アットウィキロゴ
ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

デッドマンズQ ~幻想郷~ ―東方魂録書― その(2)

最終更新:

shinatuki

- view
だれでも歓迎! 編集
 さて、この侵入者について幾つか分かったことがある。一つは侵入者が幽霊であること。どうしてなのかは
何となくとしか言いようがないが、前に会ったあの白玉楼の亡霊と似た雰囲気を持っていた。だから多分幽霊なのでしょう。
一つは彼がワリと慎重であること。あの白黒泥棒みたいに堂々と玄関をぶっ壊して侵入してきたり、
壁に大穴を開けてこっそり入ってくるような豪快な強盗まがいのことをせず、
逆にこっそりとばれないように慎重にしながらまるでドブネズミみたいに侵入してきた。
一つはお目当てが白黒泥棒と同じように図書館にあるパチュリー様の本がお目当てのようだということ。
現に彼の右腕には数冊の本が入った袋が握られている。つまり彼は自分の仕事を終え、今正に帰ろうとしている。
まったく、こんなところにもネズミがいたなんて、やれやれだわ。あんだけ大掛かりなことをしておいたのに、
特製の猫イラズはあんまり役に立っていないようね。またパチュリー様に叱られてしまうわ。
彼が何のために、誰のために、本を持っていくのかなんて私にとっては本当にどうでもいいこと。
今の私にとって重要な仕事は、彼をここから追い出すこと。いいえ、それだけでは不十分だわ。
彼には刻み込まなければならない。彼の魂に敗北を、2度と紅魔館に挑んで来たいと思わせないように
『完膚なきまでに勝つ』必要があるッ!
 彼女はどこからか銀製のナイフを取り出すと吉影に向かって投げる。しかし時の止まった空間において
彼女の手を離れたナイフは吉影に届く前に止まる。それでもお構いなしに、彼女はそれらをいったいどこに
入れておいたのか、新たなナイフを取り出すとさらに吉影の方向に投げる。それを繰り返していくと
吉影の周りには二重、三重のナイフの円が、刃先は彼に向かってできていた。無論、本の入った袋に
ナイフが当たらないようにはしてあるが。ナイフを投げ終わると咲夜は吉影からは離れて止まった世界を
再び動かそうとする。

―――――そして時は動き出す―――――


       ―東方魂録書― その(2)

 瞬間、何が起こったのかわたしには理解できなかった。目の前、いやわたしの周りにあるそれが何だったのか
最初はわからなかった。
「なッ!?」
その次に、少なくとも体感できたことは、わたしが大量の何かに貫かれたことだった。
それは生命に触られたような感触であったし、鋭い刃物で貫かれたような感じでもあった。
それがもたらしたものは、トンでもない激痛。
「うおおおおあああああ――ッ!!?」
なんて……こった。どうやら無事に仕事を終えられるかと思ったら、そう、うまい話があるわけではなかったようだ。
辺りを見る。わたしを貫いたものはナイフらしい。辺りに散らばっていた。
腕や脚、体が焼けるように痛い。痛みというものを久々に思い出した。ここまで辛いものだっただろうか?
しかしまだ手足は取れていない。腕や脚のない生活を送る必要はまだない。だが誰が、いつの間に、
どうやってこんなにも大量のナイフを投げたんだ?
「あら、まだ無事みたいね。意外としぶといのね、ネズミも幽霊も。」
女の声が聞こえた。目の前にいたのはメイド服を着た人間だった。妖精ではない。幽々子の話だと人間のメイドが
この館のメイド長で、時間を操るとか言っていた。このナイフの量と目の前の人間から判断すると、こいつが
メイド長か。時間を操るってのはかなり厄介だ。
「さて、これから貴方がその荷物をこちらに返して、『もう二度とこの館には近づきませんので、どうか
 許してください。お願いします。』と泣きながら土下座して謝るなら、まあ許してあげるかもしれない。」
冗談じゃあない。どうしていきなり目の前の人間に泣きながら土下座なんかしなくちゃあならないんだ…!?
しかもこの本はちゃんと持ち主に『許可』をとって借りたものだ。それをなんで何も知らない従者に邪魔されないと
いけない?そう思い、口を開こうとした。しかし1本ナイフが飛んできた。
「…ふう。私も暇じゃあないの。貴方の言い訳なんて聞いてる時間もないの。喋っていいのは謝罪の言葉か
 反省の弁だけよ。」
どうやらこいつも話の聞かない従者らしい。この世界の従者は話を聞かない奴しかいないのか。
そしたらこんなの相手にしないで逃げた方がいいな。だがどうやって逃げる?そうやって考え込んでいると
「!?」
またナイフの環がわたしの方に刃を向けてできていた。避けきれずにナイフの雨を再び受ける。
「どうやらまだわかっていないようね…。貴方が置かれた立場というものが。」
再び激痛がわたしの魂を支配する。
「あぐわっ!?」
「逃げられるような状況じゃあないの。今貴方の首には死刑囚みたいに縄がかかって、それを絞めるかどうかを
 判断するのが私。絞められないように命乞いする立場にいるのよ貴方は。」
こいつは妖夢以上にヤベー奴だな。自分の行動には確実な自信と誇りを持っていやがる。こういうのは能力とかよりも
その性格の方がよっぽど厄介だ。わたしは反撃のために幽霊の銃を奴に向ける。
「あらあら。よっぽど舐められてるわね。銃で私が倒せると思って?」
その言葉を無視し引き金を引く。しかし銃を出た弾丸の先にはメイドはおらず、弾丸ははるか遠くに飛んでいった。
代わりにメイドは
「はあ、廊下の壁に穴が開いたら私が直さなきゃいけないのよ。まったく。」
そう言ってナイフを投げてきた。
「うおっ!」
何とかナイフを避ける。こんな危なっかしい奴と戦いたくはない。わたしは近くの部屋に逃げようと思い、
さっさとドアを通り抜けようとした。
「……ン!?」
しかしダメだ。誰かいるのか、入れなかった。早く逃げないとまたナイフのシャワーを浴びることになってしまう。
別の近くのドアに触れる。やっぱりそこにも潜り込めそうにはなかった。
「ッチィ」
さらにまた別のドアを調べる。今度も無理だった。
「……何なんだ一体!?さっきはどこの部屋も開いてたぞッ!?こんな時に限って……」
こんな時……ハッ!まさか………!?
「あらあら残念ね。私がこの辺の部屋に結界を仕掛けなければ、貴方は部屋を通って私から逃げられたのに。」
この女、そんなことまでできるのかよ…。まったく厄介すぎるぞ。しかしどうする?
このままあいつに土下座して、理由を説明してどうにかしてもらうか?いや土下座したといってそのまま
この館から逃がしてくれたり、本を貸してくれたりなんてことを期待できるほど甘い相手じゃあなさそうだ。
じゃあどうする?ここから逃げられる場所なんてあるか?……一つだけあるな。
「さて、そろそろ土下座する準備と覚悟はできたかしら?」
その言葉をわたしは無視し、あいつに向かって本の入った袋を放り投げた。

「えっ!?ちょ、ちょっと!?」
あの幽霊が抵抗するなり謝るなりなんかすると思ってはいたが、まさかいきなり本を投げ返すなんて思っても
いなかった。だから私は時を止めるのも忘れて、放り投げられた本を受け取った。パチュリー様の大事な本に
傷が付いてはいけないので、空から落ちてくる女の子を抱え上げるように、できるだけ丁寧に受け取った。
「貴方!一体何のつもり……」
本をキャッチした後、奴の真意を聞こうとしたが、既にそこにはあの幽霊の姿はなかった。幽霊自体は
幻想郷でもそう珍しいものではないが、本当に幽霊みたいにドロンと消えてしまった。
「はあ、一体何なんだったのかしら?」
私のナイフが効き過ぎて成仏してしまったのだろうか。それならそれでいいが。パチュリー様の本は返してもらったし、
ここに忍び込むネズミが一匹減っただけだから何の問題もない。それよりも早くこの本をパチュリー様に返さないと。
パチュリー様が言うには図書館の本には見るだけでも死んでしまうような本もあるとか。ああ恐ろしい恐ろしい。
本の管理はメイドの仕事の範囲外だからさっさと渡してしまいましょう。
 十六夜咲夜は侵入者を退治したと思い込み、自分の銀製ナイフを拾い集め片付けると、本を本来の持ち主の
元へ届けようとした。しかし彼女は知らない。その袋の中の1冊、あの透明でダークブラウンの本が消えていることに。
彼女が袋を受け取る瞬間、袋の中に小さなスキマが発生して、そこにその本が吸い込まれたことに、
紅魔館のメイド長は気づけなかった。



 ここは紅魔館の地下、図書館とは別の場所にあたる、薄暗い地下室である。そこに侵入者、吉良吉影はいた。
そう、彼は地下、つまり廊下の床には結界が張っておらず、そこに潜り込めることに気づいた。だから咲夜に
袋を投げつけ、その隙に地下に潜り込んだのである。幸い、咲夜は時を止めなかったので、吉影が地下に逃げ込んだことに
気づかなかった。
「しかし……、地下に逃げ込んだのはいいが……、ここはどこだ?」
地下に行けばあのだだっ広い図書館に行けると吉影は思ってはいたが、見当違いのようだった。図書館ならば
またあの魔法使いにでも会えば何とかなると思っていた彼にとっては少々残念な結果になってしまった。
「まあ、いい。同じ地下ならすぐに図書館にでも行けるだろう。」
彼はさっさと薄気味悪い暗い空間から出ようとした。しかし彼に不幸の女神が再び微笑んだ。この部屋の住人に
見つかってしまったのだ。
「あなた、だあれ?」

 なんだ?こんな地下に誰かいるのか?ただの倉庫だと思っていたが、誰か住んでいるのか?メイドのせいで疲れたから
早く仕事を終わらせたいのだが…。
「ねえ、あなたは誰なの?私と遊んでくれるの?」
声と言葉を聴く限り、ただのガキのようだ。それなら別に気にする必要はないな。適当にあしらえばいいか。
「すまないな。オレはこれから仕事があって君とは遊んでいられないんだ。悪いんだが別のやつを当たってくれないか。」
「え~そんなのやだーッ!退屈で退屈でしょうがないのよッ!さっきは誰か来て暴れてたみたいだけど、
 私は完全に蚊帳の外。そんなの知ったら私も暴れたくてしょうがないんだって。」
やれやれ。ガキっていうのはどうしてこう我侭なやつしかいないんだ。それにわたしはこの館の人間じゃないんだ。
ガキの世話をするのは保護者の役割だ。わたしの仕事じゃあない。
「本当に悪いな。オレはすごく疲れていて君の相手をできそうにない。メイドにでも相手してもらえ。」
わたしはそう言って扉の前へ行こうとした。
「ふーん。そう。遊んでくれないなら…」
「壊れちゃえ」
躓いた。いや躓いたというよりは引っ掛けられたというか、とにかく転んでしまった。何があったのか足元を見る。
ないのだ。わたしの右足が吹っ飛んでいた。右足はわたしの体を離れて一つの物体となってそこにあった。
「なッ!????」
「アーーッハハハハハハハハハハハハハハ。いいわねその表情!さいっこうよーッ!」
い、一体何をされた?奴はあそこにいる…。弾幕か何かで切ったか?いやそれなら気づくはず…。
「アハハハハ、感謝しなさいよッ!ちゃんと私と遊べるように足は"破壊"せずに"切り取って"あげたんだからさあッ!
 前にパチュリーに聞いたことあるんだけどさあ、幽霊って壊されてもパーツさえあればくっつくんだって?
 ねえ、そうならその足くっつけて見せてよ!そして私と遊ぼうよッ!」
目の前の薄黄色い髪の、変なカラフルな宝石みたいな物をぶら下げた枝を背中につけたガキが
気味悪く歪んだ表情で笑う。このガキッ……!こいつが何でも破壊する能力を持つっていう吸血鬼か……。
それにしてもこいつ、どっかおかしいんじゃないか?吸血鬼ってそういうものなのか?とりあえずわたしは
右足を拾い、それを繋げる。脚のない生活なんて苦痛だ。
「へえー、本当にくっつくんだ。妖怪みたいね。人間の幽霊のくせにサッ!それじゃあ弾幕ごっこを始めましょ!」
ふざけんじゃないッ!どうして吸血鬼なんかと戦わなきゃいけないんだ。足が戻ったしわたしはこんな危険な
部屋に長居する気はない。わたしは扉に向かう。しかし扉はわたしの侵入を拒んでいるようだった。
「なんだ?出れないぞ?どういうことだッ!?」
「クスクス。うふふふ、やっぱり。パチュリーはもう一つ言ってたわ。幽霊はどこでも通れるように見えるけど
 実はそうじゃないって。決められた道とか開いてる穴とかしか通れないって。特に"許可された場所"じゃないと
 誰かのいるところは通れないらしいんだって。ねえ、そうなんでしょ!?だから私は許可しないわ。
 『私と遊ばないとこの部屋から出さない』ってね!」
な、なんだとおおおおおおおおおおーーーーーッ!?ふざけんじゃないこのガキャああああ。さっきのメイドのせいで
今にも消えちまいそうなのに………、冗談じゃあないッ!冗談じゃあないぞおおおおおおおッ!!
「アッハッハ!それじゃあ始めましょ!楽しい楽しい弾幕ごっこをサァッ!!」

 場所は変わって大図書館。パチュリーは整理と掃除を終え、優雅にお茶をしていた。そばにはあのメイド長がいた。
「咲夜、どうして貴女がそれを持っているのよ。」
咲夜はお茶と一緒に吉影から受け取った袋を持ってきていた。そして今それをパチュリーに渡そうとしていた。
「えっ?これ館に侵入してきた幽霊が持っていたのですが、図書館から盗まれた本ではないのですか?」
「ハァ。貴女は肝心なときには仕事しないで、どうして、しなくてもいい仕事はするのかしら。」
パチュリーはため息混じりに咲夜の仕事を評価する。あんまり芳しくない評価である。
「どういうことでしょうか。」
「ま、ちゃんと貴女に教えなかった私にも責任はあるのかもね。その本は私が幽霊に"ちゃんと"貸してあげたよ。」
そう言って彼女は咲夜に説明した。吉影は確かに館に侵入してきたこと。しかし目的は図書館の本だけだということ。
その本もきちんとパチュリーに断って借りたこと。今度からきちんと玄関から入ってくるように約束したこと。
「そうでしたか。それでもここに侵入してきたことには変わりありませんわ。」
「幽霊は彷徨うのが仕事よ(彼の場合は違うけど)。幽霊が1匹2匹入ってきたぐらいで騒がないの。
 それに魔理沙から本を守ることの方が重要よ。そっちの仕事をきちんとしてくれないと困るわ。」
その言葉を聴いて一瞬咲夜の顔がムッとした表情になったような気がしたが、
「失礼しました。」
そう言って頭を下げた。さっきの表情は気のせいのようだ。
「それで彼はどうしたの?まさか成仏させたわけではないわよね?」
パチュリーは吉影の安否について聞いた。彼を心配しているわけでもないが、彼の依頼主が地獄の裁判員なので
何かあるとこっちに問題がくるかもしれない。それはそれで面倒だ。
「……さあ?彼から本を返してもらったらいつの間にかいなくなってしまって…。」
「……とりあえず詳しいことを教えてもらおうかしら。」
今度は咲夜がパチュリーに吉影と戦ったときの状況を説明した。
「……ふーん、もしかしたら彼、成仏したのかもね。そうなったら面倒だわ。」
パチュリーは咲夜の話を聞いて、彼の現状を推測した。吉影の安否が絶望的なことから、これから起こるであろう
出来事に彼女は一抹の不安を感じていた。いくら彼に問題があったからといって殺してしまったのは少々やりすぎだ。
とりあえず、入れられた紅茶を一口飲む。豊かで鮮やかな香りが彼女の精神を落ち着かせる。
「ふう、今日の紅茶は随分と美味しいわね。」

 地下の日の当たらない暗い部屋で、僅かながらの蝋燭の光の中、華麗な弾幕が舞っていた。色とりどりの
光弾が円形や放射状、格子状などの様々な形を描きながら飛んでいた。外から眺める分には綺麗な映像であったが、
中ではほぼ一方的ともいえる戦いが起こっていた。部屋の住人、フランドールは弾幕を描くものであった。
彼女は彼と戦うために弾幕を撃っていた。その弾幕の中にいるのは吉影だった。彼は全力で弾幕を避けていた。
が、メイドとの戦いにおいて随分と疲労を溜めていた彼にとって、彼女の弾幕はとてもじゃないが避けられるものではなかった。
色とりどりの弾幕は容赦もなく彼を襲う。腕、脚、体、頭と避けようとしても言うことの聞かない体に当たってしまう。
そんな中でも彼は自分の銃で彼女を弾幕の隙間から狙い、撃つ。しかし相手は吸血鬼。満身創痍の吉影の撃つ
狙いの甘い弾など目を瞑っていても避けられた。彼は体のない自分の体がやけに重く感じられた。
自分の頭の中が霧がかかった様にぼんやりとしてきた。
 そして、フランの表情にも変化があった。最初は新しいおもちゃを手に入れた子供のように随分と
楽しそうに弾幕を撃っていた。しかし、彼の反撃が余りにないと、表情も曇ってくる。手に入れたゲームが
だんだんとクソゲーだと判明すると、顔が段々と絶望の表情を映していくように、彼女の顔も段々と変化する。
一方的なゲームは最初は楽しいが、すぐに飽きる。彼の動きがあまりにも鈍いことが彼女の娯楽を
つまらなくしていたのだ。だから飽きた。だから弾幕を止めた。
「ハァ、ハァ、ハァ、……?」
彼は幽霊であったが、肩で呼吸をしていた。生きていたときの癖が出たのだろうか。彼の思考は疲れと痛みで
ほとんどまわらなかった。どうして彼女が弾幕を止めたのか。弾幕を止めたとはどういうことなのか。今の彼には
考え付かなかった。そしてフランは目の前の今にも消えてしまいそうな幽霊を前にして
「ツマラナイわ。こんな虫けらにも劣るようなものと弾幕ごっこなんかしても、何にも楽しくないわ。」
と『かわいそうだけど、あしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』って感じの養豚場のブタでも
みるかのように冷たい、残酷な目で彼を見ながら言った。
「まあいいわ。遊び終わったらキチンと片付けないといけない、って咲夜が言ってたわね。」
という言葉と共に彼女は自分の手を強く握った。その瞬間吉影の右足が"破壊"され消え去った。
「!?」
「へえ、幽霊ってそんな風に破壊されちゃうんだ。幽霊は破壊したことなかったから。」
彼は自分の右足に何が起こったのか理解できなかった。ただ倒れるしかなかった。
「―――――――ッ!!」
言葉のない叫びをする。そのとき、彼の手元にあのダークブラウンの本があった。その本は風がほとんどない部屋の
中でペラペラと、ひとりでにページをめくっていた。まるで誰かにめくられるように自らの目的のページを探していた。
「さてと、幽霊の壊れ方も分かったし、お片づけをしないとね。」
吉影は恐怖した。そして、恐怖の中で彼は自分の消失を覚悟していた。自分の魂は、意思はこのまま消えて
なくなってしまうだろうと予測していた。自分はここで終わりだろうと悪態をついていた。
 そんな彼の絶望とは無関係に手元の本はめくる事を止めていた。目的のページを探し当てていたのだ。
その本に彼の右手は触れている。
「じゃあね、幽霊さん」
彼女はまた手を開き、何かを手に乗せる。それと同時に吉影の右手は本を持ち、彼の薄れいく意思を無視して腕を上げた。
そして開かれたページをフランに突きつけ、見せた。吉影には自分が何をしたのか分からなかったが、
フランは手を握る刹那、そのページを見た。いや彼女にはページどころかその本すら見えなかったろう。
しかし彼女の魂はそのページに書いてある出来事は認識できた。彼女の魂は見たこともない大きな鉄の箱が、
馬より速いスピードで彼女に衝突したと確信した。たとえどんなに肉体が強い妖怪でも、天狗だろうが吸血鬼だろうが、
魂の確信したことに疑いを持つ者はいない。魂が確信したことに強靭な肉体であろうとも従わなければならない。
結果、フランの体は服の内側から軋み、砕け、粉砕された。
「グェハッ!」
フランの口から血が出る。感じたこともなかった強烈な激痛が彼女を襲う。自分に何が起こったか理解できなかった。
今の今まで絶対的に自分が勝っていた。相手はボロボロで消えてしまいそうだったのに。いつ?どうやって?
彼女は疑問を感じながら意識を失う。通常、吸血鬼の体はそんなことでは倒れない。だがそこに記述されていたのは
人間の魂についてのことだった。その記述に従って彼女は気を失った。
 その様子を見て吉影はあらゆる疑問を感じた。何故わたしはこの本を持っているのか。何故その本を彼女に
見せているのか。そして何故彼女はこの本を見ていきなり倒れたのか。しかしその疑問は疲労とダメージによって
ボロボロになった彼の意思が途切れることで考察されることはなかった。

 彼らが気絶して数分後、咲夜とパチュリーがフランのいる地下室にやってきた。彼女らはこの部屋が
いつになく騒がしくなっているとの報告を聞きつけて、フランの様子を見に来たのだ。また何かやらかしたのだと
始めは思っていた。
「失礼します。フランドー…」
扉を開けてまず最初に目に付いたのは、血まみれで倒れているフランの姿だった。
「!だ、大丈夫ですか!フランドールお嬢様!」
「とりあえず手当てしないと!」
咲夜はフランに駆け寄り彼女を抱き上げた。普段の吸血鬼の雰囲気を持った、狂気を伴う覇気を醸し出す
いつもの姿はなく、一人の幼い少女の、痛々しい大怪我した姿がそこにあった。パチュリーはフランに
応急処置の治癒魔法をかけると、一体ここで何があったのかを知るために周りを観察した。
騒がしいといっても、精々ここに忍び込んだ妖怪か妖精と弾幕ごっこでもやってるもんだと思っていた。
それがこんな大怪我を負うなんて、吸血鬼の彼女には普通には考えられないことである。何が彼女にこれほどまでの
傷を負わせたのだろう?そして彼女は発見した。右足を失い、今にも消えてしまいそうな、霞のような幽霊が
フランの近くに倒れているのをだ。
「いったい、一体何なのよ……。」
彼女はこの惨劇は何を持って引き起こされたのか、その謎に頭を抱えるのであった。



                                       To Be Continued →

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー