通の動物が年若くして力を得るなんて希少なパターンよ」
「おい、そりゃどういう事だよ。一から説明してくれ」
 ネズミは、永琳の話が理解できず、目を白黒させた。
 そう言われた永琳は、コホン、と咳ばらいをした。
「非常に長生きした動物は、時として常識では考えられないような怪しい行動をとるわ」
 その言葉を聞いたネズミは、
「オレそこまで長く生きてねーし」
 と小声でつぶやいた。
「奇妙な行動をとるようになった動物は、尻尾が増えたり、人の言葉をしゃべったりするようになる。それを人間たちは『経立(ふったち)』と呼んでいるわ」
 ネズミのつぶやきを無視して、永琳は続ける。
「いずれ『経立』は人の形を取り、一人前の妖怪になるわ。私は『経立』が妖怪になるまでの経緯を調べてみたくてね。そこに飛び込んできたのがあなたって訳」
「……て言うとあれか? お前さんは好奇心のためにオレを監禁したって訳か?」
「そういう事になるわね」
「あっさりと答えるなァーッ!」
 ネズミは、前足で頭を抱えた。
「と、言う訳であなたが『経立』から立派な妖怪になるまでを観察させてもらえないかしら」
 そんなネズミに向かって、永琳はにっこりと微笑みかける。
「……チーズ。一か月に一回チーズくれて、オレを閉じ込めないなら……ここにいてやらないわけでもない」
 ネズミはぶっきらぼうに答えた。
「うふふ。契約成立ね……あ」
 そこで永琳は、何かを思い出した。
「そういえば名前が必要ね。この永琳が名付け親になってあげる。そうね……」
 永琳は5秒ほど考え込んだ後、人差し指を立てた。
「『チョロ吉』よ。あなたの名前は今からチョロ吉」
「なんじゃそりゃアァァァ!」
 ネズミの魂からの叫びが、永遠亭にこだました。


 フランが薬を持って永遠亭から帰ってくる時には、紅魔館の時計は12時を指していた。
「んーっ! 疲れたぁ……」
 フランは背伸びをして、紅魔館の玄関を開く。
「ただいまー! お薬もってきたよー!」
 フランは藤の籠から薬の入った袋を取り出す。
「お待ちしておりました。妹様」
 一瞬で咲夜が姿を現し、藤の籠をフランから受け取る。
「ああ、待って咲夜。パチュリ―には私が薬を届けたいの」
 フランは、そう言って籠を咲夜から取り返すとフランは階段を駆け下りて行った。
EDテーマ ふぉれすとぴれお『彼女が一番少女なのか?』

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