どうか、今は安らかな眠りを
曖昧な、包み込むような暖色の光の下で、6人の男女が話していた。
ある少女は酒に呑まれ騒ぎ立て、青年2人掛かりでそれを押さえ込んでいる。
最年長の男性は呆れつつも微笑ましく見守り、最年少の少女はどうすればいいかと少々困惑している。
それを自分も、見守っている。
見慣れた、いつもの情景。旅の合間に見える、平和な景色。
心が安らぐ感覚に、安息という言葉はこういう光景の為にあるのだと思う。
願わくば、この光景が永遠に続きますように、世界にこんな光景がもっと生まれますように。
ぱちり、たった1秒の瞬き。あれ、1人消えている。次期頭領の少女がいない。
おかしいと思い再び瞬きすれば、また1人。切れ目の弓使いがいない。
そしてまた1人と。箒に乗る魔女っ子がいない。
気付けば、自分含め2人だけになっている。
思わずもう1人、所々にペイントを施した最年長の召喚士に尋ねる。
何を言っているんだ? ここには私達以外、他にはいないぞ? 召喚士はさも不思議そうに答える。
ぱちくりと瞬きをする。上手く言葉を呑み込めない。
彼の言葉の意味を理解しようとして、だが彼女の思考は急停止する。
「──」
声は出なかった。
伝えるにも、どう言えばいいのか分からなかったし、信じられなかったから。
自身もよく知る剣士が、召喚士の背後に立ち、歪んだ笑みを浮かべ、時の剣を両手に持ち掲げ、今正に振り下ろさんとしていた。
ある少女は酒に呑まれ騒ぎ立て、青年2人掛かりでそれを押さえ込んでいる。
最年長の男性は呆れつつも微笑ましく見守り、最年少の少女はどうすればいいかと少々困惑している。
それを自分も、見守っている。
見慣れた、いつもの情景。旅の合間に見える、平和な景色。
心が安らぐ感覚に、安息という言葉はこういう光景の為にあるのだと思う。
願わくば、この光景が永遠に続きますように、世界にこんな光景がもっと生まれますように。
ぱちり、たった1秒の瞬き。あれ、1人消えている。次期頭領の少女がいない。
おかしいと思い再び瞬きすれば、また1人。切れ目の弓使いがいない。
そしてまた1人と。箒に乗る魔女っ子がいない。
気付けば、自分含め2人だけになっている。
思わずもう1人、所々にペイントを施した最年長の召喚士に尋ねる。
何を言っているんだ? ここには私達以外、他にはいないぞ? 召喚士はさも不思議そうに答える。
ぱちくりと瞬きをする。上手く言葉を呑み込めない。
彼の言葉の意味を理解しようとして、だが彼女の思考は急停止する。
「──」
声は出なかった。
伝えるにも、どう言えばいいのか分からなかったし、信じられなかったから。
自身もよく知る剣士が、召喚士の背後に立ち、歪んだ笑みを浮かべ、時の剣を両手に持ち掲げ、今正に振り下ろさんとしていた。
視界に広がる黒のスクリーンに、ランプの燭が消え真っ暗闇になった洞窟を思い出す。
あれは…夢か、そう、夢だ。
額の汗を拭う。湿った感触に、幻の世界から闇夜の現実世界への逆行を再認識する。
まだ自分は暗い洞窟の中にいるのだろうかと思う。しかし飴に宿る光は無い。
私はコレットさんに気絶させられて、それから何かひんやりとした空気を感じて──…。
しかし気付く。その冷気、まるでフリーズキールの氷の洞窟のような冷気をはたと感じない。
寧ろ今感じるのは、冷却された空気ではなく、通常の、深夜の澄み渡った空気。
肌寒いのは同じだが、度合いが違う。そもそも感覚的に違う。
そして更に、露出した腕に布のさらさらとした感覚、規則正しい振動が伝う。
布の温もりは分かっても、その向こう側の体温は感じない。
暗闇の中で、自分は誰かに抱えられていると、もう洞窟にはいないと理解する。
それと共に浮かび上がる1つの疑問。
私は、目を開けているのでしょうか?
あれは…夢か、そう、夢だ。
額の汗を拭う。湿った感触に、幻の世界から闇夜の現実世界への逆行を再認識する。
まだ自分は暗い洞窟の中にいるのだろうかと思う。しかし飴に宿る光は無い。
私はコレットさんに気絶させられて、それから何かひんやりとした空気を感じて──…。
しかし気付く。その冷気、まるでフリーズキールの氷の洞窟のような冷気をはたと感じない。
寧ろ今感じるのは、冷却された空気ではなく、通常の、深夜の澄み渡った空気。
肌寒いのは同じだが、度合いが違う。そもそも感覚的に違う。
そして更に、露出した腕に布のさらさらとした感覚、規則正しい振動が伝う。
布の温もりは分かっても、その向こう側の体温は感じない。
暗闇の中で、自分は誰かに抱えられていると、もう洞窟にはいないと理解する。
それと共に浮かび上がる1つの疑問。
私は、目を開けているのでしょうか?
「ああ、起きた?」
耳を伝う凜としたボーイソプラノ。何故だろう、不思議と違和感を覚える。
「どう? 暗闇の世界は。怖い? 何も見えないでしょ?」
先の大人しげな声とは声量は同じ、静かだ。だが秘められたもの、まるで未開封の玩具を開けるのを今か今かと待ちわびる子供のよう。
そこにある狂喜。それが違和感の正体だった。
「ミトス…君?」
「軽々しく僕の名前を呼ばないでよ。紛い物のくせに」
少々の苛立ち。表情は何も見えない。そう、見えない。
ミントはやっと我が身に起きた異常を理解する。暗闇の中には、月も星も幻も存在しない。
「一体…何が!?」
「何が? へぇ、聞く権利があるとでも思ってるんだ?」
規則的な振動が止まり、ほぼ顔に近いだろう首筋でひやりとした感触がした。剣だと察するのは簡単だった。
「そうだね、失明した、とだけ覚えておけばいいよ。具体的な説明より、曖昧な方がいいでしょ? 何があったか、色々想像出来て」
「…!」
分かりきった、しかし認めたくはない宣告に、思わず息を呑む。
上手く状況が理解出来ない。
今まで見たこと、いや、聞いたことの無いようなミトスの声。
自分は今、光を喪失している。なのに、何故彼はこうも声を上擦らせ、うきうきとしている?
この対極の感情は、何?
言いようの無い寒気が襲い掛かる。本当に、彼?
この闇の向こうでミトスがどんな表情をしているかは、分からない。
ミントの記憶に残るミトスは、何かに怯えるように静かだったから。
「…リアラさんは…?」
自分と同じように苦しんでいた少女を思い出す。彼女の声がしない。
耳を伝う凜としたボーイソプラノ。何故だろう、不思議と違和感を覚える。
「どう? 暗闇の世界は。怖い? 何も見えないでしょ?」
先の大人しげな声とは声量は同じ、静かだ。だが秘められたもの、まるで未開封の玩具を開けるのを今か今かと待ちわびる子供のよう。
そこにある狂喜。それが違和感の正体だった。
「ミトス…君?」
「軽々しく僕の名前を呼ばないでよ。紛い物のくせに」
少々の苛立ち。表情は何も見えない。そう、見えない。
ミントはやっと我が身に起きた異常を理解する。暗闇の中には、月も星も幻も存在しない。
「一体…何が!?」
「何が? へぇ、聞く権利があるとでも思ってるんだ?」
規則的な振動が止まり、ほぼ顔に近いだろう首筋でひやりとした感触がした。剣だと察するのは簡単だった。
「そうだね、失明した、とだけ覚えておけばいいよ。具体的な説明より、曖昧な方がいいでしょ? 何があったか、色々想像出来て」
「…!」
分かりきった、しかし認めたくはない宣告に、思わず息を呑む。
上手く状況が理解出来ない。
今まで見たこと、いや、聞いたことの無いようなミトスの声。
自分は今、光を喪失している。なのに、何故彼はこうも声を上擦らせ、うきうきとしている?
この対極の感情は、何?
言いようの無い寒気が襲い掛かる。本当に、彼?
この闇の向こうでミトスがどんな表情をしているかは、分からない。
ミントの記憶に残るミトスは、何かに怯えるように静かだったから。
「…リアラさんは…?」
自分と同じように苦しんでいた少女を思い出す。彼女の声がしない。
「死んだよ。今お前を抱えてる奴に殺されて、さ」
何の躊躇いも無く、第二の宣告。しかも何の悲哀の情も存在せず。
おかしい。何かの間違いだ。
今自分を抱えている人物──容易に想像はつく、コレットだ──が彼女を殺す訳が無い。
今まで一緒にいたのだから嫌でも知っている。コレットはリアラを第一に守るガーディアンだった。
その彼女が何故殺し、彼女が何故殺される?
気付いた時には、嘘です、と言葉が自然に溢れていた。
ミトスは小馬鹿にするように一笑。
「何で嘘をつく必要があるの? 別にもう少ししたら分かることだろ?」
体が強張る。その言葉が正しいのだと、無意識に悟ってしまった。
そう、あの無慈悲な声が、彼女の、リアラの名を呼ぶ。
彼の言葉通り、嫌でもあと数時間すれば分かることだ。それは逃れ得ぬ真実。
目をぎゅっとつむる。暗闇の濃度は何ら変わらない。
「コレットさん…どうして…」
何故コレットがミトスに従っているのか、ミントには想像の余地も無い。
この悲痛な呟きも聞こえているのだろう、しかし紅の瞳の天使コレットは表情を全く変貌させていないのだろうと思う。
記憶には彼女の笑顔が見当たらないから。
「今はもう、そいつは僕に従う下級天使さ。勿論、大事な器でもあるけどね」
冷たい触覚が離れる。ミトスが剣を納めたのだろう。それと同時に彼が冷たく言い放つ。
「…私達を…皆さんを、騙していたんですか?」
失笑が聞こえる。
「騙したんじゃないよ。騙されてたんでしょ?」
頭がくらっとした。目は見えなくとも、視界が揺らぐような感触は確かにある。
「それじゃあ…あの話も、嘘…?」
「1割、ね。C3で姉さまが殺されたのも、殺したのはクレスってのも本当さ。
違うのは、メルディって奴とは共謀してないってことだけ」
全身から力が抜ける。それは安堵によるものとは程遠く。
そう、カイルが正しかったのだ。少年の必死の声を否定して、その結果がこれだ。
今更理解したって遅い。既に後戻りは不可能な所まで来てしまった。
もしカイルをあの時信じていれば…彼は、大切な人を失わずに済んだのだろうに。
信じること、信じ続けること。それが本当の強さだ──このゲームで長く共にした剣士の言葉を思い出す。
だが所詮、それは幻の強さなのだろうか? このゲームでは露に酷似したものなのだろうか?
信じることの何が悪い?
何故、信じて罰が下る?
神よ、貴方は何て残酷な御方なのですか。
何の躊躇いも無く、第二の宣告。しかも何の悲哀の情も存在せず。
おかしい。何かの間違いだ。
今自分を抱えている人物──容易に想像はつく、コレットだ──が彼女を殺す訳が無い。
今まで一緒にいたのだから嫌でも知っている。コレットはリアラを第一に守るガーディアンだった。
その彼女が何故殺し、彼女が何故殺される?
気付いた時には、嘘です、と言葉が自然に溢れていた。
ミトスは小馬鹿にするように一笑。
「何で嘘をつく必要があるの? 別にもう少ししたら分かることだろ?」
体が強張る。その言葉が正しいのだと、無意識に悟ってしまった。
そう、あの無慈悲な声が、彼女の、リアラの名を呼ぶ。
彼の言葉通り、嫌でもあと数時間すれば分かることだ。それは逃れ得ぬ真実。
目をぎゅっとつむる。暗闇の濃度は何ら変わらない。
「コレットさん…どうして…」
何故コレットがミトスに従っているのか、ミントには想像の余地も無い。
この悲痛な呟きも聞こえているのだろう、しかし紅の瞳の天使コレットは表情を全く変貌させていないのだろうと思う。
記憶には彼女の笑顔が見当たらないから。
「今はもう、そいつは僕に従う下級天使さ。勿論、大事な器でもあるけどね」
冷たい触覚が離れる。ミトスが剣を納めたのだろう。それと同時に彼が冷たく言い放つ。
「…私達を…皆さんを、騙していたんですか?」
失笑が聞こえる。
「騙したんじゃないよ。騙されてたんでしょ?」
頭がくらっとした。目は見えなくとも、視界が揺らぐような感触は確かにある。
「それじゃあ…あの話も、嘘…?」
「1割、ね。C3で姉さまが殺されたのも、殺したのはクレスってのも本当さ。
違うのは、メルディって奴とは共謀してないってことだけ」
全身から力が抜ける。それは安堵によるものとは程遠く。
そう、カイルが正しかったのだ。少年の必死の声を否定して、その結果がこれだ。
今更理解したって遅い。既に後戻りは不可能な所まで来てしまった。
もしカイルをあの時信じていれば…彼は、大切な人を失わずに済んだのだろうに。
信じること、信じ続けること。それが本当の強さだ──このゲームで長く共にした剣士の言葉を思い出す。
だが所詮、それは幻の強さなのだろうか? このゲームでは露に酷似したものなのだろうか?
信じることの何が悪い?
何故、信じて罰が下る?
神よ、貴方は何て残酷な御方なのですか。
「クレス…さん…」
「その名前を呼ばないでよ。忌々しい」
大事な、大事な大事な姉の命を奪ったあの剣士。
許せない。許してたまるものか。例え世界中の全員が許しても、僕は絶対に許さない。
そんな奴に縋るように、名前を呼ぶなんて…くそっ…。
そうだ、姉さまがあいつの名前を呼ぶもんか…こいつは姉さまとは違うんだ…!
ミトスは心中で憎悪を散らす。顔には歪んだ表情が浮かぶ。
その形相すら、今のミントには察せられない。コレットは何の反応も示さない。
ふと、ミトスは表情を憎しみから変え、にやりとおぞましく口角を上げる。
あろうことか、それは復讐の対象、あのクレスに似た狂気の笑みだった。
「そうだ。目の前で殺すのもいいかな。痛々しい声だけが聞こえてさ、助けも出来なくて、ただただ見守るだけ…耳は塞がせないよ?」
そうしてミトスは、かつてアトワイトに語り掛けたように、静かに喋り出す。
ミントははっとしたような顔をし、声がする方向へと向く。
「…止めて下さい」
「八つ裂きにして、ばらばらにして、滅茶苦茶にして…最期はお前の手で殺させてあげようか?」
「止めて下さい!!」
必死の懇願を軽々しく捨てるように、またミトスは笑う。
「ま、時間はまだまだあるし…それに、もう死んでるかもしれないしね」
静寂の闇の中で、ミトスの嗤笑だけが響く。
それっきり、ミントは黙り込んでしまった。
約束の地への歩みを再開しながら、ちらりと偽の聖母の顔を覗く。
辛そうな顔はしているのに、涙は流していない。中々に気丈な女だ、ムカつく。
赤い感情が込み上げてくるのが分かった。しかし何かが壁を作り上げ、そして遮断する。
こんな奴が姉さまと似てるなんて。壊してやる。壊してやる!
言いようのない破壊衝動と幻影のせめぎ合いの中で、彼は感じた。
感じた。懐かしい波動を、時の力を。
この感覚、間違いない。オリジンとの契約で授けられし盟約の剣、エターナルソード。
近くにある。裏切り者の息子、もしくは英雄とも呼べない奴は、何処かにあった時の剣との邂逅を果たしたのだ。
方角は西。地図の記憶が正しければ、ちょうど海岸辺りだ。
誰だ? ロイドか、カイルか、それとも──…。
エクスフィアを寄生させた、最早ただの術も引き出せる剣となったアトワイトを携える。
声はしない。ただ、呼吸で硝子が曇ったり晴れたりするように、コアがゆっくりと点滅している。
こいつの精神は既に破壊したのだから、当然だ。
人で言えば植物状態。ただ「生きる」ということだけを維持する哀れな無機。
天才により開発された意思ある最強の携行兵器──それはもう単なる過去の肩書きだ。
大佐という地位も老将ラヴィス・クレメンテの主治医であったことも、今や何の意味も持たない。
せいぜい、その過去が癒しの力を持つ水属性に直結しているだけである。
「その名前を呼ばないでよ。忌々しい」
大事な、大事な大事な姉の命を奪ったあの剣士。
許せない。許してたまるものか。例え世界中の全員が許しても、僕は絶対に許さない。
そんな奴に縋るように、名前を呼ぶなんて…くそっ…。
そうだ、姉さまがあいつの名前を呼ぶもんか…こいつは姉さまとは違うんだ…!
ミトスは心中で憎悪を散らす。顔には歪んだ表情が浮かぶ。
その形相すら、今のミントには察せられない。コレットは何の反応も示さない。
ふと、ミトスは表情を憎しみから変え、にやりとおぞましく口角を上げる。
あろうことか、それは復讐の対象、あのクレスに似た狂気の笑みだった。
「そうだ。目の前で殺すのもいいかな。痛々しい声だけが聞こえてさ、助けも出来なくて、ただただ見守るだけ…耳は塞がせないよ?」
そうしてミトスは、かつてアトワイトに語り掛けたように、静かに喋り出す。
ミントははっとしたような顔をし、声がする方向へと向く。
「…止めて下さい」
「八つ裂きにして、ばらばらにして、滅茶苦茶にして…最期はお前の手で殺させてあげようか?」
「止めて下さい!!」
必死の懇願を軽々しく捨てるように、またミトスは笑う。
「ま、時間はまだまだあるし…それに、もう死んでるかもしれないしね」
静寂の闇の中で、ミトスの嗤笑だけが響く。
それっきり、ミントは黙り込んでしまった。
約束の地への歩みを再開しながら、ちらりと偽の聖母の顔を覗く。
辛そうな顔はしているのに、涙は流していない。中々に気丈な女だ、ムカつく。
赤い感情が込み上げてくるのが分かった。しかし何かが壁を作り上げ、そして遮断する。
こんな奴が姉さまと似てるなんて。壊してやる。壊してやる!
言いようのない破壊衝動と幻影のせめぎ合いの中で、彼は感じた。
感じた。懐かしい波動を、時の力を。
この感覚、間違いない。オリジンとの契約で授けられし盟約の剣、エターナルソード。
近くにある。裏切り者の息子、もしくは英雄とも呼べない奴は、何処かにあった時の剣との邂逅を果たしたのだ。
方角は西。地図の記憶が正しければ、ちょうど海岸辺りだ。
誰だ? ロイドか、カイルか、それとも──…。
エクスフィアを寄生させた、最早ただの術も引き出せる剣となったアトワイトを携える。
声はしない。ただ、呼吸で硝子が曇ったり晴れたりするように、コアがゆっくりと点滅している。
こいつの精神は既に破壊したのだから、当然だ。
人で言えば植物状態。ただ「生きる」ということだけを維持する哀れな無機。
天才により開発された意思ある最強の携行兵器──それはもう単なる過去の肩書きだ。
大佐という地位も老将ラヴィス・クレメンテの主治医であったことも、今や何の意味も持たない。
せいぜい、その過去が癒しの力を持つ水属性に直結しているだけである。
意思なき剣を手に、ミトスは西を見据える。
実力は知らないが、例えロイド達だとしても、今の自分なら負けは有り得ない。
今の? 否、元から1人でも充分にやり合える。何せ僕は古代大戦の英雄。
そもそもそういう問題ではない。今の自分には魔剣が必須なのだ。それをわざわざ見過ごすなんて。
「お前はそいつを連れて先にC3に向かっていろ。僕は後から行く」
姉さまを傷物にする訳にはいかない。
暗黙の了解か、コレットは無言で北東へと歩き出す。
ここはE1。ミトス達はジースリ洞窟を出た後、禁止エリアのG1を、イーツ城を避けながら海岸線に出、そのまま北上していた。
北のD1は禁止エリア。それを敬遠するように、コレットはD2へと向かっていく。
小さくなっていく金色の影を見送りながら、ミトスは波動を辿る。
「…さてと」
思考を巡らせる。
仮にロイド達がいるとしたら、どうしようか。突如消えた僕を怪しむだろうか。
それにしても何故西方に? 僕の考えじゃE2城にてカイル達と結託、南に向かうと思っていたのに。
何かあった、と考えるのが道理か。
仮に考えていたパターン、ロイド達とカイル達が会ったとして。
時間と距離を考えて、カイル達が神の骸を見た可能性は、まず有り得ない。
ということは、時空剣士らしいロイドが元からエターナルソードを持っていた?
好都合だが不都合だ。クラトスの首に潜ませてきた手紙も見ていないかもしれない。
まぁ…父の死に狂ったロイドがカイル達を殺した、ってのも十分考えられるけど。
逆に手紙を先に読むなり後に読むなりしたら、僕は確実に敵扱いだろう。
ましてや洞窟に向かった筈の、しかもリアラがいない自分達を見たら、怪しまれるのは必須だ。
カイルやスタンがいたら間違いなくアウトだ。
だからコレットをシースリ村に先行させた。その方がいざという時の理由は作れる。
…けどまぁ、仮定だし、もしかしたら元からエターナルソードを支給されていた「ラッキー」な他の参加者かもしれない。
それに僕には大きなアドバンテージがある。
夜目の利く、更に天使の力で強化された視力と、この耳さえあれば、状況の把握も容易い。
まずはそこからだ。戦うか、利用するか、奪取するかは、それからだ。
姉の復活という大願の為、ミトスは海岸へと歩き出した。
実力は知らないが、例えロイド達だとしても、今の自分なら負けは有り得ない。
今の? 否、元から1人でも充分にやり合える。何せ僕は古代大戦の英雄。
そもそもそういう問題ではない。今の自分には魔剣が必須なのだ。それをわざわざ見過ごすなんて。
「お前はそいつを連れて先にC3に向かっていろ。僕は後から行く」
姉さまを傷物にする訳にはいかない。
暗黙の了解か、コレットは無言で北東へと歩き出す。
ここはE1。ミトス達はジースリ洞窟を出た後、禁止エリアのG1を、イーツ城を避けながら海岸線に出、そのまま北上していた。
北のD1は禁止エリア。それを敬遠するように、コレットはD2へと向かっていく。
小さくなっていく金色の影を見送りながら、ミトスは波動を辿る。
「…さてと」
思考を巡らせる。
仮にロイド達がいるとしたら、どうしようか。突如消えた僕を怪しむだろうか。
それにしても何故西方に? 僕の考えじゃE2城にてカイル達と結託、南に向かうと思っていたのに。
何かあった、と考えるのが道理か。
仮に考えていたパターン、ロイド達とカイル達が会ったとして。
時間と距離を考えて、カイル達が神の骸を見た可能性は、まず有り得ない。
ということは、時空剣士らしいロイドが元からエターナルソードを持っていた?
好都合だが不都合だ。クラトスの首に潜ませてきた手紙も見ていないかもしれない。
まぁ…父の死に狂ったロイドがカイル達を殺した、ってのも十分考えられるけど。
逆に手紙を先に読むなり後に読むなりしたら、僕は確実に敵扱いだろう。
ましてや洞窟に向かった筈の、しかもリアラがいない自分達を見たら、怪しまれるのは必須だ。
カイルやスタンがいたら間違いなくアウトだ。
だからコレットをシースリ村に先行させた。その方がいざという時の理由は作れる。
…けどまぁ、仮定だし、もしかしたら元からエターナルソードを支給されていた「ラッキー」な他の参加者かもしれない。
それに僕には大きなアドバンテージがある。
夜目の利く、更に天使の力で強化された視力と、この耳さえあれば、状況の把握も容易い。
まずはそこからだ。戦うか、利用するか、奪取するかは、それからだ。
姉の復活という大願の為、ミトスは海岸へと歩き出した。
彼は知らない。
この先にいる人物がロイドではないことを、自分の怨敵であることを、時空剣士がもう1人いることを、仇が同じ時空剣士であることを。
この先にいる人物がロイドではないことを、自分の怨敵であることを、時空剣士がもう1人いることを、仇が同じ時空剣士であることを。
濡れる心。体は動かない、動いてくれない。衝撃が体を侵し、立ち向かう気力さえ抜けていく。
重複する絶望が彼女、ミント・アドネードから活力を奪い去っていくのは容易だった。
ミントは押し黙ったまま、心の中で泣く。
法術士である自分が、迷える少年を救えなかった。
同道する少女を救えなかった。
泣き続ける。
哀れな、あの優しげな金髪の少年を思って。
全てこれが夢であるようにと、今はまだ夢覚めやらぬ夜であるようにと彼女は願った。
静寂と規則正しい歩調は、今だけは心地良い子守歌になる。
眠ろう。次に目を覚ました時は、この悪夢は夢と幻であったと分かるから。
暗闇の向こうには、愛しい人の姿さえ見えない。
自分が目を閉じているかどうかも分からない。
そう、分からないということが分かる。
意識は冴々として、神は残酷だから、尚もこの先の悪夢を見ることを求めているらしい。
重複する絶望が彼女、ミント・アドネードから活力を奪い去っていくのは容易だった。
ミントは押し黙ったまま、心の中で泣く。
法術士である自分が、迷える少年を救えなかった。
同道する少女を救えなかった。
泣き続ける。
哀れな、あの優しげな金髪の少年を思って。
全てこれが夢であるようにと、今はまだ夢覚めやらぬ夜であるようにと彼女は願った。
静寂と規則正しい歩調は、今だけは心地良い子守歌になる。
眠ろう。次に目を覚ました時は、この悪夢は夢と幻であったと分かるから。
暗闇の向こうには、愛しい人の姿さえ見えない。
自分が目を閉じているかどうかも分からない。
そう、分からないということが分かる。
意識は冴々として、神は残酷だから、尚もこの先の悪夢を見ることを求めているらしい。
ミントを抱え歩くコレットの足に、何かが当たる。
かさ、と軽い音。紙のようだ。何となく拾い上げ、読んでみる。
そして何を思ったか、くしゃくしゃのメモを丁寧に畳み、ミントの荷物に忍び込ませる。
見も出来ないのに、読み聞かせることも出来ないのに、まるでそれを免罪符とするかのように。
尤も、それは彼女達の免罪符ではないし、免罪符にしようとした少年は、既にこの世にはいないのだけれど。
かさ、と軽い音。紙のようだ。何となく拾い上げ、読んでみる。
そして何を思ったか、くしゃくしゃのメモを丁寧に畳み、ミントの荷物に忍び込ませる。
見も出来ないのに、読み聞かせることも出来ないのに、まるでそれを免罪符とするかのように。
尤も、それは彼女達の免罪符ではないし、免罪符にしようとした少年は、既にこの世にはいないのだけれど。
【ミント 生存確認】
状態:TP75% 失明(酸素不足で部分脳死) コレットに運ばれている 帽子なし 悲哀
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント ジェイのメモ
第一行動方針:コレットに連れられC3へ
第ニ行動方針:クレスがとても気になる
第三行動方針:仲間と合流
現在位置:D2→C3村へ
状態:TP75% 失明(酸素不足で部分脳死) コレットに運ばれている 帽子なし 悲哀
所持品:ホーリィスタッフ サンダーマント ジェイのメモ
第一行動方針:コレットに連れられC3へ
第ニ行動方針:クレスがとても気になる
第三行動方針:仲間と合流
現在位置:D2→C3村へ
【コレット 生存確認】
状態: 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:苦無(残り1) ピヨチェック
基本行動方針:防衛本能(自己及びミトスへの危機排除)
第一行動方針:ミントを連れC3村へ行く
第二行動方針:ミトスの言うことを聞く
現在位置:D2→C3村へ
状態: 無機生命体化 (疲労感・精神力磨耗無視)
所持品:苦無(残り1) ピヨチェック
基本行動方針:防衛本能(自己及びミトスへの危機排除)
第一行動方針:ミントを連れC3村へ行く
第二行動方針:ミトスの言うことを聞く
現在位置:D2→C3村へ
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP55% 左肩損傷(処置済み) 治療による体力の中度消耗 天使能力解禁
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、大いなる実り、邪剣ファフニール
基本行動方針:マーテル復活
第一行動方針:遠目に状況を確認する
第二行動方針:離脱後、C3村で策の成就を待つ
第三行動方針:ミント・コレットをクレス殺害に利用する
第四行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:E1南西→E1海岸へ
状態:TP55% 左肩損傷(処置済み) 治療による体力の中度消耗 天使能力解禁
ミント殺害への拒絶反応(ミントの中にマーテルを見てしまって殺せない)
所持品:エクスフィア強化S・アトワイト(全晶術解放)、大いなる実り、邪剣ファフニール
基本行動方針:マーテル復活
第一行動方針:遠目に状況を確認する
第二行動方針:離脱後、C3村で策の成就を待つ
第三行動方針:ミント・コレットをクレス殺害に利用する
第四行動方針:考え得る最大効率でミントの精神を壊す(姦淫ですら生温い)
第五行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:E1南西→E1海岸へ