雲の切れ間から光が差し込む。ハルトシュラーはその様子を椅子に座ってみていた。
風はないが、春だというのに少々肌寒い。コーヒーを少し飲み、テーブルに置く。
館屋上部分。今はまだハルトシュラーしかそこにはいない。
この屋上に繋がる階段は一つしかない。最初にあの扉を開けるのは誰だろうか。
少しずつ雲が切れていく。天候は晴れに向かっている。
ドアノブを回す音に続き、少々錆びついた扉が開かれていく。
出てきたのはおかっぱ頭の騎士だった。だがその体はあまりにも血にまみれている。
「ハルトシュラー。私達の勝ちだ」
騎士が膝をついて倒れる。その後ろから出てきたのはサムライポニーテール少女、無限桃花だった。
桃花も血にまみれているがそこに伏す、騎士ほどではない。手には長く黒い刀が握られていた。
「君は刀を抜けない設定だったはずだが……」
「そうだ。私は決して自分の刀を抜かない信念があった。だから死んだ友人から刀を貰ったのだ」
「そうか」
ハルトシュラーが立ち上がり、桃花のほうへと歩く。
桃花もゆっくりとハルトシュラーのほうへと歩く。
いくらかの間合いを取り、止まる。
「ソーニャが倒されるなんてことはないはずなんだがな」
「自慢の完成品が失敗作に殺されるはずがないってか」
桃花が自嘲気味に笑う。ハルトシュラーの表情は変わらない。
「あとはお前だけだ」
刀を真っ直ぐハルトシュラーに突き立てる。ハルトシュラーは答えず眼を瞑った。
桃花は刀を構え、一歩近づく。
「お前達に可能性はないのだよ」
ハルトシュラーが眼を開け、にやりと笑った。
桃花が刀を振り上げ、真っ直ぐ跳ぶ。ハルトシュラーが右手を軽く上げる。
「土よ。隆起せよ」
屋上のコンクリートが盛り上がり、桃花との間に割り込む。
桃花は隆起した壁を蹴って、後ろに下がる。
「槍となり貫け」
盛り上がったコンクリートが形状を変える。
一旦、地面の少し上で大きな玉になると大きな槍に変わり、勢いよく桃花のところへ向かっていく。
桃花はそれをジャンプでかわすと槍の上に乗り、走り始めた。
「風よ。薙ぎ払え」
ハルトシュラーが右手を横に振るう。海側から風の塊が迫ってくる。
桃花は足を止め、風のほうへと向く。そして下に構え、振り上げる。
轟音がハルトシュラーの前を横切った。しかし桃花はコンクリートの上に立っている。
「風を斬ったのか……!」
再び桃花が走り出す。その刀の間合いを目指して。
ハルトシュラーが右手を前に真っ直ぐ伸ばす。
「光よ。その身を圧縮し、打ち出せ」
右手から眼が眩むほどの光を放ち、ハルトシュラーの右手の方向を焼き尽くしていく。
その光に思わず、眼を瞑ってしまったハルトシュラーが次に眼に映った光景はまっさらになった屋上だった。
あったはずの屋上階段も消し飛んでしまい、今はその身を直に晒している。
雲は流れ、青空が覗いていた。
風はないが、春だというのに少々肌寒い。コーヒーを少し飲み、テーブルに置く。
館屋上部分。今はまだハルトシュラーしかそこにはいない。
この屋上に繋がる階段は一つしかない。最初にあの扉を開けるのは誰だろうか。
少しずつ雲が切れていく。天候は晴れに向かっている。
ドアノブを回す音に続き、少々錆びついた扉が開かれていく。
出てきたのはおかっぱ頭の騎士だった。だがその体はあまりにも血にまみれている。
「ハルトシュラー。私達の勝ちだ」
騎士が膝をついて倒れる。その後ろから出てきたのはサムライポニーテール少女、無限桃花だった。
桃花も血にまみれているがそこに伏す、騎士ほどではない。手には長く黒い刀が握られていた。
「君は刀を抜けない設定だったはずだが……」
「そうだ。私は決して自分の刀を抜かない信念があった。だから死んだ友人から刀を貰ったのだ」
「そうか」
ハルトシュラーが立ち上がり、桃花のほうへと歩く。
桃花もゆっくりとハルトシュラーのほうへと歩く。
いくらかの間合いを取り、止まる。
「ソーニャが倒されるなんてことはないはずなんだがな」
「自慢の完成品が失敗作に殺されるはずがないってか」
桃花が自嘲気味に笑う。ハルトシュラーの表情は変わらない。
「あとはお前だけだ」
刀を真っ直ぐハルトシュラーに突き立てる。ハルトシュラーは答えず眼を瞑った。
桃花は刀を構え、一歩近づく。
「お前達に可能性はないのだよ」
ハルトシュラーが眼を開け、にやりと笑った。
桃花が刀を振り上げ、真っ直ぐ跳ぶ。ハルトシュラーが右手を軽く上げる。
「土よ。隆起せよ」
屋上のコンクリートが盛り上がり、桃花との間に割り込む。
桃花は隆起した壁を蹴って、後ろに下がる。
「槍となり貫け」
盛り上がったコンクリートが形状を変える。
一旦、地面の少し上で大きな玉になると大きな槍に変わり、勢いよく桃花のところへ向かっていく。
桃花はそれをジャンプでかわすと槍の上に乗り、走り始めた。
「風よ。薙ぎ払え」
ハルトシュラーが右手を横に振るう。海側から風の塊が迫ってくる。
桃花は足を止め、風のほうへと向く。そして下に構え、振り上げる。
轟音がハルトシュラーの前を横切った。しかし桃花はコンクリートの上に立っている。
「風を斬ったのか……!」
再び桃花が走り出す。その刀の間合いを目指して。
ハルトシュラーが右手を前に真っ直ぐ伸ばす。
「光よ。その身を圧縮し、打ち出せ」
右手から眼が眩むほどの光を放ち、ハルトシュラーの右手の方向を焼き尽くしていく。
その光に思わず、眼を瞑ってしまったハルトシュラーが次に眼に映った光景はまっさらになった屋上だった。
あったはずの屋上階段も消し飛んでしまい、今はその身を直に晒している。
雲は流れ、青空が覗いていた。