新・剛運な彼女
私たちは、コングマンとかいう突然の来訪者と果敢に戦い、そして戦術的撤退に成功した。
あんなに強そうな大男を相手にして、ケガらしいケガを誰も負わなかったのだから、
長期的な視点で考えれば、あの戦いは私たちの大勝利だったといえるでしょう。
……それだけにひとつの、大きな誤算があったのが残念で仕方ありません。
あんなに強そうな大男を相手にして、ケガらしいケガを誰も負わなかったのだから、
長期的な視点で考えれば、あの戦いは私たちの大勝利だったといえるでしょう。
……それだけにひとつの、大きな誤算があったのが残念で仕方ありません。
「プリムラさん、どうします?」
こちらの女性、名前はカトリーヌさん。
自己紹介のときに方向音痴だと言っていましたが、まさかこれほどのものとは思いませんでした。
――ふつう、そこまで道に迷うことがある!?
「プリムラさん、聞いてるんですか?」
「えっ!? なに? もしかして何か閃いたの?」
カトリーヌさんは、なぜかフウッ、とため息を洩らしました。
なに? なんか悪いことでも言っちゃった?
「いえ……これからどうするのかと……聞いたんですけど……」
非ッ常に言いづらそうに喋るカトリーヌさん。
その優しさがまるで聞いてなかった身には辛い。
でもね、今の状態をバッチリ打破するアイテムがあるんだよねっ。
「心配ないわ、良いアイテムがあるの」
「ほ……本当ですか!?」
パッと明るい表情に変わるカトリーヌさん。
やっぱ笑った顔っていいよね。コッチまで気分がウキウキしてきちゃう。
ウキウキ気分のまま、私は背負ってきた袋をゴソゴソと探る。
あれ? たしかこの辺に入れたと……あった!
こちらの女性、名前はカトリーヌさん。
自己紹介のときに方向音痴だと言っていましたが、まさかこれほどのものとは思いませんでした。
――ふつう、そこまで道に迷うことがある!?
「プリムラさん、聞いてるんですか?」
「えっ!? なに? もしかして何か閃いたの?」
カトリーヌさんは、なぜかフウッ、とため息を洩らしました。
なに? なんか悪いことでも言っちゃった?
「いえ……これからどうするのかと……聞いたんですけど……」
非ッ常に言いづらそうに喋るカトリーヌさん。
その優しさがまるで聞いてなかった身には辛い。
でもね、今の状態をバッチリ打破するアイテムがあるんだよねっ。
「心配ないわ、良いアイテムがあるの」
「ほ……本当ですか!?」
パッと明るい表情に変わるカトリーヌさん。
やっぱ笑った顔っていいよね。コッチまで気分がウキウキしてきちゃう。
ウキウキ気分のまま、私は背負ってきた袋をゴソゴソと探る。
あれ? たしかこの辺に入れたと……あった!
「じゃーーーーんっっ!!」
そういってカトリーヌさんに見せたもの……それは。
「セイファートキー!」
「そのとーりっ。これで迷える子羊も、一発で迷わない子羊に早変わりよ」
子羊の自覚はあるのが、なにやら悲しいけど。
でも、か弱いからこそこんな良いアイテムを下さったんですよね?
とりあえず、セイファート様に感謝しておくことにして、早速使いましょう。
「これを……こう持って……」
ちょっと前に町で持ち物確認していたときに読んどいた説明書のとおりに使ってみる。
「…偉大なる創造神セイファートよ、汝の弱き子達に、道標を指し示さん!!」
ちょっとカッコつけて詠唱文っぽく喋ったけど、これが適当だというのは内緒だ。
さあ、これでキーがピカーッて光ってドキューンって進むべき道を……道を……ヲヲヲ?
「………何も……起きませんね?」
ちょ、ちょっと待って! 確かに説明書の通りに、カッコつけの詠唱はしちゃったけど――
私は慌てて皮袋からセイファートキーの説明書を引っ張り出す。
食い入るように見る私。多分カトリーヌさんはそれを心配そうに見ている。
そして私はその説明書にちっちゃく書かれた……恐ろしい一文を見つけた。
そういってカトリーヌさんに見せたもの……それは。
「セイファートキー!」
「そのとーりっ。これで迷える子羊も、一発で迷わない子羊に早変わりよ」
子羊の自覚はあるのが、なにやら悲しいけど。
でも、か弱いからこそこんな良いアイテムを下さったんですよね?
とりあえず、セイファート様に感謝しておくことにして、早速使いましょう。
「これを……こう持って……」
ちょっと前に町で持ち物確認していたときに読んどいた説明書のとおりに使ってみる。
「…偉大なる創造神セイファートよ、汝の弱き子達に、道標を指し示さん!!」
ちょっとカッコつけて詠唱文っぽく喋ったけど、これが適当だというのは内緒だ。
さあ、これでキーがピカーッて光ってドキューンって進むべき道を……道を……ヲヲヲ?
「………何も……起きませんね?」
ちょ、ちょっと待って! 確かに説明書の通りに、カッコつけの詠唱はしちゃったけど――
私は慌てて皮袋からセイファートキーの説明書を引っ張り出す。
食い入るように見る私。多分カトリーヌさんはそれを心配そうに見ている。
そして私はその説明書にちっちゃく書かれた……恐ろしい一文を見つけた。
【セイファートに選ばれた人以外が使った場合、その動作保証は一切いたしません♪】
一応、カトリーヌさんにも使ってみてもらったけど、キーからは線香花火ほどの明かりも出ない。
こんにゃろう……散々ぬか喜びさせやがって。
「ハア……これじゃあユアンさんたちと合流できそうもありませんね」
無念そうにショげるカトリーヌさんの無言の圧力が私には痛い。
せめて……最低でもこの森から抜け出ないと……
怪奇! 樹海に消えた二人の女学生! 原因は愛憎のもつれか!?
なんて記事でミンツの新聞に書かれかねない……って妄想も大概にしないと。
うーーーん、もしもキールなら……こんなときはどうするかなあ。
こんにゃろう……散々ぬか喜びさせやがって。
「ハア……これじゃあユアンさんたちと合流できそうもありませんね」
無念そうにショげるカトリーヌさんの無言の圧力が私には痛い。
せめて……最低でもこの森から抜け出ないと……
怪奇! 樹海に消えた二人の女学生! 原因は愛憎のもつれか!?
なんて記事でミンツの新聞に書かれかねない……って妄想も大概にしないと。
うーーーん、もしもキールなら……こんなときはどうするかなあ。
私はしばらくキールとの思い出を懐かしんで、そしてひとつの答えをみつけました。
「分かったわ! 私たちの行くべき場所が!」
「ええっ!? 本当に分かったんですか? プリムラさん」
この名探偵の妙案に期待を寄せるカトリーヌさん。
今度の案は間違いなく完璧に違いないわ。
「本当よ……私たちは……すぐに町に戻るべきだわ!」
堂々と言った私に対して、カトリーヌさんの視線は訝しげなものでした。
「何、その眼は? そんな可哀相な子供を見るような眼で見るんじゃないっ!」
「だって……どうやってこの森から町まで向かうんですか?」
「あっ…………」
「分かったわ! 私たちの行くべき場所が!」
「ええっ!? 本当に分かったんですか? プリムラさん」
この名探偵の妙案に期待を寄せるカトリーヌさん。
今度の案は間違いなく完璧に違いないわ。
「本当よ……私たちは……すぐに町に戻るべきだわ!」
堂々と言った私に対して、カトリーヌさんの視線は訝しげなものでした。
「何、その眼は? そんな可哀相な子供を見るような眼で見るんじゃないっ!」
「だって……どうやってこの森から町まで向かうんですか?」
「あっ…………」
さて、難問ね。太陽さえ出ていれば、昔読んだ冒険物の話で使ったやり方で方向が分かるけど……
今は夜も夜。指針になるようなものも一切見えないし、お空の星は見たこともない配置をしている。
うーーーーーーーーーーん、どうしようか…………
今は夜も夜。指針になるようなものも一切見えないし、お空の星は見たこともない配置をしている。
うーーーーーーーーーーん、どうしようか…………
考えをめぐらせるうちにふと、私の中で全ての断片がひとつに繋がる感覚を覚えた。
「そうだわ!! 今こそあのアイテムを!!」
そういって、私は再びあれを取り出す。そう、セイファートキー。
「いったい、それでどうするつもりなんですか?」
「まあ見てなさい……名探偵の閃きは、グロビュール歪曲をも変えるのよ!」
「そうだわ!! 今こそあのアイテムを!!」
そういって、私は再びあれを取り出す。そう、セイファートキー。
「いったい、それでどうするつもりなんですか?」
「まあ見てなさい……名探偵の閃きは、グロビュール歪曲をも変えるのよ!」
そういって、私はセイファートキーの錘になった部分を下にして手近な切り株の上に静かに置いた。
セイファートキーは、グラグラっとゆれて、やがてバランスをとりきれなくなって、パタリと倒れた。
「よしっ! セイファート様の導きが得られたわ! 町はアッチよ!!」
倒れた向きを指差して、そう言い放つ私。
「そ……そんなぁ、それってただの運試しじゃ――」
「私の家具セットを当てた運のよさを信じなさい!」
そう言って渋るカトリーヌさんを奮い立たせる。
無謀なのは百も承知だけど、何か理由をつけて動かないと状況は悪くなる一方だわ。
そう、キールだってきっと同じ状況ならこんな森の中で勝算なくジッとし続けているわけない。
セイファートキーは、グラグラっとゆれて、やがてバランスをとりきれなくなって、パタリと倒れた。
「よしっ! セイファート様の導きが得られたわ! 町はアッチよ!!」
倒れた向きを指差して、そう言い放つ私。
「そ……そんなぁ、それってただの運試しじゃ――」
「私の家具セットを当てた運のよさを信じなさい!」
そう言って渋るカトリーヌさんを奮い立たせる。
無謀なのは百も承知だけど、何か理由をつけて動かないと状況は悪くなる一方だわ。
そう、キールだってきっと同じ状況ならこんな森の中で勝算なくジッとし続けているわけない。
「さっ、カトリーヌさん。私に黙ってついてきて!」
「言ってることは男らしいですけど、本当に大丈夫なんですか?」
そんなやり取りのあと、ようやく移動を始めた私たち。
ブーツのお陰で、足は驚くほど軽やかなのが唯一の救いだったみたい。
ドンドン進んでいって、そして、私たちはやりました!
「言ってることは男らしいですけど、本当に大丈夫なんですか?」
そんなやり取りのあと、ようやく移動を始めた私たち。
ブーツのお陰で、足は驚くほど軽やかなのが唯一の救いだったみたい。
ドンドン進んでいって、そして、私たちはやりました!
「アレって……もしかして町じゃないですか?」
「えっ? ……アーーーーッッ!! まちマチ!!」
本当にびっくりしたわ。まさか本当に町まで戻ってきちゃうなんて。
……そこまでツイててくれるなら、偶然ユアンさんたちと鉢合わせしてもいいんじゃないの?
そう思ったけど、でも町にたどり着けて本当によかったあ。
感激のあまり飛び上がって喜ぶ私。ヘタヘタと座り込むカトリーヌさん。
ああ、帰ってきた。そう思うと、ドッと疲れが出てきてもしょうがないかな。でも、
「とりあえず、もうひとふん張り、作戦会議した家までがんばりましょう」
カトリーヌさんに手を差し伸べる。ここじゃ人目につくかもしれないものね。
「ありがとう、プリムラさん。……疑っちゃってごめんなさいね」
「えっ? いいのいいの、気にしないで!」
手を横に振って、照れ笑いをして答えたら、
カトリーヌさんもようやく安堵の笑いをしてくれました。
「えっ? ……アーーーーッッ!! まちマチ!!」
本当にびっくりしたわ。まさか本当に町まで戻ってきちゃうなんて。
……そこまでツイててくれるなら、偶然ユアンさんたちと鉢合わせしてもいいんじゃないの?
そう思ったけど、でも町にたどり着けて本当によかったあ。
感激のあまり飛び上がって喜ぶ私。ヘタヘタと座り込むカトリーヌさん。
ああ、帰ってきた。そう思うと、ドッと疲れが出てきてもしょうがないかな。でも、
「とりあえず、もうひとふん張り、作戦会議した家までがんばりましょう」
カトリーヌさんに手を差し伸べる。ここじゃ人目につくかもしれないものね。
「ありがとう、プリムラさん。……疑っちゃってごめんなさいね」
「えっ? いいのいいの、気にしないで!」
手を横に振って、照れ笑いをして答えたら、
カトリーヌさんもようやく安堵の笑いをしてくれました。
「アレッ? そういえば……コレって」
そう言って、カトリーヌさんは皮袋から何か取り出す。
それって………そのまーるい物体って………ええーっと。私の勘が正しければ……
「それは……コンパスというものじゃないでしょうか?」
「ですよね。それじゃあ、もしかして……」
「そうですねえ………私の推理が間違いじゃなかったら、あのセイファートキーの活躍も……」
「徒労だった……みたいですね」
その言葉に……私にもドッと疲れが押し寄せたみたい。
そう言って、カトリーヌさんは皮袋から何か取り出す。
それって………そのまーるい物体って………ええーっと。私の勘が正しければ……
「それは……コンパスというものじゃないでしょうか?」
「ですよね。それじゃあ、もしかして……」
「そうですねえ………私の推理が間違いじゃなかったら、あのセイファートキーの活躍も……」
「徒労だった……みたいですね」
その言葉に……私にもドッと疲れが押し寄せたみたい。
【プリムラ 生存確認】
状態:疲れ気味
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。
状態:疲れ気味
所持品:セイファートキー、?、チャームボトルの瓶、ナイトメアブーツ、エナジーブレット
基本行動方針:仲間と共に脱出。ミクトランを石板に縛り付けて海に沈める。
【カトリーヌ 生存確認】
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:疲れ気味
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。
所持品:マジックミスト、ジェットブーツ、エナジーブレット×2、ロープ数本、C・ケイジ
状態:疲れ気味
基本行動方針:帰りたい。死にたくない。
現在地:G5の村