『やつらの日常その二:規格外の妖怪』
その日
博麗神社に
文々。新聞号外が
届けられた
博麗神社の居候エンリコ・プッチ神父と幻想郷最強の妖怪の一人である八雲紫及びその式らが、決闘を行ったことが独自調査で分かった。決闘の意図、目的は現時点で不明である。
なお、決闘の詳細は2面へ。
なお、決闘の詳細は2面へ。
それはほんとうにひょんなこと
プッチ神父の善行積みの旅途中
たまたまマヨヒガに来ていた橙の、素朴な疑問から始まった。
「プッチと紫のどっちが強いのか?」
紫様が出るまでもない!
1回戦:VS橙 『四天王の中でも最弱よ…』
1回戦:VS橙 『四天王の中でも最弱よ…』
疑問の言いだしっぺであった橙だが、日ごろの成果を紫、藍に見てもらいたかったので、まずは自分から、とプッチに戦いを挑んだ
「にゃー!ふふふ。一番はじめはあたしがお前の相手だ!」
爪を立て、威嚇しているさまはなんとも可愛らしい。意気込んでいるが、プッチとしてはさっさと次の現場に行きたかったので、軽くあしらうか、すぐに決着をつける気でいた。
爪を立て、威嚇しているさまはなんとも可愛らしい。意気込んでいるが、プッチとしてはさっさと次の現場に行きたかったので、軽くあしらうか、すぐに決着をつける気でいた。
「かかってこないならこっちから行くよ」
本人は威嚇しているつもりなのか見た目不相応にかっこを付けて言ってくるが、どうも似合っていない。別の事件からどうにも小さな見た目をした女の子の妖怪を傷つけるのに躊躇するようになったプッチは、この戦いをできるだけ穏便な方法で終わらせることに決めた。
本人は威嚇しているつもりなのか見た目不相応にかっこを付けて言ってくるが、どうも似合っていない。別の事件からどうにも小さな見た目をした女の子の妖怪を傷つけるのに躊躇するようになったプッチは、この戦いをできるだけ穏便な方法で終わらせることに決めた。
そう決めると、プッチは懐から鼻につく、少しキツめの匂いのするものを取り出した。
それを見た橙の毛が逆立つ
それを見た橙の毛が逆立つ
「あ!あれは!」
「あら、またたび…ね」
「あら、またたび…ね」
右に左にプッチがまたたびを揺らすたびに細長い2つの目がゆらゆら揺れる。
ネコとしての本能的な欲求に必死に抗うその姿には、幼いながらも気高さを感じさせる精神の輝きが感じられた。
その場にいた3人が皆、橙の輝かしい将来を感じさせられた。
ネコとしての本能的な欲求に必死に抗うその姿には、幼いながらも気高さを感じさせる精神の輝きが感じられた。
その場にいた3人が皆、橙の輝かしい将来を感じさせられた。
「(大丈夫。いくらまたたびとはいえ橙も立派な式。橙なら…橙なら耐えられる)」
「あいつまたくだらないことしてたのね」
お茶をすすりながら文々。新聞号外を読んでいた霊夢が神社に来ていた魔理沙に言った。
「こーゆー面白そうなことするんだったらあたしも呼んでほしかったぜ」
「ま、博麗神社(うち)に迷惑をかけないならどーでもいいけどね」
興味なさそうに霊夢が新聞をめくった。
お茶をすすりながら文々。新聞号外を読んでいた霊夢が神社に来ていた魔理沙に言った。
「こーゆー面白そうなことするんだったらあたしも呼んでほしかったぜ」
「ま、博麗神社(うち)に迷惑をかけないならどーでもいいけどね」
興味なさそうに霊夢が新聞をめくった。
「にゃはー…善戦しましたが、勝てませんでした。次回戦ったときは勝てるよう努力します(棒読み)」
プッチ神父と最初に戦った橙氏は記者に対しこう答えた。彼女にとってよほど得るものがある戦いだったのか、橙氏の顔はほころんでいた。
文々。新聞号外2面
プッチ神父と最初に戦った橙氏は記者に対しこう答えた。彼女にとってよほど得るものがある戦いだったのか、橙氏の顔はほころんでいた。
文々。新聞号外2面
「橙んんん――――ッ!」
藍の叫びが透るなか、プッチが2本目のまたたびを懐からだすと、風のような速さでプッチの前に行き膝をついた。
「橙・プッチとおよびくだしゃい」
藍の叫びが透るなか、プッチが2本目のまたたびを懐からだすと、風のような速さでプッチの前に行き膝をついた。
「橙・プッチとおよびくだしゃい」
橙の敵はわたしが討つ!
2回戦:VS藍
2回戦:VS藍
「ふ…ふふふ。橙は四天王の中でも最弱よ…わたしは橙のように甘くはないぞ!」
橙の裏切りで動揺し、少々おかしなことになってしまった藍が、どこで覚えたのか、そんなセリフを言った。
橙の裏切りで動揺し、少々おかしなことになってしまった藍が、どこで覚えたのか、そんなセリフを言った。
「藍しゃま…」
だが、本心かどーかは関係なく、敬愛する藍にそんなことを言われた橙は思わず涙目になり藍を見つめる。
だが、本心かどーかは関係なく、敬愛する藍にそんなことを言われた橙は思わず涙目になり藍を見つめる。
「ち…橙…」
そしてそんな涙目、上目遣いの橙に対する精神的な防御力を、藍はスデに失っていた。
「ちええええええええええぇぇぇぇんッ!」
結果、藍は鼻血を出して気を失った。ロリ的この上ない…おっと、論理的この上ない結論だ。
2人の様子を見ていた紫はあきれたようにつぶやいた
「あたしが王者(チャンピオン)で、橙と藍が四天王だと…あと2人足りないわよねぇ?」
クスリと紫が笑い、いつの間にか出していたスキマに手を入れた。
「来なさい!3人目の四天王!」
すると地に伏せている藍のすぐそばにスキマが開き、白い手袋で覆われた手が藍の尻尾をつかんだ。
クスリと紫が笑い、いつの間にか出していたスキマに手を入れた。
「来なさい!3人目の四天王!」
すると地に伏せている藍のすぐそばにスキマが開き、白い手袋で覆われた手が藍の尻尾をつかんだ。
「藍も戦ったのね。おおかた橙がやられて怒ったってとこかしら?」
特に興味がなさそうに霊夢がつぶやいた。
「あー…橙のこと溺愛しるもんな。お、霊夢、お茶菓子もらうぜ」
「たまには賽銭入れてきなさいよ?」
「考えとくぜ」
特に興味がなさそうに霊夢がつぶやいた。
「あー…橙のこと溺愛しるもんな。お、霊夢、お茶菓子もらうぜ」
「たまには賽銭入れてきなさいよ?」
「考えとくぜ」
よほどの激闘だったのか、プッチ神父とその次に戦ったという藍氏は尻尾に痛々しく包帯を巻いていた。決闘の詳細に関する質問には、苦虫をかみつぶしたような顔をし、口を閉ざした。よほど思い出したくないのだろう。
文々。新聞号外2面
文々。新聞号外2面
ブヂッ…
「ぎンにゃあああああああああああああ!!!!!!」
紫はつかんでいた藍の尻尾を一本引きちぎった。
紫はつかんでいた藍の尻尾を一本引きちぎった。
「ゆ!紫様ァ!9本あるとはいえ、い い いいい痛いですううううう!!!」
涙目で紫に訴えるが、当の紫はどこ吹く風だった。
涙目で紫に訴えるが、当の紫はどこ吹く風だった。
「さあ!九尾の敵をとりなさい!八尾の狐!」
「紫様ぁぁぁあああああ!」
「ちなみに八尾が負けても七尾がいるわ」
紫のおそろしい独り言(?)を聞いた藍(現:八尾)は冷や汗と共に8本の尻尾を逆立てた。
「紫様ぁぁぁあああああ!」
「ちなみに八尾が負けても七尾がいるわ」
紫のおそろしい独り言(?)を聞いた藍(現:八尾)は冷や汗と共に8本の尻尾を逆立てた。
「最終的に零尾までいるわ。覚悟しなさい!エンリコ・プッチ!」
笑いをこらえつつビシッとプッチを指さして紫は言った。
笑いをこらえつつビシッとプッチを指さして紫は言った。
その様子をみてプッチは藍に勧誘をかけた
「こちらへ来ないかい?藍?君の愛しの橙もこちらにいる。それにこちらに来ればもう尻尾がなくなる心配はない。君にとってこちらへくることが…最善の策だと思うのだが?」
「こちらへ来ないかい?藍?君の愛しの橙もこちらにいる。それにこちらに来ればもう尻尾がなくなる心配はない。君にとってこちらへくることが…最善の策だと思うのだが?」
「藍も負けたのね。神父ってのはどうしてこうも妙に強い人間が多いのかしらね?」
「いやー。あの神父の能力って正直反則ものだと思うぜ?宇宙を一巡とか意味わかんねー。あ、お茶おかわり」
「自分で淹れなさい」
「めんどくさがり屋ぁ!」
「いやー。あの神父の能力って正直反則ものだと思うぜ?宇宙を一巡とか意味わかんねー。あ、お茶おかわり」
「自分で淹れなさい」
「めんどくさがり屋ぁ!」
なお、決闘の当事者たる八雲紫氏およびエンリコ・プッチ氏の行方はいまだにつかめていない。八雲紫氏がエンリコ・プッチ氏に勝ったとは八雲藍、橙より伝えられているが、当事者が行方不明のため、真偽のほどはわからない。
文々。新聞号外2面
文々。新聞号外2面
「寝返ったわね!藍」
セリフに反していくぶん楽しそうな口調で呟いた。
セリフに反していくぶん楽しそうな口調で呟いた。
「二人…いえ、八尾も含めると三人を倒した(「二人です!」)ようだけど、私は強いわよ?」
「話には聞いている。それに、いともたやすく九尾の尻尾をちぎったところを見て、実力も相当なものだとわかった」
チラリと藍のほうへ目をやると、藍は涙目で痛そうに尻尾のあった場所を抑えた。
「話には聞いている。それに、いともたやすく九尾の尻尾をちぎったところを見て、実力も相当なものだとわかった」
チラリと藍のほうへ目をやると、藍は涙目で痛そうに尻尾のあった場所を抑えた。
しばらくの静寂のあと、最強クラスの実力をもつ二人の距離が、足音と共に近づいていった。
互いが十分に近づいたところで、紫が叫んだ
互いが十分に近づいたところで、紫が叫んだ
「やりなさい!藍!橙!」
「「はいッ!!」」
「「はいッ!!」」
声の直後、藍と橙は後ろに回り込み、プッチの身体を押さえつけ
るのかと思いきや『紫』の身体を押さえつけた。
「ちょっと二人とも!今の流れ的にプッチのほうを押さえつける場面じゃない!」
「知りませんそんなこと!あんなことをされて、寝返らないヤツはいませんよ!さあ!今のうちに懲らしめてやってください!そう長くは抑えていられません!」
わめく紫をよそに、プッチ神父はすばやくホワイトスネイクを発動させ、紫の眉間に手刀を差し込む。
「DISCハ…スデニ出来テイタヨウ…?」
「む?どうしたホワイトスネイク」
「む?どうしたホワイトスネイク」
「出来テイナイヨウダ…?」
「なんだと!っく、ホワイトスネイク!命令のDISCを入れろ―――!」
「なんだと!っく、ホワイトスネイク!命令のDISCを入れろ―――!」
拘束を解かれたら勝ち目はない。
そう思いすぐさま命令のDISC(「年相応の見た目になれ」)を紫の額にINした。
そう思いすぐさま命令のDISC(「年相応の見た目になれ」)を紫の額にINした。
しかし
ウィ―――ン
小気味よい音の後、DISCが出てきた
「「「え?」」」
「「「………」」」
なんとも言えない奇妙な沈黙が場を支配する
なんとも言えない奇妙な沈黙が場を支配する
「えっと。私が攻撃してもいいのかしら?」
「えっと、紫様、もうちょっと待っていただいてよろしいでしょうか?」
「はやくしなさいよ」
「えっと、紫様、もうちょっと待っていただいてよろしいでしょうか?」
「はやくしなさいよ」
藍、橙、プッチの三人は紫のそばから離れこそこそと話し出した。
「なんであなたの能力が効かないの?そもそも『ウィ―――ン』って何?あんなに機械音だしてDISCが出てくるものなの?!」
「さっぱりわからない。こんなこと初めてだ。規格外の妖怪だとは知っていたがこれほどとは」
「『規格外』…ひょっとして…」
珍しく取り乱すプッチに藍はたった今思いついたことを耳打ちした。
藍の言葉を聞き、プッチはすぐさまホワイトスネイクに命令をしなおした。
珍しく取り乱すプッチに藍はたった今思いついたことを耳打ちした。
藍の言葉を聞き、プッチはすぐさまホワイトスネイクに命令をしなおした。
「ホワイトスネイク!命令の『カセット(A面)』を入れろ―――ッ!」
プッチの命令の直後、ホワイトスネイクは懐かしの黒色をしたカセットを紫の口にツッコんだ。
しかし
ヴー…ガシャ
プラスチックがきしんでいる音を立てながらカセットが紫の口から出てきた
「「「…」」」
「ホワイトスネイク!A面とB面を入れ替えろ―――ッ!」
ヴー…ガシャ…
「「「「…」」」」
「もう攻撃してもいいかしら?」
なんとも言えない空気のなか紫がおずおずと言った。
なんとも言えない空気のなか紫がおずおずと言った。
気まずい沈黙を破ったのは藍だった。
「いけません!DISCもカセットも入らないって、どれだけ古いんですか紫様!こうなったらもう、入るまで続けますよ!!!さあ、プッチ!もっと世代の古いDISCを!」
藍の権幕におされ、当初の目的であるどちらが強いかなどもうどうでもよくなり、どんどんDISC(?)を生成していく
藍の権幕におされ、当初の目的であるどちらが強いかなどもうどうでもよくなり、どんどんDISC(?)を生成していく
「紫様!口を開けてください!次はエルカセット(1976年発売開始)です!」
「ちょっ!大きすぎるわ!ムリムリ入らないわッモガッ…」
紫の抵抗も空しく152mm×106mm×18mmサイズのエルカセットが口に入っていく
「ちょっ!大きすぎるわ!ムリムリ入らないわッモガッ…」
紫の抵抗も空しく152mm×106mm×18mmサイズのエルカセットが口に入っていく
ゴガッ…
ヴィ―――ン
「「「………」」」
シーン…
シーン…
「プッチ!次をよこして!」
「あ、ああ」
「あ、ああ」
「紫様!諦めて口を開けてください!レコード(直径30cm)です!」
「ムリムリムリムリ!顔よりも大きいからそれ!グゲッ…」
「ムリムリムリムリ!顔よりも大きいからそれ!グゲッ…」
カパッ…
ウイ―――ン
「「「………」」」
「プッチ!紫様の口に直接手を突っ込んでDISCでもカセットでもレコードでもいいから取り出して!」
「あ、ああ。気は進まないが、覚悟しろ紫。覚悟は幸福だぞ」
「あ、ああ。気は進まないが、覚悟しろ紫。覚悟は幸福だぞ」
「ちょっと待って!顎がハズッ~~~ッッ!!!」
紫の口に手をつっこみしばらくすると、唾液で湿ってはいたが、何か紙のようなものが出てきた。
「あー!なにか出てきた!紙が出てきました!紫様なにか話してください!」
藍にせかされ、紫はとにかくなにかを話そうとした
紫の口に手をつっこみしばらくすると、唾液で湿ってはいたが、何か紙のようなものが出てきた。
「あー!なにか出てきた!紙が出てきました!紫様なにか話してください!」
藍にせかされ、紫はとにかくなにかを話そうとした
「お…Au clair de la lune Mon ami Pierrot………ゲホッゲホッ!!」
「こ、これは人類最古のフォノトグラフに録音された…『月の光に』か!」
「そーいや霊夢、香霖とこに蓄音機とかいうやつが入ってきたそーだぜ。今度一緒に見に行かないか?」
「いいわ、別に。一人で行ってきなさいよそれくらい」
「ちえー。あ、お茶おかわり」
「頻尿になるわよ?」
「いいわ、別に。一人で行ってきなさいよそれくらい」
「ちえー。あ、お茶おかわり」
「頻尿になるわよ?」
ネコの集まるマヨヒガに一人の男が倒れている。
宇宙を一巡させたこともあるこの男、名をエンリコ・プッチという。
幻想郷最強の妖怪ともいわれる八雲紫と戦い、そして敗れたのであった」
宇宙を一巡させたこともあるこの男、名をエンリコ・プッチという。
幻想郷最強の妖怪ともいわれる八雲紫と戦い、そして敗れたのであった」
「ど、どうですか藍しゃま。ナレーションっぽいのいれてちょっと決闘な感じの雰囲気だしてみました!」
「橙ぇぇん。努力は嬉しいが、もう何をやっても喜劇にしかみえないさ…」
なお、八雲紫氏の行方不明に伴い発生した博麗大結界の異変についての調査は5面にあります
文々。新聞号外2面
文々。新聞号外2面
その後
「やった!レコード盤が入りましたよ!」
「だから顎が痛いって言ってるでしょう!」
「だから顎が痛いって言ってるでしょう!」
その後の後
「フロッピーディスクまできました!あともう少しです!」
「なんで口に入れようとするのよ!」
「なんで口に入れようとするのよ!」
その後の後の後
「やった!MDが入りました!次CDに挑戦してみましょう!」
「もっと他に入れるところあるでしょう!」
「もっと他に入れるところあるでしょう!」
その後以下略
「USBも接続できました!」
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよし!!!」
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよし!!!」
略
「外付けHDDが届きました!さっそく取り付けましょう!」
「でかしたわ!藍!」
「でかしたわ!藍!」
文々。新聞号外
博麗大結界に技術革新!?
大幅なアップデートを実施!?
静脈認証装置の導入へ!
八雲藍、橙氏へのインタビューは3面へ
博麗大結界に技術革新!?
大幅なアップデートを実施!?
静脈認証装置の導入へ!
八雲藍、橙氏へのインタビューは3面へ
『規格外の妖怪』
アップデート完了!
再起動『可』能!
アップデート完了!
再起動『可』能!