紅魔館では、日曜の夜には全員が食堂に集って会食をする日となっている。
今週の日曜も、会食が行われて、その食器が片づけられた時だった。
「咲夜、例の物を」
主賓席に座るレミリアが、咲夜に耳打ちをした。
次の瞬間、二人の背後に大きな黒板が出現する。
黒板には、
『リリーホワイト誘導作戦』
の文字が躍っていた。
「お姉様、いったい何が始まるの?」
フランが手を上げて、レミリアに質問した。
レミリアは静かに立ち上がり、
「第三次大戦よ」
黒板を叩いた。
「先日、霧の湖付近の妖精たちからレティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたという情報が手に入ったわ」
パチュリ―が、黒板の前に立った。
「レティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたということは、そろそろ春が来るということ。そしてその春を持ってくるのが、リリーホワイト」
パチュリ―は、黒板にリリーの絵を描く。
「この時期になると、幻想郷の連中はこぞって花見の準備を始めるわ。しかし、リリーホワイトが来ないと花は咲かないから花見は始まらない」
黒板には、つぼみの絵と花の絵。
「そこで幻想郷の連中は、リリーホワイトを自分たちの近くに誘導しようとするわ。みんな一番に花見をやりたいからね。そして、花見をやりたいがために他の連中への妨害が始まるわ」
黒板の絵は、弾幕戦をする少女たちの絵に変化する。
「当然、私たちも一番に花見がやりたいわ。そこで、いかに周囲の妨害を排除しつつリリーホワイトを上手に誘導するかが必要になってくる」
黒板の絵が変化し、弾幕を少女に放つレミリアの絵と紅魔館へと向かうリリーの姿が描かれる。
「今から始まるのは、そのリリーホワイトを誘導し、なおかつ周囲の妨害を排除するための作戦」
パチュリ―が指を鳴らすと、チョークの絵は形を崩し、一つの文字に変化する。
「その名も、リリーホワイト誘導作戦』よ」
その文字を、レミリアが読み上げた。
「まず、この幻想郷でリリーホワイトを狙っている勢力は、私たち紅魔館を含めて5つあるわ」
レミリアが座り、肘をテーブルについて手を組む。
黒板の左半分に、『敵対勢力』の文字が書かれる。
「1つは西行寺幽々子をトップとする白玉楼」
黒板に、白玉楼の文字と幽々子の絵が出現する。
「次に、八坂神奈子と洩矢諏訪子をトップとする妖怪の山」
白玉楼の下に、妖怪の山の文字が出現し、神奈子と諏訪子の絵が書き足される。
「次に、風見幽香」
妖怪の山の下に、風見幽香の文字と絵が描かれる。
「そして最後に、博麗霊夢をトップとする博麗神社」
風見幽香の下に、博麗神社の文字と霊夢の絵が描かれ、リストが完成した。
そのリストを見て、フランは手を挙げる。
「質問! 何で幽香さんは一人なのに『勢力』なの?」
「いい質問ね! 理由は単純ッ! それは彼女がリリーホワイトを狙い、なおかつ『1勢力』に匹敵するほどの強さを持っているからよ!」
フランの質問にレミリアは即答した。
「そんなに強いの? 幽香さん強そうに見えないけど……」
何も知らないフランは、頭に疑問符をを浮かべた。
レミリアは、ふう、と長い溜息をついた。
「彼女は自分から手を出したりしなければ花を愛するお姉さんでしかないわ。でもね、彼女の花畑を荒らしたりしたら、彼女は惜しげもなくそいつをぶっ潰すわ」
レミリアは、フランと目を合わす。
「どれくらい強いかというと……そうね、怪力自慢の鬼と腕相撲をしていい勝負をし、なおかつパチュリ―でも使うのが難しい魔法を呼吸するように使うぐらい強いわ」
レミリアの言葉に、フランは絶句した。
絶句中のフランを置いて、作戦会議は進行する。
「次に、中立と思われる勢力を幾つかリストアップするわ」
宣言したレミリアの横で、パチュリ―が指を鳴らすと、黒板の右半分に、『中立勢力』の文字が書かれた。
「まずは人里ね。人里にはトップはいないわ」
黒板に、人里の文字が浮かび上がる。
「次に、蓬莱山輝夜をトップとする永遠亭」
人里の下に、永遠亭の文字と輝夜の絵が描かれる。
「最後は、幻想郷中の妖精たちかしら」
永遠亭の下に、妖精の文字が書かれる。
「さて、勢力一覧が出来上がったところで、今回の議題を発表するわ。今回の議題は、『中立勢力の取り込み』よ」
レミリアが立ち上がり、黒板を軽く押す。
黒板はどんでん返しのようにひっくり返り、まっさらな黒板が現れる。
「まずは各勢力の特徴から説明するわ。まずは人里」
またもレミリアの横でパチュリ―が指を鳴らす。
チョークがひとりでに動いて黒板に人里、永遠亭、妖精の文字を書く。
「人里には、トップがいないからまとまった思想が無いわ。多分、味方にするとなれば個人レベルでの交渉が必要ね」
人里の横に、個人レベルでの交渉必須の文字が書き足される。
「次に、永遠亭ね。永遠亭は、立地上花見ができないから、交渉次第では味方になってくれるかもしれないけど、他の勢力も永遠亭を誘っている可能性があるわ」
永遠亭の横に、他勢力も交渉している可能性ありの文字が書き足される。
「そして、妖精。誘いやすくて、数も多いけど、話を聞いてくれない子供ばかりだわ」
妖精の横に、要リーダーの文字が書き足される。
「さて、皆はどの勢力を味方につけようと思ってるのかしら? 諸君の意見を聞こう!」
レミリアが宣言すると、咲夜が手を挙げた。
「永遠亭は二重スパイならぬ二重勢力となる疑いがあるので味方につけるには困難だと思われます」
咲夜はチョークを取り出して、永遠亭の文字のところに『二重勢力の疑いあり』の文字を書き足す。
「狙うなら人里です。人里に所属している強力な能力者を味方につけ、少数精鋭で行きましょう」
咲夜は、人里の文字を囲う。
パチュリーの横に立つ蓮見琢磨が、それを鼻で笑った。
「『二重勢力』が怖いなら、それを逆に生かして『三重勢力』にすればいい。相手に間違った情報を流し、なおかつ相手の情報を手に入れるッ!」
琢磨は学生服の袖からチョークを取り出し、『二重勢力』の下に矢印を書き足して『三重勢力』の文字を付け足す。
「いや、そうなれば『四重勢力』の疑いも出てくるわ」
咲夜が目を光らせて反論する。
「だったら『五重勢力』にすればいい」
琢磨も負けじと反論する。
そして咲夜と琢磨の言い争いが始まった。
言い争いをする二人を尻目に、美鈴がチョークを持って妖精の文字を囲う。
「やっぱりここは物量作戦がいいと思います」
それに対してパチュリ―はため息をつく。
「物量作戦には賛成だけど、その軍勢をまとめる指揮官がいないとどうしようもないのよね~」
パチュリ―のつぶやきを聞いた美鈴は、がっくりと肩を落とす。
「ねー、妖精をまとめるんなら、いいアイデアがあるよ」
悩むパチュリ―と美鈴の間に、フランが割って入った。
「「いいアイデア?」」
二人は、フランを覗き込んだ。
「ほら、私人里の寺子屋に通ってるでしょ? そこにいるのよ。妖精のガキ大将が」
フランの言葉に二人は目を丸くした。
「妖精のガキ大将? それって、霧の湖で遊んでいるチルノちゃんの事ですか?」
美鈴の言葉に、フランはうなづく。
美鈴は、唸った。
「確かに、チルノちゃんの周りには妖精がものすごく集まりますけど、肝心の指揮能力はあるんですか?」
美鈴は困った表情を浮かべた。
その言葉を聞いたフランの目が、光った。
「それがあるのよ。体育で騎馬戦やった時、チルノが大将をやってね。その時には私たちは一人も帽子を取られずに、相手全員の帽子を取ったのよ」
得意げに語るフラン。
でも美鈴の表情は変わらない。
「いや、あの氷精はバカだけど、チェスとか将棋はものすごく上手よ」
思い出したかのように、パチュリ―が語り始めた。
「パチュリー、なんでそのこと知ってるの?」
驚いた表情を浮かべて、フランはパチュリ―を見る。
「図書館で騒ぎながらチェスとかやられたら嫌でも気づくわよ」
「あ、そっか」
「それにしてもフランがボロ負けするなんてびっくりしたわよ」
「だって、チルノの次の手が読めないもん」
「う~む、紅魔館一のチェスプレイヤーの目を持ってしても読めないのね。あの氷精のチェスは」
パチュリ―は、チルノに対するフランの評価を聞いて、今度対局してみようかしら、と考えた。
「その案、お嬢様に聞いてみましょうか?」
フランの考えに納得した美鈴が、彼女に耳打ちをした。
「そうね。咲夜と琢磨が争っている今の内ね」
策士の笑みを浮かべ、フランは言い争いを続けている二人を見る。
「少数精鋭ッ!」
「情報戦ッ!」
「「うぎぎぎ……」」
まだ二人は睨み合っていた。
フランは抜き足差し足でレミリアの前に出る。
「どうしたの? フラン」
「味方につける中立勢力、決まったよ」
フランはひそひそ声でレミリアにささやく。
「ほほう、目の前で咲夜と蓮見が争っているのを見るに、フランは妖精たちを味方に付けるつもりね?」
「そのとおりよ。お姉様」
「さして、統率のとれない妖精たちをまとめる方法はあるのかしら?」
「纏める方法はすでに出来上がっているわ。お姉様は妖精をできるだけ集めて頂戴」
フランは策士の笑みを崩さない。
自身たっぷりな妹の様子に、レミリアは笑みを浮かべた。
「よろしい。ならば今回はあなたに任せようじゃないの」
その声を聴いたフランは、小さくガッツポーズを決めた。
「さて、今回の作戦会議はこれにてお開きとするわ。では、みなさんよい夜を」
レミリアが宣言すると、咲夜と琢磨は正気に戻った。
「……し、仕事に戻らなきゃ」
咲夜はそそくさと食堂から立ち去り、
「なんで僕はこんな下らないことに本気出してたんだか……」
琢磨は頭を抱えながら食堂を後にする。
「さて、私も業務に戻りますか」
美鈴も食堂の扉を開き、
「早速作戦を立てなくちゃね」
パチュリ―も本を開きながら食堂から出ていく。
そして、食堂にはフラン一人になった。
今週の日曜も、会食が行われて、その食器が片づけられた時だった。
「咲夜、例の物を」
主賓席に座るレミリアが、咲夜に耳打ちをした。
次の瞬間、二人の背後に大きな黒板が出現する。
黒板には、
『リリーホワイト誘導作戦』
の文字が躍っていた。
「お姉様、いったい何が始まるの?」
フランが手を上げて、レミリアに質問した。
レミリアは静かに立ち上がり、
「第三次大戦よ」
黒板を叩いた。
「先日、霧の湖付近の妖精たちからレティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたという情報が手に入ったわ」
パチュリ―が、黒板の前に立った。
「レティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたということは、そろそろ春が来るということ。そしてその春を持ってくるのが、リリーホワイト」
パチュリ―は、黒板にリリーの絵を描く。
「この時期になると、幻想郷の連中はこぞって花見の準備を始めるわ。しかし、リリーホワイトが来ないと花は咲かないから花見は始まらない」
黒板には、つぼみの絵と花の絵。
「そこで幻想郷の連中は、リリーホワイトを自分たちの近くに誘導しようとするわ。みんな一番に花見をやりたいからね。そして、花見をやりたいがために他の連中への妨害が始まるわ」
黒板の絵は、弾幕戦をする少女たちの絵に変化する。
「当然、私たちも一番に花見がやりたいわ。そこで、いかに周囲の妨害を排除しつつリリーホワイトを上手に誘導するかが必要になってくる」
黒板の絵が変化し、弾幕を少女に放つレミリアの絵と紅魔館へと向かうリリーの姿が描かれる。
「今から始まるのは、そのリリーホワイトを誘導し、なおかつ周囲の妨害を排除するための作戦」
パチュリ―が指を鳴らすと、チョークの絵は形を崩し、一つの文字に変化する。
「その名も、リリーホワイト誘導作戦』よ」
その文字を、レミリアが読み上げた。
「まず、この幻想郷でリリーホワイトを狙っている勢力は、私たち紅魔館を含めて5つあるわ」
レミリアが座り、肘をテーブルについて手を組む。
黒板の左半分に、『敵対勢力』の文字が書かれる。
「1つは西行寺幽々子をトップとする白玉楼」
黒板に、白玉楼の文字と幽々子の絵が出現する。
「次に、八坂神奈子と洩矢諏訪子をトップとする妖怪の山」
白玉楼の下に、妖怪の山の文字が出現し、神奈子と諏訪子の絵が書き足される。
「次に、風見幽香」
妖怪の山の下に、風見幽香の文字と絵が描かれる。
「そして最後に、博麗霊夢をトップとする博麗神社」
風見幽香の下に、博麗神社の文字と霊夢の絵が描かれ、リストが完成した。
そのリストを見て、フランは手を挙げる。
「質問! 何で幽香さんは一人なのに『勢力』なの?」
「いい質問ね! 理由は単純ッ! それは彼女がリリーホワイトを狙い、なおかつ『1勢力』に匹敵するほどの強さを持っているからよ!」
フランの質問にレミリアは即答した。
「そんなに強いの? 幽香さん強そうに見えないけど……」
何も知らないフランは、頭に疑問符をを浮かべた。
レミリアは、ふう、と長い溜息をついた。
「彼女は自分から手を出したりしなければ花を愛するお姉さんでしかないわ。でもね、彼女の花畑を荒らしたりしたら、彼女は惜しげもなくそいつをぶっ潰すわ」
レミリアは、フランと目を合わす。
「どれくらい強いかというと……そうね、怪力自慢の鬼と腕相撲をしていい勝負をし、なおかつパチュリ―でも使うのが難しい魔法を呼吸するように使うぐらい強いわ」
レミリアの言葉に、フランは絶句した。
絶句中のフランを置いて、作戦会議は進行する。
「次に、中立と思われる勢力を幾つかリストアップするわ」
宣言したレミリアの横で、パチュリ―が指を鳴らすと、黒板の右半分に、『中立勢力』の文字が書かれた。
「まずは人里ね。人里にはトップはいないわ」
黒板に、人里の文字が浮かび上がる。
「次に、蓬莱山輝夜をトップとする永遠亭」
人里の下に、永遠亭の文字と輝夜の絵が描かれる。
「最後は、幻想郷中の妖精たちかしら」
永遠亭の下に、妖精の文字が書かれる。
「さて、勢力一覧が出来上がったところで、今回の議題を発表するわ。今回の議題は、『中立勢力の取り込み』よ」
レミリアが立ち上がり、黒板を軽く押す。
黒板はどんでん返しのようにひっくり返り、まっさらな黒板が現れる。
「まずは各勢力の特徴から説明するわ。まずは人里」
またもレミリアの横でパチュリ―が指を鳴らす。
チョークがひとりでに動いて黒板に人里、永遠亭、妖精の文字を書く。
「人里には、トップがいないからまとまった思想が無いわ。多分、味方にするとなれば個人レベルでの交渉が必要ね」
人里の横に、個人レベルでの交渉必須の文字が書き足される。
「次に、永遠亭ね。永遠亭は、立地上花見ができないから、交渉次第では味方になってくれるかもしれないけど、他の勢力も永遠亭を誘っている可能性があるわ」
永遠亭の横に、他勢力も交渉している可能性ありの文字が書き足される。
「そして、妖精。誘いやすくて、数も多いけど、話を聞いてくれない子供ばかりだわ」
妖精の横に、要リーダーの文字が書き足される。
「さて、皆はどの勢力を味方につけようと思ってるのかしら? 諸君の意見を聞こう!」
レミリアが宣言すると、咲夜が手を挙げた。
「永遠亭は二重スパイならぬ二重勢力となる疑いがあるので味方につけるには困難だと思われます」
咲夜はチョークを取り出して、永遠亭の文字のところに『二重勢力の疑いあり』の文字を書き足す。
「狙うなら人里です。人里に所属している強力な能力者を味方につけ、少数精鋭で行きましょう」
咲夜は、人里の文字を囲う。
パチュリーの横に立つ蓮見琢磨が、それを鼻で笑った。
「『二重勢力』が怖いなら、それを逆に生かして『三重勢力』にすればいい。相手に間違った情報を流し、なおかつ相手の情報を手に入れるッ!」
琢磨は学生服の袖からチョークを取り出し、『二重勢力』の下に矢印を書き足して『三重勢力』の文字を付け足す。
「いや、そうなれば『四重勢力』の疑いも出てくるわ」
咲夜が目を光らせて反論する。
「だったら『五重勢力』にすればいい」
琢磨も負けじと反論する。
そして咲夜と琢磨の言い争いが始まった。
言い争いをする二人を尻目に、美鈴がチョークを持って妖精の文字を囲う。
「やっぱりここは物量作戦がいいと思います」
それに対してパチュリ―はため息をつく。
「物量作戦には賛成だけど、その軍勢をまとめる指揮官がいないとどうしようもないのよね~」
パチュリ―のつぶやきを聞いた美鈴は、がっくりと肩を落とす。
「ねー、妖精をまとめるんなら、いいアイデアがあるよ」
悩むパチュリ―と美鈴の間に、フランが割って入った。
「「いいアイデア?」」
二人は、フランを覗き込んだ。
「ほら、私人里の寺子屋に通ってるでしょ? そこにいるのよ。妖精のガキ大将が」
フランの言葉に二人は目を丸くした。
「妖精のガキ大将? それって、霧の湖で遊んでいるチルノちゃんの事ですか?」
美鈴の言葉に、フランはうなづく。
美鈴は、唸った。
「確かに、チルノちゃんの周りには妖精がものすごく集まりますけど、肝心の指揮能力はあるんですか?」
美鈴は困った表情を浮かべた。
その言葉を聞いたフランの目が、光った。
「それがあるのよ。体育で騎馬戦やった時、チルノが大将をやってね。その時には私たちは一人も帽子を取られずに、相手全員の帽子を取ったのよ」
得意げに語るフラン。
でも美鈴の表情は変わらない。
「いや、あの氷精はバカだけど、チェスとか将棋はものすごく上手よ」
思い出したかのように、パチュリ―が語り始めた。
「パチュリー、なんでそのこと知ってるの?」
驚いた表情を浮かべて、フランはパチュリ―を見る。
「図書館で騒ぎながらチェスとかやられたら嫌でも気づくわよ」
「あ、そっか」
「それにしてもフランがボロ負けするなんてびっくりしたわよ」
「だって、チルノの次の手が読めないもん」
「う~む、紅魔館一のチェスプレイヤーの目を持ってしても読めないのね。あの氷精のチェスは」
パチュリ―は、チルノに対するフランの評価を聞いて、今度対局してみようかしら、と考えた。
「その案、お嬢様に聞いてみましょうか?」
フランの考えに納得した美鈴が、彼女に耳打ちをした。
「そうね。咲夜と琢磨が争っている今の内ね」
策士の笑みを浮かべ、フランは言い争いを続けている二人を見る。
「少数精鋭ッ!」
「情報戦ッ!」
「「うぎぎぎ……」」
まだ二人は睨み合っていた。
フランは抜き足差し足でレミリアの前に出る。
「どうしたの? フラン」
「味方につける中立勢力、決まったよ」
フランはひそひそ声でレミリアにささやく。
「ほほう、目の前で咲夜と蓮見が争っているのを見るに、フランは妖精たちを味方に付けるつもりね?」
「そのとおりよ。お姉様」
「さして、統率のとれない妖精たちをまとめる方法はあるのかしら?」
「纏める方法はすでに出来上がっているわ。お姉様は妖精をできるだけ集めて頂戴」
フランは策士の笑みを崩さない。
自身たっぷりな妹の様子に、レミリアは笑みを浮かべた。
「よろしい。ならば今回はあなたに任せようじゃないの」
その声を聴いたフランは、小さくガッツポーズを決めた。
「さて、今回の作戦会議はこれにてお開きとするわ。では、みなさんよい夜を」
レミリアが宣言すると、咲夜と琢磨は正気に戻った。
「……し、仕事に戻らなきゃ」
咲夜はそそくさと食堂から立ち去り、
「なんで僕はこんな下らないことに本気出してたんだか……」
琢磨は頭を抱えながら食堂を後にする。
「さて、私も業務に戻りますか」
美鈴も食堂の扉を開き、
「早速作戦を立てなくちゃね」
パチュリ―も本を開きながら食堂から出ていく。
そして、食堂にはフラン一人になった。
「……ディアボロさん、御苦労でした」
誰もいない食堂で、フランはつぶやいた。
「全く……お前もえげつない手段思いつくもんだな」
テーブルクロスが掛けられたテーブルの下から、『ストレンジ・リレイション』を持ったディアボロが出てくる。
「毎年この時期になるとお姉様はリリーホワイトを捕まえようと躍起になるからね」
「あの学生服のはともかく、なぜメイドまで『ストレンジ・リレイション』の術中にはまったんだ?」
ディアボロが立ち上がり、頭から『ストレンジ・リレイション』のDISCを外す。
「この『ストレンジ・リレイション』は、スタンド使いでなくてもある程度の力がある者なら効くみたいなの」
フランはディアボロからDISCを受け取り、頭に押し込む。
「なるほど。それにしてもあの学生服がスタンドを出さずに済んでよかったな」
「どうして?」
「彼のスタンド、『The・Book』は記憶と想起のスタンドだ。『ストレンジ・リレイション』にかかっていない頃の記述を読めば、彼は簡単に術から抜け出せる」
「なるほど。そこには気を付けなきゃね」
「それにしても、一体何が目的なんだ」
ディアボロの顔が、怪訝になる。
「目的は、リリーホワイト」
フランの笑顔が、黒く染まった。
「今年のリリーホワイト争奪戦は、私の勝利で終わるわ。レミリア・スカーレットの勝利ではなく、このフランドール・スカーレットの勝利で!」
フランの黒い笑顔を見て、ディアボロも黒い笑みを浮かべる。
「なるほど……で、必要な物資はあるか?」
「ええ。もちろん。香霖堂で手に入るスタンドDISCだけじゃ足りないわ。このリストに載ってるDISCを持って着て頂戴」
フランは、ディアボロにメモを渡す。
「ほう、『フー・ファイターズ』と『ホルス神』。射撃DISCが多いな」
ディアボロは、メモを見ても笑みを崩さない。
「持って来れるかしら?」
「よし、やってみよう。それにしても、お主もなかなかの惡よのう……」
「お主もよう、ディアボロ……」
「フン、ではさらばだ。悪魔の妹よ。明日また会おう」
ディアボロは、にやけ顔を崩さず、『ペット・ショップ』のDISCを使って姿を消した。
フランはそれを見送った後、食堂の扉を勢いよく開く。
「この『ストレンジ・リレイション』がある限り、全幻想郷のスタンド使いは私の掌の上よ!」
そして食堂には誰もいなくなった。
誰もいない食堂で、フランはつぶやいた。
「全く……お前もえげつない手段思いつくもんだな」
テーブルクロスが掛けられたテーブルの下から、『ストレンジ・リレイション』を持ったディアボロが出てくる。
「毎年この時期になるとお姉様はリリーホワイトを捕まえようと躍起になるからね」
「あの学生服のはともかく、なぜメイドまで『ストレンジ・リレイション』の術中にはまったんだ?」
ディアボロが立ち上がり、頭から『ストレンジ・リレイション』のDISCを外す。
「この『ストレンジ・リレイション』は、スタンド使いでなくてもある程度の力がある者なら効くみたいなの」
フランはディアボロからDISCを受け取り、頭に押し込む。
「なるほど。それにしてもあの学生服がスタンドを出さずに済んでよかったな」
「どうして?」
「彼のスタンド、『The・Book』は記憶と想起のスタンドだ。『ストレンジ・リレイション』にかかっていない頃の記述を読めば、彼は簡単に術から抜け出せる」
「なるほど。そこには気を付けなきゃね」
「それにしても、一体何が目的なんだ」
ディアボロの顔が、怪訝になる。
「目的は、リリーホワイト」
フランの笑顔が、黒く染まった。
「今年のリリーホワイト争奪戦は、私の勝利で終わるわ。レミリア・スカーレットの勝利ではなく、このフランドール・スカーレットの勝利で!」
フランの黒い笑顔を見て、ディアボロも黒い笑みを浮かべる。
「なるほど……で、必要な物資はあるか?」
「ええ。もちろん。香霖堂で手に入るスタンドDISCだけじゃ足りないわ。このリストに載ってるDISCを持って着て頂戴」
フランは、ディアボロにメモを渡す。
「ほう、『フー・ファイターズ』と『ホルス神』。射撃DISCが多いな」
ディアボロは、メモを見ても笑みを崩さない。
「持って来れるかしら?」
「よし、やってみよう。それにしても、お主もなかなかの惡よのう……」
「お主もよう、ディアボロ……」
「フン、ではさらばだ。悪魔の妹よ。明日また会おう」
ディアボロは、にやけ顔を崩さず、『ペット・ショップ』のDISCを使って姿を消した。
フランはそれを見送った後、食堂の扉を勢いよく開く。
「この『ストレンジ・リレイション』がある限り、全幻想郷のスタンド使いは私の掌の上よ!」
そして食堂には誰もいなくなった。
寺子屋での授業が終わると、フランはチルノとナランチャを呼んだ。
「フラン、話ってなんだ?」
机に座るナランチャが口を開く。
「二人を呼んだのは……他でもない。春を一番に手に入れるためよ」
机に肘をつき、手を目の前で組むフラン。
彼女の言葉に、二人は首をかしげた。
「春を一番に手に入れるって……どういうことだよ」
ナランチャは、話がいまいち理解できない。
チルノは少し黙り込んでから……
「ああ! リリーちゃんの事ね!」
納得したかのように手を叩いた。
「リリーちゃんって、誰?」
話がいまいち掴めていないナランチャは、頭上に疑問符を浮かべる。
「えっとねー。春になるとやってくる妖精。この季節になるとみんなリリーちゃんを呼ぼうとするんだ」
「へー。何のために?」
「みんな花見がしたいからよ」
「花見かぁ……でもそれって花が咲いてから行ってもいいんじゃないか?」
「それもそうよね……」
チルノとナランチャが勝手に納得しようとしたところで、フランは机を叩いた。
「甘い。甘い甘い甘い甘すぎるわ。二人とも糖尿に気を付けなさい」
「どういうことだよ、フラン」
机の音に驚いたナランチャは、立ち上がってフランを見る。
「花見をなめないことね……花見……それは強烈な場所取り合戦や弁当の用意、かくし芸の披露諸々が複雑に絡み合って出来上がる芸術ッ!」
フランも立ち上がり、熱弁を始める。
「花見の中でも一番過酷とされる要素……それは場所取りよ」
「場所取り……」
「如何に素晴らしいアングルで花を見て、なおかつ自分たちが騒ぐだけのスペースを確保すること……それが場所取り……時として場所取りは戦争となりえるッ!」
フランの熱弁に、二人は開いた口が塞がらなくなった。
「毎年繰り広げられる戦争に疲れた先人たちは、一つの考えにたどり着いたわ。『場所を取るくらいなら作ればいい』と。先人たちは、庭に桜の木を植えたわ。そうすると、何が始まったわかる?」
フランの質問に、二人は答えることができなかった。
「次に巻き起こったのは、桜をいかに早く咲かせ、花見を楽しむかの戦いよ。ある者は灰を使い、ある者は魔術を使ったわ。しかし、それなんかよりも確実に、なおかつ早く桜を咲かせる存在を先人たちは知っていたわ……それが『リリーホワイト』よ」
フランの演説に、二人は生唾を飲んだ。
「そして始まったのが、『リリーホワイト』争奪戦。春を知らせ、草木に花を咲かす『リリーホワイト』を誘導し、他の妨害を蹴散らす戦い」
フランは再び座り、肘をついて眼前で手を組む。
「今年もそれが始まるわ……力を貸してちょうだい。私と、あなたたち二人を合わせた三人で、天下を取りましょう」
フランは、手を差し出した。
チルノは黙ってその手に自分の手を重ねる。
ナランチャも、口を開かずに手を重ねる。
「みんな、勝つわよッ!」
三人分の咆哮が、校舎に響き渡る。
「……で、気合入れたはいいけど、人数はどうすんだよ。相手はいっぱいいるんだろ?」
団結式を終えたナランチャが、複雑な表情を浮かべた。
「心配ないわ。私たちはお姉様のチームのメンバーとして戦うことになるわ」
フランは、バッグをつかんで教室のドアを開く。
「それって、お前の姉ちゃんの手下になれってこと?」
ナランチャはバッグを持って廊下に出た。
「いいえ、頃合いを見計らってお姉様をぎゃふんと言わせるわ」
フランの言葉に、ナランチャは驚いた。
「あたいそれ知ってる! たしか『反逆』って言葉よね!」
チルノが駆けて二人の隣に並ぶ。
フランが黒い笑みを浮かべた。
「そうね。反逆よ。今は私たちは小さな子ども三人だけだけど、時期が来ればナランチャは無双の戦士に、チルノは100人の軍団を統べる指揮官に、そして私は花見の帝王として君臨するわ」
靴を履きかえた三人は、校庭に出た。
フランは日傘をさす。
「でも、俺たち三人じゃきつくないか?」
ナランチャがバッグを振りながら言う。
「『リリーホワイト』を誘導するのは私たち3人だけよ。他の人たちには……ここで花見の準備でもしてもらおうかしら」
日傘をくるくると回しながら、フランはチルノとナランチャの方を振り向く。
「じゃあ、今からフランの家に行くの?」
宙に浮かぶチルノが、フランの先に出た。
「いや、先に香霖堂に行くわ。トランシーバーを取りに行くわよ」
フランも浮かび上がった。
「アレか! ちょうど三つあったから、秘密の通信に使えるな!」
ナランチャも飛び上がる。
空を飛ぶ術は幻想郷では一般的に普及しているのだ。
「善は急げね」
三人は空を飛んで香霖堂へと向かった。
「フラン、話ってなんだ?」
机に座るナランチャが口を開く。
「二人を呼んだのは……他でもない。春を一番に手に入れるためよ」
机に肘をつき、手を目の前で組むフラン。
彼女の言葉に、二人は首をかしげた。
「春を一番に手に入れるって……どういうことだよ」
ナランチャは、話がいまいち理解できない。
チルノは少し黙り込んでから……
「ああ! リリーちゃんの事ね!」
納得したかのように手を叩いた。
「リリーちゃんって、誰?」
話がいまいち掴めていないナランチャは、頭上に疑問符を浮かべる。
「えっとねー。春になるとやってくる妖精。この季節になるとみんなリリーちゃんを呼ぼうとするんだ」
「へー。何のために?」
「みんな花見がしたいからよ」
「花見かぁ……でもそれって花が咲いてから行ってもいいんじゃないか?」
「それもそうよね……」
チルノとナランチャが勝手に納得しようとしたところで、フランは机を叩いた。
「甘い。甘い甘い甘い甘すぎるわ。二人とも糖尿に気を付けなさい」
「どういうことだよ、フラン」
机の音に驚いたナランチャは、立ち上がってフランを見る。
「花見をなめないことね……花見……それは強烈な場所取り合戦や弁当の用意、かくし芸の披露諸々が複雑に絡み合って出来上がる芸術ッ!」
フランも立ち上がり、熱弁を始める。
「花見の中でも一番過酷とされる要素……それは場所取りよ」
「場所取り……」
「如何に素晴らしいアングルで花を見て、なおかつ自分たちが騒ぐだけのスペースを確保すること……それが場所取り……時として場所取りは戦争となりえるッ!」
フランの熱弁に、二人は開いた口が塞がらなくなった。
「毎年繰り広げられる戦争に疲れた先人たちは、一つの考えにたどり着いたわ。『場所を取るくらいなら作ればいい』と。先人たちは、庭に桜の木を植えたわ。そうすると、何が始まったわかる?」
フランの質問に、二人は答えることができなかった。
「次に巻き起こったのは、桜をいかに早く咲かせ、花見を楽しむかの戦いよ。ある者は灰を使い、ある者は魔術を使ったわ。しかし、それなんかよりも確実に、なおかつ早く桜を咲かせる存在を先人たちは知っていたわ……それが『リリーホワイト』よ」
フランの演説に、二人は生唾を飲んだ。
「そして始まったのが、『リリーホワイト』争奪戦。春を知らせ、草木に花を咲かす『リリーホワイト』を誘導し、他の妨害を蹴散らす戦い」
フランは再び座り、肘をついて眼前で手を組む。
「今年もそれが始まるわ……力を貸してちょうだい。私と、あなたたち二人を合わせた三人で、天下を取りましょう」
フランは、手を差し出した。
チルノは黙ってその手に自分の手を重ねる。
ナランチャも、口を開かずに手を重ねる。
「みんな、勝つわよッ!」
三人分の咆哮が、校舎に響き渡る。
「……で、気合入れたはいいけど、人数はどうすんだよ。相手はいっぱいいるんだろ?」
団結式を終えたナランチャが、複雑な表情を浮かべた。
「心配ないわ。私たちはお姉様のチームのメンバーとして戦うことになるわ」
フランは、バッグをつかんで教室のドアを開く。
「それって、お前の姉ちゃんの手下になれってこと?」
ナランチャはバッグを持って廊下に出た。
「いいえ、頃合いを見計らってお姉様をぎゃふんと言わせるわ」
フランの言葉に、ナランチャは驚いた。
「あたいそれ知ってる! たしか『反逆』って言葉よね!」
チルノが駆けて二人の隣に並ぶ。
フランが黒い笑みを浮かべた。
「そうね。反逆よ。今は私たちは小さな子ども三人だけだけど、時期が来ればナランチャは無双の戦士に、チルノは100人の軍団を統べる指揮官に、そして私は花見の帝王として君臨するわ」
靴を履きかえた三人は、校庭に出た。
フランは日傘をさす。
「でも、俺たち三人じゃきつくないか?」
ナランチャがバッグを振りながら言う。
「『リリーホワイト』を誘導するのは私たち3人だけよ。他の人たちには……ここで花見の準備でもしてもらおうかしら」
日傘をくるくると回しながら、フランはチルノとナランチャの方を振り向く。
「じゃあ、今からフランの家に行くの?」
宙に浮かぶチルノが、フランの先に出た。
「いや、先に香霖堂に行くわ。トランシーバーを取りに行くわよ」
フランも浮かび上がった。
「アレか! ちょうど三つあったから、秘密の通信に使えるな!」
ナランチャも飛び上がる。
空を飛ぶ術は幻想郷では一般的に普及しているのだ。
「善は急げね」
三人は空を飛んで香霖堂へと向かった。
香霖堂。そこは偏屈な店主が半ば趣味で経営している骨董品店である。
そこには幻想郷では手に入らない品があることも珍しくない。
トランシーバーも、その一つである。
「ふむ……これは『ザ・ワールドのDISC』か。用途は『時を止める』……」
その店主、森近霖之助は手に持つ黄金のDISCを頭に押し当てる。
だがそのDISCは霖之助には適応しないらしく、DISCは霖之助の手から飛び出る。
「うーむ……やはりDISCを使うにはDISCに適応していないといけないらしいな……」
霖之助はDISCを拾い上げ、机の上に置く。
一息ついて、キセルでも吸おうかと思った矢先、ドアベルが鳴った。
扉を開けたのは、フラン、ナランチャ、チルノの三人組だった。
「おや、君たちかい。トランシーバーは確かに取っておいたよ」
三人の姿を見るなり、霖之助は引き出しを開けてトランシーバーを三つ取り出す。
フランは小銭を机の上において、トランシーバーを受け取る。
霖之助は、フランの顔を見て何かを思いついた。
「そうだ、君の所のメイドは、時に関係した能力を持っているって話を聞いたことがある。これを持って行ってみてくれ」
霖之助は、机の上にある『ザ・ワールドのDISC』をフランに手渡す。
「彼女なら、これを使いこなせるかもしれないな」
フランは目を丸くして、そのDISCを見た。
フランは、あることを思いついた。
「無論、お代は頂くけどね」
「いいわ。それも頂きましょう」
フランは小銭をポケットから取り出し、机の上に置く。
「それじゃあね。人里で花見があった時は、絶好の場所を取っておくわ」
フランはそれだけを言い残し、ドアを開いて出ていく。
「今度コーラ仕入れたらまたくれよな!」
ナランチャも開かれたドアから飛び立つ。
「ちょっと二人とも待ちなさいよー!」
チルノも慌てて飛び立つ。
「やれやれ……あの子たちは何を始めるんだか……」
霖之助はため息をついて、本を開いた。
そこには幻想郷では手に入らない品があることも珍しくない。
トランシーバーも、その一つである。
「ふむ……これは『ザ・ワールドのDISC』か。用途は『時を止める』……」
その店主、森近霖之助は手に持つ黄金のDISCを頭に押し当てる。
だがそのDISCは霖之助には適応しないらしく、DISCは霖之助の手から飛び出る。
「うーむ……やはりDISCを使うにはDISCに適応していないといけないらしいな……」
霖之助はDISCを拾い上げ、机の上に置く。
一息ついて、キセルでも吸おうかと思った矢先、ドアベルが鳴った。
扉を開けたのは、フラン、ナランチャ、チルノの三人組だった。
「おや、君たちかい。トランシーバーは確かに取っておいたよ」
三人の姿を見るなり、霖之助は引き出しを開けてトランシーバーを三つ取り出す。
フランは小銭を机の上において、トランシーバーを受け取る。
霖之助は、フランの顔を見て何かを思いついた。
「そうだ、君の所のメイドは、時に関係した能力を持っているって話を聞いたことがある。これを持って行ってみてくれ」
霖之助は、机の上にある『ザ・ワールドのDISC』をフランに手渡す。
「彼女なら、これを使いこなせるかもしれないな」
フランは目を丸くして、そのDISCを見た。
フランは、あることを思いついた。
「無論、お代は頂くけどね」
「いいわ。それも頂きましょう」
フランは小銭をポケットから取り出し、机の上に置く。
「それじゃあね。人里で花見があった時は、絶好の場所を取っておくわ」
フランはそれだけを言い残し、ドアを開いて出ていく。
「今度コーラ仕入れたらまたくれよな!」
ナランチャも開かれたドアから飛び立つ。
「ちょっと二人とも待ちなさいよー!」
チルノも慌てて飛び立つ。
「やれやれ……あの子たちは何を始めるんだか……」
霖之助はため息をついて、本を開いた。
深夜12時 紅魔館 庭園
「諸君に集まってもらったのは他でもないッ!」
大勢の妖精たちの前で、レミリアはマイクを手にした。
「花見だッ! 幻想郷の誰よりも早く花見を執り行うッ! そのためには諸君の力が必要なのよッ!」
レミリアの大声に、妖精たちは湧き上がる。
「戦いよッ! 幻想郷中の有力者が春を呼び寄せようとしているわ。その全員を出し抜いて、この紅魔館が春を手に入れて花見を執り行うッ!」
妖精たちのボルテージは、最高潮に達した。
周囲の妖精たちが騒ぐ中、一人だけ冷静な妖精がいた。
「なんで私はこんなところにいるんだろう……」
大妖精であった。
「いや、みんなが行ってるからそれについて行っただけだったっけ……」
大妖精は、ため息をついてここから抜け出そうとした。
「では紹介するわ。諸君らをまとめ上げる指揮官の、チルノよ!」
大妖精が帰ろうと思って振り返ると、レミリアの声が耳に入った。
「……え?」
思わず振り返りなおした。
壇上にチルノとナランチャがいる。
「チルノちゃん! ナランチャくん!」
大妖精は、素っ頓狂な声を上げて飛び上がった。
「おお! 大ちゃんだ!」
壇上のチルノは、飛び上がった大妖精を見つけて指差した。
「チルノちゃん! なにやってんの!?」
大妖精はチルノの元へ飛んでくる。
「何って? ぐんだんちょーよ!」
「軍団長って……ここはいつ軍隊になったの?」
「フランちゃんの姉ちゃんが言ってたでしょ? リリーちゃんを呼びたいけど、みんなが邪魔するからそれを跳ね除けるためにみんなとあたいの力が必要なの!」
無い胸を張るチルノ。
「チルノちゃん、一人で大丈夫なの?」
「しょーじきこんなに集まるとは思わなかった」
チルノは、目の前の妖精たちを見てため息をついた。
100人なんて話ではない。1000人は集まっていた。
「副長が必要ね。よし、大ちゃんを副長に任命するわ!」
あっという間に副長が決まった。
「……ゑ?」
大妖精は、理解できなかった。
「チルノちゃん、それってどういうこと?」
「だから、大ちゃんは副長! あたいと一緒にみんなをまとめるの!」
頭の悪い問答を繰り返す二人を目の前にして、
「なあ、フラン、副長なんて作っていいのか?」
ナランチャはフランの方を振り向いた。
「んー、まさか1000人近く集まるとは思わなかったわ」
フランは腕を組んで、庭にぎっしりと詰まっている妖精たちをみた。
「じゃあ、大ちゃんも仲間にするか?」
「まあ、二人の友達なんだし、いいんじゃない?」
「そうだな! じゃあ大ちゃんは副長で!」
ナランチャも、大ちゃんの肩に手を置いて大妖精を副長に任命する。
「え? ええ?」
大妖精は目を白黒させて、辺りを見回す。
「「「チルノ軍団長! チルノ軍団長!」」」
「「「副長! 副長!」」」
辺りには、妖精たちのコールが鳴り響いていた。
ガキ大将の影響力は、すごかった。
「じゃー後で作戦会議だからフランの部屋に集合ね!」
チルノは大妖精の手を引いて壇から降りる
代わりにレミリアが壇上に上がり、ワイングラスを持つ。
「では、戦いの前途を祝して、乾杯よ!」
妖精たちの祝宴が、開かれた。
「大変なことになっちゃったなぁ……」
騒ぎに騒ぐ妖精たちを見て、大妖精はため息をついた。
「大ちゃん、ちょっと来て」
フランが突然大妖精の手を引いて歩き出した。
「ち、チルノちゃん。どこ行くの?」
「作戦会議ッ!」
四人は扉を開けて紅魔館の中に入る。
「諸君に集まってもらったのは他でもないッ!」
大勢の妖精たちの前で、レミリアはマイクを手にした。
「花見だッ! 幻想郷の誰よりも早く花見を執り行うッ! そのためには諸君の力が必要なのよッ!」
レミリアの大声に、妖精たちは湧き上がる。
「戦いよッ! 幻想郷中の有力者が春を呼び寄せようとしているわ。その全員を出し抜いて、この紅魔館が春を手に入れて花見を執り行うッ!」
妖精たちのボルテージは、最高潮に達した。
周囲の妖精たちが騒ぐ中、一人だけ冷静な妖精がいた。
「なんで私はこんなところにいるんだろう……」
大妖精であった。
「いや、みんなが行ってるからそれについて行っただけだったっけ……」
大妖精は、ため息をついてここから抜け出そうとした。
「では紹介するわ。諸君らをまとめ上げる指揮官の、チルノよ!」
大妖精が帰ろうと思って振り返ると、レミリアの声が耳に入った。
「……え?」
思わず振り返りなおした。
壇上にチルノとナランチャがいる。
「チルノちゃん! ナランチャくん!」
大妖精は、素っ頓狂な声を上げて飛び上がった。
「おお! 大ちゃんだ!」
壇上のチルノは、飛び上がった大妖精を見つけて指差した。
「チルノちゃん! なにやってんの!?」
大妖精はチルノの元へ飛んでくる。
「何って? ぐんだんちょーよ!」
「軍団長って……ここはいつ軍隊になったの?」
「フランちゃんの姉ちゃんが言ってたでしょ? リリーちゃんを呼びたいけど、みんなが邪魔するからそれを跳ね除けるためにみんなとあたいの力が必要なの!」
無い胸を張るチルノ。
「チルノちゃん、一人で大丈夫なの?」
「しょーじきこんなに集まるとは思わなかった」
チルノは、目の前の妖精たちを見てため息をついた。
100人なんて話ではない。1000人は集まっていた。
「副長が必要ね。よし、大ちゃんを副長に任命するわ!」
あっという間に副長が決まった。
「……ゑ?」
大妖精は、理解できなかった。
「チルノちゃん、それってどういうこと?」
「だから、大ちゃんは副長! あたいと一緒にみんなをまとめるの!」
頭の悪い問答を繰り返す二人を目の前にして、
「なあ、フラン、副長なんて作っていいのか?」
ナランチャはフランの方を振り向いた。
「んー、まさか1000人近く集まるとは思わなかったわ」
フランは腕を組んで、庭にぎっしりと詰まっている妖精たちをみた。
「じゃあ、大ちゃんも仲間にするか?」
「まあ、二人の友達なんだし、いいんじゃない?」
「そうだな! じゃあ大ちゃんは副長で!」
ナランチャも、大ちゃんの肩に手を置いて大妖精を副長に任命する。
「え? ええ?」
大妖精は目を白黒させて、辺りを見回す。
「「「チルノ軍団長! チルノ軍団長!」」」
「「「副長! 副長!」」」
辺りには、妖精たちのコールが鳴り響いていた。
ガキ大将の影響力は、すごかった。
「じゃー後で作戦会議だからフランの部屋に集合ね!」
チルノは大妖精の手を引いて壇から降りる
代わりにレミリアが壇上に上がり、ワイングラスを持つ。
「では、戦いの前途を祝して、乾杯よ!」
妖精たちの祝宴が、開かれた。
「大変なことになっちゃったなぁ……」
騒ぎに騒ぐ妖精たちを見て、大妖精はため息をついた。
「大ちゃん、ちょっと来て」
フランが突然大妖精の手を引いて歩き出した。
「ち、チルノちゃん。どこ行くの?」
「作戦会議ッ!」
四人は扉を開けて紅魔館の中に入る。
階段を下りて、図書館の扉を開く。
谷のような本棚の間を歩き、フランの部屋を開く。
「うわぁ……フランちゃんの部屋ってこんななんだ……」
フランの部屋を見て、大妖精は目を丸くした。
ピンクのレースで彩られた、キングサイズの天蓋付きベッド。
ガラスでできた、歯車の無い時計。
並ぶレコードに、蓄音機。
そして、何故か発泡スチロールの箱が置いてある。
「さて、聞いてほしい話があるの」
フランはベッドの上に座る。
「まずは新しく入ってきた大ちゃんに説明しなくちゃね」
「説明? どゆこと?」
大妖精は、首をかしげた。
「私たち5人は、紅魔館に勝つわ」
フランの発言に大妖精は驚いた。
「紅魔館に勝つって……どうやって勝つの?」
大妖精はフランに詰め寄る。
対してフランは余裕の表情である。
「いいこと……戦いは必ずしも腕っぷしや弾幕だけじゃないの。この戦いはリリーホワイトを呼び寄せるためのもの……つまりリリーホワイトを呼び込めば勝ちなのよ」
「でも、リリーちゃんは気まぐれで、通る所もでたらめよ」
大妖精の言葉に、フランは笑みを浮かべた。
その言葉を待っていましたと言わんばかりに。
「さて、ここからが本題よ。リリーホワイトが動く目印になっている道具があるらしいの」
「リリーちゃんを呼び寄せる道具?」
「なんでも、『春水晶』って名前で、リリーホワイトが動く目印になっているらしいの」
そう言って、フランはベッドの下から透き通った水晶を取り出す。
大妖精は、それを手に取って覗き込んでみる。
「これが『春水晶』ね……でもなんでこんな所に保管してあるの?」
「お姉様曰く、ここが紅魔館の中では深い所らしいの」
春水晶を返してもらったフランは、ベッドの上にそれを置く。。
「つまり、リリーちゃんを呼ぶための戦いって、この春水晶の奪いあいなの?」
「流石大ちゃん。勘が鋭いね」
フランに褒められて、大妖精は髪を軽く掻いた。
「でもよー。そんな大事なものならもっと大事に隠さないか?」
ナランチャが、棚のレコードを眺めながら言った。
「うん、それなんだけど、この水晶って魔法とかかけちゃうと簡単に壊れちゃうんだって。だから、こうやってベッドの下に隠してるの」
フランが、春水晶をなでながら答える。
「うわ、面倒だな!」
ナランチャは苦虫をかみつぶしたかのような表情をした。
「しかもバリアとか結界に触れても壊れちゃう。もろいにもほどがあるのよ」
「すっげー面倒だな」
「でしょー」
「でもよ、これがあるならわざわざほかの所と争ったりする意味ないんじゃねーか? これがあれば勝手にリリーホワイトがやってくるんだしよ」
ナランチャは、春水晶を指差す。
「生憎だけど、これと同じものを他に持っている所があるのよ」
フランは、両手を広げて肩を上下させた。
「つまり、『リリーホワイト争奪戦』は『春水晶』の奪い合いとも言えるって訳よ」
フランがベッドから立ち上がり、レコードを選ぼうとすると、ドアがノックされた。
すぐにドアに駆け寄り、ドア越しに
「そうして私も今この部屋を後にして」
と囁く。
すると扉越しに、
「最後に誰もいなくなる」
と声が返ってきた。 フランはすぐに鍵を開け、ドアを開く。
「注文の品物を持ってきた。『フーファイターズのDISC』と『ホルス神のDISC』だ」
入ってきたのはディアボロだった。
彼の手には、二枚のDISCが握られている。
フランにそれを手渡した時に、ディアボロの目とナランチャの目が合った。
「げっ……」
ディアボロは、狼狽した。
目の前に反逆した奴がいる。しかも殺したはずだ!
「…………」
ナランチャは、ディアボロをじっと見つめている。
「……なあ、それ香霖堂とかにあるスタンドDISCだろ? 他に無いのか?」
ディアボロは、懐から3枚のDISCを取り出す。
右から順に、サイコロ模様のDISCが二枚と、赤色のDISC一枚。
「このサイコロ模様のDISCが『ミキタカのDISC』……スタンドDISCではないが、使うと小さなサイコロに変身することができる。で、この赤いDISCが『メタリカのDISC』。装備すると鉄を操れるようになる」
「へー! スタンドDISC以外にも不思議なDISCってあったんだ!」
ナランチャは目を輝かせて、ディアボロを見た。
「まあ、そうだな。今は持っていないが、他にもある」
ディアボロは視線をそらしながら答える。
「『メタリカのDISC』はともかく、『ミキタカのDISC』は俺は必要ないものだ」
ディアボロは『ミキタカのDISC』を二枚ともフランのベッドの上に投げて置く。
「俺はここらで退散させていただく。今から必要なものがたくさんありそうだからな」
それだけを言い残し、ディアボロは部屋から出ていく。
実際の所は、彼はナランチャが自分の正体を思い出す前に逃げ出したかっただけだった。
ドアが閉じられるのを、4人は見送った。
「で、フランちゃんはこの『春水晶』で何を始める気なの?」
ベッドの上にある『ホルス神のDISC』を弄りながら、チルノは質問をした。
フランは部屋の隅にある発泡スチロールの箱を取り出した。
「チルノちゃん、あなたには偽物の『春水晶』を作ってもらうわ」
箱を開けて、おがくずの詰まった中身を見せる。
「ナランチャには、『春水晶』を密かに持ち帰ってもらうわ」
フランに指差されて、ナランチャは目を見開いた。
「……マジ?」
「マジ」
冷や汗を垂らすナランチャに、うなづくフラン。
「この屋敷に『春水晶』を探知する魔法とかかけられてんじゃないのか?」
「残念だがそれすらできないのよね」
ナランチャは、大役を任されてしまった。
「でもよ、お前のところのメイドにボディチェックとかされたら、どうすんだよ」
諦めずに反論するナランチャ。
フランは咲夜の事を思い出した。
確かに、咲夜ならナランチャに感付かれずにボディチェックができる。
そうされたら、計画はおしまいだ。
「ナランチャの言うとおりね。『春水晶』持ち出しは先送りにしましょう」
ため息をついて、フランは春水晶を手に取った。
「じゃあ、チルノちゃん。これそっくりの氷像を作ってちょうだい」
「まかせなさい!」
チルノは、フランの頼みに胸を張って応えた。
チルノの手のひらに、冷気が収束していく。
それは空気中の水分を凝結させて、『春水晶』そっくりの氷像を作り上げた。
「一丁あがり! あたいったらさいきょーね!」
チルノは満面の笑みを浮かべ、箱の中に氷像を収める。
フランはすぐにふたを閉めて、それを部屋の隅に置いた。
続けて春水晶をベッドの下に置く。
「じゃあ、これで今日は解散ね。明日から寺子屋が終わったらすぐにここに集合しよう」
「「「おー!」」」
フランの呼びかけに三人は拳を挙げて応え、部屋から出て行った。
←To be continued...
谷のような本棚の間を歩き、フランの部屋を開く。
「うわぁ……フランちゃんの部屋ってこんななんだ……」
フランの部屋を見て、大妖精は目を丸くした。
ピンクのレースで彩られた、キングサイズの天蓋付きベッド。
ガラスでできた、歯車の無い時計。
並ぶレコードに、蓄音機。
そして、何故か発泡スチロールの箱が置いてある。
「さて、聞いてほしい話があるの」
フランはベッドの上に座る。
「まずは新しく入ってきた大ちゃんに説明しなくちゃね」
「説明? どゆこと?」
大妖精は、首をかしげた。
「私たち5人は、紅魔館に勝つわ」
フランの発言に大妖精は驚いた。
「紅魔館に勝つって……どうやって勝つの?」
大妖精はフランに詰め寄る。
対してフランは余裕の表情である。
「いいこと……戦いは必ずしも腕っぷしや弾幕だけじゃないの。この戦いはリリーホワイトを呼び寄せるためのもの……つまりリリーホワイトを呼び込めば勝ちなのよ」
「でも、リリーちゃんは気まぐれで、通る所もでたらめよ」
大妖精の言葉に、フランは笑みを浮かべた。
その言葉を待っていましたと言わんばかりに。
「さて、ここからが本題よ。リリーホワイトが動く目印になっている道具があるらしいの」
「リリーちゃんを呼び寄せる道具?」
「なんでも、『春水晶』って名前で、リリーホワイトが動く目印になっているらしいの」
そう言って、フランはベッドの下から透き通った水晶を取り出す。
大妖精は、それを手に取って覗き込んでみる。
「これが『春水晶』ね……でもなんでこんな所に保管してあるの?」
「お姉様曰く、ここが紅魔館の中では深い所らしいの」
春水晶を返してもらったフランは、ベッドの上にそれを置く。。
「つまり、リリーちゃんを呼ぶための戦いって、この春水晶の奪いあいなの?」
「流石大ちゃん。勘が鋭いね」
フランに褒められて、大妖精は髪を軽く掻いた。
「でもよー。そんな大事なものならもっと大事に隠さないか?」
ナランチャが、棚のレコードを眺めながら言った。
「うん、それなんだけど、この水晶って魔法とかかけちゃうと簡単に壊れちゃうんだって。だから、こうやってベッドの下に隠してるの」
フランが、春水晶をなでながら答える。
「うわ、面倒だな!」
ナランチャは苦虫をかみつぶしたかのような表情をした。
「しかもバリアとか結界に触れても壊れちゃう。もろいにもほどがあるのよ」
「すっげー面倒だな」
「でしょー」
「でもよ、これがあるならわざわざほかの所と争ったりする意味ないんじゃねーか? これがあれば勝手にリリーホワイトがやってくるんだしよ」
ナランチャは、春水晶を指差す。
「生憎だけど、これと同じものを他に持っている所があるのよ」
フランは、両手を広げて肩を上下させた。
「つまり、『リリーホワイト争奪戦』は『春水晶』の奪い合いとも言えるって訳よ」
フランがベッドから立ち上がり、レコードを選ぼうとすると、ドアがノックされた。
すぐにドアに駆け寄り、ドア越しに
「そうして私も今この部屋を後にして」
と囁く。
すると扉越しに、
「最後に誰もいなくなる」
と声が返ってきた。 フランはすぐに鍵を開け、ドアを開く。
「注文の品物を持ってきた。『フーファイターズのDISC』と『ホルス神のDISC』だ」
入ってきたのはディアボロだった。
彼の手には、二枚のDISCが握られている。
フランにそれを手渡した時に、ディアボロの目とナランチャの目が合った。
「げっ……」
ディアボロは、狼狽した。
目の前に反逆した奴がいる。しかも殺したはずだ!
「…………」
ナランチャは、ディアボロをじっと見つめている。
「……なあ、それ香霖堂とかにあるスタンドDISCだろ? 他に無いのか?」
ディアボロは、懐から3枚のDISCを取り出す。
右から順に、サイコロ模様のDISCが二枚と、赤色のDISC一枚。
「このサイコロ模様のDISCが『ミキタカのDISC』……スタンドDISCではないが、使うと小さなサイコロに変身することができる。で、この赤いDISCが『メタリカのDISC』。装備すると鉄を操れるようになる」
「へー! スタンドDISC以外にも不思議なDISCってあったんだ!」
ナランチャは目を輝かせて、ディアボロを見た。
「まあ、そうだな。今は持っていないが、他にもある」
ディアボロは視線をそらしながら答える。
「『メタリカのDISC』はともかく、『ミキタカのDISC』は俺は必要ないものだ」
ディアボロは『ミキタカのDISC』を二枚ともフランのベッドの上に投げて置く。
「俺はここらで退散させていただく。今から必要なものがたくさんありそうだからな」
それだけを言い残し、ディアボロは部屋から出ていく。
実際の所は、彼はナランチャが自分の正体を思い出す前に逃げ出したかっただけだった。
ドアが閉じられるのを、4人は見送った。
「で、フランちゃんはこの『春水晶』で何を始める気なの?」
ベッドの上にある『ホルス神のDISC』を弄りながら、チルノは質問をした。
フランは部屋の隅にある発泡スチロールの箱を取り出した。
「チルノちゃん、あなたには偽物の『春水晶』を作ってもらうわ」
箱を開けて、おがくずの詰まった中身を見せる。
「ナランチャには、『春水晶』を密かに持ち帰ってもらうわ」
フランに指差されて、ナランチャは目を見開いた。
「……マジ?」
「マジ」
冷や汗を垂らすナランチャに、うなづくフラン。
「この屋敷に『春水晶』を探知する魔法とかかけられてんじゃないのか?」
「残念だがそれすらできないのよね」
ナランチャは、大役を任されてしまった。
「でもよ、お前のところのメイドにボディチェックとかされたら、どうすんだよ」
諦めずに反論するナランチャ。
フランは咲夜の事を思い出した。
確かに、咲夜ならナランチャに感付かれずにボディチェックができる。
そうされたら、計画はおしまいだ。
「ナランチャの言うとおりね。『春水晶』持ち出しは先送りにしましょう」
ため息をついて、フランは春水晶を手に取った。
「じゃあ、チルノちゃん。これそっくりの氷像を作ってちょうだい」
「まかせなさい!」
チルノは、フランの頼みに胸を張って応えた。
チルノの手のひらに、冷気が収束していく。
それは空気中の水分を凝結させて、『春水晶』そっくりの氷像を作り上げた。
「一丁あがり! あたいったらさいきょーね!」
チルノは満面の笑みを浮かべ、箱の中に氷像を収める。
フランはすぐにふたを閉めて、それを部屋の隅に置いた。
続けて春水晶をベッドの下に置く。
「じゃあ、これで今日は解散ね。明日から寺子屋が終わったらすぐにここに集合しよう」
「「「おー!」」」
フランの呼びかけに三人は拳を挙げて応え、部屋から出て行った。
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