祈祷・魔・岩戸
「あ」ハロルドは計算を中断する。
「どうした?」トーマはもはや話半分でしか聞いていない。
「あの洞窟今あんま人体に良くない空気配分になっているかも、散々燃やしたりしたしねえ
石灰質の洞窟で炎系の術を使うなんて正気じゃないわね?死んでも仕方ないわ」
「死者にそう言うことを言うのは…」
「ヒトは死んだら死人になるんじゃないの、死体になるの」少しだけハロルドの顔が曇る。
「…大丈夫なのか?」トーマは仕方なく話題を戻す。
「まあ大した傾斜も無いし、エアラインは確保されているから
二酸化炭素1,2%…まあ少し眩暈がする程度でしょ。まああれ以上壁を燃やしたら…
ストーカーの仮面みたいになっちゃう」
「?」やはり話の要領を得ない。
「ただのジョークよ」
ジョークにすらなってない、と思う。
「それにしても、この技目標が来る前に完成するのかしら?
理論での試算しか出来ないってのはやっぱきついわ」
すこし生温い夜風に思考力を奪われた、とハロルドは自己分析した。
「どうした?」トーマはもはや話半分でしか聞いていない。
「あの洞窟今あんま人体に良くない空気配分になっているかも、散々燃やしたりしたしねえ
石灰質の洞窟で炎系の術を使うなんて正気じゃないわね?死んでも仕方ないわ」
「死者にそう言うことを言うのは…」
「ヒトは死んだら死人になるんじゃないの、死体になるの」少しだけハロルドの顔が曇る。
「…大丈夫なのか?」トーマは仕方なく話題を戻す。
「まあ大した傾斜も無いし、エアラインは確保されているから
二酸化炭素1,2%…まあ少し眩暈がする程度でしょ。まああれ以上壁を燃やしたら…
ストーカーの仮面みたいになっちゃう」
「?」やはり話の要領を得ない。
「ただのジョークよ」
ジョークにすらなってない、と思う。
「それにしても、この技目標が来る前に完成するのかしら?
理論での試算しか出来ないってのはやっぱきついわ」
すこし生温い夜風に思考力を奪われた、とハロルドは自己分析した。
生きている猫・死んでいる猫、そしてどちらでもない猫。
どちらでもない猫は何処にでもいるし何処にもいない。
生と死の重ね合わせ。正解が無い故に無限。
観測の外、思考の内、理論の外、量子の内、マクロの外、ミクロの内。
どちらでもない猫は何処にでもいるし何処にもいない。
生と死の重ね合わせ。正解が無い故に無限。
観測の外、思考の内、理論の外、量子の内、マクロの外、ミクロの内。
面倒臭い前置きは止めよう。
量子力学なんてこのゲームにおいて無縁の話だ。聞き流して欲しい。
猫、彼女達がこの話が終わる頃に生きているのか死んでいるのか…
箱、洞窟の外により思考する我々だけが3番目を解釈することが出来る。
量子力学なんてこのゲームにおいて無縁の話だ。聞き流して欲しい。
猫、彼女達がこの話が終わる頃に生きているのか死んでいるのか…
箱、洞窟の外により思考する我々だけが3番目を解釈することが出来る。
凶器が青酸カリでないのは残念だが、これだけは分かって欲しい。
50/50ではない。100%が二つあるのだ。死ぬか、生きるか、観測結果は100%しか無い。
50/50ではない。100%が二つあるのだ。死ぬか、生きるか、観測結果は100%しか無い。
ミトスは腹の内が捩れるのを耐えることに力を込めていた。
存外に扱いやすいこの女が実に面白可笑しかったからだ。
ミトスはアトワイトが内通した事実は知っていたが、誰に、何を供述したかを知らない。
この違和感が証明するのは
(鎌をかけてみたら本当に喋っていたのか。単純と言うか、何と言うか…)
嘘、心理的誘導だ。内通した可能性があったとしたらあの二人、証拠は無いから自供して貰うつもりだったが。
成程、想定していたよりアトワイトは「此方側」に適応していない。
こちら側の不自然が看破される前に心を抉って正常な思考を鈍らせるつもりだったが、
ここまで綺麗に嵌ってくれたことが一番想定外だ。情報官としては無能といっていい。
恐らくまともに戦場に出たことが無いのだろうか、この剣が強すぎたのか、兎にも角にも、温い。
存外に扱いやすいこの女が実に面白可笑しかったからだ。
ミトスはアトワイトが内通した事実は知っていたが、誰に、何を供述したかを知らない。
この違和感が証明するのは
(鎌をかけてみたら本当に喋っていたのか。単純と言うか、何と言うか…)
嘘、心理的誘導だ。内通した可能性があったとしたらあの二人、証拠は無いから自供して貰うつもりだったが。
成程、想定していたよりアトワイトは「此方側」に適応していない。
こちら側の不自然が看破される前に心を抉って正常な思考を鈍らせるつもりだったが、
ここまで綺麗に嵌ってくれたことが一番想定外だ。情報官としては無能といっていい。
恐らくまともに戦場に出たことが無いのだろうか、この剣が強すぎたのか、兎にも角にも、温い。
暗闇の遥か先の連中を見る。イラプションから数分…ナルコーシスはそう遠くは無い。
もうじき空気に比べ比重の大きい二酸化炭素が充満し、濃度7%に至る。
後は伏して彼女達の死を祈るのみ。神にではなく、彼女達に。
実際に伏せると気分が悪くなりそうだからやらないが。
もうじき空気に比べ比重の大きい二酸化炭素が充満し、濃度7%に至る。
後は伏して彼女達の死を祈るのみ。神にではなく、彼女達に。
実際に伏せると気分が悪くなりそうだからやらないが。
『ミトス』
「なんだい?素敵な言い訳でも思いついた?」
アトワイトに効果がありそうな言葉を選ぶ。的確に、憐憫無く。
『どうして…こんなことが出来るの?』
「どうしてこんなことも出来ないんだい?」
『貴方のやり方で貴方の姉さんを蘇らせるだけなら彼女達を殺す必要は無いわ』
「生かしておく必然性も無い」
逃げ場も無い。
『何のために、その意味は?』
「何処の世界にも1人2人は…ああ、そうか、そうか…それはいい
皆に見てもらうために殺すんだから、2人とも、少しくらいは飾っておいたほうがいいよね?」
「なんだい?素敵な言い訳でも思いついた?」
アトワイトに効果がありそうな言葉を選ぶ。的確に、憐憫無く。
『どうして…こんなことが出来るの?』
「どうしてこんなことも出来ないんだい?」
『貴方のやり方で貴方の姉さんを蘇らせるだけなら彼女達を殺す必要は無いわ』
「生かしておく必然性も無い」
逃げ場も無い。
『何のために、その意味は?』
「何処の世界にも1人2人は…ああ、そうか、そうか…それはいい
皆に見てもらうために殺すんだから、2人とも、少しくらいは飾っておいたほうがいいよね?」
ミトスは左手で前髪を掻き揚げ、右手でアトワイトを掲げた。
眼は手に覆われて見えないがその口元は笑っている。
眼は手に覆われて見えないがその口元は笑っている。
「そろそろ12時間か・・・最後のチャンスだ、君にも踊って貰おうか?」
剣を収め、ミトスは最深部へ駆けていった。
無言。それを以って罠に落ちた哀れな剣は天使との契約を結ぶ。
剣を収め、ミトスは最深部へ駆けていった。
無言。それを以って罠に落ちた哀れな剣は天使との契約を結ぶ。
少女が3人、無色透明の惨殺空間にいた。
但し、コレットだけは死の方向性が、他2人とは異なる。
コレットだけが、客観的に見て命を浪費しようとしているからだ。
無論、この見解はあくまで外側から見た物言い、
あるいは「自分の命こそが何よりも尊いという妄執」に則った見方でしかない。
コレットにとってはリアラの命こそが最上項であり、全てだからだ。
そのコレットが詠唱、と言っても発声機構はOFFになっているのだから詠ってはいないのだが、
しているのは天使術唯一の回復術、リヴァイヴィウサー。
両の手を凛と伸ばし、有色透明な翼から羽が散落する。自己犠牲の禁呪。
リアラを守る。忠実に愚鈍にそれを行使する。
自分が犠牲になる、と言うことを何よりも知っている娘だから
可能な、ある種の後天的才能と言えなくもない。術式も佳境へ。
但し、コレットだけは死の方向性が、他2人とは異なる。
コレットだけが、客観的に見て命を浪費しようとしているからだ。
無論、この見解はあくまで外側から見た物言い、
あるいは「自分の命こそが何よりも尊いという妄執」に則った見方でしかない。
コレットにとってはリアラの命こそが最上項であり、全てだからだ。
そのコレットが詠唱、と言っても発声機構はOFFになっているのだから詠ってはいないのだが、
しているのは天使術唯一の回復術、リヴァイヴィウサー。
両の手を凛と伸ばし、有色透明な翼から羽が散落する。自己犠牲の禁呪。
リアラを守る。忠実に愚鈍にそれを行使する。
自分が犠牲になる、と言うことを何よりも知っている娘だから
可能な、ある種の後天的才能と言えなくもない。術式も佳境へ。
‘その力、穢れなく澄み渡り流るる。魂の輪廻に踏入ることを赦し賜え ’
ふいに、彼女の手を掴む純白の「手」がある。握力は殆ど感じられない。
コレットは一切の出力をせずにそちらの方を向く。
立っているのもやっとな、法術師、ミント=アドネードが、そこにいた。
表面に濡れそぼる汗に演出された艶かしさと対照に、
その眼は今尚少女相応の精悍な輝きを放っていた。不自然な程に。
もう片方の口を手に当てて、ミントは首を左右に振る。
草食動物の視界を得ようとしているわけではない。それだけは使ってはいけない、という意思表示。
表情は読み取れなくても、分かるものがある。死ぬ覚悟などが最たる例だ。
それを看過することは、ミントには到底出来ない。一種の感染症に近いかもしれない。
(自分が犠牲になることに関しては非常にルーズになるのがこの病の特徴なのだろう)
コレットが不意に詠唱を止める。意志が通じたという錯覚にミントは苦しさを忘れずに微笑んだ。
直後、ミントは下腹部に重いものを感じる。続いて、体内の空気が逃げ場を失い逆流し、
ほんの少しの唾液と呼気を吐いた後、落ちる瞼の向こうに自分の腹にめり込むコレットの拳と
微かに揺らぐ彼女の瞳を見た。彼女が見た最後の画像である。
コレットは一切の出力をせずにそちらの方を向く。
立っているのもやっとな、法術師、ミント=アドネードが、そこにいた。
表面に濡れそぼる汗に演出された艶かしさと対照に、
その眼は今尚少女相応の精悍な輝きを放っていた。不自然な程に。
もう片方の口を手に当てて、ミントは首を左右に振る。
草食動物の視界を得ようとしているわけではない。それだけは使ってはいけない、という意思表示。
表情は読み取れなくても、分かるものがある。死ぬ覚悟などが最たる例だ。
それを看過することは、ミントには到底出来ない。一種の感染症に近いかもしれない。
(自分が犠牲になることに関しては非常にルーズになるのがこの病の特徴なのだろう)
コレットが不意に詠唱を止める。意志が通じたという錯覚にミントは苦しさを忘れずに微笑んだ。
直後、ミントは下腹部に重いものを感じる。続いて、体内の空気が逃げ場を失い逆流し、
ほんの少しの唾液と呼気を吐いた後、落ちる瞼の向こうに自分の腹にめり込むコレットの拳と
微かに揺らぐ彼女の瞳を見た。彼女が見た最後の画像である。
ミントが気絶したことを目視した上で、改めてコレットはリヴァイヴィウサーを再度詠唱しようと試みる。
しかし声が出ない。出せないのは当たり前の話だから、この場合「詠唱が出来ない」という
魔術のスラングである。声が、でない。術が、始まらない。リアラを、助けることが出来ない。
しかし声が出ない。出せないのは当たり前の話だから、この場合「詠唱が出来ない」という
魔術のスラングである。声が、でない。術が、始まらない。リアラを、助けることが出来ない。
「物見遊山に来てみれば、こんなことをしているとはね?」
コレットはそこでようやく後ろに一人の少年が近づいていたことを認識する。
「人形に自害する権利も資格もないよ」
ミトスが笑う。光源が無いから、二人しかいないから、コレットだけが殺意の源泉を知覚した。
排除するべき存在の認識。しかし、詠唱が出来ないことを説明する情報ではない。
「アトワイト、見事だ…実に使いやすい」
ミトスの片手に、今し方晶術を発動したアトワイトがあった。
術殺しの‘サイレンス’がコレットを括っていた。
「ああ…本当に良かった…まだ死んでない…死化粧は、生きている内にやる方が手間が掛からない」
ミトスはリアラを一別し、濁った眼球がだらしなく振動するのを確認した。
コレットがすかさずリアラへのミトスの攻撃意志を感知し、榴弾砲を深く抱えて構える。
既に相反する状況に彼女の論理は破綻していることに、彼女自身は気づいていない。
「僕は君と戦うつもりはないんだ。とりあえず…」
ミトスは自分の敵意にコレットが反応したものと誤認したまま、アトワイトを掲げる。
「目を奪わせてもらう」
二酸化炭素が充満した洞穴に、何も変化は起こらない。光がないから、人間達にはその異常を
認識することが出来ない。コレットとミトスだけが見る暗闇の世界が、一気に白濁する。
コレットの本能は理解を誤った。夕方の一戦からミトスには攻撃「魔術」しか無いものと思っていた。
晶術も確認したのは全て回復術のみ。理解の外から、一方的に侵攻を許してしまった。
ミトスがコレットとの直接戦闘を警戒していなかった理由…それがサイレンスや
ディープミストに代表される「補助晶術」の存在である。
無痛覚は恐怖をねじ伏せ、視聴覚は万物を捕捉し、
膂力は敵を粉砕する(これは天使としての能力だけとは言い難いが)無機生命体。
末端戦力としてこれほど恐ろしい兵器はない。
しかし、裏を返せば無痛覚は危機への感性を鈍らせ、一部の感覚の鋭化は多面的な情報の取得を困難にし、
強すぎる膂力は攻撃の選択肢を狭める。天使は搦め手に非常に弱い。(並の搦め手ならスペックでねじ伏せるが)
皮肉なことに天使のスペックを最大限に発揮するには天使の感覚に耐えうる心が必要不可欠なのだ。
神の機関クルシスにおいても心(あるいは心があるという妄想)を備えるものは四大天使を除けば数は少ない。
それには古代大戦とクルシスに於いてこの技術の使用目的が根本的に異なることに起因するがここは省略しよう。
ともかく、エクスフィア、天使という知識を得た上で戦略を練りさえすれば、無機生命体は決して難攻不落ではない。
コレットはそこでようやく後ろに一人の少年が近づいていたことを認識する。
「人形に自害する権利も資格もないよ」
ミトスが笑う。光源が無いから、二人しかいないから、コレットだけが殺意の源泉を知覚した。
排除するべき存在の認識。しかし、詠唱が出来ないことを説明する情報ではない。
「アトワイト、見事だ…実に使いやすい」
ミトスの片手に、今し方晶術を発動したアトワイトがあった。
術殺しの‘サイレンス’がコレットを括っていた。
「ああ…本当に良かった…まだ死んでない…死化粧は、生きている内にやる方が手間が掛からない」
ミトスはリアラを一別し、濁った眼球がだらしなく振動するのを確認した。
コレットがすかさずリアラへのミトスの攻撃意志を感知し、榴弾砲を深く抱えて構える。
既に相反する状況に彼女の論理は破綻していることに、彼女自身は気づいていない。
「僕は君と戦うつもりはないんだ。とりあえず…」
ミトスは自分の敵意にコレットが反応したものと誤認したまま、アトワイトを掲げる。
「目を奪わせてもらう」
二酸化炭素が充満した洞穴に、何も変化は起こらない。光がないから、人間達にはその異常を
認識することが出来ない。コレットとミトスだけが見る暗闇の世界が、一気に白濁する。
コレットの本能は理解を誤った。夕方の一戦からミトスには攻撃「魔術」しか無いものと思っていた。
晶術も確認したのは全て回復術のみ。理解の外から、一方的に侵攻を許してしまった。
ミトスがコレットとの直接戦闘を警戒していなかった理由…それがサイレンスや
ディープミストに代表される「補助晶術」の存在である。
無痛覚は恐怖をねじ伏せ、視聴覚は万物を捕捉し、
膂力は敵を粉砕する(これは天使としての能力だけとは言い難いが)無機生命体。
末端戦力としてこれほど恐ろしい兵器はない。
しかし、裏を返せば無痛覚は危機への感性を鈍らせ、一部の感覚の鋭化は多面的な情報の取得を困難にし、
強すぎる膂力は攻撃の選択肢を狭める。天使は搦め手に非常に弱い。(並の搦め手ならスペックでねじ伏せるが)
皮肉なことに天使のスペックを最大限に発揮するには天使の感覚に耐えうる心が必要不可欠なのだ。
神の機関クルシスにおいても心(あるいは心があるという妄想)を備えるものは四大天使を除けば数は少ない。
それには古代大戦とクルシスに於いてこの技術の使用目的が根本的に異なることに起因するがここは省略しよう。
ともかく、エクスフィア、天使という知識を得た上で戦略を練りさえすれば、無機生命体は決して難攻不落ではない。
この狭い空間でコレットの「力」を奪い、
洞窟に反響する音はコレットの「耳」を抑え、
サイレンスがコレットの「術」を封じ、
ディープミストでコレットの「眼」を塞ぐ。
洞窟に反響する音はコレットの「耳」を抑え、
サイレンスがコレットの「術」を封じ、
ディープミストでコレットの「眼」を塞ぐ。
そして最大の要衝、コレットの「感覚」は晶術と魔術、二つの術式をずらすことで
発動する術を誤認させ、沈黙とする…ネレイドとの戦いで発想した戦術の最終形である。
ずらされた詠唱によって魔術を晶術と、晶術を魔術と、使用する術を惑わす。
凡百の戦士や魔術師にはそもそも唯の詠唱にしか見えないであろうが、
ダオス、ネレイド達ほどの手練との戦いならばこの小細工は確実に効いてくる。
そして、恐らくこの舞台で一番感覚に鋭いコレット相手ならば、その影響はそれだけでは済まない。
無自覚に小細工が大好きなミトスならではの発想であった。
発動する術を誤認させ、沈黙とする…ネレイドとの戦いで発想した戦術の最終形である。
ずらされた詠唱によって魔術を晶術と、晶術を魔術と、使用する術を惑わす。
凡百の戦士や魔術師にはそもそも唯の詠唱にしか見えないであろうが、
ダオス、ネレイド達ほどの手練との戦いならばこの小細工は確実に効いてくる。
そして、恐らくこの舞台で一番感覚に鋭いコレット相手ならば、その影響はそれだけでは済まない。
無自覚に小細工が大好きなミトスならではの発想であった。
コレットを「封殺」する、そのために選んだこの地である。
炭酸ナトリウムを大量に含有する石灰質の洞窟であったのは副次的な幸運と言えよう。
見ればほかにも岩壁を灼いた痕跡があった。それが自分の駒たるマグニスの技が成したとは知る由もない。
(ミトスは知らないが崩落の向こう側で死んでいる彼の親友になる「はずだった」人物が炎系魔術を使っている)
どうやら同じことを考えた人物がいるのかも知れない…いくら何でも危険域の濃度7%までの推移が早すぎると
訝しんだが、先客が下ごしらえをしていてくれたのなら僥倖と言う他無い。
そしてその戦術をここまで早く完成させる決定打を与えたのは沈黙するアトワイト。
彼女にもう少しルーティのような自信と傲慢があれば、ミトスの毒舌をいなすことも出来たかも知れない。
しかしそれは叶わなかった。彼女は、ソーディアンである自分を恨むことでしか、自我を保てなかった。
ソーディアンが腑抜けになれば、晶術のコントロールは比較的容易。
最後の詰めを除けば、アトワイトへの施術は完全といえる。
炭酸ナトリウムを大量に含有する石灰質の洞窟であったのは副次的な幸運と言えよう。
見ればほかにも岩壁を灼いた痕跡があった。それが自分の駒たるマグニスの技が成したとは知る由もない。
(ミトスは知らないが崩落の向こう側で死んでいる彼の親友になる「はずだった」人物が炎系魔術を使っている)
どうやら同じことを考えた人物がいるのかも知れない…いくら何でも危険域の濃度7%までの推移が早すぎると
訝しんだが、先客が下ごしらえをしていてくれたのなら僥倖と言う他無い。
そしてその戦術をここまで早く完成させる決定打を与えたのは沈黙するアトワイト。
彼女にもう少しルーティのような自信と傲慢があれば、ミトスの毒舌をいなすことも出来たかも知れない。
しかしそれは叶わなかった。彼女は、ソーディアンである自分を恨むことでしか、自我を保てなかった。
ソーディアンが腑抜けになれば、晶術のコントロールは比較的容易。
最後の詰めを除けば、アトワイトへの施術は完全といえる。
ここに、ミトスの脚本した第一幕は終幕の目処が立った。
コレットは本人以外にしか分からぬ濃霧の中、主の姿を求めた。
動ける容態ではないのだから位置は変わってないはず。しかし、それは無事を証明する材料にはならない。
動ける容態ではないのだから位置は変わってないはず。しかし、それは無事を証明する材料にはならない。
リアラの鼓動は、洞窟に残響するノイズに阻まれて分からない。
ど…して…
人を助けるのに理由はないだろう?だから人を殺すのにも理由は要らない。
人を助けるのに理由はないだろう?だから人を殺すのにも理由は要らない。
リアラの姿は、白濁した世界に飲まれて分からない。動けない。
あ……しん………に…
狂ってると思う?それは幻想だ。何処の世界にも、異常な動機なんて存在しない。
狂ってると思う?それは幻想だ。何処の世界にも、異常な動機なんて存在しない。
ミトスを探す。探して、この砲門で、完全に、突き殺さねば、リアラが。私が守るって、決めたんだから。
……………………………の……?
異常なのは、何時だって動機を成す手段だ。僕はただ…(I only…)
異常なのは、何時だって動機を成す手段だ。僕はただ…(I only…)
意図的にうっすらと霧の一部が晴れる。その向こうに天使の背中があった。迷わず、躊躇わず、榴弾砲を一直線に。
……………カイル……………………………
僕は唯々、君と一緒に居たいんだ(I only want to be with you♪)
僕は唯々、君と一緒に居たいんだ(I only want to be with you♪)
示し合わせたかのように天使がコレットの方を向く。金髪で片眼は覆われ、覆われていない方の眼が
現れる直前、虹色の輝きが、洞窟を照らした。榴弾砲が、鍵が、肉を、心臓を貫く。
現れる直前、虹色の輝きが、洞窟を照らした。榴弾砲が、鍵が、肉を、心臓を貫く。
霧が、晴れた。
ミントはゆっくりと眼を開けた。肌に薄ら寒さを感じる。いや、寒い。
相も変わらず何も見えない洞窟の壁を、手探りで触ると、不思議なさらさらとして凍てつく感覚を覚える。
霜だ…霜が張っている…何も見えない…
洞窟一面に、霜が張って、凍っている。正確には洞窟内の二酸化炭素が凍っていた。
空気は通常配分に戻っている。魅せる為に殺したのだから何時までも惨殺空間にしておくわけにはいかない。
洞窟を丸々凍らせる…「今の」アトワイトならばさして難しい話ではない。
一体何だったのだろうか…リアラが倒れて、コレットが自分を犠牲にしようとして、
私はコレットに気絶させられて…何も見えない…リアラさんは…他の皆さんは…
呼んでみるが誰も答えない。冷却された音がよく残響する。そこに混じる足音。
呼吸とともに体内の熱と思考が奪われる…寒い…何も見えない…眠い…明日もいい日でありますように…
ミントは睡魔に逆らえず、瞳を閉じてしまった。起きても、朝になっても何も見えないだろう。
白馬のイヤリング、無属性の魔術を退けるその加護は確かにあった。
しかし見つけたのは第三の猫。酸素が足りなかった。
大脳新皮質の後頭葉にある視覚中枢まで足りなかった。猫が笑って泣いて死んで生きて半死半生。
ミントの体がひょいっと持ち上がる。法術師のトレードマークの帽子が剥ぎ取られ、神の頭に乗せられる。
ロイドを誘うため、要の紋を残し、クレスを誘うためではなく、道化を回収する。
殺したかったのに…聖母が盲目になるなんて…どんな冗談だというんだ…
可笑し過ぎて殺せないじゃないか…姉さまみたいな面しやがって…楽には殺さない…
壊してから殺してやる…姉さまじゃなくなってから殺してやる…
ミントの拒む意志が反映したのか、耳のイヤリングが白く一瞬輝いた。全景が映る。
相も変わらず何も見えない洞窟の壁を、手探りで触ると、不思議なさらさらとして凍てつく感覚を覚える。
霜だ…霜が張っている…何も見えない…
洞窟一面に、霜が張って、凍っている。正確には洞窟内の二酸化炭素が凍っていた。
空気は通常配分に戻っている。魅せる為に殺したのだから何時までも惨殺空間にしておくわけにはいかない。
洞窟を丸々凍らせる…「今の」アトワイトならばさして難しい話ではない。
一体何だったのだろうか…リアラが倒れて、コレットが自分を犠牲にしようとして、
私はコレットに気絶させられて…何も見えない…リアラさんは…他の皆さんは…
呼んでみるが誰も答えない。冷却された音がよく残響する。そこに混じる足音。
呼吸とともに体内の熱と思考が奪われる…寒い…何も見えない…眠い…明日もいい日でありますように…
ミントは睡魔に逆らえず、瞳を閉じてしまった。起きても、朝になっても何も見えないだろう。
白馬のイヤリング、無属性の魔術を退けるその加護は確かにあった。
しかし見つけたのは第三の猫。酸素が足りなかった。
大脳新皮質の後頭葉にある視覚中枢まで足りなかった。猫が笑って泣いて死んで生きて半死半生。
ミントの体がひょいっと持ち上がる。法術師のトレードマークの帽子が剥ぎ取られ、神の頭に乗せられる。
ロイドを誘うため、要の紋を残し、クレスを誘うためではなく、道化を回収する。
殺したかったのに…聖母が盲目になるなんて…どんな冗談だというんだ…
可笑し過ぎて殺せないじゃないか…姉さまみたいな面しやがって…楽には殺さない…
壊してから殺してやる…姉さまじゃなくなってから殺してやる…
ミントの拒む意志が反映したのか、耳のイヤリングが白く一瞬輝いた。全景が映る。
真っ白く凍った岩壁に、一本の榴弾砲が、心臓の位置で刺さっている。
ファフニールによってなます切りにされた傷と血は凍り、所々にフルーツが凍結している。
その杭が穿つはずだった天使は、瞬間移動によって喪失し、その向こうの神を磔にした。
その死顔に恐怖も、悦も無く、実に不思議な…神を見たような驚きだけがあった。
ファフニールによってなます切りにされた傷と血は凍り、所々にフルーツが凍結している。
その杭が穿つはずだった天使は、瞬間移動によって喪失し、その向こうの神を磔にした。
その死顔に恐怖も、悦も無く、実に不思議な…神を見たような驚きだけがあった。
神の足下に、中央が窪んだ飴が一本。それを重しにして、ミトスは血文字がまだ凍っていない紙を一枚置く。
「神の磔、心への鍵、天使は魔剣を求め、女神の眠る地へ」
祈祷は魔を喚び、かくして天の岩戸に神は閉じこめられ、聖母の世界は永久の闇に閉ざされる。
実に見事な、神の神たる証明だった。
実に見事な、神の神たる証明だった。
【ミント 生存確認】
状態:TP75% 睡眠 失明(酸素不足で部分脳死) コレットに運ばれている 帽子なし
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:???
第ニ行動方針:クレスがとても気になる
第三行動方針:仲間と合流
現在位置:G3洞窟最深部→ E2周囲を避けてC3村へ
状態:TP75% 睡眠 失明(酸素不足で部分脳死) コレットに運ばれている 帽子なし
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント
第一行動方針:???
第ニ行動方針:クレスがとても気になる
第三行動方針:仲間と合流
現在位置:G3洞窟最深部→ E2周囲を避けてC3村へ
【コレット 生存確認】
状態: 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:苦無(残り1) ピヨチェック
基本行動方針:防衛本能(自己及びミトスへの危機排除)
第一行動方針:ミトスについて行く
現在位置:G3洞窟最深部 →E2周囲を避けてC3村へ
状態: 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:苦無(残り1) ピヨチェック
基本行動方針:防衛本能(自己及びミトスへの危機排除)
第一行動方針:ミトスについて行く
現在位置:G3洞窟最深部 →E2周囲を避けてC3村へ
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP55% 左肩損傷(処置済み) 治療による体力の中度消耗 天使能力解禁
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、大いなる実り、邪剣ファフニール
基本行動方針:マーテル復活
第一行動方針:C3村で策の成就を待つ
第二行動方針:ミント・コレットをクレス殺害に利用する
第三行動方針:カイル・ロイドを復讐鬼に仕立てエターナルソードを探させる
第四行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:G3洞窟最深部→E2周辺を避けてC3村へ
状態:TP55% 左肩損傷(処置済み) 治療による体力の中度消耗 天使能力解禁
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、大いなる実り、邪剣ファフニール
基本行動方針:マーテル復活
第一行動方針:C3村で策の成就を待つ
第二行動方針:ミント・コレットをクレス殺害に利用する
第三行動方針:カイル・ロイドを復讐鬼に仕立てエターナルソードを探させる
第四行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:G3洞窟最深部→E2周辺を避けてC3村へ
※アトワイト備考
状態:自我の凍結、エクスフィア寄生
基本行動方針:ミトスに従う
状態:自我の凍結、エクスフィア寄生
基本行動方針:ミトスに従う
【リアラ 死亡確認
【残り21人】
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