Shape of Nothings Human
海がそこにあった。砂浜の白砂は月光に照らされて、真昼のように輝いている。
波打ち際から砂浜の終わり、草原まで大きく見積もって直線距離5メートルと言ったところか。
砂の上には貝も、流木も、時間が蓄積している証拠になるものは一切無い。
幾つかの雑草が中年の髪の毛のように惨めに、不自然に在るだけだ。
砂と草の境界で彼は地面に手を添える。その手は震えていた。既に捉えている。
彼は眠る剣士を見下ろす。塞がれた顔は誰の物か分からない。
「もうちょい土が良かったら楽なんだけどなあ」
手を合わせ、両の手を地面に付く。黒い夜に、白い砂の上で、緑が輝き、血の赤が澱む。
「誰が来るかは分からねえが…クレス…お前だけは守ってやる。
イーフォン、俺を信じなくて良い。お前が託した俺を信じて、力を貸してくれ」
乾いた砂の中に、彼の意志が咲いた。
波打ち際から砂浜の終わり、草原まで大きく見積もって直線距離5メートルと言ったところか。
砂の上には貝も、流木も、時間が蓄積している証拠になるものは一切無い。
幾つかの雑草が中年の髪の毛のように惨めに、不自然に在るだけだ。
砂と草の境界で彼は地面に手を添える。その手は震えていた。既に捉えている。
彼は眠る剣士を見下ろす。塞がれた顔は誰の物か分からない。
「もうちょい土が良かったら楽なんだけどなあ」
手を合わせ、両の手を地面に付く。黒い夜に、白い砂の上で、緑が輝き、血の赤が澱む。
「誰が来るかは分からねえが…クレス…お前だけは守ってやる。
イーフォン、俺を信じなくて良い。お前が託した俺を信じて、力を貸してくれ」
乾いた砂の中に、彼の意志が咲いた。
何もない海と砂、寄せては返す波の音。この静寂には人間排他の効果があるようで。
そんな場所に、ミトス=ユグドラシルは辿り着き、そこに一人の青年を発見した。
海の方を向いて、胡座を掻いて座っている。どうぞ首を斬って下さいと言いたげな背中だった。
「何をしているの?」実に子供っぽく訪ねてみる。背中に左手を回し、アトワイトを隠す。
「何もしてねえよ」青年は立ち上がって、ようやく少年の方を向いた。髑髏と何の差もない死人の顔。
しかし、ミトス少年がまず眼を奪われたのはその顔ではない。彼の右手、正しくは右腕に巻き付いている布。
「お前、それを何処で手に入れた?」一気に声の調子を落とす。既に騙すという選択肢はない。
「俺の希望をぶち壊した奴のマントだった布。包帯がなかったから代わりに貰った」
ティトレイは肘を前に出して見せつける。ミトスにとっては実に印象の深い、血染めのボロ切れだった。
「お前が、ダオスを殺したのか?」ミトスは感情を堪える。
「ああ…でも確かお前ら啀み合ってなかったか?えー…ミトス…だったかな?」
ティトレイは鼻をポリポリと掻く。明確な意図を乗せて。
「僕の事なんかどうでも良いよ。…剣を寄越せ」
ダオスへの意識をコントロールすることに必死で、ミトスは彼の意図に気づかず、本題へと乗り出した。
「剣なら後ろにもってんじゃん…ああ、それとも…」彼は自分のサックから、それを出した。
「これのことか?」
「アイスニードル!!」
ミトスが瞬間的にアトワイトを翳して晶術を放つ。構成された何本もの氷槍が彼に牙をむく。
ここにロイド達がいないと分かった時点でもう相手を騙す必要がない。
どうにも、まさかエターナルソードを持っていたラッキーな愚か者がいるとは、
ましてやそいつが自身の愉しみを、ダオスを勝手に殺したというのであれば、生かす理由もない。
あいつは姉様の前で頭を垂れて惨めに無様に死ななきゃいけない存在なのだ、それを勝手に。
そんな場所に、ミトス=ユグドラシルは辿り着き、そこに一人の青年を発見した。
海の方を向いて、胡座を掻いて座っている。どうぞ首を斬って下さいと言いたげな背中だった。
「何をしているの?」実に子供っぽく訪ねてみる。背中に左手を回し、アトワイトを隠す。
「何もしてねえよ」青年は立ち上がって、ようやく少年の方を向いた。髑髏と何の差もない死人の顔。
しかし、ミトス少年がまず眼を奪われたのはその顔ではない。彼の右手、正しくは右腕に巻き付いている布。
「お前、それを何処で手に入れた?」一気に声の調子を落とす。既に騙すという選択肢はない。
「俺の希望をぶち壊した奴のマントだった布。包帯がなかったから代わりに貰った」
ティトレイは肘を前に出して見せつける。ミトスにとっては実に印象の深い、血染めのボロ切れだった。
「お前が、ダオスを殺したのか?」ミトスは感情を堪える。
「ああ…でも確かお前ら啀み合ってなかったか?えー…ミトス…だったかな?」
ティトレイは鼻をポリポリと掻く。明確な意図を乗せて。
「僕の事なんかどうでも良いよ。…剣を寄越せ」
ダオスへの意識をコントロールすることに必死で、ミトスは彼の意図に気づかず、本題へと乗り出した。
「剣なら後ろにもってんじゃん…ああ、それとも…」彼は自分のサックから、それを出した。
「これのことか?」
「アイスニードル!!」
ミトスが瞬間的にアトワイトを翳して晶術を放つ。構成された何本もの氷槍が彼に牙をむく。
ここにロイド達がいないと分かった時点でもう相手を騙す必要がない。
どうにも、まさかエターナルソードを持っていたラッキーな愚か者がいるとは、
ましてやそいつが自身の愉しみを、ダオスを勝手に殺したというのであれば、生かす理由もない。
あいつは姉様の前で頭を垂れて惨めに無様に死ななきゃいけない存在なのだ、それを勝手に。
彼は何も表に出さず、素早く地面に手を当てた。
「生えろ」彼の目の前だけにその植物…カレギアのノースタリア・ノルゼン地方にしか生えない
氷割り草が次々氷槍に突き刺さって行く。術が終わったのを確認して、彼は立ち上がった。
「俺を氷で殺すなら、あいつ以上の氷で来な」役目を終えた草が一気に萎えてゆく。
「…黙ってその剣を渡せ。さもなくば…」ミトスはその苛つきを押さえ、冷静に‘説得’を試みた。
見る限り戦闘スタイルは拳と弓…剣よりも近い間合いと剣よりも遠い間合いを得意として、
何よりもさっきの異能、魔術でも晶術でも無い技。どうやらかなり相性が悪いようだ。
(どうする…あちらの体になるか?)そっとミトスの手が首輪に伸びる。無機質な金属で出来た首輪。
ミトスは別に首輪を解除したいと考えてはいない。ただ、どうしても今後のために首輪の問題は避けられない。
ミトスは自身の戦力分析を行う。紋無しエクスフィアによって心を封じたアトワイトは今や
どんな晶術も使えるほどにこちらとシンクロしている。精神体であるソーディアンにはエクスフィアの性質が
よく効くようだ。外さない限りは反抗する意志すら芽生えないだろう。
二刀流、晶術、魔術、天使術。ここまで手札を揃えたとはいえ、しかい未だ磐石ではない。
(やはり確実に戦うには高速で発動できる高火力技が必要だ…)
どんなに力を得たところで射程の短い斬撃と詠唱の要る術、どうしても
目の前の男や連携を取ってくる相手には対応しきれない。ダオスと同質の技が必要になる。
ミトスもその技を持っている。しかしその為にはユグドラシルの体で無ければ衝撃に耐えられないのだ。
ミトスはこの島で一度もそちらの体にはなっていない。理由が二つある。
まずマーテルへの配慮である。マーテルはミトスが何をして来たかを知らず、ミトスとしては
業の代表例とも言えるその姿になるわけにはいかなかった。
しかしネレイド戦でも彼は決してその姿になることは無かった。条件が足りなかったからである
(ユグドラシルになって、首輪が爆発したら…)
「生えろ」彼の目の前だけにその植物…カレギアのノースタリア・ノルゼン地方にしか生えない
氷割り草が次々氷槍に突き刺さって行く。術が終わったのを確認して、彼は立ち上がった。
「俺を氷で殺すなら、あいつ以上の氷で来な」役目を終えた草が一気に萎えてゆく。
「…黙ってその剣を渡せ。さもなくば…」ミトスはその苛つきを押さえ、冷静に‘説得’を試みた。
見る限り戦闘スタイルは拳と弓…剣よりも近い間合いと剣よりも遠い間合いを得意として、
何よりもさっきの異能、魔術でも晶術でも無い技。どうやらかなり相性が悪いようだ。
(どうする…あちらの体になるか?)そっとミトスの手が首輪に伸びる。無機質な金属で出来た首輪。
ミトスは別に首輪を解除したいと考えてはいない。ただ、どうしても今後のために首輪の問題は避けられない。
ミトスは自身の戦力分析を行う。紋無しエクスフィアによって心を封じたアトワイトは今や
どんな晶術も使えるほどにこちらとシンクロしている。精神体であるソーディアンにはエクスフィアの性質が
よく効くようだ。外さない限りは反抗する意志すら芽生えないだろう。
二刀流、晶術、魔術、天使術。ここまで手札を揃えたとはいえ、しかい未だ磐石ではない。
(やはり確実に戦うには高速で発動できる高火力技が必要だ…)
どんなに力を得たところで射程の短い斬撃と詠唱の要る術、どうしても
目の前の男や連携を取ってくる相手には対応しきれない。ダオスと同質の技が必要になる。
ミトスもその技を持っている。しかしその為にはユグドラシルの体で無ければ衝撃に耐えられないのだ。
ミトスはこの島で一度もそちらの体にはなっていない。理由が二つある。
まずマーテルへの配慮である。マーテルはミトスが何をして来たかを知らず、ミトスとしては
業の代表例とも言えるその姿になるわけにはいかなかった。
しかしネレイド戦でも彼は決してその姿になることは無かった。条件が足りなかったからである
(ユグドラシルになって、首輪が爆発したら…)
そう、その一点だけが、今尚問題だったのだ。
まずルール的に抵触して爆発する可能性、これは除外できる。
シャーリィ=フェンネスがフィギュア化した際首輪が爆発しなかったことを考えると
ある意味にて同質の行為が誘爆を誘うとは考えにくい。
問題はミトスとユグドラシルの首の大きさが違う点である。
この首輪は首と殆ど密着に近いサイズである。おそらく参加者によってサイズが異なるのだろう。
同一人物とはいえ大人と子供のサイズ差では変身によって太くなった首が首輪を圧迫し、
爆発に至るかも知れない。ミトスにとっては大問題である。
シャーリィ=フェンネスが大丈夫だったから、という可能性も無くは無いが。
あそこまで原型を留めない変貌だけでは判断材料としては乏しい。なにせ失敗したら首が飛ぶのだ、
簡単にはいかない。そもそもあいつの首輪がどうなっていたかもよく思い出せない。
なんか肉体が溶けてなかったか?流石に首輪が本当に爆発する物だと知っている以上迂闊はならない。
理想的なのは首輪が魔術によって構成されていて変身しても丁度のサイズに変質する場合、
或いは首輪が物理的に展性・伸縮性が若干ある場合だが…
まずルール的に抵触して爆発する可能性、これは除外できる。
シャーリィ=フェンネスがフィギュア化した際首輪が爆発しなかったことを考えると
ある意味にて同質の行為が誘爆を誘うとは考えにくい。
問題はミトスとユグドラシルの首の大きさが違う点である。
この首輪は首と殆ど密着に近いサイズである。おそらく参加者によってサイズが異なるのだろう。
同一人物とはいえ大人と子供のサイズ差では変身によって太くなった首が首輪を圧迫し、
爆発に至るかも知れない。ミトスにとっては大問題である。
シャーリィ=フェンネスが大丈夫だったから、という可能性も無くは無いが。
あそこまで原型を留めない変貌だけでは判断材料としては乏しい。なにせ失敗したら首が飛ぶのだ、
簡単にはいかない。そもそもあいつの首輪がどうなっていたかもよく思い出せない。
なんか肉体が溶けてなかったか?流石に首輪が本当に爆発する物だと知っている以上迂闊はならない。
理想的なのは首輪が魔術によって構成されていて変身しても丁度のサイズに変質する場合、
或いは首輪が物理的に展性・伸縮性が若干ある場合だが…
「そんなにこの剣がいるのか?」ミトスの思考は目の前の彼によって阻まれた。
「…だったらどうした」やはりリスクを冒せないミトスは二刀を構えて威嚇を強める。
冷静に考えればどんなに時間を稼いだところで向こうは魔剣をこちらに渡すしか活路はない。
あの剣を質にしたところで壊せる代物ではないし、それを失えば殺されること位は
分かっているだろう。この勝負は端から自分の勝ちなのだ、そうミトスは油断した。
「こうすりゃ手っ取り早ぇ」ティトレイは、即座にミトスに背を向け、狙いを定めた。
エターナルソードを、魔剣を未だ夜の中にあった海に投げ込む。
その光景に唖然とするミトス。まったくの予想外のことに体が対応しきれていない。
エターナルソードは放物線を描いて飛び、海の中の砂に垂直に刀身を三分の一ほど入れて突き刺さり、
柄の部分を残して、ゆっくりと水中に身を沈めた。月明かりの御蔭で水中の剣を見ることは苦労しない。
「確か海は禁止エリア、だったよな?海に浸かったらか?海の領域に入ったらか?爆発は」
ティトレイはミトスに尋ねる。内容の割には嫌みのない声色だった。
「お前、覚悟は出来ているんだろうな?」
ミトスは声を震わせて、ティトレイの方を向いた。まさか、海に投げ込むとは。
判定はどうなる?禁止エリアでは無い海は安全なのか?瞬間移動は出来ても飛行は出来ない。
凍らせて…もし海上の空間に入ったらアウトだとしたら…どうする?最後の手段を使うしかないか?
「いいのかあ?俺を殺すと、安全にあれを回収できる奴いないぜ、多分」
ティトレイは腕に絡んだ蔦を伸び縮みさせて笑った。
「もうちょっと恩を返し切れてないんだ…今だけは見逃してくんねぇか?」
彼は別段命を惜しむ気は更々無い。惜しむ感情がない。
だからこそ迷うことなく切り札を海に捨てられる。
策も勝算も無い。そこまで彼が付き従っていた知将との記憶は都合良く出来ていない。
ただ、ティトレイなら守ると決めたなら誰であろうと命に代えて守る。そう彼は思っている。
迷探偵の安易な閃きと、ティトレイのルールに、彼は全てを賭けた。
常に全額BET、命なんか平気で自分任せに出来る。
「…だったらどうした」やはりリスクを冒せないミトスは二刀を構えて威嚇を強める。
冷静に考えればどんなに時間を稼いだところで向こうは魔剣をこちらに渡すしか活路はない。
あの剣を質にしたところで壊せる代物ではないし、それを失えば殺されること位は
分かっているだろう。この勝負は端から自分の勝ちなのだ、そうミトスは油断した。
「こうすりゃ手っ取り早ぇ」ティトレイは、即座にミトスに背を向け、狙いを定めた。
エターナルソードを、魔剣を未だ夜の中にあった海に投げ込む。
その光景に唖然とするミトス。まったくの予想外のことに体が対応しきれていない。
エターナルソードは放物線を描いて飛び、海の中の砂に垂直に刀身を三分の一ほど入れて突き刺さり、
柄の部分を残して、ゆっくりと水中に身を沈めた。月明かりの御蔭で水中の剣を見ることは苦労しない。
「確か海は禁止エリア、だったよな?海に浸かったらか?海の領域に入ったらか?爆発は」
ティトレイはミトスに尋ねる。内容の割には嫌みのない声色だった。
「お前、覚悟は出来ているんだろうな?」
ミトスは声を震わせて、ティトレイの方を向いた。まさか、海に投げ込むとは。
判定はどうなる?禁止エリアでは無い海は安全なのか?瞬間移動は出来ても飛行は出来ない。
凍らせて…もし海上の空間に入ったらアウトだとしたら…どうする?最後の手段を使うしかないか?
「いいのかあ?俺を殺すと、安全にあれを回収できる奴いないぜ、多分」
ティトレイは腕に絡んだ蔦を伸び縮みさせて笑った。
「もうちょっと恩を返し切れてないんだ…今だけは見逃してくんねぇか?」
彼は別段命を惜しむ気は更々無い。惜しむ感情がない。
だからこそ迷うことなく切り札を海に捨てられる。
策も勝算も無い。そこまで彼が付き従っていた知将との記憶は都合良く出来ていない。
ただ、ティトレイなら守ると決めたなら誰であろうと命に代えて守る。そう彼は思っている。
迷探偵の安易な閃きと、ティトレイのルールに、彼は全てを賭けた。
常に全額BET、命なんか平気で自分任せに出来る。
二人の思惑など私には関係ない、と言わんばかりにエターナルソードは海に刺さっている。
彼の安っぽい思惑は、彼の知る以上に、ミトスに効果があった。
何も恐れない彼を前にして、ミトスは剣を下ろすしかなかった。
彼の安っぽい思惑は、彼の知る以上に、ミトスに効果があった。
何も恐れない彼を前にして、ミトスは剣を下ろすしかなかった。
暫く二人の情報交換、というか彼の一方的な陳述が続く。
「成程。随分とおもしろい話だね…東は混迷の一途を辿っている、と」
「ま、信じるかどうかは、お前さん次第だ」
まずミトスが尋ねたのはエターナルソードを何処で手に入れたか、という点であった。
それに付随して彼の口からその前後…大凡今夜の悪夢が始まった辺りからの
情報が人事のように語られてゆく。主体の欠けた主観こそが客観に他ならない。
「俺は瀕死のダオスって奴を始末して、E2から一直線でここに来た。あの剣はそこで拾ったモンだ。
すまねえな。そのダオスとカイルって奴を殺しちまって」
彼はオーバーに両手を広げて、自嘲気味に構えた。
「別に良いよ。ここまで事態が進んでいるなら彼奴なんてどうでも良い。
…もう一度聞くが、本当にクレスって奴は…」
「さっきも言った通り、今は砂の下だ。俺が最後に見たときは眠ったような面だったぜ」
ミトスは虚勢を張る。自身が想定していなかった四軍クレス、デミテル達、ネレイド、そしてダオスの乱入。
予想以上にG3での仕事が捗ったのも納得のいくシュチュエーションだ。
しかしダオス、カイル、クレスの死は、ミトスのモチベーションを下げるには十二分だった。
なんとも拍子の抜けた話だ…自分の手で後悔させてやりたい連中が挙って死んでしまうとは。
玩具を取り上げられたかのように、その残念そうな顔を隠そうともしない。
しかし、ミトスは目の前の男にその残念をぶつける気には成らなかった。
ミトスは彼を胡散臭そうに見つめた。その評価は1つだけ「なにもない」だ。
どんな責め苦を与えたところでこいつは何の感情も露わにはしないだろう、それが分かる。
そもそも怒りや憎しみを抱くにはその対象が必要不可欠なのだが、
どうにも目の前の男にはその値が無いようにミトスは思えた。本当に目の前の男は存在しているのかどうかさえ
疑わしくなっていく。あの何を見るともない無の瞳にミトスは無機生命体に近い物を見た。
ミトスは剣を納め、戦闘態勢を完全に解く。これ以上構えていたらこちらの戦意まで萎えてしまいそうな
予感に襲われたからだ。或いは…
「成程。随分とおもしろい話だね…東は混迷の一途を辿っている、と」
「ま、信じるかどうかは、お前さん次第だ」
まずミトスが尋ねたのはエターナルソードを何処で手に入れたか、という点であった。
それに付随して彼の口からその前後…大凡今夜の悪夢が始まった辺りからの
情報が人事のように語られてゆく。主体の欠けた主観こそが客観に他ならない。
「俺は瀕死のダオスって奴を始末して、E2から一直線でここに来た。あの剣はそこで拾ったモンだ。
すまねえな。そのダオスとカイルって奴を殺しちまって」
彼はオーバーに両手を広げて、自嘲気味に構えた。
「別に良いよ。ここまで事態が進んでいるなら彼奴なんてどうでも良い。
…もう一度聞くが、本当にクレスって奴は…」
「さっきも言った通り、今は砂の下だ。俺が最後に見たときは眠ったような面だったぜ」
ミトスは虚勢を張る。自身が想定していなかった四軍クレス、デミテル達、ネレイド、そしてダオスの乱入。
予想以上にG3での仕事が捗ったのも納得のいくシュチュエーションだ。
しかしダオス、カイル、クレスの死は、ミトスのモチベーションを下げるには十二分だった。
なんとも拍子の抜けた話だ…自分の手で後悔させてやりたい連中が挙って死んでしまうとは。
玩具を取り上げられたかのように、その残念そうな顔を隠そうともしない。
しかし、ミトスは目の前の男にその残念をぶつける気には成らなかった。
ミトスは彼を胡散臭そうに見つめた。その評価は1つだけ「なにもない」だ。
どんな責め苦を与えたところでこいつは何の感情も露わにはしないだろう、それが分かる。
そもそも怒りや憎しみを抱くにはその対象が必要不可欠なのだが、
どうにも目の前の男にはその値が無いようにミトスは思えた。本当に目の前の男は存在しているのかどうかさえ
疑わしくなっていく。あの何を見るともない無の瞳にミトスは無機生命体に近い物を見た。
ミトスは剣を納め、戦闘態勢を完全に解く。これ以上構えていたらこちらの戦意まで萎えてしまいそうな
予感に襲われたからだ。或いは…
ミトスは踵を返して北東を向いた。
「お前の話が本当なら今日、あの城の残党がC3に来る。…あそこに鐘楼があるの知ってる?」
「ああ…そういやあったけな?」
二人は知らない。鐘楼は確かにあるが、その上であの血塗れの演説が行われたことを。
「奴らが来たら、僕は鐘を鳴らす。その剣を持ってお前も来い」
「来ないかも知れないぜ?いや、来たとしてもこの剣置いてくるかもな?」
「それはないね」ミトスは彼の方を向いた。
「わざわざ僕に殺される危険を冒してまでエターナルソードを渡したくない…でもお前は剣士じゃない。
そのうえその剣の真の価値を分かっていない。つまり…お前には剣士の仲間がいるんだろう?
しかも、代わりの大剣を調達する余裕の無い位、何かに焦っている…多分、その剣士が長く持たない。
でもその剣士に死なれる前にやらなきゃいけないことがある…違う?」
ミトスは左手を台座として立ったまま頬杖をつく。この推理が間違っていないなら
目の前の男には仲間がいて、今は別行動中と言うことになる。
「お前はどこの名探偵だよ」冗談と顔が一致してないのが新しい冗談のようで。
ミトスは南北と東に集中して音を探る。反応は感じられないが時間が立てばこちらの不利は明確。
「忘れるな。その剣を持っている限り僕はお前達の位置が分かる。
そして、僕は何時だってその剣を諦めてお前達を殺し、大人しく優勝してやったっていい」
無論これはブラフに過ぎない。精々が近くにいれば気配が分かるといった程度の物だ。
ここで無理をすれば剣は一生禁止エリアに括り付けられる可能性がある。
ここは退いて改めて安全に回収すればいい。そう判断してミトスは安全策を選んだ。
ミトスは先行させた二人と合流するため、その一歩を踏み出そうとして
彼が投げたそれに感づいてキャッチする。内心でその殺気のない投擲が凶器で無いことに安堵した。
「…なんだこれは?」ミトスはそれを見て訝しむ。ミスティシンボルと、それに括り付けられて一輪の花が在った。
「礼は果たさねえとな?」その行為がやはり不似合いで。
「…これの価値分かってるのか?第一この花は?」
「おっさんは形に拘らない質だったからな…俺は別に使わねえし。
その花は、在るところにしか咲かないティートレーイの花」
彼は笑ったような表情をしている。しかしミトスにはやはりそれが不自然なように思えてならなかった。
「花ぐらい添えてやんな。姉貴なんだろ?」人間味とは相も変わらずのかけ離れた虚構。
「お前の話が本当なら今日、あの城の残党がC3に来る。…あそこに鐘楼があるの知ってる?」
「ああ…そういやあったけな?」
二人は知らない。鐘楼は確かにあるが、その上であの血塗れの演説が行われたことを。
「奴らが来たら、僕は鐘を鳴らす。その剣を持ってお前も来い」
「来ないかも知れないぜ?いや、来たとしてもこの剣置いてくるかもな?」
「それはないね」ミトスは彼の方を向いた。
「わざわざ僕に殺される危険を冒してまでエターナルソードを渡したくない…でもお前は剣士じゃない。
そのうえその剣の真の価値を分かっていない。つまり…お前には剣士の仲間がいるんだろう?
しかも、代わりの大剣を調達する余裕の無い位、何かに焦っている…多分、その剣士が長く持たない。
でもその剣士に死なれる前にやらなきゃいけないことがある…違う?」
ミトスは左手を台座として立ったまま頬杖をつく。この推理が間違っていないなら
目の前の男には仲間がいて、今は別行動中と言うことになる。
「お前はどこの名探偵だよ」冗談と顔が一致してないのが新しい冗談のようで。
ミトスは南北と東に集中して音を探る。反応は感じられないが時間が立てばこちらの不利は明確。
「忘れるな。その剣を持っている限り僕はお前達の位置が分かる。
そして、僕は何時だってその剣を諦めてお前達を殺し、大人しく優勝してやったっていい」
無論これはブラフに過ぎない。精々が近くにいれば気配が分かるといった程度の物だ。
ここで無理をすれば剣は一生禁止エリアに括り付けられる可能性がある。
ここは退いて改めて安全に回収すればいい。そう判断してミトスは安全策を選んだ。
ミトスは先行させた二人と合流するため、その一歩を踏み出そうとして
彼が投げたそれに感づいてキャッチする。内心でその殺気のない投擲が凶器で無いことに安堵した。
「…なんだこれは?」ミトスはそれを見て訝しむ。ミスティシンボルと、それに括り付けられて一輪の花が在った。
「礼は果たさねえとな?」その行為がやはり不似合いで。
「…これの価値分かってるのか?第一この花は?」
「おっさんは形に拘らない質だったからな…俺は別に使わねえし。
その花は、在るところにしか咲かないティートレーイの花」
彼は笑ったような表情をしている。しかしミトスにはやはりそれが不自然なように思えてならなかった。
「花ぐらい添えてやんな。姉貴なんだろ?」人間味とは相も変わらずのかけ離れた虚構。
ミトスは、その一言に同類の臭いを、ほんの少し感じ、その分だけ警戒を弛緩する。
「1つ、頼み事をして良いかな?」ミトスはサックから1つの輪を取り出し、彼に投げた。
首輪だった。ミトスはただ演出の為だけにクラトスの首を落としたわけではない。
自身がユグドラシルに変成する為に首輪の圧力実験をする必要があったからだ。
彼は何も言わずに首輪を受け取る。
「お前の蔦でそれを括ってそれを引っ張って見てくれ」
彼は何も言わずに蔓を延ばし、二方向からそれを搦めて引っ張った。
蔓が裂けそうなほどに伸びた瞬間、首輪は音を立てて爆発、ミトスは剪断の判定を見切る。
「…OK、最後に、そのダオスのマント…くれないか?」
ミトスは彼を信じていた、というより疑うべき所がそっくり欠落していた。
ミトスの差し出された手に、ダオスのマントだった布が渡される。
ミトスはマントとしては短すぎるそれをスカーフのように巻いた。
そして、何も言わずに彼にリザレクションを掛ける。
何もかもが予定調和によって存在しているかのようで、ミトスは少し可笑しかった。
「劣悪種に借りは作りたくない」ミトスはそれだけ言って改めて踵を返し、二、三歩歩いて立ち止まる。
「何で殺す?」ミトスは尋ねる。彼は髪の端を女々しく弄る。
「…種族が一つになれば、違いが無くなれば争いが無くなるって思ったことがある。
俺はそれを否定した。そんなことしなくても、気持ちが同じなら俺達はやっていける。そう信じていた」
殺された姉の幻影。しかし今の彼には怒りを定義することも出来ない。
「…分かんなくなった…気持ちって一体何だ?嬉しいって何だ?悲しいって何だ?」
試練に立ち向かった彼の論理は感情と共に喪失した。種族が違ってもヒトの気持ちは同じ、
ならば気持ちとは何か?ティトレイが信じた心とは一体何なのか。
「俺はゼロだ。ゼロの男だ。何にも残ってねえ…」
彼はあの時全てを失った。元より日記が「暇つぶしでしかもタダ」扱いの男など、
最初からゼロかも知れないが。残ったティトレイの体は心を渇望している。
彼が帰りたかったのは、元の世界なのか、それとも「彼」に帰りたかったのか。
ある意味では彼はそれを知るためにティトレイを「被って」いるとも言える。
デミテルの見たかった物を、彼も見てみたのかも知れない。
ある意味で感情そのものであるその光景を。
「1つ、頼み事をして良いかな?」ミトスはサックから1つの輪を取り出し、彼に投げた。
首輪だった。ミトスはただ演出の為だけにクラトスの首を落としたわけではない。
自身がユグドラシルに変成する為に首輪の圧力実験をする必要があったからだ。
彼は何も言わずに首輪を受け取る。
「お前の蔦でそれを括ってそれを引っ張って見てくれ」
彼は何も言わずに蔓を延ばし、二方向からそれを搦めて引っ張った。
蔓が裂けそうなほどに伸びた瞬間、首輪は音を立てて爆発、ミトスは剪断の判定を見切る。
「…OK、最後に、そのダオスのマント…くれないか?」
ミトスは彼を信じていた、というより疑うべき所がそっくり欠落していた。
ミトスの差し出された手に、ダオスのマントだった布が渡される。
ミトスはマントとしては短すぎるそれをスカーフのように巻いた。
そして、何も言わずに彼にリザレクションを掛ける。
何もかもが予定調和によって存在しているかのようで、ミトスは少し可笑しかった。
「劣悪種に借りは作りたくない」ミトスはそれだけ言って改めて踵を返し、二、三歩歩いて立ち止まる。
「何で殺す?」ミトスは尋ねる。彼は髪の端を女々しく弄る。
「…種族が一つになれば、違いが無くなれば争いが無くなるって思ったことがある。
俺はそれを否定した。そんなことしなくても、気持ちが同じなら俺達はやっていける。そう信じていた」
殺された姉の幻影。しかし今の彼には怒りを定義することも出来ない。
「…分かんなくなった…気持ちって一体何だ?嬉しいって何だ?悲しいって何だ?」
試練に立ち向かった彼の論理は感情と共に喪失した。種族が違ってもヒトの気持ちは同じ、
ならば気持ちとは何か?ティトレイが信じた心とは一体何なのか。
「俺はゼロだ。ゼロの男だ。何にも残ってねえ…」
彼はあの時全てを失った。元より日記が「暇つぶしでしかもタダ」扱いの男など、
最初からゼロかも知れないが。残ったティトレイの体は心を渇望している。
彼が帰りたかったのは、元の世界なのか、それとも「彼」に帰りたかったのか。
ある意味では彼はそれを知るためにティトレイを「被って」いるとも言える。
デミテルの見たかった物を、彼も見てみたのかも知れない。
ある意味で感情そのものであるその光景を。
「…今のコレット、人形は少し使い物にならなくなってね?
体だけじゃない、心すら無くなればその苦しみからも解放される…僕の下に来い。天使になれば全てが解決するぞ」
コレットの精神は主殺しで剥奪され、ミトスの思い通りになる人形になる…はずだった。
マリオネットと言うにはあまりにもう動かないのだ。
リアラのときのように率先して危機察知をする気も無ければ警戒する気も無い。
少なくともミトスをリアラと同等の存在と思っていないのは確からしい。
想定とは大分異なっていたがミトスはそれほど重要視していなかった。
犬猫程度に命令が聞ければそれ以上の要求は罰当たりという物だ。ただ労働力が少し足りないだけだ。
その事実はあっても、この勧誘は冗談なのか、本気なのか、ミトス本人にも判別付かぬ茫洋としたもので。
「俺は、お前と行く資格がねえ」彼は応えない。
「それは残念。次に会うときは殺し合いだ」ミトスは歩みを始めた。今度は止まらない。
体だけじゃない、心すら無くなればその苦しみからも解放される…僕の下に来い。天使になれば全てが解決するぞ」
コレットの精神は主殺しで剥奪され、ミトスの思い通りになる人形になる…はずだった。
マリオネットと言うにはあまりにもう動かないのだ。
リアラのときのように率先して危機察知をする気も無ければ警戒する気も無い。
少なくともミトスをリアラと同等の存在と思っていないのは確からしい。
想定とは大分異なっていたがミトスはそれほど重要視していなかった。
犬猫程度に命令が聞ければそれ以上の要求は罰当たりという物だ。ただ労働力が少し足りないだけだ。
その事実はあっても、この勧誘は冗談なのか、本気なのか、ミトス本人にも判別付かぬ茫洋としたもので。
「俺は、お前と行く資格がねえ」彼は応えない。
「それは残念。次に会うときは殺し合いだ」ミトスは歩みを始めた。今度は止まらない。
「さようなら、また会おう」月が彼らを等しく照らす。
「じゃあな」しかし彼らの心に月はない。
「じゃあな」しかし彼らの心に月はない。
月の中、一人歩く少年は思考を進める。
C3の生き残りが1人でも生き残っていれば、
E2、E3の事態が収束次第、残党がクラトスの首から手紙を発見してG3に向かうだろう。
そこで仕込みを見た連中が激昂し、僕への憎悪を滾らせ、ミントとコレットの奪還に来る。
後は連中を誘い込んで一網打尽にしてやればいい。よほど剣が入り用なのか、ティトレイは焦っている。
過半数がもう死んでいる以上、僕の意図が分かっていても用意された狩り場に食いつかないわけにはいかない。
乗ってくるなら最高のタイミングで横槍を入れてくる。
だが、それが分かっていればその状況は此方にとって大きな利益だ。
ティトレイと剣士、北上するE2残党、纏めて葬り去る。あそこならそれが可能になる。
それでお仕舞い、その後は姉様を守れればそれで良い。
その時までゆっくり体を休め、盤石の体勢で迎え撃つ。少なくともE2残党は人質のことを考えれば
強行軍で来るしかない。疲労した連中など物の数に入ろうか。万が一何を思ったかすぐにC3に来たところで
それは奇襲ではなく集団自殺。そこまで愚かでもないだろう。
それまで精々ミントを壊しに壊して、放送でクレスの名前が出た瞬間の絶望の表情を見て殺してやろうか?
暇つぶしには丁度良い。カイルもダオスも居ないのでは少々張り合いが無いくらいだ。
ネレイドも僕が殺すまでに生き延びているかどうか…実に面白くない。
C3の生き残りが1人でも生き残っていれば、
E2、E3の事態が収束次第、残党がクラトスの首から手紙を発見してG3に向かうだろう。
そこで仕込みを見た連中が激昂し、僕への憎悪を滾らせ、ミントとコレットの奪還に来る。
後は連中を誘い込んで一網打尽にしてやればいい。よほど剣が入り用なのか、ティトレイは焦っている。
過半数がもう死んでいる以上、僕の意図が分かっていても用意された狩り場に食いつかないわけにはいかない。
乗ってくるなら最高のタイミングで横槍を入れてくる。
だが、それが分かっていればその状況は此方にとって大きな利益だ。
ティトレイと剣士、北上するE2残党、纏めて葬り去る。あそこならそれが可能になる。
それでお仕舞い、その後は姉様を守れればそれで良い。
その時までゆっくり体を休め、盤石の体勢で迎え撃つ。少なくともE2残党は人質のことを考えれば
強行軍で来るしかない。疲労した連中など物の数に入ろうか。万が一何を思ったかすぐにC3に来たところで
それは奇襲ではなく集団自殺。そこまで愚かでもないだろう。
それまで精々ミントを壊しに壊して、放送でクレスの名前が出た瞬間の絶望の表情を見て殺してやろうか?
暇つぶしには丁度良い。カイルもダオスも居ないのでは少々張り合いが無いくらいだ。
ネレイドも僕が殺すまでに生き延びているかどうか…実に面白くない。
気がつけば、ミトスの周りには誰もいない。ダオスも、シャーリィも、ミントも、スタンも、コレットも、
アトワイトも、カイルも居ない。ミトスは1人だ。
しかしミトスはそれに気づかない。ティトレイが配下になってくれれば、とミトスは一瞬考えた。
なんで来なかったのか。疑問と共にミトスはティートレーイの花を見た。
アトワイトも、カイルも居ない。ミトスは1人だ。
しかしミトスはそれに気づかない。ティトレイが配下になってくれれば、とミトスは一瞬考えた。
なんで来なかったのか。疑問と共にミトスはティートレーイの花を見た。
『ああ…でも確かお前ら啀み合ってなかったか?えー…ミトス…だったかな?』
『花くらい添えてやんな、姉貴なんだろ?』
『俺は、お前と行く資格がねえ』
その事実に今更気付き、その花は何の罪もなく、握り潰された。
『花くらい添えてやんな、姉貴なんだろ?』
『俺は、お前と行く資格がねえ』
その事実に今更気付き、その花は何の罪もなく、握り潰された。
「そういうこと。お前が、あの時…ああ、あいつの仲間は…クレスか」
ミトスは一度だけ振り返る。もう海岸は遙か遠くで、今更戻ったところでもう居ないだろう。
「自分がクレスとお前を分断した」
「今は砂の下、俺が最後に見たときは眠ったような面」
彼は最初から本当のことしか言っていない。推理が正しければクレスは、最初から…
ミトスは萎えた感情が再び鼓動するのを感じる。しかしそれは憎しみと言うより、歓喜。
クレスの顔を見なくて良かった、見たら先走って殺していただろうから。
ダオスもカイルももういない。ならばせめて楽しみは後に取っておかないと。
ミントを壊し、その本性を白日の下に曝し、証明した上で殺す。
クレスを殺し、無限地獄に突き落とした上で、処刑する。
その二つを果たした上で魔剣を得、姉様を取り戻す。
纏めて喰らって愉しみを2倍にも3乗にもしなければつまらない、つまらな過ぎて死にそうだ。
最早ティトレイも北より来る哀れな殉教者共もその過程の添え物に過ぎない。
万が一自分がオリジンに拒まれようと、手段はある。
自分が使えなければロイドに「使わせれば」良い。その為のコレットだ。
そういう野暮ったい話を他人にするような阿呆は劣悪種だろうが神の化身だろうが磔にされて然り。
もしそれすら叶わなければそれでも良い。全てを血で染め上げて終わらせるだけだ。
全く、実に、恐ろしい程、何も問題はない。問題がなさ過ぎてつまらない。劣悪種なんてつまらない。
姉様のいない世界なんてつまらない。つまらない世界なんて滅べばいい。
握った手が開かれ、花びらが風に流されてゆく。人の命のビジュアルの様に。
「…哀れなる劣悪種共よ、」ミトスはスカーフを強く握った。ミトスの体が輝く。
スカーフの中の首が首輪を圧迫する。しかしそれが爆発に至らないことを彼は知っていた。
「私は神の機関クルシスを司る者、ユグドラシル」
呼吸は元から必要ない。仲間はもっと必要ない。
もう恐れる者は誰もいない。姉様さえ居てくれれば負ける気がしない。
ミトスは一度だけ振り返る。もう海岸は遙か遠くで、今更戻ったところでもう居ないだろう。
「自分がクレスとお前を分断した」
「今は砂の下、俺が最後に見たときは眠ったような面」
彼は最初から本当のことしか言っていない。推理が正しければクレスは、最初から…
ミトスは萎えた感情が再び鼓動するのを感じる。しかしそれは憎しみと言うより、歓喜。
クレスの顔を見なくて良かった、見たら先走って殺していただろうから。
ダオスもカイルももういない。ならばせめて楽しみは後に取っておかないと。
ミントを壊し、その本性を白日の下に曝し、証明した上で殺す。
クレスを殺し、無限地獄に突き落とした上で、処刑する。
その二つを果たした上で魔剣を得、姉様を取り戻す。
纏めて喰らって愉しみを2倍にも3乗にもしなければつまらない、つまらな過ぎて死にそうだ。
最早ティトレイも北より来る哀れな殉教者共もその過程の添え物に過ぎない。
万が一自分がオリジンに拒まれようと、手段はある。
自分が使えなければロイドに「使わせれば」良い。その為のコレットだ。
そういう野暮ったい話を他人にするような阿呆は劣悪種だろうが神の化身だろうが磔にされて然り。
もしそれすら叶わなければそれでも良い。全てを血で染め上げて終わらせるだけだ。
全く、実に、恐ろしい程、何も問題はない。問題がなさ過ぎてつまらない。劣悪種なんてつまらない。
姉様のいない世界なんてつまらない。つまらない世界なんて滅べばいい。
握った手が開かれ、花びらが風に流されてゆく。人の命のビジュアルの様に。
「…哀れなる劣悪種共よ、」ミトスはスカーフを強く握った。ミトスの体が輝く。
スカーフの中の首が首輪を圧迫する。しかしそれが爆発に至らないことを彼は知っていた。
「私は神の機関クルシスを司る者、ユグドラシル」
呼吸は元から必要ない。仲間はもっと必要ない。
もう恐れる者は誰もいない。姉様さえ居てくれれば負ける気がしない。
「貴様等に神の慈悲を呉れてやろう」
彼は周囲の草原に誰もいないことを確認した上でエターナルソードを回収後、海岸を歩いた。
元々コレットが気付いたと同じ頃、彼もミトス達を捉えていた。
砂浜に、枯れた雑草が密集している所がある。その名前を「スナカケワラビ」と言い、
動く物や生き物に砂を掛ける性質を持つノースタリア・スールズ地方にしか生えない植物だ。
彼はその辺りの砂を掘り起こす。十回ほど手を動かして、お目当ての人物を発見した。
「まだ生きてたか…」彼は顔を覆ったマントを解いて、掘り起こす。
クレスは余りにも顔がこの島で知れ渡っている。だからこそ、今は完全に隠匿する。
あの時直感した、「この剣はクレスと共に在るべきだ」という確信を信じてみる。
恐らくこの斧では何かが駄目なのだろう。LUCKが下がりそうだ。
根拠無く断定するのがティトレイらしいと、彼は思った。
ティトレイは感性と直感で動かねばならないのだ。
「騙したみたいで気分…ッッ!!!」
彼の口から、紅い液体が水道のように溢れた。中々に馬鹿に出来ない出血量。
「あいつに回復術掛けて貰わなかったらヤバかった…やっぱ、聖獣の力も無限って訳じゃねえか」
彼は己の体力が減衰しているのを感じる。詰まるところ聖獣の力とはフォルスを暴走寸前まで
活性化させるブースターのような物、だから気を抜けば直ぐ暴走する諸刃の剣。
しかしカレギアでヴェイグ達と共に戦っていたティトレイはここまで消耗する事はなかった。
その理由が彼に分かるはずもなく。
彼は先ほど生やした氷割り草を掴む。白い砂には血が紅く染み込んでいた。
元々コレットが気付いたと同じ頃、彼もミトス達を捉えていた。
砂浜に、枯れた雑草が密集している所がある。その名前を「スナカケワラビ」と言い、
動く物や生き物に砂を掛ける性質を持つノースタリア・スールズ地方にしか生えない植物だ。
彼はその辺りの砂を掘り起こす。十回ほど手を動かして、お目当ての人物を発見した。
「まだ生きてたか…」彼は顔を覆ったマントを解いて、掘り起こす。
クレスは余りにも顔がこの島で知れ渡っている。だからこそ、今は完全に隠匿する。
あの時直感した、「この剣はクレスと共に在るべきだ」という確信を信じてみる。
恐らくこの斧では何かが駄目なのだろう。LUCKが下がりそうだ。
根拠無く断定するのがティトレイらしいと、彼は思った。
ティトレイは感性と直感で動かねばならないのだ。
「騙したみたいで気分…ッッ!!!」
彼の口から、紅い液体が水道のように溢れた。中々に馬鹿に出来ない出血量。
「あいつに回復術掛けて貰わなかったらヤバかった…やっぱ、聖獣の力も無限って訳じゃねえか」
彼は己の体力が減衰しているのを感じる。詰まるところ聖獣の力とはフォルスを暴走寸前まで
活性化させるブースターのような物、だから気を抜けば直ぐ暴走する諸刃の剣。
しかしカレギアでヴェイグ達と共に戦っていたティトレイはここまで消耗する事はなかった。
その理由が彼に分かるはずもなく。
彼は先ほど生やした氷割り草を掴む。白い砂には血が紅く染み込んでいた。
「とりあえずこれの煮汁飲も…」
彼が演じているティトレイは、料理人としてこの茎に滋養強壮効果があったことを知っているらしい。
彼が演じているティトレイは、料理人としてこの茎に滋養強壮効果があったことを知っているらしい。
【ミトス=ユグドラシル 生存確認】
状態:TP30% 左肩損傷(処置済み) 天使能力解禁 ユグドラシル化(TP中消費でチェンジ可能)
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、ミスティシンボル
大いなる実り、邪剣ファフニール、ボロボロのダオスのマント
第一行動方針:先遣の二人と合流
第二行動方針:C3村で策の成就を待ちながら休息
第三行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第四行動方針:C3村にやってきた連中を一網打尽にし、魔剣を回収する
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D2→C3村へ
状態:TP30% 左肩損傷(処置済み) 天使能力解禁 ユグドラシル化(TP中消費でチェンジ可能)
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、ミスティシンボル
大いなる実り、邪剣ファフニール、ボロボロのダオスのマント
第一行動方針:先遣の二人と合流
第二行動方針:C3村で策の成就を待ちながら休息
第三行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第四行動方針:C3村にやってきた連中を一網打尽にし、魔剣を回収する
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D2→C3村へ
【ティトレイ=クロウ 生存確認】
状態: HP20%(聖獣の力による消耗) TP0% 感情希薄 ずぶ濡れ 重度の疲労
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック オーガアクス
エメラルドリング 短弓(腕に装着) クローナシンボル クレスの荷物 (鎮静剤入り)
基本行動方針:命尽きるまでゲームに乗る(優勝する気は無い)
第一行動方針:動けるまで休憩
第二行動方針:北の森に行き、クレスの鎮静剤を精製する
第三行動方針:クレスにヴェイグ殺しを依頼する
第四行動方針:ミトスの誘い(鐘と共にC3村襲撃)に乗るか決める
現在位置:E1海岸→C2森
状態: HP20%(聖獣の力による消耗) TP0% 感情希薄 ずぶ濡れ 重度の疲労
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック オーガアクス
エメラルドリング 短弓(腕に装着) クローナシンボル クレスの荷物 (鎮静剤入り)
基本行動方針:命尽きるまでゲームに乗る(優勝する気は無い)
第一行動方針:動けるまで休憩
第二行動方針:北の森に行き、クレスの鎮静剤を精製する
第三行動方針:クレスにヴェイグ殺しを依頼する
第四行動方針:ミトスの誘い(鐘と共にC3村襲撃)に乗るか決める
現在位置:E1海岸→C2森
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:TP40%、善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 禁断症状 気絶 ずぶ濡れ 砂塗れ
所持品:エターナルソード
基本行動方針:ひとまず禁断症状で苦しみたくはない
第一行動方針:?
現在位置:E1海岸→C2森
状態:TP40%、善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 禁断症状 気絶 ずぶ濡れ 砂塗れ
所持品:エターナルソード
基本行動方針:ひとまず禁断症状で苦しみたくはない
第一行動方針:?
現在位置:E1海岸→C2森