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東方拳闘士六話

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匿名ユーザー

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皆が見つめる中、空中にあらわれた切れ目からフリルの付いた長袖の、白い手が伸びてきた。
そして…。
「誰か、引っ張ってくれない?ちょっと、引っかかっちゃったのよ」
「どうしますか?お嬢様」
警戒している美鈴が構えを崩さずに顔だけ向けて聞く。
「放って置こうぜ。なんか臭うし」主に胡散的な意味で。
と言われた所でこんな物を放置しておくわけにも行かない。
何より、こいつが来たという事は、今回の変事について何か知っている事があるのだろうし…。
……ハァ。と溜め息をつくレミリア。
「しょうがないわ。引っ張ってやりなさい」
主の命を受け、裂け目に近づく美鈴。普通に歩いている様だが、隙が無い。
空中に突き出されている左手を両手で掴み、思い切り引っ張り上げる。
ズズズと隙間の中から八雲紫の体が引っ張り上げられていく。
「もういいわ。ありがとう」
腰が出た所でニッコリと礼を言う紫。今日は傘は持っていない。手ぶらだ。
黙って主人の横に戻る美鈴。
咲夜の隣の床に座り込んだフランがレミリアに問う。
「お姉さま。この人、誰?何者?」
「そうねぇ…魔理沙の同類よ」
「そりゃどういう意味だぜ?」
「ドロボーって事よ」とパチュリー。
「ドロボーって事ですね」と美鈴。
「ああドロボーって事なのね」とフラン。
「酷い言い草だわ」
咲夜の向いに置いてあるソファーに歩み寄り、腰を下ろす紫。沈み込む様に背もたれに寄りかかる。
「いつも泥棒って訳じゃあないわよ」
「普段は人攫いだもんな!」
「それで…」
紫の一挙一動に目を光らせていたレミリアが聞く。
「お茶を飲みに来たというなら、また一昨日にでも来てくれないかしら?今忙しいのよ…。もし何か知っているのなら――」
「ジャンケン小僧の事でしょう?」
ソファーの肘掛に寄りかかり、左手で頬杖を付く紫。
「彼、殺すべきだわ」
微笑みながら言い放つ。
「…なんだ?ナンセンスギャグを言って笑わそうって気遣いか…?」
「笑えたかしら?」
「はッ!貴様!」と叫ぶ美鈴。
「咲夜さんとフランドールお嬢様の能力が邪魔なんでジャンケン小僧ごと亡き者にしようという策略だな!?」
「純粋な心配よ…門番さん。あなたのご主人や、この幻想郷の将来の、ね…」
「だから殺すべきだと?私の家族から奪われた能力も、あきらめろと?」
椅子に座っているレミリアが、ソファーにいる紫を睨みつける。
「そうよ」
紫とレミリアの会話を聞いて不安そうな顔のフラン。
「おい!いきなり出てきて勝手な事言うなよ!」
魔理沙が立ち上がって怒鳴る。後頭部の痛みも含め、その他もろもろでイライラしていた。
「フランはお菓子が食べられないんだ!咲夜なんて永遠に止まったままかもしれないんだぜ!!それを部外者のお前が諦めろだぁ?!!」
「その通りよ」
「仮にだぜ…!仮にレミリアが勝てないのが事実だとしても、お前なら殺す以外に追い出すって選択肢があるだろう!そうすれば取り返すチャンスが残る…なのに一足飛びで殺すだと…!」
紫の目の前に立って見下す。
「…やっぱり中国の言うとおりじゃあ無いのか?……二人の能力を消そうとそう考えてる…違うのか……?」
「違うわ……」
微笑み返す紫。
「ねぇ」と成り行きを見守っていたパチュリーが口を開いた。
「大した事じゃあ何だけれど、ちょっとした質問があるわ。いいかしら……?」
黙ってパチュリーに向き直る紫。
「あなたさっき、何で『歩くフリをしてソファーまで飛んだ移動した』のかしら?」
レミリア、フラン、魔理沙がパチュリーの方を向く。美鈴は紫から目を離さない。
「もう一つ質問よ…。ソファーに座ってからの動作、『右腕を庇っている』様だったけど、どうしたのかしら?」
「何でもないわ…」
ハッとするレミリアと魔理沙。
「まさか…紫…。ちょっと腕を見せてもらうぜ!」
「ちょっと、人の身体勝手に触らないでくれる…」
相手の文句を無視し、手首を掴み腕を持ち上げる。
紫の抵抗の無いまま、フリル付いた袖を捲りあげた。
「これはッ!」
「そんな…!」
「やっぱりね…」
紫の右腕は、『境界がぼやけていた』。
手首から先はハッキリと存在するが、前腕の途中からまるで水に滲んだ水彩画の様になっており、後ろの紫の身体が薄らと見える。
「そう…最初の被害者なの」
微笑んでいる紫。
だが、この微笑みは余裕の在る笑みではない。余裕の無い苦笑いだったのだ。
「今の私は本来の三分の一の『能力』しか無いのよ…」
冷や汗を掻きながら、残った左手で長いスカートをめくる。
スカートの下に、在るべき脚は見えなかった…。




湖を時計回りに歩き始めて30分。ずっと岩場が続いていた。
…こういう事のために日ごろからスニーカーを履いておくべきかな…?と真剣に考え始めた大柳賢。歩けど歩けど遠くに見える館の島への橋や船着場が見当たらない。
空模様も怪しくなっている。このまま雨でも降りられたら、岩が滑りそうで危険だな。浜辺にでも出ないかな。と思った所でその人物に気がついた。
湖と森に挟まれ、丁度円形に開けた場所の中心にある切り株に、少女は座っていた。
フランドールに似ている…。と言うのが賢の最初の感想だった。髪型、服装、体形、どれもソックリだ。
違うところと言えば、髪の色が青いのと服の色が赤ではなくピンクを基調としている所。さらに背中に背負ってるのがクリスマスツリーの飾りではなく、コウモリ傘………いや、コウモリの羽だという所だ。
だが、同時に些細な違いではなく決定的な違いも感じていた。
フランの様な『手榴弾を玩んでいる子供』を見ているような、いつ自分が巻き込まれるか判らないという危うさは無く、その代わり気品や王気の様な物を感じる。
切り株に脚を組んで座っているだけなのに、まるでアンティークチェアーに座った貴族が見下している様な錯覚を覚える。
とはいえ、だからと言って臆する賢ではない。
対峙する二人、少年の瞳はもはや11歳の少年の瞳ではなく逞しく成長した少年の瞳だった。服装も子供っぽく体つきや顔つきは幼いがやはり底知れぬ力を秘めている少年に思えた

「…あんた、誰です?ここで何をしてるんだ…?」
「……あなたこそ何者?何故ここにいるの?」
少女が口を開く。
少しムッとする賢。
「疑問文に疑問文で答えちゃあいけないだぞ。……ぼくはただの小学生さ。あの屋敷に行きたいんだよ」
そう言って湖の方を親指で指す。
「………」
少女から感じる圧迫感が上がった。賢の方を険しい表情で見つめる。
「どうして…あの屋敷に行きたいのかしら……?」
「なんでもないよ」
軽く答える賢。
「実はぼくは迷子なんだ…。ここがどこだかサッパリ判らない。地元には居ないような変な能力の奴もいるし、ハッキリ言って途方にくれてるよ……。あの屋敷に行けば、電話でもあるんじゃあないかと期待してる所だ」
「…なんだ、そうなの。…残念だけど、あの屋敷には電話は無いわよ…『外部に通じる』ような物は特にね」
体勢を変えて少女に対峙する少年。
「あんた…あの屋敷の関係者か…?」
「屋敷の主よ」
「ん?あの屋敷はフランなんとかの屋敷じゃあないのか?お嬢様とか呼ばれてたし…あれ?妹様だったか……?」
賢の問いかけを聞いて、切り株からちょこんと降り立つ少女。
自らの胸に片手を当て、誇り高そうに言う。
「私の名前はレミリア・スカーレット…。
フランドール・スカーレットは私の妹よ。そして十六夜・咲夜は私のメイド…」
「なるほど…妹とメイドの敵を取るためにお嬢様が直々にお出まし…と言った所か?」
「その前に少し話をしない?」
「………」
賢が黙っているのを見て、続けるレミリア。
「あなたは故郷に帰りたいんでしょう…?そして私は妹とメイド長、それに知人である八雲・紫ためにあなたから能力を取り戻したい…。そこで一つ提案があるのよ…」
「…………もしかしてぼくに八百長試合をしろって事か?マジに言ってるのか?」
「もう気付いてるかもしれないけど…ここはあなたが居た世界と少し違う世界なのよ。ここは『幻想郷』…。外の世界と結界によって隔てられた世界。
抜け出るならこの『幻想郷』を知る者の協力が必要だわ。もし能力を素直に返してくれるなら、あなたのために最大の便宜を図るつもりよ…」
「どうかな…。信じられないな、ぼくなら妹を虐めた奴のために最大限の努力をするなんて真っ平だぞ……妹は居ないけど…。何かの罠だと思うのが普通だろう…」
聞きながら右手で前髪を弄っているレミリア。
「実際の所私も血液が沸騰しそうなほど怒ってるのよ。ただあなたが純粋な加害者という訳でもないと理解しているわ…。ここに迷い込んだだけで被害者とも言える…。だからその点に同情してお互い歩み寄れると思ったんだけど……どうかしら…?」
「同情して歩み寄れる…だとッ?!馬鹿いうなよ…あのメイドが先にナイフを突きつけてきたんだぞ!おまけにお気に入りの服まで汚されて!」
「先に?!あなたが最初に妹から能力を奪ったんじゃない!!妹はただ散歩してただけなのにッ!!!」
「フン!ただ散歩していただけだって?…聞いてあきれるぜ。ぼくの能力のお陰だろうが…見ただけで判ったさ、フランドールの危険性がな…。
…あんたは目の前に実弾の入ったピストルを持った子供が居たら、ピストルを奪おうとするだろう?誰だってそーする。ぼくもそーする」
「人間ってそんな物を怖がるのね…私はピストルなんかでは死なないわ!!」
「お前の妹は危険物だったと言ってるんだ!ピストルは『例え』だマヌケがッ!!」
「マヌケ!?今マヌケって言ったわね!!まだ十年も生きたかどうかの…小童がッ!」
子供染みた事でヒートアップしていく二人。お互い相手に殴りかからんばかりの状態だ。
だが先に一歩引いたのは年下の賢だった。
「……フン!もういいよ。ここで怒鳴りあっていても意味が無い。普段のぼくならお前から感じる圧迫感で威圧されるだろうけど……今のぼくは一瞬でお前を殺すことが出来る」
『殺す』と聞いてビクッと警戒するレミリア。
「いや…『一瞬すら掛からない』…。別に脅してる訳じゃあない。ただ余裕があると言いたいんですよ……」
そうして冷ややかな目で見つめる賢。
レミリアの額から顎に汗が流れる。怒りで我を忘れていた。これほど逆上するのは何年ぶりだろう?…反省せねば。
「ごめんなさい。歳甲斐も無く取り乱してしまって…。謝るわ…」
「いいや、見た歳のまんまのガキだったぜ。あんた」
「……ともかく、私はあなたに協力したいのよ…。それがお互いのためじゃあない?」
「………」
少し考え込む賢。
「……どうやって…ここから送り返してくれるっていうんだ…?」
「簡単よ…あなたが素直に能力を返してくれるのなら、紫があなたを送り返しても良いと言っているわ」
「あいつの能力、亜空に入るだけじゃあなかったのか……」
顎に拳を当てて考える賢。
体勢を変えてから言う。
「いいよ、オッケーだ。あんたに協力しよう。八百長ジャンケンに乗ってやってもいい」
「本当!?」
予想外という顔をするレミリア。
「ただし、だ。最初に紫の能力だけを賭けて八百長する…後の能力は送り返された後で返す」
「…なんですって?」
最初は喜んでいたレミリア。その顔に影が差す。
「もちろん、紫に能力を返す時は…紫の『破壊の目』を手中に収めてからだ…。残りの能力は『ぼくの決める場所』で、『ぼくの決めた立会人』を呼んでから返す…」
露伴先生ならこういう話に乗ってくれそうだ。と尊敬する漫画家を思い浮かべる。
「どういう事よ…」
「多分こう考えてるんだろ?『もし先に返してから紫が殺されたら他の能力が戻らない。それに立会人もこいつと同じ様な能力を持っていて危険じゃあないのか?』と」
「…そうよ。先に送り返しては…あなたが能力を返してくれるという保証は無いわ…」
「おいおいおい」と馬鹿言っちゃいけない、というポーズを取る賢。
「先に能力を全部返すと、『ぼくの命の保障が無い』じゃあないか?ここで能力を返したとして、おまえ…自分の妹を止められるのか?
フランドールが怒ってぼくを殺そうとしたら…?おまえからは妹に感じたような圧倒的パワーは感じないぜ。止めるなんて無理そうだ」
「止めるわよ…スカーレット家当主として約束するわ…!」
「その約束事態も信じられないぜ!能力を返した途端、あんた自体がぼくを殺そうとするかも……」
「………どうやったら、信じてもらえるのかしら…?」
「それは不可能だ…ぼくはあんたの事は知らないし、あんたは短気で子供っぽい…。能力を返した時点でぼくは自分の身を守れなくなる。つまり、ぼくの提案を飲むしかないんだよ」
「それは許可できないわ…もしあなたが紫を殺し、能力を持ち逃げすれば、もう二度と捕らえられないもの…」
紫が居なくとも追いかける事は出来るが『時間を支配しつつありとあらゆる物を破壊する程度の能力』の奴を捕らえられる筈が無い。
「ああそうかい…。じゃあ交渉の決裂って奴だな…」
「ええ…仕方が無いけどその様ね…!!」
素早く構えを取るレミリア。
グッと拳を前に突き出す。
「あなたに勝負を申し込むわッ!!」
「…ぼくとジャンケンをしようっていうのか」
腕を組んでレミリアを見つめる賢。
「そうよ!私の能力と、妹とメイドと知人の能力を賭けて!!」
「だが断る」
「…………え?」
「勝負なんてしないよ」
「な、なんで?」
唖然とした顔で問う。
「だ、だってあなた勝負を挑まれたら断らないんじゃあ…?」
「誰だ?そんな事言った奴は?」
そういえば、誰も言っていない。と思い出すレミリア。
まずい…テッキリ勝負を挑まれたら絶対に乗る奴だと思い込んでいた!!と内心焦る。フランと咲夜の能力を取り返す最後のチャンス…。
ここで勝負に乗せられないのなら、こいつは…殺すしかないのだから!幻想郷の未来のために…。
「な、なんで?言っては何だけど、私の能力は結構便利なのよ?勝負する価値が無いとは言わせないわ!」
「でも断る。うーん…何ていうのかな~。ここに来てからぼくの能力も結構成長したんだ。フランドールほどの純粋なパワーが無くとも、あんたの能力が結構すごいのは側に居て感じるよ…」
「ならどうしてッ?!」
「だけど…『ジャンケンでズルが出来そうな能力』なんだよな~。そう感じる。ぼくは『相手を乗り越えるためにジャンケンしている』んだぜ?『最初からズルイ能力』なんていらないよ…」
なんて奴だ。とレミリアは思った。『運命を操る程度の能力』を当てた事ではない。その能力が判って尚『自分が勝つと確信している』事に、だ。
レミリアが凝視する賢の顔に、全く嘘は無い。「マジに勝てるけどこんな能力欲しくないぜ」という顔をしている。
そしてまたそれはレミリアを戦慄させた。交渉が決裂した後、自分が相手の前で無事なのは、賭けられる能力を持っているからだ。
だがその能力をいらないと言われた今、こいつは自分をどうする気だろう…?止め処なく嫌な汗が流れ出す。
今までは追い詰められてもある程度力押しが出来た。だがこいつには弾幕が効かない。かといって逃げようとしても、『目』を掴まれたら終わりだ。
…いや、既に手中に収めているのかも…。このまま自分を拷問に掛け、紫の居場所を吐かせるかも知れない。
吸血鬼という体質上、そう簡単には死なないが、逆に死に難い身体を、動けない状態で少しずつ破壊されていったら……。
目頭に熱い物を感じた。何?この感覚…。ああ、そうか、怖くて涙が出てきたのね…。生まれてはじめてかも…。
パニックを起こしかけている部分を、冷静に見つめるレミリア。
何とか…しなければ…。
その時、賢が動いた。右手をレミリアの方へ伸ばし、手の平を向ける
それだけの行動に、キャッと悲鳴を上げて尻餅をついてしまうレミリア。
「ねぇ…」
ゆっくりと賢が口を開く。
「プ…。そんなに脅えるなよ…。ぼくがお前を拷問に掛けるとでも思ったのかい?」
と、右手を否定の意思を示すように横にふる。
「……?」
顔を庇っていた両腕の間から、困惑気味に賢を見る。
「ふふっこれだけの力を持っているんだから笑えないか…今の僕はあんたを一方的に痛めつけれる程成長したんだもん・・・でも真面目に考えてみろよ…。
ぼくはまだ小学生だよ?帰る為とはいえ、無抵抗の自分より幼く見える子供をいたぶったりすると思う?そんな事出来ないね。良心が痛むよ。ふつー

「…………私に何かするつもり?」
尻餅をついたまま聞き返す。
「何にもしないよ!あの屋敷にはぼくが探してた電話はないんだろ?信じるよ…その点に関しては嘘をついていないんだろう。
紫の場所をあんたは多分聞いても教えてくれないだろうし。
…なら、今ぼくが探すべきは人里への道だ。となると、屋敷とかあんたの事は放ってこのまま湖の周りを周って道路を探した方がいいって事だ。
あれだけの大きな屋敷だから、人里への道があるはずだ…。能力を数個奪ったお陰で腹も減ってないし、のども渇いてないからな…」
そう言って歩き出し、レミリアの横を通り抜けて立ち去ろうとする。
数m行った所で一旦立ち止まり、冷たい目で振り向いて言った。
「それに…君が『二つ帰る方法を教えてくれた』じゃあないですか…」
「あッ!」
今更しまったと思うレミリア。
「一つ目は紫を探す事だが…。…二つ目は、幻想郷…だよな?の結界について詳しい奴を町で探す事…日本語は通じるみたいだし…。
結界で囲まれてるんだろ?結界と言えばお寺とか神社ってイメージがあるから…そういう所を探してってみるよ…」
そしてまた歩き出す。
「さてと、まずは服の汚れをとらなくちゃな・・・人里にいって洗濯してもらうか・・・それか、湖で自分で洗おうかな・・・?この服はすぐ乾くように作られてるんだからな・・・とにかくお母さんからもらったぼくのお気に入りの服なんだ・・・」
くだらないことをしゃべりながら歩き続ける少年、まるで自分をなめ切っているとしか思えないように聞こえた。
クソッ!と心の中で悪態をつくレミリア。里で結界について聞いたら直ぐにでも博麗神社の名前が出るだろう…。なんて事だ!まさかジャンケンを断るとは思わなかったのだ…!
それ以上に、心の中に湧き上がってくる思いは、自分の甘さと相手に脅えてしまった事への恥ずかしさ。さらに、…あいつは…自分より遥かに年下でついさっきまで無力な少年だった癖にあいつは………!
この私に対して……レミリア・スカーレットに対して『脅えるな』などと言いやがったッ!!!!私を『殺さない、暴力は振るわない』と哀れみを掛けて来やがっただと!!!!
尻餅をついたまま、手元にあった小石を怒りに任せて握る。
バキッ
ボキッ
小石が砕けた音と骨が砕けた音が同時に響いた。
あいつは私の事を見くびったんだ!!ジャンケンをしても…私の能力を乗り越えて勝つだろうと見くびって居たんだ!!!
だが…。
と、ゆっくり立ち上がるレミリア。
視線の先には、遠ざかっていく賢の後ろ姿がある。
今は…見くびられているから、いいんじゃあないか。
私の事を脅えきった小さな子供と考えているのか…?あの後姿…無防備過ぎるッ!
あの隙だらけの後頭部へ弾幕を……いや、たった一発の弾丸を叩き込むッ!!
お前は勝負を拒んだのよ…!当初の予定通りここで殺す!私を侮った事を、後悔する時間さえ与えない!
賢の方へ右手を向け、出来るだけ力を押さえ…気取られないように一発の『弾』を作り出す。
いつもは、同時に大量の『弾』作っているので、一発だけは難しい。だが、弾幕にしていまうと、途中で気付かれる恐れがある。
あいつはフランの弾幕を弾く『念力』を持っている。だが、後ろを向いた状態じゃあ『念力』使えまいッ!
そして、たった一発でも、人間の頭を砕くには十分だ!
手の上に浮かべた『弾』。
注意して狙いを定め、解き放つ。
赤い軌跡を空中に残しながら、猛スピードで賢の後頭部目掛け突き進む『弾』。
一秒も掛からず、弾丸は賢の後頭部に到達した。

パァアアァンッ。

乾いた音が響く。
森の中で、一本の木の幹が爆ぜた。
「え!?……………」
元居た場所に、賢は居ない。
レミリアの瞳には、『自分の腹部から伸びている紅く太い何か』が写っていた。
「…ぼくは子供をなぶったりしない…」
レミリアの背後から賢の呟きが聞こえた。
「だが…これは『正当なる防衛』……。この『反撃』に『良心のタガは無い』…。おまえも吸血鬼なんだろ…この程度じゃあ…死なないよな?」
ボーイⅡマンの拳がレミリアの腹を貫いていた。
「…グフッ……!」
血を吐くレミリア。
「…なんて…事を…!…こ…こんな……!」
「お前には判らない事だろうが、ぼくには第二の目があるんだ…。ずっと後ろを警戒してたんですよ…そして血に濡れて浮かび上がっているのが第二の腕だ……。
覚悟したんだろうな?…お前から仕掛けてきたんだ……案内してもらうよ。八雲紫の所へ……」
ズボォッっと音を立て、レミリアの背後に腕を引き抜くボーイⅡマン。
ガックリと膝を突き、穴の開いた腹部を押えるレミリア。
「まさか…こんな…」
ぶつぶつと呟いている。
「ん?まさかこれで致命傷のはず無いよな?」
「こんなに……」
腹部を両腕で押えたまま、背後にいる賢を振り仰ぎ、横目で睨みつける。
「こんなに『上手く行くなんて』…!!」
「何?!」
「……私たちの勝利よッ!!!」
「何だと?!…」




TO BE CONTINUED……


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