終末というものは来てほしくない日に来るらしい。
準備のない平日にはやめてほしかったよう。
お腹いっぱいな週末に来てほしかった。
お腹いっぱいな週末に来てほしかった。

その日。
あたしは『終末と名乗る同い年の♂』と知り合った。
うぅん、前から、知り合いだったというか。
あまりにもヤツの外見は変わってしまっていて、まさか「高2にして髪薄、メタボの口ひげやろう」だった、(いいたかないけど)彼氏の終末とは思えなかったのだ。
うぅん、前から、知り合いだったというか。
あまりにもヤツの外見は変わってしまっていて、まさか「高2にして髪薄、メタボの口ひげやろう」だった、(いいたかないけど)彼氏の終末とは思えなかったのだ。
部活帰りに遠回りして、立ち寄った自然公園。
こっそり買った、たこ焼きをほっこりと味わってる最中だった。
こっそり買った、たこ焼きをほっこりと味わってる最中だった。
ヤツは現れた。
なぜだか、ムダに風と砂塵が巻い上がり、いきなり男子高生がわいてでた。ベンチで、たこ焼きの残りを数えていた、あたしの視界に長い足が竜巻とともに入ってきたのだ。
なぜだか、ムダに風と砂塵が巻い上がり、いきなり男子高生がわいてでた。ベンチで、たこ焼きの残りを数えていた、あたしの視界に長い足が竜巻とともに入ってきたのだ。
この意味不な出現のあおりで、たこやきは吹っ飛び、しかも地面に着く寸前で、ヤツの口に全部、入ってしまったのだ。
どんな技で食べたのよー!! てか。
「いきなり、なんなのー!!??」
「あち、ち、もぐもぎゅ」
「ちょっと! 返して、あたしのたこ焼きぃ~!」
「カナン、もぎゅ。おまえ、もぎゅ。いつまでデブのまま、いるんだよ?」
「あんた誰? なんで、あたしの名前を?」
「オラはお前の、大切な人、終末だっ」
「はあ―?」
どんな技で食べたのよー!! てか。
「いきなり、なんなのー!!??」
「あち、ち、もぐもぎゅ」
「ちょっと! 返して、あたしのたこ焼きぃ~!」
「カナン、もぎゅ。おまえ、もぎゅ。いつまでデブのまま、いるんだよ?」
「あんた誰? なんで、あたしの名前を?」
「オラはお前の、大切な人、終末だっ」
「はあ―?」
そのときはまだ、終末だという確信があったわけじゃない。
というか、外見はまったく見知らぬ人。だけど、見知らぬ人間の一言で、あっても、あたしの行動を制御するには充分だった。
というか、外見はまったく見知らぬ人。だけど、見知らぬ人間の一言で、あっても、あたしの行動を制御するには充分だった。
「好き好んで、デブってるわけじゃない……」
ショートボブの頭をたれて、あたしはうつむく。
ハンドボールで鍛えあげた、こぶしを力なく落とし、ローキックをかますにとどめた。
ショートボブの頭をたれて、あたしはうつむく。
ハンドボールで鍛えあげた、こぶしを力なく落とし、ローキックをかますにとどめた。
ぼっこっん~~~!
かたわらにいた野良猫を巻き添えにして、公園のゴミ箱にぶつかる、自称終末。
「――っ! てぇぇーなっ。なにすんだよっ。少しは敬意を払ったらどうなんだ。この顔によ」
「あんた、どちらのあほ? あんたなんて、知らないっての! 」
ワン蹴りでおさめようとおもっていた、あたしの瞳が再び燃え上がった。足がコイツの股間を蹴りたい、手がコヤツのまあ美形な顔面を打ち抜きたい、と訴えてくる。
「前のオラを好きだった気持ちも、わかるが、こんないい男を足蹴にするなんて、カナン、お前、変態か」
「あんた、どちらのあほ? あんたなんて、知らないっての! 」
ワン蹴りでおさめようとおもっていた、あたしの瞳が再び燃え上がった。足がコイツの股間を蹴りたい、手がコヤツのまあ美形な顔面を打ち抜きたい、と訴えてくる。
「前のオラを好きだった気持ちも、わかるが、こんないい男を足蹴にするなんて、カナン、お前、変態か」
あったまきた―! なによコイツ!
「あんたが終末だといい張るなら、それもいい。よけいに遠慮なくやってやるっ!」
「お、お前、それが彼氏にいう言葉か」
「お、お前、それが彼氏にいう言葉か」
外見は天地ほど開きがあるものの、終末臭はピタリ一致する。
クローン終末臭っていってもいい。
終末臭気を拡散中のコイツはあたしが近づくにつれ、手とお尻をついたまま、ずりずり、後退していく。
クローン終末臭っていってもいい。
終末臭気を拡散中のコイツはあたしが近づくにつれ、手とお尻をついたまま、ずりずり、後退していく。
「終末を彼氏とおもうだけで、頭にくるのよ。いい機会だわ。その怒りをあんたにおさめてもらう。終末、終末と騒ぐあんたが悪いんだから!」
「づゎぁぁ~~!! やめろ、やめ、やめ~~~~~~!!」
「づゎぁぁ~~!! やめろ、やめ、やめ~~~~~~!!」
数分後。
この終末風男はベンチに腰かける、あたしのちょうどよい靴置きになっていた。
「あんた、本当に終末なの?」
戦い終わって(一方的な)ストレス発散した、あたしはさきほど買っておいた桃ジュースをくいっとやりながら、足元に視線を落とす。
「もちろんだ。オラの名前は終生終末(しゅうせい しゅうまつ)。お前は夢見カナン。ムダにデカ目のオラの子分だ」
「子分? いつの時代なのよっ。つか、なぜ、あたしが子分?」
「1番弟子っていってもいい、この際」
戦い終わって(一方的な)ストレス発散した、あたしはさきほど買っておいた桃ジュースをくいっとやりながら、足元に視線を落とす。
「もちろんだ。オラの名前は終生終末(しゅうせい しゅうまつ)。お前は夢見カナン。ムダにデカ目のオラの子分だ」
「子分? いつの時代なのよっ。つか、なぜ、あたしが子分?」
「1番弟子っていってもいい、この際」
終末臭い男はあたしの警戒が緩んだと見たのか、乱暴にあたしの足を払いのけ、半身を起こした。
「あぁもう……ジュース、こぼれたよ」
はずみで、ボトルから飛び出たジュースをハンカチで拭きながら
「おかしいっ、そういうとき、終末は『1番だしっ』っていうんだよ。さむ~~~く、ね」と、にらんでやった。
それを聞いた終末は、ぽぽっと頬を赤らめ
「――オラ、やめたんだよ。かっこわるいのは。いま、この外見だろ」
「あぁもう……ジュース、こぼれたよ」
はずみで、ボトルから飛び出たジュースをハンカチで拭きながら
「おかしいっ、そういうとき、終末は『1番だしっ』っていうんだよ。さむ~~~く、ね」と、にらんでやった。
それを聞いた終末は、ぽぽっと頬を赤らめ
「――オラ、やめたんだよ。かっこわるいのは。いま、この外見だろ」
あんたのその言葉のが、かっこわるいんだよ!
このダサさ。 たしかに終末。
終末以外にありえないわっ。
声もボソ声、終末だし。
先週末、会ったときにはあいかわらずのメタボっぷりだったのに。
いまや贅肉は皆無。体脂肪6%以下と見た。
終末以外にありえないわっ。
声もボソ声、終末だし。
先週末、会ったときにはあいかわらずのメタボっぷりだったのに。
いまや贅肉は皆無。体脂肪6%以下と見た。
「あんたが終末だということはわかった。終末みたいな、ドバカなヤツって二人といないから」
「ちょっと理解がおかしいが、やっと、わかったか」
終末は安堵とも嘆息とも、わからない微妙な息を吐いた。
「ちょっと理解がおかしいが、やっと、わかったか」
終末は安堵とも嘆息とも、わからない微妙な息を吐いた。
「エロリアンに入ったんだよ、オラ」
土ぼこりを払いながら、立ち上がる終末にドキドキしてしまう。
土ぼこりを払いながら、立ち上がる終末にドキドキしてしまう。
足長っ。体ほそっ。
毛がないとあるのとではこんなにも違うものなの?
贅肉レスの今や、種族が違う気がする。
あたしはつい、逆光に立つ、終末に見ほれてしまった。
毛がないとあるのとではこんなにも違うものなの?
贅肉レスの今や、種族が違う気がする。
あたしはつい、逆光に立つ、終末に見ほれてしまった。
い、いけない―! 終末ごときに。
中身は空っぽな、いつもの終末なのよ。
しっかりして、あたし。
中身は空っぽな、いつもの終末なのよ。
しっかりして、あたし。
「遺伝子操作で、肉体を改造して、正義の味方をつくる、スーパーボランティア研究所なんだ」
内心の動揺をさとられないようにあたしは
「エロ? エロリアン? なに、それ!?」
適当に言葉を連ねてみる。 いまさらながらだけど、終末って驚きのかっこよさに変身してるじゃないの! やばっやばっ。つい終末の外見にばかり、目がいっちゃう。
内心の動揺をさとられないようにあたしは
「エロ? エロリアン? なに、それ!?」
適当に言葉を連ねてみる。 いまさらながらだけど、終末って驚きのかっこよさに変身してるじゃないの! やばっやばっ。つい終末の外見にばかり、目がいっちゃう。

ここはせいいっぱい憎まれ口をたたいてみせなきゃ。
「エロリアン? 終末、あんたエロの上に、ロリにもなったの?」
「違うよ。オラはロリに興味ないって。だったら、でるところがでているカナンとつきあっちゃいねぇーよ」
「ま、まぁそうね」
かっこよくなった終末にそういわれると少し照れるじゃないの。次の言葉を聞くまでは。
「……まぁ、出ていけないところも出てるけどな」
ガボコッ! かる~く、ヒジ・キック決まった!
終末はあたしの攻撃には慣れてるからか、すばやく体制を整え、逆に、あたしの顔を覗き込んできた。
「な、なにすんのょぉ~」
あっという間もなく、あたしの両肩はホールドされ、無理やり、彼のほうを向かせられた。
「な、なにすんのょぉ~」
あっという間もなく、あたしの両肩はホールドされ、無理やり、彼のほうを向かせられた。
もうぅ~やっぁぁ~ん。萌えっちゃう~。
あっ、ばかばか。あたしのばか。
ドSにみえるけど、実は隠れドМなのよう、あたしって。
時おり、それが顔を出してくる。
はぁ……誰にもいえない。
ドSにみえるけど、実は隠れドМなのよう、あたしって。
時おり、それが顔を出してくる。
はぁ……誰にもいえない。
「カナン、よく考えて見ろよ。オラの名前は何という?」
「エ、エロ、ロリの、し、終末にきまってるじゃないの」
「修飾語はいらねー」
「なによ? 名前がどうかしたの?」
「オラさぁ。ある日、突然、気づいちまったわけよ。オラの名は終末。それって、ヒーローぽくねー?」
「はぁ……」
あたしは半身を捻って、肩に置かれた終末の手を思い切り、振り払らった。コイツって、ナルでもあったんだった。あたしの、どМ症も引くわよっ。
「エ、エロ、ロリの、し、終末にきまってるじゃないの」
「修飾語はいらねー」
「なによ? 名前がどうかしたの?」
「オラさぁ。ある日、突然、気づいちまったわけよ。オラの名は終末。それって、ヒーローぽくねー?」
「はぁ……」
あたしは半身を捻って、肩に置かれた終末の手を思い切り、振り払らった。コイツって、ナルでもあったんだった。あたしの、どМ症も引くわよっ。
「やはり、こういう名前を持って生まれてきたからには世のため、人のために働きたいジャン」
「……」
終末、あんたは三人兄弟の末っ子。
あんたが生まれたとき、あんたの両親はもう、世も末な、おしまい気分だったのよ、きっと。
「……」
終末、あんたは三人兄弟の末っ子。
あんたが生まれたとき、あんたの両親はもう、世も末な、おしまい気分だったのよ、きっと。
魔法から、覚めた王女のように上空目線で、終末を見やる、あたし。
終末、あんたは残念すぎなヤツなのよ、頭が。
終末、あんたは残念すぎなヤツなのよ、頭が。
「今の日本、いや世界はまさに終末。オラタチの活躍にふさわしい場だと思わないか?」
「オラ、タチ?」
「そうだよ。カンナ、オラタチで世界を救うんだよ」
ほうけたように語る終末に
「……シャワー浴びなきゃ、きょうのご飯はなにかな」
もう、やってられなくて、上の空なわたし。
肉体改造がどうして、世界を救うってのよー。
「オラ、タチ?」
「そうだよ。カンナ、オラタチで世界を救うんだよ」
ほうけたように語る終末に
「……シャワー浴びなきゃ、きょうのご飯はなにかな」
もう、やってられなくて、上の空なわたし。
肉体改造がどうして、世界を救うってのよー。
あたしの帰る気配を察したのか、終末の渾身の一言があたしの後頭部に放たれた。
「カナン、おまえは、うまいものを思いっきり、食いたくないのか! いくら食っても太らない体質になりたくないのか!!」
「えっ」
おいしいもの大好きな、あたしは思わず、歩みが止まってしまう。振り向いてしまう。
いつも、おいしいものを食べながら嘆く、あたしの台詞だよ、これ。
「カナン、おまえは、うまいものを思いっきり、食いたくないのか! いくら食っても太らない体質になりたくないのか!!」
「えっ」
おいしいもの大好きな、あたしは思わず、歩みが止まってしまう。振り向いてしまう。
いつも、おいしいものを食べながら嘆く、あたしの台詞だよ、これ。
「な、なによ。わけわかんなぃって」
いちおう、虚勢を張っておくけど、気になる。
究極のダイエット施術をうけたのかもコイツったら。
いちおう、虚勢を張っておくけど、気になる。
究極のダイエット施術をうけたのかもコイツったら。
「深夜のスナック食いはたまらねーよな。高カロリーなものに限ってうまいんだなぁ。お前はケーキ馬鹿食いができるし。揚げ物、五段重ね食いもいける」
「もう、へんなこといわないでよっ」
あたしみたいな美しい女子高生がそんなことするわけないでしょ。ときどきしか。
「もう、へんなこといわないでよっ」
あたしみたいな美しい女子高生がそんなことするわけないでしょ。ときどきしか。
ぐぐっ~~。
やだっ、おなかがなっちゃった。
もう~なんでこんなときに。
やだっ、おなかがなっちゃった。
もう~なんでこんなときに。
「ハハハハ!」
終末に大笑いされて、もじもじムカムカ、うつむいているうちに、ファサァと、体に何かが掛けられる感じが。チラッと腕あたりに流し目するとそこには翼? のようなものが?
終末に大笑いされて、もじもじムカムカ、うつむいているうちに、ファサァと、体に何かが掛けられる感じが。チラッと腕あたりに流し目するとそこには翼? のようなものが?
「えっ?……ええっ?……ええええええええ――!?」
大きな翼だった。
地面に届こうかというくらい、大きな翼だった。
色とりどりで、カラフル。ポップアートみたいな。
棒つきの丸いキャンデーをいっぱい生やしてるというかんじかな。
それが終末の背から生えていて?
あたしの体を包み込んでいるのだ!
地面に届こうかというくらい、大きな翼だった。
色とりどりで、カラフル。ポップアートみたいな。
棒つきの丸いキャンデーをいっぱい生やしてるというかんじかな。
それが終末の背から生えていて?
あたしの体を包み込んでいるのだ!
「なに、何、ナニ!?」
「怖がることないよ、本物だよ」
よけいに、怖いって。それじゃぁ!
「怖がることないよ、本物だよ」
よけいに、怖いって。それじゃぁ!
驚いて何もいえない、あたしを軽々と抱え、終末は微笑んだ。
「カナンにはカタツムリの触覚が似合うよな。博士に頼んであげよう」
「ええええー!! せめて、うさ耳を~!」
「ええええー!! せめて、うさ耳を~!」
あたしが叫ぶまもなく、終末は飛び立った。
大きな翼をバッサ、バッサと広げて。
宙にふわりと浮いたかと思った瞬間、空を飛んでいた。
大きな翼をバッサ、バッサと広げて。
宙にふわりと浮いたかと思った瞬間、空を飛んでいた。
羽音って、けっこうすごいのね。
終末にひしっと抱きつきながら、思わず
「これって、姫ぽくない?」
つぶやき、赤面する、あたし。
終末にひしっと抱きつきながら、思わず
「これって、姫ぽくない?」
つぶやき、赤面する、あたし。
街並みがもう、はるか下なんだけど
誰も気がついてなさそうなのがちょっと残念。
誰も気がついてなさそうなのがちょっと残念。
この日。
あたしは世界を救うために飛び立ち、 生涯、終末と戦うことになるのだけど。
あたしは世界を救うために飛び立ち、 生涯、終末と戦うことになるのだけど。
終末ったらもぅなによ、見かけだおしで!
かっこよく、あたしを抱えて飛び立ったと思ったら、早くも休憩って?
しかも、こんな木の上で?
かっこよく、あたしを抱えて飛び立ったと思ったら、早くも休憩って?
しかも、こんな木の上で?
ここは森?
いっぱい高い木があって、下を見たら、間違いなく、自分から、つい落ちたくなるような高さですっ。
いっぱい高い木があって、下を見たら、間違いなく、自分から、つい落ちたくなるような高さですっ。
「ふーっ。カナン、お前は重すぎだ。さほどデブってるようには見えないけど、どんだけ、脂肪層が充実してるんだ」
と、いいながら、終末はあたしを超極太の木の枝に放り出した。
「ちょっなによドーンって! 落ちるっての。休憩するって、なんでこんなところ?」
と、いいながら、終末はあたしを超極太の木の枝に放り出した。
「ちょっなによドーンって! 落ちるっての。休憩するって、なんでこんなところ?」
あたしはお尻をさすりながら、一段、高い枝に座り込んで、早くものんびりしかかっている、終末をにらみあげる。
「オラ、いちお、鳥だから」
あたしが再び、終末を見るとヤツは大きな片翼を開いたり閉じたりしながら、毛づくろいしていた。ハープを弾いてるようにも見える。
あたしが再び、終末を見るとヤツは大きな片翼を開いたり閉じたりしながら、毛づくろいしていた。ハープを弾いてるようにも見える。
終末の指って、以前はど○えもんのように丸々だったのに。
今は許せないくらい、ほそっ。
その指先が\羽根の一本一本を流れるように、なでるのを見ると無性に髪がムズムズする。あたしの髪がなでられてるわけじゃないのに。
今は許せないくらい、ほそっ。
その指先が\羽根の一本一本を流れるように、なでるのを見ると無性に髪がムズムズする。あたしの髪がなでられてるわけじゃないのに。
あぁ~~少し……き、きちゃうかも。
あっ、へんなこと考えちゃだめ。今後とも終末の外見がどんなに変わっても、あたしだけは絶対、見切ってやるんだから。
「腹へったろ? 贅肉はへらないかわりに腹はへるたちだからな、お前は」
「誰でもそうだっての」
「これ食べてろ」
「誰でもそうだっての」
「これ食べてろ」
何の果実だか、わからないものを終末は放ってよこした。
リンゴくらいの大きさで白をベースに赤いドット柄。
周りを緑のまあるい葉っぱで覆われてる。
匂いはマンゴーのような? 甘い~~香り。
リンゴくらいの大きさで白をベースに赤いドット柄。
周りを緑のまあるい葉っぱで覆われてる。
匂いはマンゴーのような? 甘い~~香り。
やっん、おいしそ~~!
思わず、生つば、ごっくんとしそうになったけど
「なにこれ? 食べる物なのかしら?」
と、手の中で果物を転がしながら、召使に問うようにいってみた。
終末は「バイクではないけどな」と答えた。
「なにこれ? 食べる物なのかしら?」
と、手の中で果物を転がしながら、召使に問うようにいってみた。
終末は「バイクではないけどな」と答えた。
「え?」
「鳥でもない」
「なっ?」
「けど、人間の食べるものだ」
「おぃ!」
「お前が人間なら食べられるものだ」
「……これ以上話すと、ここから落ちるから」
「お前が落とすのは贅肉だけだ」
「鳥でもない」
「なっ?」
「けど、人間の食べるものだ」
「おぃ!」
「お前が人間なら食べられるものだ」
「……これ以上話すと、ここから落ちるから」
「お前が落とすのは贅肉だけだ」
ドカガッーン!
あたしは終末にマイ通学バッグを投げ、思わず、キャッチしたヤツの間隙をぬい、そう短くもないヤツの足を思い切り、下へ引っ張った。
ギュギュッーギュン!
そう、ズボンを引き摺り下ろすくらいの勢いで。
「な、なにするだっ、カナン!」
「こうするだっ!」
とどめに、その足に頭突きを食らわせてやった。
「な、なにするだっ、カナン!」
「こうするだっ!」
とどめに、その足に頭突きを食らわせてやった。
ガンガコッッ!
「――ってぇ! カナン、オラを何だと思ってるだっ?」
「鳥のキモ、焼き」
「鳥のキモ、焼き」
終末との会話はかみ合わなくなると、とことん、だ。そういうときの次の解決方法はこれっ。
ガッ。ガッ。
わたしたちはプイと互いに後ろを向いて果実に歯を立てた。
噛み合わなくなるとまずは殴るか(あたしだけ)、何か食べる。
噛み合わなくなるとまずは殴るか(あたしだけ)、何か食べる。
それがあたしたちなりのパートナーシップケアだ。
ストレス回避のために。
目には目、歯には歯って、言葉。
あたしたちのためにあるんだわ、きっと。
ストレス回避のために。
目には目、歯には歯って、言葉。
あたしたちのためにあるんだわ、きっと。
ガッ。ガッ。
マイバッグの中にタオルに包んでおいた、まぁ無事だといえる、リンゴ苺をかじりながら、ふいに、終末とのあれこれを思い出す。
わたしたちのデートって、いつも大量の食べ物がつきものだなぁ。
高校生だから、そんなに外食する、お金ないから、お弁当を作ってたり、家のお菓子を持ってきたりするくらいだけど、終末とデートするというより、終末の食べ物とあたしの食べ物がデートするという感じ。
高校生だから、そんなに外食する、お金ないから、お弁当を作ってたり、家のお菓子を持ってきたりするくらいだけど、終末とデートするというより、終末の食べ物とあたしの食べ物がデートするという感じ。
予定外にはよほどでない限り、デートしない。
それは忙しいとか、計画的という意味ではない。
食べ物を大量に持っていれば、予定外でもデートはできる。
あたしたちって、食べ物を食べないとケンカが治まらないのよ。
それは忙しいとか、計画的という意味ではない。
食べ物を大量に持っていれば、予定外でもデートはできる。
あたしたちって、食べ物を食べないとケンカが治まらないのよ。
つまり、あたしたちはデートすると必ず、ケンカしてしまう。で、そのとき、何か食べればケンカを終わらせることができるってこと。周りからはラブラブと、からかわれるけど、現実はそんな甘いものじゃない。そう、甘いものがないといや、甘くなくてもいい、食べ物がないとだめなのよ、あたしたちは。
思えば最初のデートから、ケンカだった。
で、それを救ったのは花火大会に合わせて、並んでた屋台の焼きとうもろこし、イカ焼き、チョコバナナ、綿アメ、カキ氷などだった。
で、それを救ったのは花火大会に合わせて、並んでた屋台の焼きとうもろこし、イカ焼き、チョコバナナ、綿アメ、カキ氷などだった。
次のデートも、ケンカから始まった。
で、そのときも、わたしたちの仲を取り持ったのは水族館の隣のおみやげ物屋の試食コーナーのおまんじゅう、おせんべい、クッキー、一口カステラなどだった。
で、そのときも、わたしたちの仲を取り持ったのは水族館の隣のおみやげ物屋の試食コーナーのおまんじゅう、おせんべい、クッキー、一口カステラなどだった。
で、次のデートも……。
もう、いいや。思い出すだけ疲れるから。
もう、いいや。思い出すだけ疲れるから。
とにかく、ケンカをしたら食べ、ケンカをしそうだとおもったら、あらかじめ食べておくとかしてるうちに、あたしたちはデブッたのよ。今では、りっぱに学校1、変でかっこわるいカップルとして、1年も君臨してるってのっ!
「うめぇぇぇー」
終末のわざとらしいシャフトをききながら、情けなさが倍増する。
終末と別れられないのはヤツがいつも変わったお菓子や、おいしい
お弁当をもってきてくれるからなの。
終末のわざとらしいシャフトをききながら、情けなさが倍増する。
終末と別れられないのはヤツがいつも変わったお菓子や、おいしい
お弁当をもってきてくれるからなの。
現役女子校生が食い物かよ?……。
自分でも引いちゃうなぁ。
なにかのトラウマ?
ありうる。
うちの一族の真っ黒歴史によって、あたしがこうなったのかなあ。
ち。似合いすぎだって。あたしに。
自分でも引いちゃうなぁ。
なにかのトラウマ?
ありうる。
うちの一族の真っ黒歴史によって、あたしがこうなったのかなあ。
ち。似合いすぎだって。あたしに。
終末をチラ見する。
ヤツはすでに食べ終わったようだ。
ヤツはすでに食べ終わったようだ。
終末がほとんど、手つかずのあたしのリンゴ苺を見て、一瞬、驚いたものの、身を乗り出してきた。
「食わないなら、くれ」
「食わないなら、くれ」
木々を揺すらせ、伸ばしたヤツの手がリンゴ苺に向かってくる。
「食べないとは、いってないっ」
あたしがリンゴ苺を終末の手から隠そうとした拍子に終末の手がずれて、あたしの胸をわしづかみに!
「やっ、どこ触ってんの! この変態!!」
「フフン。まだ、まだだな。いらん肉は成長しているというのに」
終末は片手をニギニギして、あたしにあたしの胸の感触を伝えてくる。ちぃちゃっ~~って。
「食べないとは、いってないっ」
あたしがリンゴ苺を終末の手から隠そうとした拍子に終末の手がずれて、あたしの胸をわしづかみに!
「やっ、どこ触ってんの! この変態!!」
「フフン。まだ、まだだな。いらん肉は成長しているというのに」
終末は片手をニギニギして、あたしにあたしの胸の感触を伝えてくる。ちぃちゃっ~~って。
おぃ、その手付きはよろしくない。
実際より、小さいではないか。それでは。
リンゴ苺と同じ大きさじゃないって。
いいかげんにせいよ!
実際より、小さいではないか。それでは。
リンゴ苺と同じ大きさじゃないって。
いいかげんにせいよ!
あたしはかたわらの枝振りのよい枝を週末に気づかれないように思いっきり、弓なりにそらせておき、もう片方の手で、りんご苺をおとりにして終末を誘導した。
「欲しかったら、とったら? あたしもリンゴ苺も熟れ筋ですから~♪」
さすがに、この陳腐な台詞には赤面だけど
「カナンはいらねーけどな!」
と、ガキ終末にいわれるとさすがにムカツク。
さすがに、この陳腐な台詞には赤面だけど
「カナンはいらねーけどな!」
と、ガキ終末にいわれるとさすがにムカツク。
終末はいっそう、リンゴ苺を奪おうと手を伸ばしてきた。
終末をギリギリ引き付けておき、弓なりに反らせた、しなる枝の反動を利用して……
終末をギリギリ引き付けておき、弓なりに反らせた、しなる枝の反動を利用して……
エィッ!
ビッシューンー!!
ビッシューンー!!
「――っ! あっっ~~!! 何するだ、カナン!」
終末は下腹部を中心におかしな、リアクション。
フフフ。やだぁ。
あの枝はヤツのアソコにヒットしたに違いないわ。
終末は下腹部を中心におかしな、リアクション。
フフフ。やだぁ。
あの枝はヤツのアソコにヒットしたに違いないわ。
あくにんを成敗した後に食べる果物はおいしすぎ!
女人の肌にむしゃぶりつく、座敷犬のように、リンゴ苺を頬張る。
バニラのようなマンゴーのような、それでいて苺味。
女人の肌にむしゃぶりつく、座敷犬のように、リンゴ苺を頬張る。
バニラのようなマンゴーのような、それでいて苺味。
うまっ! う、うまっ~~~ぃ!!
このおいしさに敬意を表したいけど、しゃくにさわるから、終末への皮肉を弱含みとしてみた。
「あんたのにっ個っ玉よりはりっぱだわね」
「あんたのにっ個っ玉よりはりっぱだわね」
おいしいものを食べているときの、あたしは間違いなく、愛にあふれている。周囲が生き生き、とてもきれいに見える。
終末が木の枝に果物の芯を捨て置いていたところに小鳥がついばみにきた。つぶらな瞳に似合うナチュラルイエローグリーンの羽。青い空と小鳥がいる風景が今のあたしには優しく映る。
ほわほわっと頭上をいききする小鳥を目で追っていると何かが頭に?
ボトッ。
妙に生暖か。
粘着質のものが??
「え? え? これって、もしや、鳥の最大の攻撃アイテム? あぶない臭いも装備された、さ、さいあくの、あれ? ですかぁ?」
その想像を口にするのさえ、ためらうというのに、いっそう想像をかきたてるような言葉を吐いちゃってる、あたし。
「ひぃゃぁぁぁぁ~~~助けて! 終末―!!」
あまりのヒサンさに、思わず、終末のいる枝を揺さぶる、あたしに 終末は落ちないよう、バランスをとりながら「髪を洗えばいいだろ」
と、にらんできた。
と、にらんできた。
ちょっとー! それが彼女に対する態度ですかー!?
「あ、洗うったって、その前に、こ、これ取らないと」
超弱気になっていく、あたし。
こういうの弱いの、隠れどМだから。
超弱気になっていく、あたし。
こういうの弱いの、隠れどМだから。
「取ってやるよ、これで」
「えっ? 」
終末は木の枝をおったらしく、すでに、あたしの頭にむかって、葉っぱつきの枝を伸ばしてきている。
「い、いやっ~だめっ~~だめ~そんなんじゃぁ~~」
「動くと取れないだろ」
「だ、だって、それって、どこかに弾き飛すんでしょ? も、もし、それが、あたしの服に落っこちてきたら……いやっ~~!」
あたしは身をよじり、終末と木の枝を避ける。
「ほら、動くな。すぐとってやっから」
終末は一段高い枝から、不安定な感じで、手を伸ばしてくる。
「ぃ、ぃぃぃ~~って。ぃぃって~もぅ~~~」
「えっ? 」
終末は木の枝をおったらしく、すでに、あたしの頭にむかって、葉っぱつきの枝を伸ばしてきている。
「い、いやっ~だめっ~~だめ~そんなんじゃぁ~~」
「動くと取れないだろ」
「だ、だって、それって、どこかに弾き飛すんでしょ? も、もし、それが、あたしの服に落っこちてきたら……いやっ~~!」
あたしは身をよじり、終末と木の枝を避ける。
「ほら、動くな。すぐとってやっから」
終末は一段高い枝から、不安定な感じで、手を伸ばしてくる。
「ぃ、ぃぃぃ~~って。ぃぃって~もぅ~~~」
終末が枝を伸ばしてくるたびに、ずりずり、お尻移動で、逃げてるうちにもう、枝の先っぽに来てしまった。後がない。
もう、これ以上、逃げると、おっこっちゃう。
あぁぅ。スカートがまくれちゃった。
ふ、太ももまで、ぴらりだわっ。
あぁぅ。スカートがまくれちゃった。
ふ、太ももまで、ぴらりだわっ。
「い、いや、やぁ~~~んっ」
あたしはあわてて、スカートの裾を手で押さえた。
「カナン、へんな声をだすなって。さっきから、なにやってんだよ。こちらもでるものがでそうになるだろ。ったく」
「え? 出る? あっ、そうだ! ティッシュもってる?」
「お前、ナニいって?」
「え? ないの? ティッシュでなきゃだめだめ~」
「おぃカナン、ここでやる気か。さすがにエロすぎないか、つか、できるのかここで?」
「えええええええ!? 違う! 違うでしょ! もぅぅ~~! バカいってないで何とかしろー!!」
あたしはあわてて、スカートの裾を手で押さえた。
「カナン、へんな声をだすなって。さっきから、なにやってんだよ。こちらもでるものがでそうになるだろ。ったく」
「え? 出る? あっ、そうだ! ティッシュもってる?」
「お前、ナニいって?」
「え? ないの? ティッシュでなきゃだめだめ~」
「おぃカナン、ここでやる気か。さすがにエロすぎないか、つか、できるのかここで?」
「えええええええ!? 違う! 違うでしょ! もぅぅ~~! バカいってないで何とかしろー!!」
さすがのあたしも涙目よ、これでも。
そんなあたしを見かねたのか、終末は翼をバッサバッサと羽ばたかせ、いったん空に飛び、回り込んで、あたしのかたわらにやってきた。
枝に腰かけた、あたしの目線とあう位置で羽ばたいてる、終末鳥。
ちょっと絵に描いたような素敵な光景のような気も。
視線があうと少し、ドキドキするかも。
そんな珍しくも、乙女な、あたしにぐっと顔を寄せてくる終末。
ちょっと絵に描いたような素敵な光景のような気も。
視線があうと少し、ドキドキするかも。
そんな珍しくも、乙女な、あたしにぐっと顔を寄せてくる終末。
「な、なに、きちゃってるの? そ、そんなに、接近しろって、いってないー」
戸惑うあたしに、まったく構わず
「昔はうぐいすのフンで顔を洗ってたっていうのによ、情けねーなカナンは」
と、あたしの頬のあたりを人差し指で軽くたたいた。
それで、それで……。
今にも零れ落ちそうだった涙がつつーっころんと終末の指で弾け、。二つにわかれ、あごを伝って、落ちていった。
戸惑うあたしに、まったく構わず
「昔はうぐいすのフンで顔を洗ってたっていうのによ、情けねーなカナンは」
と、あたしの頬のあたりを人差し指で軽くたたいた。
それで、それで……。
今にも零れ落ちそうだった涙がつつーっころんと終末の指で弾け、。二つにわかれ、あごを伝って、落ちていった。
「あ、ぁ、い、いや、こ、これは、え、えっと……」
恥ずかしくて、顔をあげられないよう。
終末は何を思ったのか、あたしの手を取ってきた。
恥ずかしくて、顔をあげられないよう。
終末は何を思ったのか、あたしの手を取ってきた。
し、終末……?
な、なにを?
こ、これって?
まるで、ラブラブみたいじゃ……?
な、なにを?
こ、これって?
まるで、ラブラブみたいじゃ……?
……それがあたしの至福のピークアウトだった。
「いやぁぁぁぁぁ~ああああ~ぁぁぁぁぁ~~~!!!
ーーーーーなんで、あたしの手で!?~~~!!」
ーーーーーなんで、あたしの手で!?~~~!!」
あたしは気を失った、と思う。
ぜ、絶対~~!
終末があたしの手を取って
小鳥のナニを払わせたのよ!!
あたしの手を箒みたいに使って
ナニを弾き飛ばさせたのよっ!!
これで気絶しない女子はいないってーーー!!!
「……あれが睡眠剤か。頭の表皮、手から触れたところから、そく、薬剤が吸収されるんだな」
ぜ、絶対~~!
終末があたしの手を取って
小鳥のナニを払わせたのよ!!
あたしの手を箒みたいに使って
ナニを弾き飛ばさせたのよっ!!
これで気絶しない女子はいないってーーー!!!
「……あれが睡眠剤か。頭の表皮、手から触れたところから、そく、薬剤が吸収されるんだな」
あたしは消えゆく意識の中で、必死に終末のつぶやきをつなぎとめていた。
睡眠剤? 小鳥のナニが?
なんで睡眠剤? あたしにどうして睡眠剤?
なんで睡眠剤? あたしにどうして睡眠剤?
「博士、コイツの服を脱がすのを手伝ってくれ」
えええええええええ!?
なんで、服脱がすのよー?
服、脱がしてどうするの!? や、やられちゃうとか?
なんで、服脱がすのよー?
服、脱がしてどうするの!? や、やられちゃうとか?
あ、やだっ!
きょうはスポーツブラと380均ショーツだわっ!
絶対、いや! 下着をみられるなんて!!
いっそ、下着まで一気に脱がされたほうがいいかも?
きょうはスポーツブラと380均ショーツだわっ!
絶対、いや! 下着をみられるなんて!!
いっそ、下着まで一気に脱がされたほうがいいかも?
「ちっょとまて~~なにかがんてえんの?」
あたしは自分と終末にストップをかけた。
えぇ、よみがえってきましたとも!
あんなこといわれたんじゃぁ。意識も戻るわっ。
あたしは自分と終末にストップをかけた。
えぇ、よみがえってきましたとも!
あんなこといわれたんじゃぁ。意識も戻るわっ。
あれ? 口がへん? まわらない?
うまくしゃべれないよー?
うまくしゃべれないよー?
「す、すみいんざい、もうきていいないすでけど?」
あわっわ、口がしびれてるの?
あわっわ、口がしびれてるの?
意識の戻った、あたしに驚くわけでもなく、終末は皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「いいんだよ。意識があろうとなかろうと。乱暴者のお前をおとなしくさせるためだから。ま、手足のしびれも、そのうち治るさ」
あれ? ホントだっ。体がしびれてるっ。手足に力がはいらないっ。
うまく話せないっ。
「いいんだよ。意識があろうとなかろうと。乱暴者のお前をおとなしくさせるためだから。ま、手足のしびれも、そのうち治るさ」
あれ? ホントだっ。体がしびれてるっ。手足に力がはいらないっ。
うまく話せないっ。
さすがに、もう許さないわこの炭焼き鳥!
口がまわらなくたって、頭はまわるわっ。
「あっあたのしどこが、らぼんうのものなよ? あたしは、かわよいがわのなよ。こしうて、あたんに、らぼんう、さちゃれううよな」
口がまわらなくたって、頭はまわるわっ。
「あっあたのしどこが、らぼんうのものなよ? あたしは、かわよいがわのなよ。こしうて、あたんに、らぼんう、さちゃれううよな」
「へー。そうなのか。乱暴されちゃうほうなのか。こんなふうに?」
そういいながら、終末は信じられないことにあたしの胸にヘビータッチしてきた!
そういいながら、終末は信じられないことにあたしの胸にヘビータッチしてきた!
えっ? ウソッ?
ちょっなに、この展開!?
ま、まさか、あたしの初体験は木の上でってこと?
すでに腕の中に捕獲されてるし!
ちょっなに、この展開!?
ま、まさか、あたしの初体験は木の上でってこと?
すでに腕の中に捕獲されてるし!
人が動けないことをいいことに入念に触ってる?
念いれてますって! この手つき!
あたしに恨みでもあるのか?
いあやー性欲があるんだわっ! コ、コイツってば!
念いれてますって! この手つき!
あたしに恨みでもあるのか?
いあやー性欲があるんだわっ! コ、コイツってば!
エロ終末に、こんな落とされかたされたら、たまんないわっ。
ちょっぴりしか、美人じゃないけど
終末には上等すぎるよ、あたしは。
それに、ここで最後までいっちゃったら
本当の意味で、落ちます! 下に!
ちょっぴりしか、美人じゃないけど
終末には上等すぎるよ、あたしは。
それに、ここで最後までいっちゃったら
本当の意味で、落ちます! 下に!
体は動かないけど、イメージの中で、エア手足でもって、終末をビシビシ、ガシガシ殴る蹴るしてたら
「いや、気にするな。さっきは右しか、触れなかったから、気になってたんだよ。左側って心臓があるだろ。その刺激で左のが大きくなるらしいのな。女子の場合は特に。それで、せっかくの機会だから確かめてみたんだよ」
と、終末の満足そうな微笑み。
「いや、気にするな。さっきは右しか、触れなかったから、気になってたんだよ。左側って心臓があるだろ。その刺激で左のが大きくなるらしいのな。女子の場合は特に。それで、せっかくの機会だから確かめてみたんだよ」
と、終末の満足そうな微笑み。
なんですとぉ! ひぃどぉ~~~ぃ!!
そんな理由だなんて!!!
そんな理由だなんて!!!
「なんだよ、カナン? もっとやってもらいたかったのか? だったら、その贅肉を全部、胸に集めてみろ。オラは痩せてて、巨乳がいい」
だ、だれが、そんなことー!
ち…。
痩せ巨乳かよ……。
エロ鳥のバカッ。
痩せ巨乳かよ……。
エロ鳥のバカッ。
そのとき。
可愛らしくも、薄キモな、でもって機械的な声が、どこからか聞こえてきた。
可愛らしくも、薄キモな、でもって機械的な声が、どこからか聞こえてきた。
「デブ貧乳の人。君の悩みを解決してあげようかな、どうしようかな」
その声にあわせるかのように木々の葉がかすかにざわついた。
「はい。着やせデブで、貧乳よりも粉乳に近いです。よろしくお願いしまーす」
ちょっ終末、何、答えてんのよ!?
粉乳ってなに? どんな乳だよっ?
その声にあわせるかのように木々の葉がかすかにざわついた。
「はい。着やせデブで、貧乳よりも粉乳に近いです。よろしくお願いしまーす」
ちょっ終末、何、答えてんのよ!?
粉乳ってなに? どんな乳だよっ?
「OKです。デブ無乳の人」
誰が無乳だって? いいがかりはやめてください。
誰が無乳だって? いいがかりはやめてください。
「なよにこれ? じもゅん?」
「自動ドアだよ。オラたちに、いい雰囲気をかんじないと入れてもらえないんだよ」
「自動ドアだよ。オラたちに、いい雰囲気をかんじないと入れてもらえないんだよ」
いい雰囲気? 恋人とかの?
ムリ、絶対、ムリでしょう。
ムリ、絶対、ムリでしょう。
突然、視線の先にある、大木に変化があった。
その大木にある節穴が見る見る大きくなっていく。
なんか人間の顔、もしくは体のように見える。
腕のように、左右に突き出た大ぶりな枝。
その手のような枝は大きさも長さも自在らしく、簡単に空中を飛ぶ鳥を捕獲し、大口にみえる節穴にポイ入れする。ぶんぶん、飛んでる昆虫も。何でもかんでも近寄ったもの、目に(どこにがあるかわからないけど)とまったモノを大口にいれちゃう感じ!?
その大木にある節穴が見る見る大きくなっていく。
なんか人間の顔、もしくは体のように見える。
腕のように、左右に突き出た大ぶりな枝。
その手のような枝は大きさも長さも自在らしく、簡単に空中を飛ぶ鳥を捕獲し、大口にみえる節穴にポイ入れする。ぶんぶん、飛んでる昆虫も。何でもかんでも近寄ったもの、目に(どこにがあるかわからないけど)とまったモノを大口にいれちゃう感じ!?
で、もう入れるものがないのか、今度は自分の体? の一部である枝とかを片っ端から、つかんでは、バリバリ、引きちぎり、折っては食べるように節穴にポイポイいれしだした!
自分で自分をたべてる?
ポキポキ、ボキボキ。
ポイポイ、ポポイ。
木まで変態なのー!?
ポキポキ、ボキボキ。
ポイポイ、ポポイ。
木まで変態なのー!?
「わぅっぅわっわぅっ~~~!?」
あまりにへんなできごとの連続で、しばし、呆けたように見てしまったけど、さすがに木の乱心で、あたしも危険を感じましたっ!
「もかうえるー!」
目が覚めたっ! もうなにがなんでも帰りますっ!!
「入るんだよ。ここがエロリアン研究所だ」
「いだやわ! キすモぎっ」
あたしはエア手足をばたつかせた。
「そんなことだろうと睡眠剤を使ったんだが」
「ムリリム~~!!」
あたしが不自由な口で話そうとしてるそばで
なんか、へんな気配が?
あまりにへんなできごとの連続で、しばし、呆けたように見てしまったけど、さすがに木の乱心で、あたしも危険を感じましたっ!
「もかうえるー!」
目が覚めたっ! もうなにがなんでも帰りますっ!!
「入るんだよ。ここがエロリアン研究所だ」
「いだやわ! キすモぎっ」
あたしはエア手足をばたつかせた。
「そんなことだろうと睡眠剤を使ったんだが」
「ムリリム~~!!」
あたしが不自由な口で話そうとしてるそばで
なんか、へんな気配が?
終末が小鳥と話してる?
つぅか、キスしてます!
つぅか、キスしてます!
終末のネクタイとカッターの間の窪みに、いつのまにか鎮座してる小鳥。
さすが、エロ鳥終末。鳥ともいけるのか―。
ま、小鳥が終末の唇をつついてる気もするけど。
ま、小鳥が終末の唇をつついてる気もするけど。
小鳥はあたしと目があうと、わずかに小首を傾けた。
……ように見えた次の瞬間。
……ように見えた次の瞬間。
変貌!
鳥の頭の部分は瞬く間に消失し、超小さい女の人の上半身が現れた。
上半身! ヌードっ!?
と、驚いてるうちに、見る間に全身が人間型に!?
と、驚いてるうちに、見る間に全身が人間型に!?
羽毛でできてるような? 下着というか、衣装?
ナチュラルイエローグリーンにも金髪にも見えるエクステ。
胸にたなびく糸系ブラ。もちろん、パンツもふわふわ羽毛系。
太陽に反射して、光る透明な羽毛がエロっぽぃ。
ナチュラルイエローグリーンにも金髪にも見えるエクステ。
胸にたなびく糸系ブラ。もちろん、パンツもふわふわ羽毛系。
太陽に反射して、光る透明な羽毛がエロっぽぃ。
黄金比率フェイス……美人……エロ。
そんな人と……小さいとはいえ、全裸に近い女と
キスしてるなんて!
そんな人と……小さいとはいえ、全裸に近い女と
キスしてるなんて!
あたしを抱えながら、鳥ガールとなまめかしく唇を合わせているってなんなのよ?
そのとき、あたしは叫んだ。
「終末―! あたしたち、まだキスしてないんだよ―!」
「終末―! あたしたち、まだキスしてないんだよ―!」
「薬がきれたのね、粉乳の人」
鳥ガールがクスッと笑う。
「いや、いぁや、いやぁ―――――――!!! ち、違うー。違うのよ。こ、これは……」
鳥ガールがクスッと笑う。
「いや、いぁや、いやぁ―――――――!!! ち、違うー。違うのよ。こ、これは……」
あーばかばかあたしぃー!
なんつーこといってんのよあたしぃ!!
てか、なんで、このタイミングで、言葉が戻る?
間がわるすぎ~~!!
どМだから?
いやぁぁ~~もぅやだぁ~~~!!!
なんつーこといってんのよあたしぃ!!
てか、なんで、このタイミングで、言葉が戻る?
間がわるすぎ~~!!
どМだから?
いやぁぁ~~もぅやだぁ~~~!!!
「そうだったのか」
考えこんじゃってるポーズで、あたしを見る、終末。
「別に、キ、キスしたいとかじゃなくて、た、ただ、まだ、してないなあって、だけで…」
「やっぱりな」
考えこんじゃってるポーズで、あたしを見る、終末。
「別に、キ、キスしたいとかじゃなくて、た、ただ、まだ、してないなあって、だけで…」
「やっぱりな」
あー―!!
なんで、また! へんなこというかな!
バカッあたしぃ―!
なんで、また! へんなこというかな!
バカッあたしぃ―!
「くくくく」
笑いを堪える、鳥ガール。その長い髪の幾筋かがかたわらの終末の唇に、まつわりついている。そんな鳥ガールから、見たら、あたしなんて、粉乳、脱脂粉乳(スキムミルク)じゃなくて、脂肪入りの粉乳だわ~~。
笑いを堪える、鳥ガール。その長い髪の幾筋かがかたわらの終末の唇に、まつわりついている。そんな鳥ガールから、見たら、あたしなんて、粉乳、脱脂粉乳(スキムミルク)じゃなくて、脂肪入りの粉乳だわ~~。
だったら、せめて脂肪をとろうよ、あたしぃー!
「ま、オラに催促したい気持ちはわかるんですけど。こんなところで告られてもねぇ、困るんですけど」
語尾がおかしいんですけど、終末!
……って、突っ込んでる場合じゃないわ。
な、なにか、いわないと。
……って、突っ込んでる場合じゃないわ。
な、なにか、いわないと。
「勘違いしないで」
ぐっと可愛く睨みあげてやったのに、終末ったら
「正直になれ、カナン、お前は本能のまましか、生きられないんだよ。欲望系というか」
ぐっと可愛く睨みあげてやったのに、終末ったら
「正直になれ、カナン、お前は本能のまましか、生きられないんだよ。欲望系というか」
終末はあたしの体を抱きしめてきた。
この場面で、ふつう、する?
「へ、へんなこといわないでよ」
この場面で、ふつう、する?
「へ、へんなこといわないでよ」
「お前って何かというとそく、暴力だろ。食欲はすさまじいし」
「や、やだ、そんなことないって……」
「や、やだ、そんなことないって……」
わかってるわよ、んなことは。終末のドバカッ。
「……まさに人間の皮を被った獣だ。いいかげん、本性を出せよ」
「え? な、なにいって?」
終末はそういうと、あたしの服を乱暴に剥ぎ取りにかかった。
「ち、ちょっとー!? ド終末―!! なにすんのよ―!?」
「見ればわかるだろ」
「何回、襲えば気がすむのよ!! この発情鳥!!」
「え? な、なにいって?」
終末はそういうと、あたしの服を乱暴に剥ぎ取りにかかった。
「ち、ちょっとー!? ド終末―!! なにすんのよ―!?」
「見ればわかるだろ」
「何回、襲えば気がすむのよ!! この発情鳥!!」
眠りから覚めた、あたしは最強よ!
もうエアではない!
終末の髪をひっかみ、引き寄せ
そのやせマッチョの割れ腹筋に膝蹴りを食らわしたるっ!!
もうエアではない!
終末の髪をひっかみ、引き寄せ
そのやせマッチョの割れ腹筋に膝蹴りを食らわしたるっ!!
「ほほう~? 抵抗できるのか」
「なんって?」
「ククク、お前って、実は隠れМだろ? 本当はこうゆう、捕まっちゃう系好きなんだよな」
「ち、ちがうわよ。か、勝手に決めないで!」
「本当にそうかな? じゃぁ、なんで、リボンはずされ、スカートも膝まで、落とされてるってのに、もっと騒がないんだよ?」
終末はあたしの前に人差し指を1本突き出した。
「あぁぁぁぁぁあ―! いつのまに――!?」
そこには、あたしの制服のリボンが巻きつき、気持ちよさげに風にたなびいていた。
「なんって?」
「ククク、お前って、実は隠れМだろ? 本当はこうゆう、捕まっちゃう系好きなんだよな」
「ち、ちがうわよ。か、勝手に決めないで!」
「本当にそうかな? じゃぁ、なんで、リボンはずされ、スカートも膝まで、落とされてるってのに、もっと騒がないんだよ?」
終末はあたしの前に人差し指を1本突き出した。
「あぁぁぁぁぁあ―! いつのまに――!?」
そこには、あたしの制服のリボンが巻きつき、気持ちよさげに風にたなびいていた。
ちょっあたし、なにやられてんのよ!?
やばっやばっこれ以上、やばいことありえないって―!
やばっやばっこれ以上、やばいことありえないって―!
「けだものは、終末、あんたよ―!」
ついにきれた、あたしはヤツの胸倉に拳を連打連打連打!
蹴り蹴り蹴り! 膝蹴りをめちゃめちゃ入れてやった。
だけど、終末はあたしが至近距離で、攻撃しにくいのを見越してるのか「いてぇな。おとなしくやられてろよ」と、いいながらも、どこか余裕だ。
ついにきれた、あたしはヤツの胸倉に拳を連打連打連打!
蹴り蹴り蹴り! 膝蹴りをめちゃめちゃ入れてやった。
だけど、終末はあたしが至近距離で、攻撃しにくいのを見越してるのか「いてぇな。おとなしくやられてろよ」と、いいながらも、どこか余裕だ。
そのとき、濁った棒読み状態の声が聞こえてきた。
「いいかげん、いちゃつくのをやめないと時間がないわよ―。じゅう―しまつ―」
「終末なんですけど、博士、これで6回目」
と、終末がいったので、鳥ガールが博士、その人だとわかった。
博士鳥ガールは次に、あたしに目を移して、「粉、あなたも早く、剥がされちゃいなさい。どうせ、じゅうしまつを喜ばせるだけなんだから」と、だるそうに枝に寝そべっている。
「いいかげん、いちゃつくのをやめないと時間がないわよ―。じゅう―しまつ―」
「終末なんですけど、博士、これで6回目」
と、終末がいったので、鳥ガールが博士、その人だとわかった。
博士鳥ガールは次に、あたしに目を移して、「粉、あなたも早く、剥がされちゃいなさい。どうせ、じゅうしまつを喜ばせるだけなんだから」と、だるそうに枝に寝そべっている。
粉ってなんですかぁ? もう、乳も人も略されちゃって。
まさしく、人間扱いじゃないってことですかぁ―。
というか、粉乳と認めて、どうする、あたしってば。
まさしく、人間扱いじゃないってことですかぁ―。
というか、粉乳と認めて、どうする、あたしってば。
鳥からあげ女はさらに続けて
「胸を隠しながら、スカートが落ちるのを気にしながら、片手でボカスカやってても、男はかえって、萌えるだけなんだけどね」
いいながら、あくびを立て続けにした。
「えええええー? そうなの? 終末?」
あたしの出た言葉に(心でいってたつもりだけど、つい口にでた)
「ああ。カナンでなけりゃ、もっと萌える」
と、しれっと答える終末。
「胸を隠しながら、スカートが落ちるのを気にしながら、片手でボカスカやってても、男はかえって、萌えるだけなんだけどね」
いいながら、あくびを立て続けにした。
「えええええー? そうなの? 終末?」
あたしの出た言葉に(心でいってたつもりだけど、つい口にでた)
「ああ。カナンでなけりゃ、もっと萌える」
と、しれっと答える終末。
「……うぅ……」
終末を萌えさせるなんていや!
こんなヤツを楽しませるなんて。
許せない・・・。
終末を萌えさせるなんていや!
こんなヤツを楽しませるなんて。
許せない・・・。
「これでどう?」
あたしは服を脱ぎ捨てた。
全部だよ、全部。
脱がされかかっていたので、すばやく脱げた。
あたしは服を脱ぎ捨てた。
全部だよ、全部。
脱がされかかっていたので、すばやく脱げた。
これで、萌えれないでしょ。
「カナン・・・お、おまえ・・・」
終末はなぜか、青ざめ、鳥ガールは「ほほぅ」といったきり、心なしか、森のざわめきも消えたようでシーンとした。
終末はなぜか、青ざめ、鳥ガールは「ほほぅ」といったきり、心なしか、森のざわめきも消えたようでシーンとした。