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eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.6D

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匿名ユーザー

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「――データ取りはバッチリ。まだまだ荒削りだけど、こうやって積み重ねていけばその内アタシ達の目的に添える程度にはなるのかしらね?」

 先程までと変わらずヒルズコンビナートより突き出た鉄塔の頂点に佇む紅い影。
 巨人と怪異の戦いを特等席にて観戦していたそれは、戦いの決着がつくと何気なくそんな事を口から漏らした。

「……それにしてもあの子、やっぱり「書」と「御する者」を得ていたのね。」

 白き巨人に視線を向ける。
 熱気冷め切らぬ揺れる陽炎の内、拳を突き出した状態で静止し憤怒の瞳を失ったそれは、まるで巨大な彫刻の様。
 周囲は怪異の放った炎により黒く焼け焦げ、キャリアーやそれに載せられていたマシンダムの残骸が散乱していた。

「ソートギガンティック……でも、てんで駄目ね。アタシの知っているアレはあんな玩具じゃないわ。」

 巨人に対し嫌悪感を露にしながらも、しかし瞳を逸らす事は無い。
 藍緑色の瞳に紅い光が一瞬揺れた。

「もっと、もっと強く、鋭く、鍛え上げなくっちゃね。んじゃまずはアタシが稽古を……」
「駄目です。」

 巨人に向かい飛び降りようとした影を後ろから落ち着いた声にて制止したもう1つの影。

「わ、分かってるわよヌース。本気で言ってるわけないじゃない。」
「お嬢様が常に本気なのを私は重々承知しております。」
「う~……」
「急がずともいずれその時は来ます。それまではご辛抱の程を……」

 膨れっ面のビュトスに諭すように言うヌース。

「今は今為すべき事を為す。私どもの悲願を達成する為にもそれが一番の近道なのです……帰りましょう、お嬢様。」

 それだけ言って黒い風に乗り消え去る。
 彼に釣られる様に姿を消すビュトス。

「――全て筋書き通り、か……つまんないわね。」

 最後に残された言葉は誰に聞こえる事も無く、スチームヒルの闇夜に溶かれて消えた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 次に気が付いた時にはもう俺の前に「男」と「門」と「影」の姿はなかった。
 あの光景は一体何だったのだろう?疑問は多々浮かぶが、夢中になっていた時は一切感じず、
 後になって思い出したかのように沸き上がってきた疲労感の前ではそこまで頭が回らない。

「……視たのか?」

 アリスの声が遠く聞こえる。
 その言い様からするとどうやら俺と同じモノを視たようだ。そうなると幻覚や妄想の類ではない事はまず間違いない。

「……ああ。」

 なら何なのか?
 イグザゼンは俺達に何を見せたがったのか?何を伝えたかったのか?
 分からない。分からない――が、今はそれよりも

「アリス。」
「?」
「ごめん、お休みー……」

 意識を失う方が早かったらしい。


「――ソートリターン。」

 突然のディーの言葉にしばし黙っていたアリスだが、彼女の号令と共に今まで怪異のいかなる攻撃にも傷1つ負う事のなかった
イグザゼンの身体が瞬時に無数のパーツへと分解され、その刹那白い光となって消えていく。
 残されたのはソートギガンティックの丁度胸があった辺りに浮遊する銀の甲冑のみ。
 美麗でありながら何処か異常な装甲が熱気の残る夜風に吹かれ、蒼く鋭い瞳は遥か彼方を見据える。

「―――――」

 闇夜、空高く舞う。
 残されたものは炎の燻る痛々しい戦いの爪痕。そして彼らの戦いを遠目で見守っていた街の人々のみだった。


「――……!――……!!――……!!」

 瞼の向こうが白い。その向こう側より聞こえる見知った声。
 だが身体が重い。疲労困憊。手も、足も、ぴくりとも動かない。喉も震えず、瞼には鉛の重りを吊り下げた様。声に答える事は勿論、身体を動かす事も適わない。

「――――」

 やがて、必死の思いでなんとか瞼を僅かながらもこじ開けた。
 俺の傍にいる誰かの輪郭。酷くぼやけていて誰なのかも分からない。

「――……!!――で……!!――ディー!!」

 声。見知った声。ベルの声。
 ならここはウチ?……いや、多分違う。ここはシェルター。確か俺は怪物に追われ、皆と一緒にここの前まで逃げてきてその後……

「べ……る……?」

 そうだ、何故か俺だけを狙って一匹の怪物が追いかけてきたんだ。
 わけも分からず逃げて逃げて、目の前に馬鹿みたいにでかいチェーンソーが降って来て、そして……

「!気が!!……よかった……ディー……本当に……」

 俺はまたあの鎧を纏い、更に巨大化までしちゃったんだっけか。
 そのままの勢いであの街を襲う球っころをぶちのめして……

「う、う……――――」

 今ここでこうやって寝てるってわけか。

「――――」

 不意に感じた暖かく、柔らかい感触。そして聞こえる、啜る様な泣き声。
 ベルの感触。ベルの声。抱き付かれている事に気付いても、俺の視界はまだぼんやりと宙を回る。
 今は何も考えたくは無い。ただこのまま、こうしていたい。色んな事を考えるのはそれからでも遅くは無いだろう……俺はそれだけ考えると、思考する事の一切を止めた。


 少年が意識を取り戻した丁度その頃。
 蒸気の街の遥か上空、雲海直上。重荷を下ろした銀の異形の姿をした少女は、そこにぽっかりと顎を開いた「歪み」の前に佇んでいた。

「―――――」

 「歪み」に向かい手を翳す。
 同時に周囲を揺さぶるこの世ならざる振動。「歪み」に対して殺到するそれは徐々にそれを正していき、遂には完全にその場から消失させた。

(――警戒は一切無し。……もはや、これは不要というわけか。)

 少女は内心そう呟く。
 「彼ら」により仕組まれた励起獣の襲来、そして「機構」のオーバードフェノメオン「ビルドグランデ」の顕現。「彼ら」が何をしようとしているのかは分かりかねるが、
これらを行う事だけが目的ではない事は間違いない。何らかの実験か、それとも……

(……戻ろう。)

 「彼ら」の思惑がどうであれ、まだ答えを出すには情報が不足している。
 それにその答えを出す前にするべき事も残っている。光指す世界より、超越的存在の顕現の為に図らずとも闇の淵へと一歩を歩ませてしまった彼に、私はどう接すればいいのか――という事だ。

「――――」

 答えはまだ出ないものの、逃げる事もない。
 雲海を下る銀の異形は彼らがいるであろう場所へとその進路を向けた。


「――何?我々に断り無く彼らがそんな事を?」

 天井より間接照明のみがぽつりぽつりと照らす広大な格納庫。
 その脇に設けられた通路で、その男――レェン・マジェノは携帯通信機に耳を傾け、表情はそのままに、しかし声色には明らかな驚きを滲ませていた。

『はい。莫大なEB活性の後、オーバードフェノメオンクラスの顕現を確認したとの事です。』
「ふむ……」

 考えに耽るレェン。
 ただその沈黙も長くはなく、彼はまぁいいだろうと口を開いた。

「確かに彼らの技術は素晴らしい。その供与を受けられた事も我々にとっては幸運と言うしかないだろう――だが」

 男は視線を格納庫の方へと移す。
 そこに並ぶは無数の漆黒の巨人達。重厚な装甲を身に纏い、既存の兵器など歯牙にもかけない
恐るべき力を内包した彼らを一瞥すると口元に亀裂のような笑みを浮かべ、どこか高揚した口調で

「もはや彼らの助力は必要ない。後は時間が解決してくれる。他のジャンクヤードへ情報が漏れる可能性は否定出来ないが、
 今更知った所でどうにか出来るモノでもあるまい……全てはこのペンタピアの為。世界の頂点へと登る為だ。」

 ――――心より楽しげに、そう言ったのだった。
                                                                        Act.6_end

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