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アダマと上天のスードパラドクス

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アダマと上天のスードパラドクス ◆L62I.UGyuw



  ゼノンのパラドクスは、空間と運動の本質を詳らかにした。


【Paradox 1 : Zeno's Paradox】

大きな羽虫を思わせる四枚羽の生物が、薄暗い森の中を飛んでいた。
よく見ればそれは羽虫ではない。人に似た形を――具体的には裸の少年の姿をしている。
人間との明確な違いは、異様に長く尖った耳を持つことと、生殖器が見当たらないことくらいか。

「ったく、オレは虫じゃないっての。いきなり摘んで結界に閉じ込めるなんて何考えてんだか。
 でもまぁ、このパック様にかかればあんなもん屁でもないけどな」

威勢のいい台詞を吐きながら木々の間を往くのは妖精パック。
彼は三十分程の悪戦苦闘の後、ようやくひょうの張った結界を破って自由の身となったのだ。
そして今、顔に少しの焦りを浮かべながらきょろきょろとひょうを探している。

「何処行っちゃったんだよ、あいつはもうっ。勝手なんだからさぁ。
 早く探してやらないと……。あぁもう、何か暗くなってきたなぁ。
 ……別に怖いとかそういう訳じゃないんだからなっ!」

虚空に向かって妙な言い訳をしながらすいすいと木の合間を縫って行く。

ガッツは今頃何してんのかなぁ……。グリフィスって名前見てカッカしてなきゃいいけドベッ!?」

突如、何も無いはずの空中で何かに衝突した。
パックは思い切りぶつけた鼻を押さえながら、痛みを紛らわすようにその場でくるくると回る。

「痛ェ――っ! な、何だこれ? ……ってまた結界?」

見れば近くの木に数枚の符が貼られている。ひょうが使っていたものだ。
少し離れた木にも貼られている。
どうやら結界は正方形の領域を囲っているらしい。
だが内部には何も無い。
例の妖怪との戦いで張った結界を放置していったのか。

「めーわくだなちょっと。
 使い終わった道具はちゃんと片付けろってママに教わんなかったのかよ。
 ――――ん?」

ゆらり、と。
結界の中で空間が揺らぐのをパックは敏感に感じ取った。

「え、わ、な、何だぁ?」

一瞬、辺りが眩い光に包まれ――、

「ふぎゃっ☆」

ゴテゴテとした少女趣味の服の上に水色のケープを羽織った少女――胡喜媚が結界の中央に姿を現して、前のめりに可愛らしく転んだ。
パックはこれ以上ないほど驚愕する。

「――お、お、おま、お前っ!」

忘れる訳が無い。
ガッツの姿で死体の山を築いた怪物だ。
身体の各所に打撲や火傷の痕があり、服も若干汚れてみすぼらしく見えるが、見間違えることは無い。
その怪物がパックの叫びに反応して顔を上げた。
パックはしまったと思った。思わず声を上げてしまった自らの迂闊さを呪うが、時既に遅し。
胡喜媚の視線は既にパックを捉えている。

「こ、このっ。や、ややや、やるか!? エ、エルフ次元流が、ひ、火を吹くぞ!?」

パックの虚勢には特に構わず、胡喜媚は口を半開きにしてその大きな目で彼を見詰めた。
そして、にぱっと破顔する。

「妖精さんなのら~~☆」
「のわあぁぁぁぁぁぁ!」

彼我の体格差も考えずパックに飛び付く胡喜媚。
パックの視界一杯に満面の笑みが飛び込んで来た。
思わず目を瞑る。
そして妖精は哀れ悪徳ロリータの下敷きに……、

「――ぎゃん!」

とはならなかった。
胡喜媚はパックの鼻先で見えない壁に跳ね返されて背中から地面に落下した。
パックはいつまで経っても予想していた衝撃が来ないことに気付き、恐る恐る瞼を上げた。
そして、あれ、と間抜けな声を出す。

「あー、そういや結界があったんだっけ……」

自分と同じ失敗を犯した少女の姿を見て、パックは少し冷静に戻る。
と同時に、ひょうがこの場に結界を残していったことに対する疑問も氷解した。

「う~、それなら風さんに……はれ?」

立ち上がってまた何やら行動を起こそうとしていた胡喜媚だったが、糸が切れたようにその場にとすんと尻餅を突いた。

「体がへろへろ……変なのっ☆ 時間も上手に泳げないし、おかしいよっ☆」

口を尖らせて不満げな声を上げる。

「……えーっと、制限ってやつじゃないの?」
「せーげん?」
「ほら、強いヤツは力を抑えられてるとか何とか最初に言ってたじゃんか」

う~ん、と必要以上に首を捻って記憶を探る胡喜媚。
そして出た答えは、

「喜媚、わかんないっ☆」

パックはげんなりとした様子で肩を落とした。
本当にコイツがガッツの姿を騙って惨劇を引き起こした張本人なのだろうかとパックは悩む。
自らの眼で確認したにも拘らず、自信が無くなって来たのだ。

そのとき、彼女は何かを気にするように、急にそわそわし始めた。
怪訝な表情になるパック。
そんな彼を胡喜媚はキッと見据える。
彼女の視線に射竦められ、パックの喉からひゃあと高い音が漏れた。

「ねぇっ、妖精さん☆ スープーちゃんわっ!?」
「……へ? 誰?」

訊き返すパックを無視してなおも胡喜媚は周囲を見渡す。
パックも釣られて首を動かすが、視界にはただ鬱蒼とした森が広がっているだけだ。

「スープーちゃんはスープーちゃんなのっ☆ スープーちゃん? スープーちゃん、どこ行っちゃったの?」

まるで要領を得ない。
だが誰かの名前であることは判る。
しかしパックはその名に覚えが無い。
一応名簿を取り出してざっと眺めてみるが、それらしい名前は見当たらない。

(何だかなー。相手にするだけ無駄っぽい感じだなぁ。さっさと他行くかな。
 大体こんなヤバいヤツ、関わらない方がいいに決まってるし。あー、でもドコ行きゃいいんだか)



――ぱきり。



そのとき、パックの背後から枝を踏み折る音が聴こえた。
慌てて振り返る。

「お二人とも――どうやらお困りのようですね。おっと、そう警戒しないで下さい。
 僕は『探偵』。困っている人の味方ですよ」

いつ現れたのか。
そこには、不敵な笑みを浮かべた白髪の少年が佇んでいた。


**********


  オルバースのパラドクスは、永遠不変の宇宙という概念に疑問を投げ掛けた。


【Paradox 2 : Olbers' Paradox】

「ふうん、なるほど、ね」

唐突に現れた『探偵』――秋瀬或の手際、というか話術は見事で、『スープーちゃん』を探すのを手伝うと言いながら、あっという間に胡喜媚からいくつかの情報を引き出していった。

まずは彼女の名前。
『スープーちゃん』とやらが彼女の恋人らしいこと。
そしてその彼をどうやらひょうが連れ去ったこと。
胡喜媚が時間を自由に泳ぐ能力を持っていること。
しかしこの場では過去へは行けず、未来へ行くにも非常に抵抗が大きくなっている(胡喜媚はこれを時間がねっとりしてると表現した)こと。

その辺りまで聞き出したところで、胡喜媚は突然地に突っ伏してしまった。
怪我が重くて倒れた――という訳ではなく、単に疲れて眠ってしまっただけのようだ。
この場での時間移動は異常に体力を消費するのだろう。
そんな推測を或はパックにつらつらと述べる。

「……なんつーかさ、ソツが無さ過ぎて主人公には向かないタイプだよな、あんた」

感心半分、呆れ半分といった様子のパックに、本当はもう少し訊きたいことがあったんだけどねと或は事も無げに返す。

「そうだ。そいつが寝てるんなら丁度いいや。
 聞いてくれって。さっきそいつがあっちでさ――」

パックが話し出す。
胡喜媚は結界の向こうで四肢を地に投げ出したまま動こうともしない。
お陰で彼らは話に集中することが出来た。
パックは胡喜媚の虐殺行為について話し終えると、続けて島全体の異変について話し始める。
幽界や竜脈といった耳慣れぬ単語を交えた説明に敢えて口を挿まず、或はパックが話すに任せている。

「――それでさ、その、向こうの方が――きっとこの地図の神社ってとこだと思うんだけど――何か変なんだ。
 オレと一緒に調べに行ってくれないかな。オレの勘だけじゃなくてさ、これが――」

言いながら、台の付いたゴルフボール大の透明な球体を小さなデイパックから抱えて取り出す。
球の中心には金属製の針が水平に――よく見ると僅かに下を向いて――浮かんでいる。球状のコンパスといったところか。
『永久指針(エターナルポース)』と呼ばれる、グランドラインの航海に使われる道具だ。

「――ずっとそっちを指してるんだよ。気になるだろ?
 普通はさ、調べてみたいって思うじゃんか。
 でもひょうはオレがそう言ってもちゃんと聞いてくれないしさぁ。
 まったく、ガッツより自分勝手なんだから。さっきもオレを置いてどっか行っちゃうし。
 その点、あんたはオレの話を……アレ? ねえちょっと、お~い? 何考え込んでるのさ。聞いてる?」
「え? ああ、うん……勿論聞いてるよ」

何が気に懸かったのか、パックの話の途中から或は顎に指を当てて視線を逸らしていた。
腕を組み頬を膨らせて、本当かよ、と疑わしげな視線を或に向けるパック。
それを見て、この自称妖精は随分人間臭い反応をするな、とどうでもいいことを或は思った。

「まぁ……確かに君の言う通り、神社を調査する必要はありそうだね」
「お、それじゃあ……」
「『探偵』として、君の依頼を請けよう。依頼内容は島の中心に座する神社の調査。報酬は――」

喋りながら、おもむろに結界の要である札に手を掛ける。

「え? ちょ、ちょっと、待てって!」

焦りの色を浮かべて制止するパックを意に介さず、或は札を纏めて剥がした。
見た目には何も変化は無い。だが胡喜媚を閉じ込めていた不可視の檻はこれで破られた。
落ち葉の上であどけない寝顔を曝す胡喜媚に堂々と歩み寄る或。

「報酬は彼女――胡喜媚さんの身柄でどうかな?」

要するに彼女を連れて行くことが依頼受諾の条件だ、と或は宣言する。

「連れて行くって……大丈夫なのかよ!?
 さっき言っただろ、そいつは――」

パックの言葉を最後まで待たず、或は知っているよ、と鷹揚に返した。
パックに言われるまでもなく、ミッドバレイから胡喜媚の危険性は聞き及んでいる。
それでも彼女の持つ情報と能力は『神』の謎を解く鍵になると或は判断したのだ。

「君の話を聞く限り、この子は単に善悪の区別が付かない子供なんだろうね。
 力の使い方は僕らが教えてあげればいいのさ。子供を導くのは年長者の役目だよ」

年長者って年じゃないじゃん、と愚痴りながらも、パックも渋々同意する。
胡喜媚を放置しておけば、またガッツの姿で無軌道に暴れないとも限らない。
あんな――深い泥土のような怨念を再び生み出すのはパックの本意ではなかった。
それに、ひょうが行ってしまった今、たとえ不安定でも戦力が必要だからだ。
胡喜媚を軽々と負ぶった或が、さて行こうかと告げる。

「まぁ、いいけど……。あ、ところでさ、あんた、名前は結局何て言うのさ」
「自己紹介したいのはやまやまだけど、生憎不都合があってね。
 ただの『探偵』ということにしておいてくれないかな」
「…………やっぱあんた胡散臭いんだけど」

こうして奇妙な三人組は山頂の神社へと向かい始めた。


**********


  ラッセルのパラドクスは、ときに純粋な論理ですらも当てにはならないことを示した。


【Paradox 3 : Russell's Paradox】

空間に満ち満ちた葉の擦れる音が、突然の爆音に一瞬だけ掻き消された。

「ちょっと、大丈夫なのかよ。今の、神社の方からだよな?」
「そのようだね。ただ、今の爆発音は随分上空から聞こえてきた。
 戦闘――という感じではないけど……。警戒するに越した事はないか」

或とパックは森の中で一旦立ち止まり、それまでの会話も中断して様子を窺っていた。
神社の方向の空から響いた爆発音。
まさか誰かが暢気に花火を上げている、などという訳ではあるまい。
ならば神社近辺には何らかの危機が待ち受けていると考えるのが自然だ。

「とはいえ、ここは前進が正解だね」
「うぇ、マジで? 危なくない?」

神社まではまだそれなりの距離がある。
何が起こっているにせよ、すぐに或達に危険が及ぶ可能性は低い。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、さ。何事もリスクを恐れていては良い結果は期待出来ないものだよ」

ネットに接続出来れば今の爆発についての情報が得られるかもしれないが、残念ながらここは携帯電話の圏外だ。
この場に留まったところで情報は得られないし、従って事態が好転する見込みはほぼ無い。
或は一旦爆発のことは棚上げすることにして再び歩き出した。

「それで、さっきの話の続きだけど……」
「あんた、余裕あるなぁ。ま、いいけどさ。んっと、ドコまで話したっけ? ああ、そうそう――」

パックは先程までの話を再開する。内容はこの島の異常性についてだ。
大半は黒衣の術師、ひょうが語った内容の受け売りだったし、そのため内容はいまいち纏まりと正確性に欠けたものだったが――或は適切に合いの手を入れてパックから話を聞き出した。

「精神体だけをコピーの肉体に入れている、か」
「そうそう、そう言ってた。でもそんなことホントに出来るのかねぇ」

精神体とは具体的にどういうものなのか、という疑問は取り敢えず脇に置いておくとして――大方字面通りの代物だろうから――ひょうが語ったというその仮説は興味深い。
精神体をコピーの肉体に入れる前に記憶を弄っていると考えれば、異星の住人と問題無くコミュニケーションが取れることにも説明が付く。
リヴィオの回復力が落ちていたのは、コピーの肉体の方を調整されていたのだと考えればいい。

ではそんな面倒なことをしてまで『神』がこの状況を作った理由は何か。
時間の壁も空間の壁も、ひょっとしたら世界の壁すらも越えて様々な人々を――ヒトですらないものも――集めた理由は何か。
そして集めた人々に殺し合いをさせる理由は何か。

まず思い付く目的は、実験。

このゲームを何らかの実験と考えるなら、ひょうの仮説は確かに妥当だ。
実験とは再現性が最も重要視されるものなのだから。

つまりこの場で死んだとしても、オリジナルから引き剥がしたときと同様に精神体だけを回収する。
その上で新たな肉体を与え、記憶を弄ってまた同様のゲームに放り込む。
まさに無間地獄、という訳だ。
その場合、記憶がリセットされることはある種の救いなのかもしれないが。

だが――だが、だ。
再現性を重視するなら――おそらく誰もが思い付くように――もっと単純で優れた方法がある。
つまり肉体だけではなく精神体まで含めてコピーしてしまえばいいのだ。
それが出来るなら精神体の回収や記憶の操作などという七面倒臭い作業も必要無い。
しかも何千何万という実験を同時並行で行うことも出来る。

そしてこの場合こそが絶望的に厄介な状況と考えられる。
何しろ、『神』にとって自分達は良く言っても実験室の片隅のリトマス紙程度の存在でしかない、ということになるからだ。
反逆の目など億に一つ有るかすら怪しい。
しかも元の世界にはオリジナルが存在するのだ。
仮に億が一の奇跡を起こし脱出が叶ったとして、一体何処へ帰れというのだろうか。



「――――っつーこと。ま、こんなもんかな」

考えている内に、パックの話は粗方終わっていた。
勿論、聞き逃すようなヘマはしていないが。

「なるほど、参考になったよ。有難う」
「はっはっは。敬うが良いぞ」

忙しく羽をパタつかせながら、パックは空中で偉そうに踏ん反り返った。
その様子を眺めて或はクスリと笑った。

それにしても――と或は思う。

ひょうという術師はそれなりに頭が切れるようだ。
彼は全て理解した上で、徒に絶望を振り撒くことを恐れて敢えて伏せたのだろうか。
それともパックに話していない何かがあるのだろうか。
ひょうと直接話してみる価値はありそうだと或は考える。もっとも、互いにそれまで生きていられればの話だが。

「やれやれ、難儀なことだ」
「ん? どーかした?」
「いや、考えることが多くて探偵冥利に尽きると思っただけさ」


**********


  EPRパラドクスは、世界の法則が人間の直観に真っ向から反していることを明らかにした。


【Paradox 4 : EPR Paradox】

秋瀬或は沈思する。

パックが永久指針を取り出したときに、或が含みのある態度を取ったのには訳がある。

彼が神社を調査する必要があると考えていたのは本当だ。
だがそれよりも、彼にとっては気に掛かることがあった。
それは――事象の全てが或を神社へと向かわせるように整っている、ということだ。
それもあたかも初めから仕組まれていたかのように。
そうだとすると、指針となる道具を持ち、現世を外れた力を感じることの出来る妖精は、メッセンジャにしてナビゲータか。

だが、そんなことが有り得るだろうか。
常識的には否。

自らの死を偽装し、コピー日記で雪輝と由乃の当面の無事を確認し、ひとまず彼らから離れることに決めた。
それからなるべく人目を避けるために森へ入った。
森へ入った理由はもう一つ、昼間の内、天気が大きく崩れる前に山中の施設を調査するため。
そして、発見に苦労するかもしれない研究所と工場よりも、まず山頂に位置する神社へと向かうことにした。
この一連の決断は、間違い無く自分自身の、秋瀬或の意思に依るものである――べきだ。
加えて、パックと胡喜媚に遭遇したことは全くの偶然。
だから彼らの齎した情報が不自然に都合のいいものであったとしても、それは純粋に幸運だと喜ぶべきであるはずだ。

そのはずなのだが――どうにも気に入らない。

或は背中から不可視の糸が伸びているような奇妙な錯覚を感じた。
そもそも自分の意思などはまやかしに過ぎず、ただ操り人形の如く誰かの意思の通りに行動している気さえしてくる。

偶然かもしれない。単なる考え過ぎかもしれない。
だが鳴海歩の話を――鳴海清隆とミズシロ・ヤイバ、そしてブレード・チルドレンにまつわる話を聞いてしまった以上、下らない妄想だと一笑に付すことは出来なかった。
複雑に交錯する人々を論理の糸で狂い無く操る、そんな神――いや、悪魔染みた存在を知ってしまったがために。
放送時に流れた『コッペリア』の序奏。穿って見れば、それすら深い意味を持っているように感じてしまう。

(――らしくないね、僕としたことが。やっぱりまずはパズルのピースを集めることに集中しないと。
 手持ちのピースだけでは足りない部分が多過ぎる)

とはいえ――スプーン一杯ほどの不安は、或の奥底にどうしようもなく溶けずに残る。

もし仮に、真実自分が、いや誰も彼もが意思を持たぬ操り人形だったとしたら。
この島が、いや世界の全てが巨大な人形劇の舞台だったとしたら。
悲劇も喜劇も遍く予定調和に過ぎないのだとしたら。

信じるべきものは何か。
信じられるものはあるのか。

――そうだ。
それでも――僕は雪輝君を愛している。
これは、この気持ちだけは――、





――――――それもまやかしだな。





「ッ――デウス!?」

眼を見開き天を仰ぐ。
確かに聴こえた。『神』の――いや、元『神』の重々しい声。
だが、視界に入るものは、押し潰すように揺れる木々と暗く小さな空。
肺に冷えた空気が沁み込む。

「な、何だよいきなり……。びっくりさせんなって。
 それより、もう少しで神社だぞ。気を引き締めてくれよ。
 この辺の雰囲気――かなりヤバいって」

顔の横にはお調子者の妖精。背には眠る少女。
何もおかしなところは無い。

「……聴こえなかった、のかい?」
「は? 何がさ?」

パックは気味の悪いものを見る目で或を見ている。
背中の胡喜媚は何の反応も見せずに寝息を立てている。

「……いや――」

デウスの声を聴いたのは自分だけだったらしい。
幻聴だった、と判断せざるを得ない。
思ったよりも疲れているのかもしれないと思いながら、或は小さく溜息を吐いた。
そして、何でもないよ、と言いかけて――或はあることに思い当たり、今度こそ体を強張らせた。



おかしい。



何故。
何故、僕はあの声をデウスのものだと思ったんだ?
僕は――デウスに会ったことなんて無いはずだぞ!?



【F-5/森/1日目 午後】

【秋瀬或@未来日記】
[状態]:疲労(中)、左肩に銃創、右こめかみに殴打痕
[服装]:
[装備]:コピー日記@未来日記、クリマ・タクト@ONE PIECE
[道具]:支給品一式、各種医療品、 天野雪輝我妻由乃の思い出の写真、
    ニューナンブM60(5/5)@現実×2、.38スペシャル弾@現実×20、
    警棒@現実×2、手錠@現実×2、携帯電話、
    A3サイズの偽杜綱モンタージュポスター×10、
    A3サイズのレガートモンタージュポスター×10
[思考]
基本:雪輝の生存を優先。『神』について情報収集及び思索。(脱出か優勝狙いかは情報次第)
1:『神』の謎を解く。
2:偽装した自身の死を利用して、歩や由乃に感づかれないよう表に出ずに立ち回る。
3:コピー日記により雪輝たちの動向を把握、我妻由乃対策をしたい。
4:探偵として、この殺し合いについて考える。
5:偽杜綱を警戒。モンタージュポスターを目に付く場所に貼っておく。
6:蒼月潮、とら、リヴィオの知人といった名前を聞いた面々に留意。
7:探偵日記の更新は諦めるが、コメントのチェックなどは欠かさない。
8:『みんなのしたら場』管理人を保護したい。
9:リヴィオへの感謝と追悼。
10:神社付近を探索したい。
11:出来ればひょうに直接会ってみたい。
12:何故、僕はデウスの声を知っている?
[備考]
※参戦時期は9thと共に雪輝の元に向かう直前。
※蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。
※リヴィオからノーマンズランドに関する詳しい情報を得ました。
※鳴海歩について、敵愾心とある程度の信頼を寄せています。
※鳴海歩から、ブレード・チルドレンと鳴海清隆、鳴海歩、ミズシロ・ヤイバ、ミズシロ・火澄、
 並びにハンター、セイバー、ウォッチャーらを取り巻く構図について聞きました。
 ただし、個人情報やスキルについては黙秘されています。
※鳴海歩との接触を秘匿するつもりです。
※【鳴海歩の考察】の、3、4、6について聞いています。
 詳細は第91話【盤上の駒】鳴海歩の状態表を参照。
※みねねのメールを確認しました。
 みねねが出会った危険人物及び首輪についてのみねねの考察について把握しました。
※参加者は平行世界移動や時間跳躍によって集められた可能性を考えています。
※ミッドバレイとリヴィオの時間軸の違いを認識しました。
※コピー日記(無差別日記)の機能が解放されました。
※パックからひょうの仮説(精神体になんらかの操作が加えられ、肉体が元の世界と同じでない可能性)を聞きました。
※胡喜媚から彼女の能力などについて若干の情報を得ています。

【胡喜媚@封神演義】
[状態]:疲労(大)、睡眠、全身に打撲と火傷、ひょうへの恐怖?
[服装]:原作終盤の水色のケープ
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:支給品一式 、エタノールの入った一斗缶×2
[思考]
基本方針:???
0:スープーちゃん……。
1:スープ―ちゃんを取り返しっ☆
2:妲己姉様、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
3:復活の玉を探して理緒ちゃんと亮子ちゃんを復活しっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化は可能ですが、時間制限などが加えられている可能性があります。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※第一回放送をまったく聞いていませんでした。
※原型の力が制限されているようです。
※第二回放送をろくに聞いていません。
 妲己の名が呼ばれたのは認識していますが、その意味は理解してないようです。
※雉鶏精としての能力により、時間移動が可能です。ただし大量の体力を消費します。
 時間移動はできても、空間移動はできません。

【パック@ベルセルク】
[状態]:健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品×1、永久指針(エターナルポース)@ONE PIECE
[思考]
基本:生き残る。
1:ひょうが無茶をしないか気がかり。
2:神社付近を探索したい。
3:胡喜媚を警戒。
4:『探偵』は何か怪しい。
[備考]
※浄眼や霊感に関係なくパックが見えます。
※参戦時期は少なくともクリフォトから帰還した後です。
※デイパックの大きさはパックに合わせてあります。中身は不明。
※会場に幽界と近い雰囲気を感じ取っています。
 違和感の中心地が神社であると感じています。
※ひょうの仮説(精神体になんらかの操作が加えられ、肉体が元の世界と同じでない可能性)を聞きました。
※胡喜媚から彼女の能力などについて若干の情報を得ています。

※永久指針は神社周辺の何処かを指しています。

【永久指針(エターナルポース)@ONE PIECE】
本来はグランドラインの特定の島を常に指し続ける特殊な方位磁針。
本ロワでは島の中心付近の何処かを指している。


**********


  パラドクスの発見とその解決は、パラダイムの転換を促す。


【Paradox φ : Omnipotence Paradox】

――クッ。

――流石に気付いたかね、『観測者』。

――だがまだまだ。

――その程度では良いサンプルとは言えんな。

――所詮、貴様はただの『神』の人形に過ぎん。

――だが同時に“全宇宙の記録(アカシックレコード)”の分御霊でもある。

――なればこそ果たせる役割もあろう。

――精々上手く踊ることだ。

――そう、私が真なる神になるために、な。


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