◾︎
鋼の風が啼いている。
眩い雷鳴が瞬いている。
眩い雷鳴が瞬いている。
その戦いを言語化するのは馬鹿げていると言い切っていい。
いま繰り広げられている光景は、おおよそ人間が想像できる絵空事を遥かに凌駕しているのだから。
少なくとも、この場で最も〝常人に近い〟豊臣秀吉は、これが生涯最大の戦であると確信した。
いま繰り広げられている光景は、おおよそ人間が想像できる絵空事を遥かに凌駕しているのだから。
少なくとも、この場で最も〝常人に近い〟豊臣秀吉は、これが生涯最大の戦であると確信した。
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
青髪の剣士、トランクスの剣戟が明滅する。
刃が動いていると認識することすら難い連撃は、間違いなく一刀一刀が必殺。
刃が動いていると認識することすら難い連撃は、間違いなく一刀一刀が必殺。
「くだらん」
百、二百、三百。
攻め手と受け手が入れ替わり、世界最高峰の死闘が結ばれる。
秒間何十もの衝突のたび生まれる衝撃波が、鋼鉄の壁を軋ませて大地を揺らす。
生半可な生物では立つことすら許されない余波をそよ風のように受け流し、秀吉はその死闘を険しい顔付きで見つめていた。
攻め手と受け手が入れ替わり、世界最高峰の死闘が結ばれる。
秒間何十もの衝突のたび生まれる衝撃波が、鋼鉄の壁を軋ませて大地を揺らす。
生半可な生物では立つことすら許されない余波をそよ風のように受け流し、秀吉はその死闘を険しい顔付きで見つめていた。
トランクスと宇蟲王の戦闘は、秀吉の目から見ても一段階上の世界だ。
しかしあくまで一段階。この怪物らの戦いを、たった一段階の差で済ませていること自体が異常なのだ。
参加者のおおよそが逃げ出すことしかできない光景を前に、こうして戦況を分析していられるのがなによりの証拠。
しかしあくまで一段階。この怪物らの戦いを、たった一段階の差で済ませていること自体が異常なのだ。
参加者のおおよそが逃げ出すことしかできない光景を前に、こうして戦況を分析していられるのがなによりの証拠。
目で追うどころか、視認できるかも危うい攻防。
トランクスは舞空術を、宇蟲王はエネルギー力場を用いて、とうに地から離れている。
空中で爆発が起きているようにしか思えない状況で、秀吉の眼光には怒りが込められていた。
トランクスは舞空術を、宇蟲王はエネルギー力場を用いて、とうに地から離れている。
空中で爆発が起きているようにしか思えない状況で、秀吉の眼光には怒りが込められていた。
「あの童め、何故に全力を出さん」
傍聴人がいれば耳を疑うだろう。
秀吉の洞察は当たっていて、ここまでしてトランクスは本気を出していない。
正しく言い換えれば、出せていないのだ。
トランクスの焦燥と太刀筋の鈍りに気が付いたからこそ、秀吉の目から見て優劣が浮き彫りになる。
秀吉の洞察は当たっていて、ここまでしてトランクスは本気を出していない。
正しく言い換えれば、出せていないのだ。
トランクスの焦燥と太刀筋の鈍りに気が付いたからこそ、秀吉の目から見て優劣が浮き彫りになる。
──この戦い、互角に見えてそうではない。
猪突猛進という言葉が服を着て歩いているような豊臣秀吉が、わざわざ戦況分析に努めて導き出した結論に疑う余地はない。
トランクスに対し、宇蟲王が攻めに回る方がおよそ三倍ほど多いのだ。
言わずもがな、戦いにおいて有利なのは攻める側。
一撃が致命傷となりえる嵐の猛攻は、トランクスを確実に消耗させてゆく。
トランクスに対し、宇蟲王が攻めに回る方がおよそ三倍ほど多いのだ。
言わずもがな、戦いにおいて有利なのは攻める側。
一撃が致命傷となりえる嵐の猛攻は、トランクスを確実に消耗させてゆく。
この差は一体なんだ。
トランクスが元より疲弊していたのか。
それとも、実力で宇蟲王が上回るのか。
否──秀吉の卓越した第六感と観察眼が、そうではないと告げている。
トランクスが元より疲弊していたのか。
それとも、実力で宇蟲王が上回るのか。
否──秀吉の卓越した第六感と観察眼が、そうではないと告げている。
目を凝らし、注視する。
両者の間にある、ほんの些細な違和感を見逃さないように。
そうしている内に、秀吉の額には溝のように深い青筋が走った。
両者の間にある、ほんの些細な違和感を見逃さないように。
そうしている内に、秀吉の額には溝のように深い青筋が走った。
「…………舐められたものだ」
ぞわりと、秀吉の周囲の空間がゆらめく。
腹底から湧き上がるような憤怒が形となり、岩石じみた拳を握らせる。
腹底から湧き上がるような憤怒が形となり、岩石じみた拳を握らせる。
この怒りはどこから湧くのか。
傲慢の限りを尽くす宇蟲王に、はたまたそいつに勝てぬ自分にか。
傲慢の限りを尽くす宇蟲王に、はたまたそいつに勝てぬ自分にか。
「あの青髪の童め、よもや……よもや……!」
いいや、違う。
覇王の視線は、サイヤ人の青年を追っている。
覇王の視線は、サイヤ人の青年を追っている。
「この我を、〝弱者〟扱いとはッッッ!!」
この戦いが始まって以降、4度。
実に4回、トランクスは秀吉に注意を向けていた。
宇蟲王という己と同格の相手を前にして、他者に気を配るという愚行。
僅かな隙が命取りとなるこの状況で、トランクスは秀吉の安否を優先したのだ。
実に4回、トランクスは秀吉に注意を向けていた。
宇蟲王という己と同格の相手を前にして、他者に気を配るという愚行。
僅かな隙が命取りとなるこの状況で、トランクスは秀吉の安否を優先したのだ。
それは豊臣秀吉という武帝にとって、これ以上ない侮辱であった。
◾︎
「ぐ──っ!」
手が痺れる。
呼吸が詰まる。
気を上手く練れない。
呼吸が詰まる。
気を上手く練れない。
「くっ、──そ──!」
悪態は力に変わらず、また反撃の一手を潰される。
首を刎ねようと迫る赤刃を、決死に防ぐ。
首を刎ねようと迫る赤刃を、決死に防ぐ。
一つを防げばまた一つ、そしてまた一つ。
止まぬ斬撃の雨霰は、余裕もろとも思考を奪い去る。
王の剣を無理やり弾き、どうにか刃を振るうが掠る気配もない。
止まぬ斬撃の雨霰は、余裕もろとも思考を奪い去る。
王の剣を無理やり弾き、どうにか刃を振るうが掠る気配もない。
「何度も言わせるな、腑抜け」
失望を含んだ語気には乱れ一つない。
トランクスと対象的な余裕は、その鋭すぎる太刀筋がこれ以上なく教えてくれる。
一ミリのズレもなく首を狙ったそれは、ただ受け止めるだけでは手をこまねいて死を待つのと変わらない。
トランクスと対象的な余裕は、その鋭すぎる太刀筋がこれ以上なく教えてくれる。
一ミリのズレもなく首を狙ったそれは、ただ受け止めるだけでは手をこまねいて死を待つのと変わらない。
刃を逸らし、いなさなければ。
体勢を崩されたところに、たちまち二の太刀を入れられるのは明白だった。
体勢を崩されたところに、たちまち二の太刀を入れられるのは明白だった。
「これ以上俺を失望させるのならば、死ね」
冷徹な死刑宣告は、願望ではなく決定事項。
そこらの不良が吐きそうな陳腐な言葉も、蟲の王が発せばモノが違う。
濃密な死の気配を伴うそれは、トランクスをもって畏怖に値する。
そこらの不良が吐きそうな陳腐な言葉も、蟲の王が発せばモノが違う。
濃密な死の気配を伴うそれは、トランクスをもって畏怖に値する。
「黙れッ!」
サイヤ人の青年、トランクスは劣勢を強いられていた。
この王と渡り合える存在など片手で数えられるほどしかないがために、それに気がつける者も極小数に限られるが。
こうして王と相対する張本人だからこそ、強く自覚する。
こうして王と相対する張本人だからこそ、強く自覚する。
青い髪先がはらりと落ちる。
透き通った空のような色。
透き通った空のような色。
そう、彼の髪は未だ黄金ではない。
それこそが宇蟲王に赫怒を呼び起こし、この劣勢を生み出すなによりの理由。
それこそが宇蟲王に赫怒を呼び起こし、この劣勢を生み出すなによりの理由。
「腑抜けが、なぜあの時のような力を出さん」
トランクスは答えない。
答えたところで、状況は好転しないから。
言葉を発する余裕があるのならば、こうして刃を返すのみ。
答えたところで、状況は好転しないから。
言葉を発する余裕があるのならば、こうして刃を返すのみ。
宇蟲王が人間態であれば、確かに今のトランクスでも互角以上に打ち合えただろう。
しかし慢心を捨て、骸装を纏った蟲の王はそんなifを許さない。
トランクスとてそれを理解しているはずなのに、頑なに期待から背き続ける。
しかし慢心を捨て、骸装を纏った蟲の王はそんなifを許さない。
トランクスとてそれを理解しているはずなのに、頑なに期待から背き続ける。
「そうか」
それは、呆れを通り越した諦観。
逆巻く風に悪寒を感じた刹那、トランクスは咄嗟に剣を縦に構えた。
逆巻く風に悪寒を感じた刹那、トランクスは咄嗟に剣を縦に構えた。
「貴様はもう、戦士ではない」
突如、トランクスの肉体を襲い掛かる重圧。
百倍以上の重力にも耐える肉体が悲鳴をあげる威力が、剣を通じて伝播する。
弾くだとか受け流すだとか、そういう次元の話じゃない。
まるでそうなることが決まっていたかのように、彼の肉体は弾丸の如く地に落ちた。
百倍以上の重力にも耐える肉体が悲鳴をあげる威力が、剣を通じて伝播する。
弾くだとか受け流すだとか、そういう次元の話じゃない。
まるでそうなることが決まっていたかのように、彼の肉体は弾丸の如く地に落ちた。
「が──っ!」
雄英高校の正面入り口にクレーターが生まれる。
肺から酸素が吐き出され、鉄を舐めたような不快な味が広がる。
背中の痛みを堪えて上体を起こすトランクスを、宇蟲王は空中から見下ろしていた。
肺から酸素が吐き出され、鉄を舐めたような不快な味が広がる。
背中の痛みを堪えて上体を起こすトランクスを、宇蟲王は空中から見下ろしていた。
本当に、心底つまらなそうに。
「宇蟲王……ッ!」
赤黒い鎧に包まれた王を忌々しげに見上げていると、燃えるような紅蓮の背中に睥睨を遮られた。
「下がってください! あいつは──」
忠告を終えるより先に、トランクスの頬を衝撃が伝う。
呆気に取られ、この痛みを引き起こしたのが秀吉の裏拳であると気が付くのに数瞬要した。
軽く白飛びする世界の中心にて、鬼の形相をした覇王の眼光が目に留まる。
呆気に取られ、この痛みを引き起こしたのが秀吉の裏拳であると気が付くのに数瞬要した。
軽く白飛びする世界の中心にて、鬼の形相をした覇王の眼光が目に留まる。
「貴様、この我を案じたな」
「それは……」
「言い訳は許さん。あの赤き王が言うように、貴様はとんだ腑抜けよ」
「それは……」
「言い訳は許さん。あの赤き王が言うように、貴様はとんだ腑抜けよ」
秀吉の身勝手な言い分に、トランクスとて何も思わない訳ではない。
そうです、貴方を案じています。そんな風に言い切ってしまえば少しは胸が晴れるだろうか。
けれどこうして言葉を選び、どうにか彼を離れさせようとしている性格は、今更矯正できるものでもない。
そうです、貴方を案じています。そんな風に言い切ってしまえば少しは胸が晴れるだろうか。
けれどこうして言葉を選び、どうにか彼を離れさせようとしている性格は、今更矯正できるものでもない。
「猛き兵かと思ったが、将や雑兵を案じて敵を討てぬならば案山子も同然。そこで指を咥えて見ていろ」
「なっ……! ダメだ、あなた一人で勝てる相手では──」
「なっ……! ダメだ、あなた一人で勝てる相手では──」
トランクスの制止は意味を成さず、覇王の足元が爆ぜる。
超人的な跳躍力が、飛ぶ術を持たぬ人間に翼を与えたのだ。
慌ただしく舞い上がる砂埃に瞼を閉じ、再び開ける。
そのほんの一瞬の間に、秀吉の剛腕は既に宇蟲王の元へと到達していた。
超人的な跳躍力が、飛ぶ術を持たぬ人間に翼を与えたのだ。
慌ただしく舞い上がる砂埃に瞼を閉じ、再び開ける。
そのほんの一瞬の間に、秀吉の剛腕は既に宇蟲王の元へと到達していた。
「石くれが、身の程を弁えろ」
「ほざけ、毒蟲が──ッ!」
「ほざけ、毒蟲が──ッ!」
黄金の剣身と、黄金の篭手。
神器と呼ぶに相応しい得物と、それを扱うに相応しい担い手。
その衝突は、悲痛なまでの金属音と豪風を轟かせた。
神器と呼ぶに相応しい得物と、それを扱うに相応しい担い手。
その衝突は、悲痛なまでの金属音と豪風を轟かせた。
◾︎
状況は悪化の一途を辿る。
響く咆哮と衝撃が、悪戯に雄英高校の崩壊を進めてゆく。
眼前の敵を屠るために行われる殺し合いに、他者を気にかけるような有情は伴わない。
響く咆哮と衝撃が、悪戯に雄英高校の崩壊を進めてゆく。
眼前の敵を屠るために行われる殺し合いに、他者を気にかけるような有情は伴わない。
「ダメだ、……俺が、戦わなきゃ……」
あの巨漢、秀吉は確かに強い。
トランクスの目から見ても、今まで見てきた参加者の中では間違いなく上澄みの部類に当たるだろう。
トランクスの目から見ても、今まで見てきた参加者の中では間違いなく上澄みの部類に当たるだろう。
しかし、宇蟲王には勝てない。
人間態のままでもそうなのだから、怪人態となった今は勝機など皆無。
この場で唯一奴を打ち倒せる可能性のある彼からすれば、秀吉もまた守らなければならない参加者の一人でしかないのだ。
人間態のままでもそうなのだから、怪人態となった今は勝機など皆無。
この場で唯一奴を打ち倒せる可能性のある彼からすれば、秀吉もまた守らなければならない参加者の一人でしかないのだ。
「──俺が、終わらせるんだ……!」
というよりも、トランクスにとっては。
自分以外の全ての参加者がそうだ。
自分以外の全ての参加者がそうだ。
これまで彼が共に戦ってきたのは、自分よりも強い仲間ばかりだった。
孫悟空、孫悟飯、ベジータ──最前線に立つのは、常に追うべき背中で。
それ以外のほとんどが孤独の戦いであったため、共闘の経験があまりにも欠けていた。
孫悟空、孫悟飯、ベジータ──最前線に立つのは、常に追うべき背中で。
それ以外のほとんどが孤独の戦いであったため、共闘の経験があまりにも欠けていた。
「死なせない……」
セルとの戦いがフラッシュバックする。
クリリンやヤムチャ、天津飯にピッコロ。
地球で屈指の実力者であった彼らは、戦うことを選んだがためにセルジュニアという次元の違う怪物に圧倒された。
クリリンやヤムチャ、天津飯にピッコロ。
地球で屈指の実力者であった彼らは、戦うことを選んだがためにセルジュニアという次元の違う怪物に圧倒された。
「誰も、喪わせない……!」
ダーブラやバビディとの戦いを思い出す。
共に戦っていた東の界王神とキビトは、暗黒魔界の王によって殺された。
共に戦っていた東の界王神とキビトは、暗黒魔界の王によって殺された。
トランクスは、自分より弱い者を戦わせる勇気がない。
その結果死なせてしまうくらいなら、自分だけが戦った方がいいと考えてしまうのだ。
サイヤ人の矜恃だとか、戦闘民族としての欲望だとか、そんな話ではない。
目の前で人が死ぬことに対して、トランクスは過剰なまでに臆病なのだ。
その結果死なせてしまうくらいなら、自分だけが戦った方がいいと考えてしまうのだ。
サイヤ人の矜恃だとか、戦闘民族としての欲望だとか、そんな話ではない。
目の前で人が死ぬことに対して、トランクスは過剰なまでに臆病なのだ。
死に対して責任を取る方法はない。
今いる命を救うことでしか、帳尻を合わせられない。
どんな願いも叶えてくれるドラゴンボールも、どんな怪我も治せる仙豆もない〝普通〟の世界。
トランクスが生きてきたのは、そんな世界なのだから。
今いる命を救うことでしか、帳尻を合わせられない。
どんな願いも叶えてくれるドラゴンボールも、どんな怪我も治せる仙豆もない〝普通〟の世界。
トランクスが生きてきたのは、そんな世界なのだから。
────貴様は雑魚どもを捨てられない。
頭の中で、宇蟲王の言葉が響く。
重なったのは、自分やブルマの安否よりも人造人間と戦うことを優先した父の姿。
思えばあれが初めての出会いで、最悪の印象だったと言える。
重なったのは、自分やブルマの安否よりも人造人間と戦うことを優先した父の姿。
思えばあれが初めての出会いで、最悪の印象だったと言える。
あの時は嫌な奴だと思っていた。
けれど共に過ごすうち、それだけではないように思えてきた。
ベジータは確かに自分とは異なるプライドや、身勝手さを持つ。
しかしそれはある種、純粋なサイヤ人として自分のやるべきことを理解していたのだと思う。
けれど共に過ごすうち、それだけではないように思えてきた。
ベジータは確かに自分とは異なるプライドや、身勝手さを持つ。
しかしそれはある種、純粋なサイヤ人として自分のやるべきことを理解していたのだと思う。
『人造人間に勝つことや、平和を取り戻すだけで満足するような甘い考えは捨ててしまえ』
『オレはその先を……ナンバーワンの強さを手に入れるつもりで仕上げにかかる』
超サイヤ人の上の段階を初めに目指したのはベジータだった。
ひたすらに強さを追い求める彼の生き方がなければ、悟空や悟飯が超サイヤ人2を目指すことなく、結果的に地球は救われていなかったかもしれない。
ひたすらに強さを追い求める彼の生き方がなければ、悟空や悟飯が超サイヤ人2を目指すことなく、結果的に地球は救われていなかったかもしれない。
そして、彼との修行がなければ今の自分は有り得ない。
宇蟲王との一回目の戦いの時、父の言葉が聞こえてきたのは、果たして偶然なのだろうか。
今の自分の姿を見たら、ベジータはきっとまた叱責するだろう。
宇蟲王との一回目の戦いの時、父の言葉が聞こえてきたのは、果たして偶然なのだろうか。
今の自分の姿を見たら、ベジータはきっとまた叱責するだろう。
「父さん……」
命を失うことを恐れて、目的を見誤る。
万が一のことを考えて、剣が鈍る。
万が一のことを考えて、剣が鈍る。
トランクスはこれまで託されてきた。託され続けてきた。
だからこそ、理想を追い目指す。
目の前の危機を全て取り払わなければ、次に進めない。
だからこそ、理想を追い目指す。
目の前の危機を全て取り払わなければ、次に進めない。
故に、トランクスは全力を出せない。
もし自分が全力を出し、宇蟲王と衝突した場合、秀吉や雄英高校にいる他の参加者を巻き込んでしまうかもしれないから。
如何に被害を抑えるか、如何に宇蟲王を雄英高校から引き離すか。
それを最優先とする限り、トランクスは宇蟲王を越えられない。
もし自分が全力を出し、宇蟲王と衝突した場合、秀吉や雄英高校にいる他の参加者を巻き込んでしまうかもしれないから。
如何に被害を抑えるか、如何に宇蟲王を雄英高校から引き離すか。
それを最優先とする限り、トランクスは宇蟲王を越えられない。
誰も死ななければいい。
誰も殺されなければいい。
そんな理想に縛られて、殺戮の限りを尽くす宇蟲王を倒すことが出来ないのなら。
今の自分は、たしかに戦士ではないのだろう。
誰も殺されなければいい。
そんな理想に縛られて、殺戮の限りを尽くす宇蟲王を倒すことが出来ないのなら。
今の自分は、たしかに戦士ではないのだろう。
「俺は…………」
優先事項を間違えるな。
自分のやるべきことをやれ。
心の中で響く声は、父のものだった。
自分のやるべきことをやれ。
心の中で響く声は、父のものだった。
「俺は……っ!」
秀吉は戦っている。
彼もまた、力が及ばないながらも本気で宇蟲王を打ち倒そうとしている。
そんな彼を気にかけるなど、なるほどたしかに愚の骨頂だ。
交わした言葉は少ないが、彼もまたサイヤ人のように高みを目指そうとしている存在なのだろうと察せる。
彼もまた、力が及ばないながらも本気で宇蟲王を打ち倒そうとしている。
そんな彼を気にかけるなど、なるほどたしかに愚の骨頂だ。
交わした言葉は少ないが、彼もまたサイヤ人のように高みを目指そうとしている存在なのだろうと察せる。
神戸しおにルルーシュのこと、その他にも心を澱ませる問題は山積みだ。
けれど今自分が成すべきことは、頭を悩ませることではない。
命を喰らう絶望を、この手をもって討ち倒す。
それが、希望の戦士に与えられた使命なのだ。
けれど今自分が成すべきことは、頭を悩ませることではない。
命を喰らう絶望を、この手をもって討ち倒す。
それが、希望の戦士に与えられた使命なのだ。
「────お前を殺す、宇蟲王ッ!!」
気が爆発する。
空気が震え、黄金の光が雲を裂く。
輝きの中心に佇む戦士は、文字通り怒髪天を衝くかのように。
金色の髪を逆立てて、闇へと吼えた。
空気が震え、黄金の光が雲を裂く。
輝きの中心に佇む戦士は、文字通り怒髪天を衝くかのように。
金色の髪を逆立てて、闇へと吼えた。
◾︎
「────オオオオオオオォォォォォッ!」
「威勢だけか、石くれ」
「威勢だけか、石くれ」
壮絶の競り合いの末、秀吉が鋼鉄の壁へと叩きつけられる。
受け身と同時に反撃に移るも、怪人態となった宇蟲王には届かない。
受け身と同時に反撃に移るも、怪人態となった宇蟲王には届かない。
「汚い手で俺に触れるな、万死に値する」
拳が触れるより先に、赤黒い斬撃が亜音速を越えて秀吉へ襲来。
大筒の直撃すら片手で受け止める覇王が、両腕を交差させての防御姿勢を強いられる。
大筒の直撃すら片手で受け止める覇王が、両腕を交差させての防御姿勢を強いられる。
「ぬ──ぐ、──っ!」
拮抗が崩れるのに時間はかからない。
後退の二文字を知らない秀吉の巨体が、意思に反して大きく弾かれた。
またも壁にめり込む秀吉。果敢に反撃の手を止める気配はないが、覇王にばかり疲弊とダメージが蓄積していく。
後退の二文字を知らない秀吉の巨体が、意思に反して大きく弾かれた。
またも壁にめり込む秀吉。果敢に反撃の手を止める気配はないが、覇王にばかり疲弊とダメージが蓄積していく。
「俺を殺すと息巻いた罪、その命をもって償え」
「黙れ、滅ぼす事しか知らぬ王に価値は無い!」
「黙れ、滅ぼす事しか知らぬ王に価値は無い!」
こんなやり取りを幾度かしたところで、宇蟲王が地に降り立つ。
秀吉程度ならばこの場所でいいと、慢心ではなく純粋な戦力分析の上での行為。
これを愚弄と捉えた秀吉は、人智を超えた速度で飛び出した。
秀吉程度ならばこの場所でいいと、慢心ではなく純粋な戦力分析の上での行為。
これを愚弄と捉えた秀吉は、人智を超えた速度で飛び出した。
「チィ……ッ!」
射出された黄金の弾丸。
突き出された覇王の拳は、宇蟲王の斬り上げによって大きく仰け反らされる。
逆の拳で防御姿勢を取るも、僅かに宇蟲王の方が速い。
鍛え上げられた頑強な肉体を、豆腐のように切り裂く二の太刀が振るわれる。
突き出された覇王の拳は、宇蟲王の斬り上げによって大きく仰け反らされる。
逆の拳で防御姿勢を取るも、僅かに宇蟲王の方が速い。
鍛え上げられた頑強な肉体を、豆腐のように切り裂く二の太刀が振るわれる。
その瞬間。
「…………!」
「ぬ、……!?」
「ぬ、……!?」
差し込む激光。
まるでもう一つ太陽がそこにあるかのような、全てを呑み込む輝き。
空気を震わせ、瓦礫を吹き飛ばし、土煙を巻き上げて、雄英高校全体に〝異変〟を伝える。
王の斬首刑を中断させるに値するなにかが、そこで起きた。
まるでもう一つ太陽がそこにあるかのような、全てを呑み込む輝き。
空気を震わせ、瓦礫を吹き飛ばし、土煙を巻き上げて、雄英高校全体に〝異変〟を伝える。
王の斬首刑を中断させるに値するなにかが、そこで起きた。
「ほう、ようやく──」
「魔閃光ッ!」
「魔閃光ッ!」
宇蟲王の言葉が紡がれるより速く、光の奔流が骸装へ到達する。
寸でのところで剣身を盾にするも、片手で受け止められる威力ではなく大きく押し下げられた。
そのまま無様にも鋼鉄の壁に打ち付けられる醜態は晒さず、数センチ手前で踏みとどまる。
力を込めた一刀で光線を掻き消すも、その柄は〝両手〟で握られていた。
寸でのところで剣身を盾にするも、片手で受け止められる威力ではなく大きく押し下げられた。
そのまま無様にも鋼鉄の壁に打ち付けられる醜態は晒さず、数センチ手前で踏みとどまる。
力を込めた一刀で光線を掻き消すも、その柄は〝両手〟で握られていた。
「貴様……」
「さっきはごめんなさい、失礼な真似をしました」
「さっきはごめんなさい、失礼な真似をしました」
宇蟲王を退けるという偉業を成し遂げた金髪の青年へ、秀吉が目を見開くのも一瞬。
ふわりと傍らに着地するトランクスへ、すぐさまいつもの険しい顔つきへ変わった。
ふわりと傍らに着地するトランクスへ、すぐさまいつもの険しい顔つきへ変わった。
「フン、惑いは無いな」
「もちろんです」
「であれば、我と共に並び立つ武者と認めよう」
「もちろんです」
「であれば、我と共に並び立つ武者と認めよう」
武帝に相応しい言動は、トランクスからしてもどこか威圧的に映る。
体勢を立て直す宇蟲王への警戒をそのままに、トランクスと秀吉は隣並ぶ形となった。
体勢を立て直す宇蟲王への警戒をそのままに、トランクスと秀吉は隣並ぶ形となった。
「我は豊臣秀吉、日の本を統一する者の名よ」
「トランクスです。……その、日の本というのはよくわかりませんが、よろしくお願いします」
「トランクスです。……その、日の本というのはよくわかりませんが、よろしくお願いします」
視線と意識は眼前の敵へ。
宇蟲王討伐という共通の目的を掲げた両者は、それぞれ得物を構える。
宇蟲王討伐という共通の目的を掲げた両者は、それぞれ得物を構える。
「少しはマシになったか、腑抜け」
「ああ、お陰様でな。お前の王様ごっこもこれまでだ」
「ああ、お陰様でな。お前の王様ごっこもこれまでだ」
緩慢な足取りで距離を詰める蟲の王。
彼から発せられる言葉には、どこか愉悦に似た感情が込められていた。
彼から発せられる言葉には、どこか愉悦に似た感情が込められていた。
「トランクス、二度は言わん。我に意識を割いて本領を殺すような真似は許さんぞ」
「ですが……」
「フン、案ずるな。貴様に合わせる、思う存分力を出せ」
「……分かりました。援護をお願いします、秀吉さん」
「ですが……」
「フン、案ずるな。貴様に合わせる、思う存分力を出せ」
「……分かりました。援護をお願いします、秀吉さん」
宇蟲王が間合いに入るまでの数秒。
覇王の提案に、トランクスは強く頷く。
覇王の提案に、トランクスは強く頷く。
連携も取れないまま同時に掛かるのは、却って同士討ちの危険がある。
トランクスの性格上、秀吉ごと宇蟲王を叩き斬るというわけにもいかないだろう。
あくまでこの戦い、邪悪の王を単身で抑え込めるトランクスが主力である。
それを無視して我を通すようでは天下統一など絵空事。
トランクスの性格上、秀吉ごと宇蟲王を叩き斬るというわけにもいかないだろう。
あくまでこの戦い、邪悪の王を単身で抑え込めるトランクスが主力である。
それを無視して我を通すようでは天下統一など絵空事。
あの武帝が、他者に合わせて戦う。
そんならしくない事を選択させたのだ。
トランクスには、それ相応の働きをしてもらわねば困る。
そんならしくない事を選択させたのだ。
トランクスには、それ相応の働きをしてもらわねば困る。
「来るぞッ!」
突如、宇蟲王の姿が掻き消える。
闇色の残像を描くそれは決して消えた訳ではなく、一瞬にして十メートルの距離を無かったことにしたのだ。
しかしそれを捉えられぬ者は、この場にはいない。
秀吉は後方へ跳躍し、トランクスが前に出て迎え撃つ。
二人の首を落とさんと迫る刃は目的を果たせず、反逆者の剣によって強引に止められた。
闇色の残像を描くそれは決して消えた訳ではなく、一瞬にして十メートルの距離を無かったことにしたのだ。
しかしそれを捉えられぬ者は、この場にはいない。
秀吉は後方へ跳躍し、トランクスが前に出て迎え撃つ。
二人の首を落とさんと迫る刃は目的を果たせず、反逆者の剣によって強引に止められた。
二発目を放つは両者同時。
奇しくも互いの右肩を狙った斬撃は、盛大な音と共にかち合うこととなる。
奇しくも互いの右肩を狙った斬撃は、盛大な音と共にかち合うこととなる。
「ハァァァァアアアッ!!」
「ぐっ……!」
「ぐっ……!」
競り合いに匙を投げたのは宇蟲王。
躊躇いを捨てた超サイヤ人の腕力を前に不利を悟り、トランクスの頭上に掌型のエネルギー力場を生成。
叩きつけて強引に姿勢を変えようという算段はしかし、気合い一つで塵と消える。
堪らず自身へ力場を用いて、強引に距離を取った。
躊躇いを捨てた超サイヤ人の腕力を前に不利を悟り、トランクスの頭上に掌型のエネルギー力場を生成。
叩きつけて強引に姿勢を変えようという算段はしかし、気合い一つで塵と消える。
堪らず自身へ力場を用いて、強引に距離を取った。
「隙を見せたな、宇蟲王」
仕切り直しへ待ったを掛けるのは、覇王の一声。
針の先ほどしかない死闘の隙間を縫うように、的確に放たれた拳が棒立ちを許さない。
左腕の盾で秀吉の攻撃を受け止めるが、息を整える間もなくトランクスが斬り掛かる。
片腕を封じられている以上、この剣を受け止めるのは無謀と下し空中へと跳躍した。
針の先ほどしかない死闘の隙間を縫うように、的確に放たれた拳が棒立ちを許さない。
左腕の盾で秀吉の攻撃を受け止めるが、息を整える間もなくトランクスが斬り掛かる。
片腕を封じられている以上、この剣を受け止めるのは無謀と下し空中へと跳躍した。
「甘いッ!」
空を飛べぬ者ならばこの時点でゲームセット。
宇蟲剣や力場による一方的な鏖殺もしかし、この男がいる限りは有り得ない。
大地を踏み砕き、黄金の軌跡を残して飛び立つ超サイヤ人は宇蟲王に休息を与えない。
空中でありながらまるで地上のように不自由なく猛攻を仕掛けるトランクスへ、宇蟲王は防戦を強いられていた。
宇蟲剣や力場による一方的な鏖殺もしかし、この男がいる限りは有り得ない。
大地を踏み砕き、黄金の軌跡を残して飛び立つ超サイヤ人は宇蟲王に休息を与えない。
空中でありながらまるで地上のように不自由なく猛攻を仕掛けるトランクスへ、宇蟲王は防戦を強いられていた。
(この剣士、以前よりも……!)
剣戟を捌き、時に躱しながら宇蟲王は歯噛みする。
超サイヤ人の姿であっても、一戦目の時はギラが優位に立ち回っていた。
しかし今はまるで逆。
攻防共に遥かに上昇し、猛攻を止めないトランクスへ、宇蟲王は反撃を繰り出せない。
超サイヤ人の姿であっても、一戦目の時はギラが優位に立ち回っていた。
しかし今はまるで逆。
攻防共に遥かに上昇し、猛攻を止めないトランクスへ、宇蟲王は反撃を繰り出せない。
「はぁッ!」
「小癪な!」
「小癪な!」
顔面を狙う気功波を盾でいなし、その隙を見て心臓へ剣を叩き込まれる。
即座に右へ躱し硬い甲殻を掠めるだけに終わるが、生半可な攻撃では傷一つつかぬはずのそれに亀裂が走った。
ここで怒りに任せて刃を振るうのは簡単だが、直情ひとつが命取りになる。
一度トランクスの周りに宇蟲剣を展開し、否が応でも攻撃の手を緩めさせようと目論む。
即座に右へ躱し硬い甲殻を掠めるだけに終わるが、生半可な攻撃では傷一つつかぬはずのそれに亀裂が走った。
ここで怒りに任せて刃を振るうのは簡単だが、直情ひとつが命取りになる。
一度トランクスの周りに宇蟲剣を展開し、否が応でも攻撃の手を緩めさせようと目論む。
稼ぐ時間は一秒にも満たない。
しかし、それだけあれば形成を逆転させられる。
しかし、それだけあれば形成を逆転させられる。
トランクスが宇蟲剣へ意識を向けた一瞬、ギラは剣を構え直し突撃。
しかしそんな王の行進を食い止めるは、唸りを上げて迫る紅蓮の砲弾。
舌打ち混じりに一歩分後退し、剛腕が眼前を貫いた。
爆ぜる大地の残り香、それが秀吉の跳躍が引き起こしたものだと説明するまでもないだろう。
しかしそんな王の行進を食い止めるは、唸りを上げて迫る紅蓮の砲弾。
舌打ち混じりに一歩分後退し、剛腕が眼前を貫いた。
爆ぜる大地の残り香、それが秀吉の跳躍が引き起こしたものだと説明するまでもないだろう。
「余裕が無いな、宇蟲王!」
「誰が口を開いていいと言った!」
「誰が口を開いていいと言った!」
追撃のチャンスを潰された宇蟲王へ、再びトランクスの大攻勢が始まる。
表に出してこそいないが、トランクスの言う通り宇蟲王は余裕を崩されていた。
表に出してこそいないが、トランクスの言う通り宇蟲王は余裕を崩されていた。
これまでギラが優位に立ち回れていたのは、あくまで実力ではなく精神的な面が大きい。
一戦目での戦いの時も、エリアの崩壊や隕石によって巻き込まれる参加者を危惧していたからこそ、トランクスは焦燥に駆られていた。
しかし今の彼は、宇蟲王の討伐に全力を注いでいる。
自分のやるべきことを見出したトランクスの戦闘力は、一時的に本来の実力を塗り替えたのだ。
一戦目での戦いの時も、エリアの崩壊や隕石によって巻き込まれる参加者を危惧していたからこそ、トランクスは焦燥に駆られていた。
しかし今の彼は、宇蟲王の討伐に全力を注いでいる。
自分のやるべきことを見出したトランクスの戦闘力は、一時的に本来の実力を塗り替えたのだ。
(まさか、この俺が……! 遅れを取るなど……!)
宇蟲剣や力場といった小技で牽制しようにも、今のトランクス相手では大した効果は見込めない。
仮に通用したとして、せっかく生まれた隙は秀吉の妨害によって無に帰す。
ならばと秀吉を先に潰そうとすれば、みすみす隙を晒すだけだ。
秀吉の介入により息を整える時間があるトランクスと違い、宇蟲王は常に消耗を強いられる。
寿命を持たぬ宇蟲王といえど体力は無限ではない。いつか動きに鈍りが出始めるだろう。
仮に通用したとして、せっかく生まれた隙は秀吉の妨害によって無に帰す。
ならばと秀吉を先に潰そうとすれば、みすみす隙を晒すだけだ。
秀吉の介入により息を整える時間があるトランクスと違い、宇蟲王は常に消耗を強いられる。
寿命を持たぬ宇蟲王といえど体力は無限ではない。いつか動きに鈍りが出始めるだろう。
「ぐ、……舐めるなァ!」
「なにっ!?」
「なにっ!?」
体内のエネルギーを両腕に移動させ、強引にパワーを上げる。
トランクスの世界での界王拳に似たその技術は、当然ながら負担も大きい。
かつての孫悟空が20倍もの力を引き上げられたのに対し、慣れない反動を考慮して2倍の出力に留まった。
トランクスの世界での界王拳に似たその技術は、当然ながら負担も大きい。
かつての孫悟空が20倍もの力を引き上げられたのに対し、慣れない反動を考慮して2倍の出力に留まった。
「しまっ……!」
「油断したな、青い戦士」
「油断したな、青い戦士」
しかし、その倍率は大きい。
力を誤認し、競り合いに負けたトランクスは大きく体勢を崩され、両腕ごと剣を下へ弾かれる。
秀吉の邪魔が入ることを計算し、振り直す手間を要する剣での攻撃ではなく顔面への殴打を選択。
頬骨ごと打ち砕かんとする左フックへ、咄嗟に気の防御によりダメージを抑えるが、大きく怯まされた。
力を誤認し、競り合いに負けたトランクスは大きく体勢を崩され、両腕ごと剣を下へ弾かれる。
秀吉の邪魔が入ることを計算し、振り直す手間を要する剣での攻撃ではなく顔面への殴打を選択。
頬骨ごと打ち砕かんとする左フックへ、咄嗟に気の防御によりダメージを抑えるが、大きく怯まされた。
「貴様もいい加減目障りだ、石くれが」
当然、我の出番と迫る秀吉。
対して宇蟲王は、掌状のエネルギー力場で迎え撃つ。
踏ん張りの利く地上ならまだしも、空中では打ち砕くよりも先に秀吉の身体が落とされる。
着地を決める秀吉だが、力場の破壊まで援護は見込めない。
対して宇蟲王は、掌状のエネルギー力場で迎え撃つ。
踏ん張りの利く地上ならまだしも、空中では打ち砕くよりも先に秀吉の身体が落とされる。
着地を決める秀吉だが、力場の破壊まで援護は見込めない。
体勢を立て直すトランクスへ右上からの袈裟斬りを放つ。
これまで拘ってきた斬首刑はとうに捨てた。
防戦を崩すための斬撃を危なげなく逸らすトランクスへ、鳩尾を狙った足刀。
これも左腕で防がれるが、強引に距離を取った。
これまで拘ってきた斬首刑はとうに捨てた。
防戦を崩すための斬撃を危なげなく逸らすトランクスへ、鳩尾を狙った足刀。
これも左腕で防がれるが、強引に距離を取った。
一呼吸の内に肉薄するトランクス。
秀吉の妨害の入らないその一呼吸の時間は、宇蟲王にとって貴重。
秀吉の妨害の入らないその一呼吸の時間は、宇蟲王にとって貴重。
『Lord Finish』
ハナから決定打になるとは思っていない。
しかし防御を許さない大技は、トランクスに大袈裟な回避を強いる。
概念ごと全てを断たんとする闇の一閃を前に、追撃を断念したトランクスは上空へと飛翔した。
しかし防御を許さない大技は、トランクスに大袈裟な回避を強いる。
概念ごと全てを断たんとする闇の一閃を前に、追撃を断念したトランクスは上空へと飛翔した。
剣の間合いから大きく外れた以上、選択肢は限られる。
ここで追撃をやめては振り出しだ。なによりそれを理解しているトランクスは剣を納めた。
言わずもがな、邪悪の王相手に休戦を持ちかけるわけではない。
両手に迸る黄金の気が、戦闘続行のなによりの証拠。
ここで追撃をやめては振り出しだ。なによりそれを理解しているトランクスは剣を納めた。
言わずもがな、邪悪の王相手に休戦を持ちかけるわけではない。
両手に迸る黄金の気が、戦闘続行のなによりの証拠。
「ハァァァァアアアアアッ!!」
「豆鉄砲如きで俺に傷を付けるつもりか!」
「豆鉄砲如きで俺に傷を付けるつもりか!」
機関銃の如く放たれる気弾の嵐。
ただしその威力は鉛玉の比ではなく、一発一発が主砲級。
しかし宇蟲王の装甲を穿つには足りず、力場を利用したバリアに悉くが弾かれる。
このまま根気比べに興じれば、先に力尽きるのは気を消耗するトランクスだ。
ただしその威力は鉛玉の比ではなく、一発一発が主砲級。
しかし宇蟲王の装甲を穿つには足りず、力場を利用したバリアに悉くが弾かれる。
このまま根気比べに興じれば、先に力尽きるのは気を消耗するトランクスだ。
再び剣を取り急接近。
かち合う王剣と王剣、遅れて吹き荒ぶ突風。
身体能力で劣る宇蟲王は両腕にエネルギーを流し、2倍の筋力で拮抗する。
互いに打たず押されずの鍔迫り合いは、じきに力場の破壊を終える秀吉が介入するであろうトランクスが有利。
かち合う王剣と王剣、遅れて吹き荒ぶ突風。
身体能力で劣る宇蟲王は両腕にエネルギーを流し、2倍の筋力で拮抗する。
互いに打たず押されずの鍔迫り合いは、じきに力場の破壊を終える秀吉が介入するであろうトランクスが有利。
──の、はずだった。
「えっ……!?」
「……!」
「……!」
突如、トランクスの毛髪から金色の色素が抜けてゆく。
全身を纏っていた光の粒子は、朝霧に消える蛍のように儚く散って。
その変貌が導き出す答えは、すぐに現実となった。
全身を纏っていた光の粒子は、朝霧に消える蛍のように儚く散って。
その変貌が導き出す答えは、すぐに現実となった。
「が、……はっ!?」
振り子のように傾いた形勢は、一切の足掻きを許さない。
両腕に掛かる馬鹿げた重圧を覚えるより先に、トランクスの身体は流星の如く墜落した。
空中で姿勢を変えてどうにか校舎側に落ちることは回避したが、その傍らの地面が無惨に陥没する。
受け身も取れず打ち付けられた痛みに顔を歪ませながら、ようやく異変を自覚した。
両腕に掛かる馬鹿げた重圧を覚えるより先に、トランクスの身体は流星の如く墜落した。
空中で姿勢を変えてどうにか校舎側に落ちることは回避したが、その傍らの地面が無惨に陥没する。
受け身も取れず打ち付けられた痛みに顔を歪ませながら、ようやく異変を自覚した。
「まず、いっ……変身が……っ!」
考えてみれば当然のことだった。
トランクスはこれまでアルジュナ・オルタ、宇蟲王、ノワルといった同格レベルの相手から参加者を守る戦いを強いられてきた。
加えて、精神的な焦燥に駆られていたおかげで心身共にろくに休息など取れていない。
トランクスはこれまでアルジュナ・オルタ、宇蟲王、ノワルといった同格レベルの相手から参加者を守る戦いを強いられてきた。
加えて、精神的な焦燥に駆られていたおかげで心身共にろくに休息など取れていない。
格下相手の蹂躙を繰り返してきた宇蟲王とは、積み重ねてきた疲弊の度合いが違う。
鬱陶しい制限が消耗を加速させて、超サイヤ人化の維持を困難にさせた。
鬱陶しい制限が消耗を加速させて、超サイヤ人化の維持を困難にさせた。
「トランクスッ!」
やや遠くで秀吉の声が聞こえる。
力場の破壊を終えたのだろう、豪風を跳ね返して駆け寄る姿が視界の端で映った。
しかし、その視界の中央は別のものを捉えていた。
力場の破壊を終えたのだろう、豪風を跳ね返して駆け寄る姿が視界の端で映った。
しかし、その視界の中央は別のものを捉えていた。
「無様だな、青い戦士。己の肉体に裏切られたか」
「く、そ……!」
「く、そ……!」
超速で迫り来る闇。
擬似界王拳による強化を脚部に回した王は、秀吉のスピードを大きく凌ぐ。
剣を持つ腕は競り合いの余韻で痺れている。
迎え撃つのを諦めたトランクスは、逡巡の末に令呪の使用を試みた。
擬似界王拳による強化を脚部に回した王は、秀吉のスピードを大きく凌ぐ。
剣を持つ腕は競り合いの余韻で痺れている。
迎え撃つのを諦めたトランクスは、逡巡の末に令呪の使用を試みた。
その時、
──ギャリリッ。
その音は、異様だった。
この戦いが始まって以来、初めて。
三人の怪物以外が立てた、耳鳴りのような金属音。
この戦いが始まって以来、初めて。
三人の怪物以外が立てた、耳鳴りのような金属音。
──ギャリ、ギャリリッ。
宇蟲王の追撃は止まらない。
しかしほんの僅かに気を取られた一瞬、トランクスはブレイクダンスじみた動きで起き上がると同時、剣身を蹴り上げた。
逸れた刃は青髪の一部を掠め取り、続く二刀目は秀吉の拳に阻害される。
しかしほんの僅かに気を取られた一瞬、トランクスはブレイクダンスじみた動きで起き上がると同時、剣身を蹴り上げた。
逸れた刃は青髪の一部を掠め取り、続く二刀目は秀吉の拳に阻害される。
──ギャリリリッ、ガギッ。
戦士に並び立つ覇王。
距離を離された宇蟲王は、擬似界王拳の反動により仕切り直しを余儀なくされる。
睨み合う両陣。視線はそのまま、しかし警戒は別の場所へ向けられていた。
距離を離された宇蟲王は、擬似界王拳の反動により仕切り直しを余儀なくされる。
睨み合う両陣。視線はそのまま、しかし警戒は別の場所へ向けられていた。
──ギャリッ、ガギンッ。
この戦いに第三者の介入の余地はない。
人智を超えた死闘を物語る絢爛な輝きと、彼方まで響く爆音を捉えて近づこうなどという愚か者は、この校舎内にはいないから。
それに、雄英高校の周辺は現在鋼鉄の壁で覆われている。外部からの侵入はありえない。
超人すら霞んで見える狂争は秀吉、トランクス、宇蟲王の三人だけで完結するはずだったのだ。
人智を超えた死闘を物語る絢爛な輝きと、彼方まで響く爆音を捉えて近づこうなどという愚か者は、この校舎内にはいないから。
それに、雄英高校の周辺は現在鋼鉄の壁で覆われている。外部からの侵入はありえない。
超人すら霞んで見える狂争は秀吉、トランクス、宇蟲王の三人だけで完結するはずだったのだ。
──ギャリリッ、ギィンッ。
けれどもしも、万が一。
この三人に干渉出来るものが居るとしたら。
この三人に干渉出来るものが居るとしたら。
よほどの命知らずか。
或いは雄英バリアを破壊できる者か。
或いは雄英バリアを破壊できる者か。
「────ギガスラッシュ」
または、その両方か。
◾︎
| 139:俺様がいる-ガラスの希望2014- | 投下順 | 140:Rising Dragon Ⅱ |
| 136:尊厳を喰らう世界でこの身が汚れても心は折れない | 時系列順 | |
| 134:Q:正義の味方がするべきことはなんでしょう | 豊臣秀吉 | |
| トランクス | ||
| 宇蟲王ギラ | ||
| 124:裂界武帝対闇途昇雷 | やみのせんし |