クラフト・ワークは動かせない
プロローグ「動き始めた物語」
冬の幻想郷。何もかも凍りつく停止の世界と言っても過言ではない。夜ならばなおさらだ
そんな極寒の幻想郷、冥界の次くらいには寒いだろう真夜中の湖のほとりに男が一人佇んでいた。
「どうなってんだ?ここはどこだ?」
この男、露出の多い夏服一枚にもかかわらず寒さも感じぬほど考え込みブツクサ呟いている。
明らかに東洋人ではない顔立ち、変な髪形、そしてヒトデ柄の夏服。どう考えても冬の幻想郷には似つかわしくない。
「おいおい、走馬灯ってヤツか?オレは確かに死んだ。その証拠をこの目でみたからな…でも…」
男の声には困惑、そしてもうひとつの感情が混ざっていた。
しかしそんな事よりも、この男は気づいていない。此処が幻想郷だということを。しかも夜だという事を。
幻想郷には幻想となったものが住んでいる。捨てられた道具、忘れ去られた人間、絶滅した動植物。
神や妖精や魔法使いなど童話の中でしか見聞きしないような存在までもが住んでいる。
そして…妖怪さえも住んでいる。夜は魑魅魍魎の時間。この時間に出歩く事は、「食ってくれ」と言っているようなものである。
ガサササササッ!ヒュッ!
湖近くの森の中から勢いよく飛び出す黒衣の少女。眼は紅い光を放ち、湖のほとりに佇む人影をまっすぐ見据えていた。
「あれは食べてもいい人類?」
要するに、この少女からすれば男は馬鹿な晩御飯なのである。
少女から光の弾幕が発射された。
男は震えている。寒さにではない。まして闇に対する恐怖でもない。
『喜び』…それが彼を震えさせている原因だった。
「でも…感覚がある!意思がある!記憶がある!オレは生きている!此処がどこだか知らないがッ!生きているぞッ!」
男の声には困惑と大きな喜びが混ざっていた。
しかし背後から光の弾幕が飛んできている中、気づいていないとはいえ喜んでいるヒマなど男には無い…はずだったのだが…
「オレはよォ~。マフィアなんだ。いつ狙われて死んだっておかしくねー」
残り15m
「だからよ、常に周りには気を使ってるんだ」
残り8m
「狙ってるのは………オレだろ?違うか?」
残り2m
少女は微笑みを浮かべた。何せ人間が食べられるのだ。しかし…倒れている男を見る事は出来なかった。
なぜなら弾幕が止まっていたからだ。撃った全ての弾幕が、男の付近で固定されているのだ。
少女は訝しげに近寄っていく。そこで少女は耳にした。男の声を。
「おもいっきりたたくんだぜ。何回もたたけば固定されてるとこに力はどんどんたまっていくからな」
男の声は勝利を確信した声だった。
「適当にやれば相手に飛んでく方向がバレねーからな…自分にもわからねーが…そして……………!」
少女は身の危険を感じすぐさま逃げようとした…が、遅かった。
「解除するッ!」
ドドドドドドドドドドドド!
自分が放った弾幕が全て返ってくる。屈辱的だが避けられるはずもなく光の奔流に飲まれていく。
光が流れ去った後、少女が動く事はなかった。生きてはいる。満身創痍というヤツである。
「オレが何で生きているのかはわからねー。ここがどこかもわからねー。ただ…まだ生きているなら…」
男は大きく息を吸って叫んだ。
「ええ!希望とやる気がムンムンわいてくるじゃあねーかッ!おいッ!」
この蟹頭の男の名はサーレー。イタリアンマフィア『パッショーネ』の団員である。
麻薬チームと戦い間抜けな死に方をしたが、なぜか幻想郷に流れ着いている。
サーレーのスタンドは『クラフト・ワーク』。触れた物体を空間に固定する能力を持つ。
弾幕勝負のこのご時世に、反則の能力を持った男がひとり。
この物語は、幻想に生きる少女たちとサーレーの奇妙な日常を描いた…
幻想郷での物語なのである
プロローグ「動き始めた物語」
冬の幻想郷。何もかも凍りつく停止の世界と言っても過言ではない。夜ならばなおさらだ
そんな極寒の幻想郷、冥界の次くらいには寒いだろう真夜中の湖のほとりに男が一人佇んでいた。
「どうなってんだ?ここはどこだ?」
この男、露出の多い夏服一枚にもかかわらず寒さも感じぬほど考え込みブツクサ呟いている。
明らかに東洋人ではない顔立ち、変な髪形、そしてヒトデ柄の夏服。どう考えても冬の幻想郷には似つかわしくない。
「おいおい、走馬灯ってヤツか?オレは確かに死んだ。その証拠をこの目でみたからな…でも…」
男の声には困惑、そしてもうひとつの感情が混ざっていた。
しかしそんな事よりも、この男は気づいていない。此処が幻想郷だということを。しかも夜だという事を。
幻想郷には幻想となったものが住んでいる。捨てられた道具、忘れ去られた人間、絶滅した動植物。
神や妖精や魔法使いなど童話の中でしか見聞きしないような存在までもが住んでいる。
そして…妖怪さえも住んでいる。夜は魑魅魍魎の時間。この時間に出歩く事は、「食ってくれ」と言っているようなものである。
ガサササササッ!ヒュッ!
湖近くの森の中から勢いよく飛び出す黒衣の少女。眼は紅い光を放ち、湖のほとりに佇む人影をまっすぐ見据えていた。
「あれは食べてもいい人類?」
要するに、この少女からすれば男は馬鹿な晩御飯なのである。
少女から光の弾幕が発射された。
男は震えている。寒さにではない。まして闇に対する恐怖でもない。
『喜び』…それが彼を震えさせている原因だった。
「でも…感覚がある!意思がある!記憶がある!オレは生きている!此処がどこだか知らないがッ!生きているぞッ!」
男の声には困惑と大きな喜びが混ざっていた。
しかし背後から光の弾幕が飛んできている中、気づいていないとはいえ喜んでいるヒマなど男には無い…はずだったのだが…
「オレはよォ~。マフィアなんだ。いつ狙われて死んだっておかしくねー」
残り15m
「だからよ、常に周りには気を使ってるんだ」
残り8m
「狙ってるのは………オレだろ?違うか?」
残り2m
少女は微笑みを浮かべた。何せ人間が食べられるのだ。しかし…倒れている男を見る事は出来なかった。
なぜなら弾幕が止まっていたからだ。撃った全ての弾幕が、男の付近で固定されているのだ。
少女は訝しげに近寄っていく。そこで少女は耳にした。男の声を。
「おもいっきりたたくんだぜ。何回もたたけば固定されてるとこに力はどんどんたまっていくからな」
男の声は勝利を確信した声だった。
「適当にやれば相手に飛んでく方向がバレねーからな…自分にもわからねーが…そして……………!」
少女は身の危険を感じすぐさま逃げようとした…が、遅かった。
「解除するッ!」
ドドドドドドドドドドドド!
自分が放った弾幕が全て返ってくる。屈辱的だが避けられるはずもなく光の奔流に飲まれていく。
光が流れ去った後、少女が動く事はなかった。生きてはいる。満身創痍というヤツである。
「オレが何で生きているのかはわからねー。ここがどこかもわからねー。ただ…まだ生きているなら…」
男は大きく息を吸って叫んだ。
「ええ!希望とやる気がムンムンわいてくるじゃあねーかッ!おいッ!」
この蟹頭の男の名はサーレー。イタリアンマフィア『パッショーネ』の団員である。
麻薬チームと戦い間抜けな死に方をしたが、なぜか幻想郷に流れ着いている。
サーレーのスタンドは『クラフト・ワーク』。触れた物体を空間に固定する能力を持つ。
弾幕勝負のこのご時世に、反則の能力を持った男がひとり。
この物語は、幻想に生きる少女たちとサーレーの奇妙な日常を描いた…
幻想郷での物語なのである