アットウィキロゴ
新漫画バトルロワイアル
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

指し手二人

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

指し手二人 ◆UjRqenNurc




静謐な空気の中、カチャカチャという微かな音が人の存在を主張する。

カーテンを閉め切り、明かりもつけていない建物の中。
ディスプレイの明かりのみが二人の姿を闇の中に浮かび上がらせていた。


「へぇー、大したもんだなぁ」

或が警察署のPCとモンタージュ作成ソフトを使って作った“偽杜綱”の写真の出来に、リヴィオが感嘆の声を上げる。

「刑事に知り合いがいましてね。それに彼は味のある顔をしていましたから。
 あまり特徴のないような容姿だと難しいんですが……」

それに、今回は日本全土の人口の中から一人を特定できるような、そんな精巧な物を作る必要はない。
100人もいないであろう、この島に集められたゲームの参加者。
その中で識別出来るものを作るのは、さして難しい事ではなかった。

そう、今この島に参加者以外の住人はいない。
当初は未来日記所有者たちのバトルのような、一般社会に紛れて選ばれた参加者たちが命のやり取りをする
――そういうものを想定していた或だったが、
神が用意した孤島というバトルフィールドの特殊性や、首輪というこれ以上ないほどの参加者の目印、そして
24時間以内に死者が出なければ首輪を爆発させるというルール。
これらのものを用意した神の思惑から早期決着を図るという意思が感じ取っていた。
そう、殺し合いを短期間で済ませるには、余計な邪魔者や法が介在する余地が少ないほうがいい。
すなわち、サーチアンドデストロイ。
人間を発見次第殺せばいいということだ。
殺し合いに乗った者にとっては願ってもいない状況と言える。

事実、彼が探索した病院には入院患者や夜勤のナースなど、居て当然の存在がいなかったし、
先ほどの戦いに何事かと駆け付けた住人も皆無だった。
何軒かの家に踏み込んでみたが、結果は予想通り。
家の中には誰も住んでいなかったのだ。

だが、当初から無人島だったというわけでもあるまい。
この島……八丈島程度の大きさはあるだろうか。
推定できる人口規模は一万人程度。
島のMAPに描かれた南北に二つある市街地、そして点在する施設からは当たり前の人間の営みが十分に感じ取れた。
住人は確かにいたのだ。
そして彼らはいなくなった。
このバトルロワイアルの為に。

(島一つ簡単に確保出来るほどの力か……)

神がどのような手段で彼らを消したのかはわからない。
あるいは警察の残した情報から探れるかもしれない。
しかし、今はそれより優先して片づけなければならない事が累積している。
神の犯した罪を追求するのは後回しにせざるを得ないだろう。


“偽杜綱”のモンタージュ写真のプリントアウトが終わる。
出会った場所や時間、知り得た限りの彼の人となり、推定した武器の射程、威力などを記したものだ。
或はこれを島の全施設にあるファックスに向けて発信するつもりだった。
或の確認したところ、この島から外へかけようとすると繋がらないが、島内での通信、通話は可能なのだ。
元々ローカルな物なのか、なんらかの手段で遮断されているのかはわからない。
まぁ制限付きとはいえ、これら文明の利器を使わせてくれるというならありがたく使わせてもらうとしよう。

それと合わせて警察署の前などの目立つ場所にも張って置けば、彼が危険人物である事は島内の人間の知るところとなるだろう。
だが……

「どうした? 或」
「いえ……これを張る事で、彼を追いつめてしまうのではないかと……」

見た目からは想像出来ないほどに情緒不安定だった彼。
しかし、彼の語った『白面の者』との戦いの歴史。
その長い話の中でも潮という少年と、とらという妖の話を彼は本当に夢中で語っていた。
潮ととらの存在が、彼にとって特別な存在である事は確かだろう。
彼らと接触を取れれば、まだ協力する余地はあるのではないだろうか。
あの我妻由乃にも天野雪輝というストッパーがあればまだ制御出来るように。

「うーん、お前の言いたい事もわかるけどなぁ、或。
 あの武器はマジでヤバいぜ。
 戦いで相手の能力や武器を予め知ってるか、知らないかってのは凄く大きいんだ。
 何も知らない奴がいきなりあんな攻撃食らったら――死ぬぞ」


死ぬ。
リヴィオが発したその言葉の重みに、先ほどの戦いの記憶がフラッシュバックして蘇る。
寸前まで迫っていた自分の死。
知恵や機転など介在する余地すらない、圧倒的な暴力。
それに対抗しえたのは、同じく非常識なほどの戦闘能力を持つリヴィオなればこそだった。
そんな危険な存在を、何の対処もなしにこのまま野放しにしてはおけない。

覚悟を決めなければならない。

選ばなければならない。

神ではない自分が、知略でこの戦いに勝ち抜こうとすれば。
意図せずとも、自分の指した一手で誰かの悲劇を生む事もある事を。
そして誤った手を打てば、自分や仲間の命を代償として支払わなければならない事を。






送信。
或の指先が一つの決断を下し、“偽杜綱”の情報が電線を通り島中に流れる。
この情報をどう生かすかは、受け取った人間次第。

情報を疑う者。
額面通りに受け取り、警戒する者。
彼を止めようと動く者。
手を組もうとする者もいるかもしれない。
だが、いずれにせよ“偽杜綱”に出会った参加者たちはその動向を警戒する事になるはずだ。

そして或の指した更なる一手。
文章の最後に書き加えたホームページのアドレス。
それは或が警察のPCをサーバーとして立ち上げた、日記形式のブログだった。
ここで署員の私物らしき携帯電話が入手出来たのは僥倖だった。
これがあれば、いつでもどこでも新たに入手した情報をHPにアップロード出来る。
探偵日記』と名付けたそのブログに、或はこの場で知り得た情報や考察を書き込むつもりだった。


ブログのアドレスだけをただ告知するだけでは食いつきは鈍いだろう。
こんな非常時に何がブログかと。
だが今、参加者たちが一番欲しているであろう危険人物の情報と共に送ればどうなるか。

コマーシャルと一緒だ。
対象の興味を惹くものと合わせて、ブログの存在をアピールする。
一端利用して有益な情報が得られると判れば、その人間は新情報を得るために引き続きブログを利用してくれるようになるだろう。
更にコメント機能を利用して参加者から情報を得る事も出来る。

これを上手く使えれば、情報を得る為に参加者との接触と言う危険を犯す必要はなくなるし、
情報を得られそうな参加者を探して島内を歩きまわるという時間の無駄を省く事が出来るだろう。

しかし神が通信システムを封鎖しなかった意図を考えるまでもなく、このやり方には危険もある。
情報の真贋を見分ける事が酷く難しいのだ。
例えば、“偽杜綱”が北にいるというコメントが寄せられたとしよう。
だが、その情報を流したのが“偽杜綱”本人で、実は南で待ち構えていたとしたら?
情報を信じて南に逃げては“偽杜綱”の餌食となってしまうだろう。
殺し合いを回避する為の道具が、殺人の手引きとなる事もあるのだ。


だが錯綜する情報の中から真実を見抜く者。
それこそが探偵である。
敵が情報戦を仕掛けてくるようなら応えよう。
それが或の選んだ戦場だった。


       ◇       ◇       ◇


「おつかれさん、或。
 んで……これからどうする?」
「しばらくはここに居ても大丈夫だとは思いますが……あの偽杜綱さんと出会った場所を公開してしまいましたし、
 勘のいい人間なら僕たちが今、警察署に居る事に気付くでしょうね。
 ……リヴィオさん、あの人がまた襲ってきたら、止められますか?」
「あの武器の動きはもう捉えた。次はあんな無様は見せないさ。
 これでもミカエルの眼の人間だからな。
 ……でも、殺さずに止めるのは無理だな。」

獲物がこれじゃあな。
と、言ってリヴィオさんが掲げるのはスーツケース型の杭打機。
あの鞭の攻撃を弾き飛ばしたその威力は折り紙付きだ。
超スピードで射出される杭は、当たれば人体など簡単に吹き飛ばしてしまうだろう。
もっともリヴィオさんの言によると、これでも大分制限されているらしいのだが。
なんでも元々はリヴィオさんの敵が使っていた武器で、リヴィオさんはこれで串刺しにされて殺されかけた事もあるらしい。
なんとも凄い話だ。

しかし――元々は人の物……か。
実は先ほど確認した僕の支給品にも、知り合いの私物が混じっている。
当初、身に着けていた私物が全て没収されていた事から、雪輝君の携帯……未来日記も没収されている物と考えていたが
この分だと参加者たちの所持品は没収後再分配されている可能性がある。
だとすると未来日記も雪輝君本人の手に渡っていなくても、誰か他の参加者が持っているかもしれない。
そして、かの日記の重要性を考えれば雪輝君、そして“彼女”は間違いなくその日記の持ち主と連絡を取る事を考えるはずだ。

「リヴィオさん、ちょっと電話をかけてもいいですか?
 方針はその後で決めたいんですが……」
「お、さっき見つけたロストテクノロジーか?
 こんなちっこいもんで電話出来るのかー。便利だよなー」

……外宇宙まで進出した人類が携帯電話に驚くのか……まぁその経過を聞けば納得出来ない事もないが。
それは砂の惑星に堕ちた人類の物語。
どんな作物も実らず、資源もない不毛の大地で、プラントと呼ばれる装置に依存しきった人類の文明レベルは中世程度まで
後退していたらしい。
この秋瀬或は固定観念めいた「常識」よりも自分の「体験」を重視する性質ではあるが、それでも容易には信じがたい話だ。
だが、その話を誇大妄想の類ではない、と僕は判断した。
話に一貫した筋が通っていたし、彼には僕らの知る「常識」では計り知れない力がある。

それは偽杜綱の語った白面の者との戦いの歴史にしても同様だ。
神や超能力者がいるのだ。
妖怪がいても何もおかしくはないだろう。

だが、この会場で出会った二人の参加者。自分も含めれば三人か。
あまりにもお互いの知る「常識」が違いすぎる。
二人とも未来日記をめぐる戦いとはまるで関係がないらしいが、それに勝るとも劣らない複雑な事情を抱えている。
荒唐無稽な空想めいた仮説が頭をよぎるが、証明する手立てもない事を考えてもしょうがない。

それより電話だ。
今はやるべき事から一つ一つ片付けていこう。


       ◇       ◇       ◇


雪輝君との合流。
これを第一の行動指針としたのは、誰が参加しているかわからない中で唯一彼の存在を確認出来たからだが、それだけではない。
確かに雪輝君は大切な友人だが、そういう個人の感情を差し引いても彼との合流を急ぐのにはそれなりの理由がある。

まず第一に、僕だけではなく全参加者にその存在と声、そしてシルエットだけとはいえ姿を知られてしまっているからだ。
名前ではなく1stとだけ呼ばれたのが救いといえば救いであったが、主催者との関係者めいたやり取りは不味かった。
未来日記所有者は既に残り5人、ここに呼ばれた関係者は僕のような部外者を含めてもおそらく10人もいないだろう。
つまりこの会場に集められたほとんどの人間は神の仕組んだゲームの事など何も知らないという事だ。
そういう人間にとっては、主催者を知る彼は格好の情報源となる。
友好的に話を聞くだけならそれでいいが、恐らくはそれだけでは済まないだろう。
彼に危険が及ぶ前に、早急に合流しなければならない。

(ブログにムルムルについての情報も載せておくか……
 いや、しかし僕の持つ情報だけでは、この事態を説明する事は出来ない。
 不十分な情報を与えられた人間は、もっと隠している事があるんじゃないかと邪推するものだしね……)

それに流石にその情報には神の陣営による検閲が入る可能性が高い。
雪輝君と合流してからにしたほうがいいだろう。

そう、雪輝君と合流すれば危険な行動も起こしやすくなる。
それが第二の理由。
彼が未来に目撃するはずの出来事が予め判る無差別日記。
その能力は今後の戦いを大きく左右する事は疑いようもない。
首輪を解除するにしても、彼の日記さえあれば危険な方法は試すまでもなく結果が判るのだから、
その戦略的価値はまさにプライスレスと言える。

だが、逆にその日記によってもたらされるリスクが第三の理由となる。
素晴らしい能力が付与される未来日記だが代償と呼ぶべきか、日記の破壊はすなわち自分の存在の消滅と同義となる。
つまり日記所有者の無事を図るなら、本人と日記両方を保護しなければならないのだ。
もし自分の想定通り、日記が他人の手に渡っているのならこれだけは気付かせてはならない。
しかもそれでいて、携帯を傷付けないように大事に扱わせ、穏便に携帯を取り戻す必要がある。
本人が持っていれば何の苦もなく合流出来るが……さすがにそれは虫が良すぎるだろうか。
せめて持ち主が日記をただの携帯だと思っていれば交渉が楽に済むのだが。

考えを纏めると僕は携帯電話に雪輝君の携帯ナンバーを入力する。
番号を覚えているのは探偵の嗜み。
探偵たるもの、いつ何時自分の携帯やアドレス帳が使えなくなるかわからない。
一番重要な情報はもっとも信頼出来る記憶装置……すなわち自分の頭に叩き込んでおくものだ。

ナンバーを入力し終わると、呼び出し音が鳴り始める。
外部との通信が遮断されたこの島で通信が繋がると言う事は、呼び出し相手の端末もここに存在していると言う事。
やはり参加者の誰かが持っているのか。
数回のコールの後、電話が繋がった。

「もしもし……」
「はい」

やはり雪輝君ではない。
少し低めの落ち着いた少年の声。高校生くらいだろうか。
予想はしていたが、少し落胆する。


その、一瞬の心の隙を

「待ってたぜ。秋瀬或――だろ?」


自信に満ちた声の紡ぐ、言葉の剣が刺し貫いた。


       ◇       ◇       ◇



な……
思わず動揺の声が出そうになり、慌てて手で塞ぐ。

なぜ名前がわかった?
使用した端末はこの島で拾った見知らぬ他人の持っていたものだ。
使用者が判るはずがない。

しかも待っていた、だって?

まさかこの相手は既に雪輝君を抑えているのか?
彼と、未来日記が手元に揃っているのなら未来予知で誰から電話がかかってくる事もわかる。

それとも、この少年がまだ僕たちの知らない未来日記所有者11thなのか?

「どうした或!?」

リヴィオさんが僕の様子がおかしい事に気付き、声をかけてくる。
慌てて通話口を手で塞いだが、今の声を聞かれただろうか。

「いえ、大丈夫です」
「慌てるなんてお前さんらしくないぜ、落ち着けよ」

力強い手が僕の背中をドンと叩く。
そうだ。落ち着け秋瀬或。
今の話に少しおかしな点はなかったか。
そう、未来日記といえども万能ではない。欠点もある。
未来日記で判る未来とは、所有者の認識する事実でしかない。

そして僕は今回も偽名を名乗るつもりだった。
だから未来において、この相手が高坂王子から電話が来た――と雪輝君に報告するのであれば予知内容は
『高坂王子から電話が来る』
というものになるはずなのだ。

もちろん雪輝君が僕の声を直接確認すれば判ってしまうのだから、その場合は
『秋瀬或から電話が来る』
という予知になるだろうが、電話口のすぐ傍に雪輝君がいればなんらかの音が聞こえるはずだ。
だがそれがない。
だからこれは未来日記による予知ではないという事になる。

それに冷静に考えてみれば、相手を特定するのに予知の力など必要ない。

雪輝君は交友関係が狭い。
携帯電話に登録されている人間など、我妻由乃、そして僕、日向、まおちゃんくらいか。
高坂君ももしかすると登録されているかもしれない。
だから雪輝君が既にこの電話相手と連絡を取っているのであれば、電話をかけてくるような男は消去法で僕しかいない。
高坂君が登録されていたとしても確率はフィフティ・フィフティ。
分の悪い賭けというほどでもない。僕ならやる。

ならばいきなり未来日記の使用をちらつかせるような、挑発めいた行為をする必要とは?
……決まっている。こちらを動揺させて、余計な情報を吐き出させるためだ。
さきほどのリヴィオさんの声が聞こえていたとすれば、
既に僕の名前は特定されてしまったし、同行者がいる事も知られてしまっただろう。

だが、これはリヴィオさんの責任ではない。
もっと動揺していれば、余計な情報を相手に与えてしまっていた可能性は非常に高かった。
相手のブラフに引っかかってしまった僕の負けだ。

だが、これで相手が未来日記についてある程度は知っていると言う事がわかった。
そして本来連絡してくる人間として第一候補である雪輝君ではなく、僕の名前を選んだ所から考えて
雪輝君とは既に連絡を取っている可能性が高い。
ならば声で彼が1stと気付いた可能性も高いだろう。
いや、これほど計算高い相手なら必ず気付いたはずだ。
しかし全てを把握しているわけではない。
だからこそのブラフ。
僕から得たい情報があるからこんなハッタリを効かせたのだ。

第一ラウンドは僕の敗北。
だが、まだこちらの手札が晒されたわけではない。
交渉はここからだ。



「……大した勘の良さですね、アユムさん」
「なに、それほどでもないさ」

やられっぱなしは性に合わない。
だからこれはもはやブラフなどとも呼べない、ただのあてずっぽうに過ぎない。
偽杜綱、リヴィオさんから聞いた、いずれの人物像にも合わない電話相手。
ならば僕が使える選択肢はひとつしかなかった。

アユム

首輪の爆発によって命を奪われた少年が口にした名前。
だが、この相手に動揺はない。
外したか。だが、まぁいい。
どうせ名を名乗るつもりはなさそうだ。このまま仮名として使わせてもらう。

「どうやらあなたはその携帯の機能に気付いているようですが……それをいったいどうする気か、単刀直入に
聞かせていただいてもよろしいですか?」
「まず初めに言っておこう。俺たちはこのゲームに乗る気はない。
 とりあえずはこの首輪を外すつもりだ」
「……僕らもですよ」

俺たち……仲間がいるのか。彼の言葉を証明するかのように電話の向こうからしゃべり声が少し聞こえてくる。
そして首輪を外すという彼の宣言。だが首輪が爆発する事はない。
参加者の、この程度の発言では殺されたりはしない事を僕は知る。

「そこでこの携帯を手土産に『天野雪輝』と協力関係になりたいと思っている。
 だが、俺たちは彼の事を知らない。
 だから教えてくれないか? 彼がどういう人間なのか」

仲間がいるとはいえ、ゲームには乗っていないという言葉を頭から信じる事は危険だ。
だが『天野雪輝』についての情報を要求する態度から彼が、いや、彼らの中に未来日記関係者はいない事が確認出来た。

『天野雪輝』を知らない未来日記関係者などいない。
8thとその孫所有者たち、9th、雪輝君の父親を利用した11th、みな雪輝君を狙って来ていたのだから。
それにアユムは既に無差別日記を手中に収めている。
日記関係者ならその事実が持つ意味がわからないはずがない。
未来日記を他人に奪われるとは生殺与奪の権利を相手に与えるのと同義。
雪輝君がどんな人格であれ、協力を求められれば応じないわけにはいかないのだ。

しかし、まだ彼と連絡を取ったわけではないのか。
僕は疑問を口に出してみる。

「雪輝君からは、まだ連絡がないんですか?」
「ああ、だがユノって子とは連絡を取った。彼女が天野雪輝と合流したら再び連絡を取る手はずになっている」
「ユノ! ――我妻由乃ですか、電話番号は確認しましたか? ……ええ、ええ。
 ……なるほど、彼女に間違いないですね」

やはり彼女もここにいるのか。しかも自分の未来日記を持って。
僕は自分に支給された写真を見る。
僕が彼女の家を調べるために、雪輝君とデートさせた時のものだ。
イベント参加者へのサービスで写されたこの写真は、この世にたった二枚……雪輝君の物か、我妻さんの物しかない。
支給品が参加者の所持品を振り分けてた物とするならば、恐らくこれはこの写真を常に持ち歩いていただろう
我妻さんの物。
まぁそんな証拠がなくとも僕は彼女の存在を確信していたのだが。
天野雪輝の影には常に我妻由乃がいるのだから。

「雪輝君は……とても臆病ですが、運命と戦う気概を持っている少年ですよ。
 僕も彼とは早く合流したいと思っています。
 ……が」

そう、雪輝君は大丈夫だ。
彼女が探しているというのなら、彼はすぐに見つかるだろう。
彼女こそは雪輝君にとり、最強のナイト。
雪輝君の持つ無差別日記を補完する、我妻さんの雪輝日記。
自分の事だけは予知できない無差別日記に対し、雪輝君の未来だけが判る雪輝日記。
寄り添うように存在する二つが揃うことにより、未来日記による完全予知が可能となる。
そして彼女はその狂信的な愛情故に、彼を裏切る事は絶対にない。
二人で一人の最強のプレイヤー。


……彼女の『裏』を知らなければ、誰もがそう思うだろう。
それが天野雪輝の超ストーカー我妻由乃という少女。
いや、我妻由乃という仮面を被った、だれか。


彼女の家を調べた時に見つけた地割れ。
その奥底に隠されていたのは三体の遺体。
二体が彼女の義理の両親であることは既に突きとめている。
これはいい。
問題は三体目。
彼女の経歴から見て、存在するはずのない三人目の関係者。
僕はその死体が誰なのかを特定する証拠が、彼女のルーツである美坂児童養護施設にあると推理した。
入手した証拠は我妻由乃のへその緒。
そして鑑識からの連絡で、三体目の死体のDNAと我妻由乃のへその緒のDNAが一致する事を知ったのだ。
この事実を、僕はまだ雪輝君に伝えていない。
その前にここに連れてこられてしまったからだ。

『我妻由乃』のDNAを持つ者が、死体とは如何なる事か。
それではあの『我妻由乃』とは何者なのか。
思い出すのは、雪輝君が監禁されたホテルでの出来事。
僕に現実を突き付けられた彼女は、迷うことなく都合の悪くなった現実を「修正」しようとし、
自己の記憶すら改竄した。

恐らくそうやって生きてきたのだろう。
ならば彼女はいつかは雪輝君をも切り捨てるのではないのか。


我妻由乃の持つ、雪輝君を守るのに最強の威力を発揮する雪輝日記。
そして御両親を失ってしまった雪輝君もまた、我妻さんへの依存を強めているはずだ。

だがそれは、裏を返せば我妻さんがその気になればいつでも雪輝君を殺せると言う事だ。
その事実が僕を不安にさせる。
それでなくとも、彼女が何をしでかすかは予測出来ないというのに。

出来れば彼女から雪輝日記だけは奪っておきたい。
無差別日記と交換という形なら彼女は交換に応じるだろう。
だがそれはアユムが新たに雪輝日記のオーナーになると言う事だ。
同盟の立場としてはお互いの未来情報を握り合うイーブンの形となるが、そこまでこの少年を信用してもいいのだろうか。


相手の意思を確かめたいなら、まずは自分の意思を示す。
かつて僕が雪輝君に言った言葉だ。

僕の対面に座る、未だ顔も見えない指し手に対し僕は……





【C-02/警察署/1日目 黎明】

【秋瀬或@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、各種医療品、 天野雪輝と我妻由乃の思い出の写真、不明支給品×1(確認済み。説明書が付属するような類のアイテムではない)、携帯電話、A3サイズの偽杜綱モンタージュポスター×10
[思考]
基本:生存を優先。『神』について情報収集及び思索。(脱出か優勝狙いかは情報次第)
 1:雪輝の捜索は由乃に任せる。連絡が来たらアユムに自分にも連絡してもらう。
   雪輝以外の日記所有者と接触、合流するかどうかは状況次第。
 2:我妻由乃対策をしたい。アユムに協力を求めるか、自分だけでなんとかするか……
 3:探偵として、この殺し合いについて考える。
 4:雪輝君と連絡がつかなければ従来の方針通りリヴィオに同行しつつ、放送ごとに警察署へ向かう。
 5:偽杜綱を警戒。モンタージュポスターを目に付く場所に張って置く。
 6:アユム、蒼月潮、とら、リヴィオの知人といった名前を聞いた面々に留意。
[備考]
 ※参戦時期は9thと共に雪輝の元に向かう直前。
 ※病院のロビーの掲示板に、『――放送の度、僕は4thの所へ向かう。秋瀬 或』というメモが張られています。
 ※リヴィオの関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。
 ※警察署内にいたため、高町亮子の声は聞き逃しました。

リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]:左肋骨三本骨折(治癒中・完治まで約2時間)
[装備]:エレンディラの杭打機(29/30)@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:ウルフウッドの様に、誰かを護る。生き延びてナイヴズによるノーマンズランド滅亡を防ぐ。
 1:或と共に、知人の捜索及び合流。
 2:誰かを守る。
 3:偽杜綱を警戒。
 4:ロストテクノロジーに興味
[備考]
 ※参戦時期は原作11巻終了時直後です。
 ※現状ではヴァッシュやウルフウッド等の知人を認知していません。
 ※或の関係者、蒼月潮の関係者についての情報をある程度知りました。
 ※警察署内にいたため、高町亮子の声は聞き逃しました。


【F-8北西/森/1日目 黎明】

鳴海歩@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]:疲労(小)
[服装]:月臣学園の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、無差別日記@未来日記 不明支給品×1 (確認済み)
[思考]
基本:主催者と戦い、殺し合いを止める
 1:ゴルゴ13と情報交換する。特に錬金術について聞き出したい。
 2:秋瀬或と情報交換する。 天野雪輝、我妻由乃の情報と錬金術について聞き出したい。
 3:神社を目指す。そこで主催に関する情報と脱出を目指す人間を探す。
 4:ユノから連絡があれば天野雪輝と接触し、危険人物でなければ日記を渡して協力する。
 5:首輪を外す手段を探す。できれば竹内理緒と合流したい
 6:殺し合いに乗っていない仲間を集める
 7:何故主催者達は火澄を殺せたのか? 兄貴は何を企んでいるのか?
 8:「爆弾を解除できるかもしれない人間である竹内理緒が呼ばれている」という事実が、どうにも引っかかる
[備考]
 ※第66話終了後からの参戦です。自分が清隆のクローンであるという仮説に至っています
 ※オープニングで、理緒がここにいることには気付いていますが、カノンが生きていることには気付いていません
 ※主催者側に鳴海清隆がいるかもしれない、と思っていますが、可能性はそう高くないとも思っています
 ※我妻由乃の声と名前を認識しました。警戒しています
 ※無差別日記の効力を知りました。


【天野雪輝と我妻由乃の思い出の写真@未来日記】
天野雪輝と我妻由乃の結婚式の予行演習の写真
ウエディングドレス姿の由乃とモーニングコートの雪輝が写っている

【携帯電話@現実】
警察官の私物だろうか。結構新型。
島内の主な施設の電話番号と、ブログのアドレスが登録済み。


【探偵日記@ブログ】
パスワードを入力することで更新出来るブログ
コメントは管理者の認可がなければ公開されない


探偵日記

1日目 黎明

やぁ、みなさん。探偵日記にようこそ。
まったく、とんでもないことに巻き込まれてしまったね。

さて、まずは自己紹介……といきたいところだけど、まだ名乗るのは許してほしい。
あなた方と立場を同じくする、とある参加者――とだけ言っておこうか。
でも僕の知り合いはここまで読んで、僕が誰か気付いたかもしれないね。
連絡が取りたい場合は下のコメント欄に書き込んで欲しい。
僕が公開設定にしなければ他の人には見えないので、情報の漏えいを気にする必要はないよ。

とまぁ、前置きはここまで。
この日記には僕がこの島で見聞きした色々な事や、考察を書き込もうと思う。
最後の一人しか生き残れない闘いで敵に情報を教えるような奴がいるか、と思う人もいるかもしれないが
僕は必ずしもそういう結末になるとは思っていない。
まぁ見聞きした全てを教えるわけにはいかないけどね。

まず僕が接触した他の参加者について教えよう。
一人は地球ではなく、5つの月を従えた砂漠の惑星出身のガンマン。
もう一人は白面の者と呼ばれる大妖と戦う退魔組織の人間だ。
彼らとは「深夜 (注1)」にMAP C−2で出会った。

ああ、読むのを止めるのをちょっと待ってほしい。
君の傍に、他の参加者はいるかな?
いるなら少しお互いについて情報交換をしてみるといい。
きっとお互いの常識の食い違いに気付くはずだよ。

そして上記の人物に心当たりのある人は、是非とも連絡を。
最初の人は僕と同行してくれているけど、二人目の人……退魔組織の人物は残念ながら殺し合いに乗ってしまったようだ。
最初は友好的な様子で近づいてきたけど、僕が矛盾を指摘したら有無を言わさずいきなり襲ってきた。
これは僕が作った彼のモンタージュ写真だ。

【AAがあるといいなぁ (注2)】

この顔を見たら注意して欲しい。
彼が使うのは鞭状の武器。
といっても、ただの鞭を想像して貰っては困る。
いくつもの軌跡、人間の眼では捉えきれないほどの残像を描いて、数十メートル先からいきなり飛んでくるような代物だ。
まともに受けたら、命の保証はしかねるよ。
自分の戦闘力が人類の規格外であると自負出来る人以外は、彼と出会ったならなんとか隙を見て逃げて欲しい。

また、気付いている人もいるかもしれないが、この主催者の配った支給品というものは他の参加者の持ち物だと思う。
だから彼がこの武器にまだ慣れていない所に付け入る隙があるかもしれない。
だが忘れてはいけないのは彼の経歴だ。
戦士である以上、自らの戦闘スタイルも持ち合わせているはず。
それがどういう物なのか、僕には警告出来ないが気をつけて欲しい。

さて、今回報告出来るのはこんなところだ。
僕が死んでいなければ、このブログは続くはずだ。しばらくしたらまた読んでみて欲しい。
新たな情報をお知らせ出来るかもしれない。




 注1:正確な時間が書いてあると思いねぇ
 注2:モンタージュ写真が張ってあると思いねぇ




時系列順で読む


投下順で読む


013:リヴィオと偽名のテラー 秋瀬或 077:銀の意志Ⅱ
013:リヴィオと偽名のテラー リヴィオ・ザ・ダブルファング 077:銀の意志Ⅱ
057:夜間潜行 鳴海歩 077:銀の意志Ⅰ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー