クラフト・ワークは動かせない
第一話「サーレーin紅魔館」
蟹頭の男…サーレーが目を覚ますと、そこは真っ赤な部屋だった。
「な…なんだ?オレは今まで水辺に…」
サーレーが困惑するのも無理はない。
これは昨夜の出来事であった。
――――――――――――――――
「うおおおおおッ!メチャクチャ寒いじゃあねーかッ!」
サーレーは黒衣の少女…ルーミアを一瞬で満身創痍にさせた後、寒さに気づいたのである。
「おいおいおいおい。寒すぎるだろ…ぜってーイタリアじゃあねーなここは…」
サーレーが寒いのは当たり前、何せ露出の多い夏服だからだ。ヒトデのデザインは気にしないほうがいい。
「家はねーのか?暖の取れる所はよ…暗くてさっぱり分かりゃしねーな。歩いてみるか」
5分後
「し…死ぬッ!このままではッ!凍え死んじまう!」
ムンムンわいていた希望とやる気はゼロになってしまったようだ。だいたいこの寒さの中対策もなしに歩き続ければ、体力が限界を迎えるのに10分もかからないのだ。さらに…
「うおッ?」 バッシャーン! 「うおおおおおおおッ!?」
サーレーは水辺を歩いていた事を忘れていた…そして見事に湖に落ちたのである。凍りつく極寒の湖に。
「うおおお…冷える……オレ…の…心臓が……止ま…る……」
死にそうだがよく考えてほしい。彼はどのように死んだのかを……そう!彼は自らの心臓を固定し、体から切り離して死んだのだ。
要するに止まる心臓はサーレーにはもう無いのである。まさしくパイレーツ・オブ・カリビアンのデイヴィ・ジョーンズ状態なのである。
ただし血は流れているし体温もある、心臓という急所が一つ無くなっただけで不死ではないのだ。なぜ心臓が無い状態で復活したのか、今は分からない。
とにかくサーレーの体は冷えていき、意識は闇へ落ちて行った。
そして翌朝、仕事サボってジョギングしていた紅魔館の門番…紅美鈴に湖に浮いている所を発見され、現在に至るというわけだ。
――――――――――――――――
「…はッ!そうだ!オレは死んだんだ…2回も死ぬ…滅多に出来る体験じゃあないな」
サーレーが現状を勘違いし憂いているその時…
コンコン 「!」
「失礼します…あら、起きていたようね」
10~20代であろう美しいメイドさんが入ってきた。紅魔館のメイド…十六夜咲夜である。
「まったく…あの温度の湖で溺れて生きているなんて…あなた何者?」
「え?ああ…ここはどこだ?(死んでなかったのか…)」
話が噛み合っていない。人によっては「質問を質問で返(ry」とキレてしまいそうだが、彼女は瀟洒なメイド。無駄にキレたりはしない。
「ここは紅魔館。私は十六夜咲夜、ここのメイド。あなたは湖に浮かんでいたの。それを見つけた門番がここに運んで来たのよ。他に質問は?」
キレる代わりにまくしたてるように答えられてしまった。しかしサーレーにとってはまだ分からない事だらけだ。
「あ、ああ…たくさんある。答えてくれるか?」
「できる限りならね」
紅茶を淹れてもらい、サーレーは幻想郷のことを教えてもらった。ただし咲夜は自身の『能力』の事を言わなかった。
――――――――――――――――
――――――――――――
「…なるほど、妖怪…スペルカード…結界…昨日の奴もそれか」
「質問はお終いね?今度はこちらが質問する番よ」
「ああ、何でも聞いてくれ」
そして今度はサーレーが話した。しかしスタンドに『能力』があることは念のため話さなかった。
――――――――――――――――
――――――――――――
「やっぱり外来人だったのね。しかも死んだなんて。それに…スタンド」
「ああ、何で生きてこっちに来たのかは分からねーが。スタンドもこっちの言い方なら「守護霊を操る程度の能力」といったところだ。見えないからよく分からんだろーがな」
『クラフト・ワーク』でティーカップを持ち上げる。咲夜から見ればティーカップが浮いているように見えるのだ。
余談だが死の顛末を話しているとき心臓が無い事に咲夜が気付き、笑われて落ち込んでしまったサーレーだった。
しばらくして咲夜はティーセットを片づけ、ドアを開けた。
「少しお嬢様に話をしてくるから、少し待っていて」
今までとても楽しそうに喋っていた咲夜がニヤリと笑みを浮かべたのをサーレーは見逃した。
そして咲夜は部屋を出て行ったが…
「?(今何か違和感を感じたな…)」
一瞬だけサーレーは何かを感じた。
3分後
「?(まただ…一瞬だが違和感を感じるぞ)」
サーレーが感じている違和感、それはサーレーだからこそ感じ取れるものだった。
「少し部屋を出てもいいんじゃあねーか?少し変な感じがするしよー」
ドアを少し開け、サーレーが部屋の外を見た瞬間。
フッ 「!?」
少し遠くに咲夜がいきなり現れた。それと同時にサーレーが違和感を感じ取ったのだ。
「(瞬間移動!?いや…違うな。だとすれば…)」
そこで咲夜がドアを開け入ってくる。
「待たせてしまったかしら?」
口調がどこか浮かれていてフワフワしている。
「…今さっき、お前がいきなり空間に現れたのを見た。これはどーゆーことかっつーとつまり…」
サーレーだからこそ謎の違和感を感じ取れる。なぜなら…
「時を止めたってことじゃあねーのか?ええ?違うか?」
「あら、なんでわかったの?理由がありそうだけど」
なぜなら、サーレーも物体を固定し『停止』させられる。だからこそ時の停止を感じ取れたのだ。
「理由はどうでもいい。自分に「能力」がある事を何故言わなかった?ええ?おい?何を企んでいるんだ?」
自分の事を棚に上げているが咲夜には知り得ないことである。というか咲夜は浮かれていて気づく様子もない。
「フフ…何も企んではいないわ。お嬢様があなたをランチに誘ってくださっているの、ついてきなさい」
サーレーは怪訝そうに部屋を出て、咲夜と廊下を進んでいく。悪魔との食事へ誘う長く紅い廊下を。
先頭を行く咲夜の顔には、悪戯をしかけた子供のような笑みが浮かんでいる。
これから悪魔のゲームが始まる事を、サーレーは知る由もなかった。
第一話「サーレーin紅魔館」
蟹頭の男…サーレーが目を覚ますと、そこは真っ赤な部屋だった。
「な…なんだ?オレは今まで水辺に…」
サーレーが困惑するのも無理はない。
これは昨夜の出来事であった。
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「うおおおおおッ!メチャクチャ寒いじゃあねーかッ!」
サーレーは黒衣の少女…ルーミアを一瞬で満身創痍にさせた後、寒さに気づいたのである。
「おいおいおいおい。寒すぎるだろ…ぜってーイタリアじゃあねーなここは…」
サーレーが寒いのは当たり前、何せ露出の多い夏服だからだ。ヒトデのデザインは気にしないほうがいい。
「家はねーのか?暖の取れる所はよ…暗くてさっぱり分かりゃしねーな。歩いてみるか」
5分後
「し…死ぬッ!このままではッ!凍え死んじまう!」
ムンムンわいていた希望とやる気はゼロになってしまったようだ。だいたいこの寒さの中対策もなしに歩き続ければ、体力が限界を迎えるのに10分もかからないのだ。さらに…
「うおッ?」 バッシャーン! 「うおおおおおおおッ!?」
サーレーは水辺を歩いていた事を忘れていた…そして見事に湖に落ちたのである。凍りつく極寒の湖に。
「うおおお…冷える……オレ…の…心臓が……止ま…る……」
死にそうだがよく考えてほしい。彼はどのように死んだのかを……そう!彼は自らの心臓を固定し、体から切り離して死んだのだ。
要するに止まる心臓はサーレーにはもう無いのである。まさしくパイレーツ・オブ・カリビアンのデイヴィ・ジョーンズ状態なのである。
ただし血は流れているし体温もある、心臓という急所が一つ無くなっただけで不死ではないのだ。なぜ心臓が無い状態で復活したのか、今は分からない。
とにかくサーレーの体は冷えていき、意識は闇へ落ちて行った。
そして翌朝、仕事サボってジョギングしていた紅魔館の門番…紅美鈴に湖に浮いている所を発見され、現在に至るというわけだ。
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「…はッ!そうだ!オレは死んだんだ…2回も死ぬ…滅多に出来る体験じゃあないな」
サーレーが現状を勘違いし憂いているその時…
コンコン 「!」
「失礼します…あら、起きていたようね」
10~20代であろう美しいメイドさんが入ってきた。紅魔館のメイド…十六夜咲夜である。
「まったく…あの温度の湖で溺れて生きているなんて…あなた何者?」
「え?ああ…ここはどこだ?(死んでなかったのか…)」
話が噛み合っていない。人によっては「質問を質問で返(ry」とキレてしまいそうだが、彼女は瀟洒なメイド。無駄にキレたりはしない。
「ここは紅魔館。私は十六夜咲夜、ここのメイド。あなたは湖に浮かんでいたの。それを見つけた門番がここに運んで来たのよ。他に質問は?」
キレる代わりにまくしたてるように答えられてしまった。しかしサーレーにとってはまだ分からない事だらけだ。
「あ、ああ…たくさんある。答えてくれるか?」
「できる限りならね」
紅茶を淹れてもらい、サーレーは幻想郷のことを教えてもらった。ただし咲夜は自身の『能力』の事を言わなかった。
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「…なるほど、妖怪…スペルカード…結界…昨日の奴もそれか」
「質問はお終いね?今度はこちらが質問する番よ」
「ああ、何でも聞いてくれ」
そして今度はサーレーが話した。しかしスタンドに『能力』があることは念のため話さなかった。
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「やっぱり外来人だったのね。しかも死んだなんて。それに…スタンド」
「ああ、何で生きてこっちに来たのかは分からねーが。スタンドもこっちの言い方なら「守護霊を操る程度の能力」といったところだ。見えないからよく分からんだろーがな」
『クラフト・ワーク』でティーカップを持ち上げる。咲夜から見ればティーカップが浮いているように見えるのだ。
余談だが死の顛末を話しているとき心臓が無い事に咲夜が気付き、笑われて落ち込んでしまったサーレーだった。
しばらくして咲夜はティーセットを片づけ、ドアを開けた。
「少しお嬢様に話をしてくるから、少し待っていて」
今までとても楽しそうに喋っていた咲夜がニヤリと笑みを浮かべたのをサーレーは見逃した。
そして咲夜は部屋を出て行ったが…
「?(今何か違和感を感じたな…)」
一瞬だけサーレーは何かを感じた。
3分後
「?(まただ…一瞬だが違和感を感じるぞ)」
サーレーが感じている違和感、それはサーレーだからこそ感じ取れるものだった。
「少し部屋を出てもいいんじゃあねーか?少し変な感じがするしよー」
ドアを少し開け、サーレーが部屋の外を見た瞬間。
フッ 「!?」
少し遠くに咲夜がいきなり現れた。それと同時にサーレーが違和感を感じ取ったのだ。
「(瞬間移動!?いや…違うな。だとすれば…)」
そこで咲夜がドアを開け入ってくる。
「待たせてしまったかしら?」
口調がどこか浮かれていてフワフワしている。
「…今さっき、お前がいきなり空間に現れたのを見た。これはどーゆーことかっつーとつまり…」
サーレーだからこそ謎の違和感を感じ取れる。なぜなら…
「時を止めたってことじゃあねーのか?ええ?違うか?」
「あら、なんでわかったの?理由がありそうだけど」
なぜなら、サーレーも物体を固定し『停止』させられる。だからこそ時の停止を感じ取れたのだ。
「理由はどうでもいい。自分に「能力」がある事を何故言わなかった?ええ?おい?何を企んでいるんだ?」
自分の事を棚に上げているが咲夜には知り得ないことである。というか咲夜は浮かれていて気づく様子もない。
「フフ…何も企んではいないわ。お嬢様があなたをランチに誘ってくださっているの、ついてきなさい」
サーレーは怪訝そうに部屋を出て、咲夜と廊下を進んでいく。悪魔との食事へ誘う長く紅い廊下を。
先頭を行く咲夜の顔には、悪戯をしかけた子供のような笑みが浮かんでいる。
これから悪魔のゲームが始まる事を、サーレーは知る由もなかった。