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  • 霧の向こうにある夢の続きが見たい

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

霧の向こうにある夢の続きが見たい

最終更新:2019年10月13日 17:39

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だれでも歓迎! 編集

霧の向こうにある夢の続きが見たい


暗い暗い道の先、そのとある一角に少年と剣の姿がある。
光射さぬ閉ざされた空間、外より明らかに温度の低い、冷凍室のような場所。
それも夜明けと共に温度は上昇しつつあり、壁に付着した白い霜も段々と氷解していく。
ただそれは目には見えない微小な変化であるため、少年には分からない。目が潤んでいては尚更分からない。
心真っ直ぐに彼女を追い求めやって来た少年には、時間の変化は無意味なものだったのだ。
彼女の死と認可によって時を取り戻しつつはあるものの、地面に放り出したままの時計を見る余裕は、まだ彼にはなかった。
だから、時は唐突に訪れた。

「――――――――――諸君」

涙溢れる目を大きく瞠る。一筋流れた。
首を動かして目線を時計に移す。はっきりとは見えないが、6の上に針がある。それで理解した。
スピーカーもどこにもないのに、声はとても鮮明に聞こえてくる。
目を手でこすり涙を拭う。赤く腫れぼったい目で、少女を見た。ダークブラウンの髪と桜色のワンピースが微かな風になびき揺れていた。相も変わらず、胸のオブジェは我ここに在りと言わんばかりに存在を主張している。
リアラの名前が呼ばれる――そう考えた瞬間、少年は再び胸に鋭い痛みが訪れるのを感じた。
ナイフで抉られたかのような、深い深い痛み。
英雄が眠る石を握り締めたまま、両手を胸に当てた。とく、とく、と感じる確かな鼓動。
そこに生と死は両立していた。リアラの死体、これから呼ばれる名、生きている自分。胸の痛み、胸の鼓動。
もちろん痛みは精神的なものに違いない。しかし、その痛みは真に彼から生を奪おうとしたのだ。もしかしたら、それはどんな剣で突き刺されるよりも、ひどく強く感じる痛みだったのかもしれない。
だが――

「……に死亡者の方から発表しようと思う。聞き給え!

 ユアン! カトリーヌ! ジューダス! リアラ! ダオス! デミテル! ジェイ!
 スタン・エルロン! ハロルド・ベルセリオス! リッド・ハーシェル!

 ―――――――――――――――以上10名だ!!」

それを、少年は乗り越えた。
痛みがまた増した。唐突な分、痛みは強かった。それでも、少年は奥歯を噛み締めて堪えた。
ジューダス、どんな時でも助けてくれた仲間。初めて会った時も、バルバトスに負けそうになった時も、それからも、助けてくれてありがとう。
ハロルド、ちょっと危ないけど頼りになる仲間。実験体にされるのは嫌だったけど、もうあの楽しそうな声も聞けないんだね。
スタンさん……父さん。いつでも守ってくれた父さん。あなたがいたから、俺はここにいる。大丈夫、母さんと一緒に見守ってて。
そして、リアラ。また会えて嬉しかった。約束は忘れないから。
また、何時か会おう。

「もう一度、もう一度だけ、死者の名前を挙げる。次は聞き逃すことの無いようにし給え。

 ユアン! カトリーヌ! ジューダス! リアラ! ダオス! デミテル! ジェイ!
 スタン・エルロン! ハロルド・ベルセリオス! リッド・ハーシェル!

 ―――――――――――――――以上10名、残り人数は15名だッ!!」

呼ばれた名の分だけ、色褪せない記憶が蘇ってくる。
惜別の思いは終わった。
けれど、人って不思議だ。涙は枯れ始めたと思っていたのに、また溢れ出してくる。
痛みは悲しみに、悲しみは涙に、涙は嗚咽に変わる。
これで最後だから、と泣くのは甘いのに他ならないだろうか。否、彼は英雄の息子である以外はただの少年なのだ。その点を考慮せずに指摘するのはあまりに忍びない。
泣き虫と言われたっていい。ただ、今は泣き続けるだけだから。

少年の名は、カイル・デュナミス。



『……大丈夫か、カイル君』
ようやくすすり泣きに落ち着いてきた所で、カイルが持つ父の剣、ソーディアン・ディムロスは問い掛ける。
「……はい。俺は大丈夫です」
カイルは小さく頷き、静かに、力強く言うと、涙を拭いた。その奥の瞳は、少し成長した大人の瞳のような気がした。
立ち上がり、先程ぶち撒かした荷物の元へと歩み寄る。
まずは尚もちろちろと燃え続ける松明を拾い上げ、荷物の1つ、配給品のカンテラに火を移した。
光が広がり視界に入ったマントと籠手、姿形や色は違くとも、何故かあの城で見た……父さんを殺した、あの剣士の姿を思い出した。
笑みよりも、あの雨の中の苦しそうな表情が印象的だった。
だからと言ってあの人に同情する訳ではない。あの剣士は父さんを殺した、敵だ。
だからと言って狂気に捕らわれる訳ではない。それではミトスと同じになってしまう。
きっと憎しみに負けたら、自分も父さんや母さん、リアラや皆を復活させる為に人殺しになってしまうのが容易に想像出来た。
先程の、ベクトルは違えど根本は同じだった行為が、それを物語っていた。
ただ、この2人に共通するのは、倒すべき敵だというだけ。戦いは辞さない。自分は皆の為に生きなければいけないのだから。
それらをサックへとしまい込み、他に散らばった鍋の蓋やボトルの水、食糧、リアラの荷物、そしてクラトスが眠るエクスフィアも入れていく。
そして地図に手を触れた瞬間、あ、と明らかに良い感情が込められていない呟きを発した。更には体が硬直している。
意味がすぐ理解出来たのか、ディムロスはやれやれといった様子で1つ溜息をつく。
『9時にF5、12時にD4、15時にC5、18時にB3だ』
ぎくりとカイルの体がぎこちなく動いた。
「な、何で分かったんですか?」
『泣き腫らしている中では流石に聞いていないだろう、と思ったのでな』
「あ、そっか!」
『……納得する所ではないと思うのだが』
先程成長したと言ったのを撤回したくなるような反応だが、今回それは置いておく。その代わりまたディムロスが溜息をつくだけである。
ディムロスは、どことなく今は亡きマスター、スタンとこの少年に似た物を感じていた。どこかとぼけている辺りなど実に似ている。
しかし彼の息子であるという事実には辿り着かない。しかしどこか引っ掛かる。何処かで、何か聞かなかったか? カイルとスタンの繋がりを。
そんな彼の思考もお構い無しに、カイルはしまってしまった羽ペンを再び取り出し、座ってエリアの囲いにバツマークと時間を記入する。
「……あれ?」
『どうした?』
硬質の髪の毛を弄くりながら、どうやら悩んでいるようであるカイルに、ディムロスは思考を止め再び問う。
カイルは未だ地図と睨めっこをしながら小さく唸っている。
「俺、どっか書くとこ間違えたのかな?」
そうは言っても、今の自分の発言を認めた訳ではなかった。
今までの放送で聞いてきた分の禁止エリアはしっかりと書き込んでいる。第3回の放送もコレット達と一緒に確認したのだ、間違いはないだろう。
しかし、どう見てもおかしいのだ。何でこんなことするのか、と仲間内からも馬鹿と言われるカイルでさえ疑問に思った。
氷が溶けて濡れつつある地面にカンテラを置いたことで、更に地面は濡れていた。片手に地図を、片手にペンを持ち地図を照らす。
だが腰に差された今のディムロスの位置では地図はよく見えない。
「このままじゃ東に行けなく……」
『? 地図を見せてくれ』
そう言われ、初めてディムロスが見えていないことに気付き、ペンを持った手でディムロスを抜いた。
松明の赤い光に照らされた地図には、丁度中央部辺りにバツ印の縦のラインが完成していた。
『……分断か』
ディムロスは静かに呟いた。
「でも、こんなことしたら……」
『そう、下手したら全員死ぬのが容易に想像出来る』
24時間以内に誰も死ななかったら、全員の首輪が爆発する――もし東西に1人でも分断されたら、そのルールが発動する可能性は極めて高い。
仮に東西に1人ずつ残ったとして、どちらかが禁止エリアに入るか、首輪を解除するなりすれば、まだ可能性はある。しかし前者は結局死ぬ訳だし、後者はその方法すら分からない。
つまり、東西に分かれたらほぼアウトだ。静かに、迫りくる死を待たなければならない。
誰か1人になるまで殺し合い続けるこのゲームで、何故こんなことをするのか。
『単純に考えれば、どちらかに人が固まっているということだろう。そうすれば会場が狭まることになり、殺し合う確率は大きく上がる。逃げ場も無くなる』
「固まってる……」
そうしてカイルは珍しく考え始める(いや、こう言っては語弊がある。彼はいつも考えているのだが、導き出される解がどこか1本ネジが取れているだけなのだ)。
あの城に何人いた? 少なくとも、かなりいた。ロイド達は確か4人パーティだったし、それからあの剣士も来た。自分達も合わせれば、それだけで7人だ。
ディムロスに名簿で確認していこうと言われ、地図を置いて取り出した。その前に死亡者に線を引いた。やっぱり気分が悪い。
知っている限りで、E2城で死んだのは3人。つまり、西にいる確率が限りなく高いのは、まず4人だ。
『私は元々東にいた。グリッドとヴェイグ、この2人と西に来て……1度E2に行く前に、ミトス達と会った』
「! 本当……ですか!?」
初めて聞く事実に、思わずカイルは手のディムロスの方に向き、声を荒げた。含まれた意味は「それならどうして」。
ディムロスは自分の体温が急低下していくのを感じた。当然、精神的な意味として。
『……すまない。私はあの時、アトワイトからメッセージを受けていた。聖女達の血は注がれ女神咲く、と。私があの時……』
あの時、ミトスの元に向かえば彼女は助かったかもしれない――そう言おうとしたが、言葉自体が両腕を広げ立ちはだかり、声は塞き止められた。
言った所でどうにもならないからだ。彼女は既に死んでいる。仮定法過去で話した所で、それはカイルをまた追い詰めるだけだ。
そのカイルはリアラの亡骸の方へと向いている。聖女という言葉は正に彼女に相応しい。聖女の血は注がれる。突発的な犯行ではなく、計画的な犯行。
悄愴とした表情で、見ているのも辛い。しかしそれを見ることが自分への罰なのだと、ディムロスは思った。
だが、彼が考える予想外の行動に、カイルは出た。首を横に振ったのである。
「あなたを責めることなんて出来ません。悪いのはあなたじゃなく、ミトスです。ううん、それよりも……リアラと一緒に行かせた、俺が悪いんです」
自虐的だな、と自分でも思う。だが、リアラを守れなかった原因は、何よりも自分にある。
ミトスの危険性に気付いていながら、考えることを放棄し一緒に行かせてしまった自分に。
父さんを守ると決めながら、守れなかった自分に。
2人を決して掛けてはならない命の天秤に掛け、結局どちらも手放してしまった自分に。
自分は何て無力なんだろう。
けれど。
「……過去は変えられない。変えちゃいけない。ただ、前に進んでいくだけです」
自分に力が無かった過去は、認めなくてはいけない。
そうしなければ、また……ずっと、同じことを繰り返すだけなのだから。
この少年が背負っている物を考えると、ディムロスは胸が痛むのが分かった。
両親を既に失った天涯孤独の身で、更には仲間や愛する人を失ったのだ。その痛みは、想像するに難い。ただのこの同情の痛みより、余程痛いのだ。
先程死のうとするカイルに自分はああ言ったものの、結局それは彼の痛みを理解していない人間の言葉だったのだと、ディムロスは思った。痛みはその人にしか持てないのだから。愛する人を失った経験など、自分にはない。
それをたった15の少年が受け入れたというのだから、やはり彼は強いと思う。重く伏せられた双眸をその象徴として。
それに、彼の言葉に励まされいる自分がいる。

「続けましょう、ディムロスさん」
『……そうだな。グリッドとヴェイグの名は呼ばれなかったから、まだ西にいると考えていいだろう。そしてE2城の砲撃手……ヴェイグの話ではティトレイ、といったか。……奴もE2城にいたことを、君は覚えてるか?』
首を振り、否定の意を示す。
『君を突き飛ばしたのが、恐らくティトレイだ』
スタンが倒れている時、カイルが突き飛ばされた時、彼は変動する視界でティトレイの姿を見た。正しくは、やけに緑一色の影を見た。
名簿を見る限り、当て嵌まるのがティトレイ・クロウという人間しかいないため、確定しているように話しているだけである。
しかしそう言って、ヴェイグは説得に失敗したのだと思った。そうでなければ城に来てまでカイルを突き飛ばすような真似はしないだろう。
今は離れたヴェイグの心持を考える。少ししか行動は共にしていないが、不器用な奴だとは分かっている。
友人と殺し合うなど辛かろうに。それでもあいつのこと、自分の気持ちを無理矢理にでも抑えていることだろう。
仲間と戦う辛さは、リオンと戦ったスタンを思い出せば、嫌とでも分かる。
しかし今はその感情を心の隅に置いておき、あくまで放送のことを考える。
『更に、私が西に向かう時、東に残る連中と後でこの洞窟で合流することになっていた。その内の1人がまだ生きている』
カイルは思わず顔を顰めた。その内の1人が、まだ。逆に言えば、その内の誰かが死んだのだ。
そう言いたげな彼の顔を見て、ディムロスはまたも失言だったと思い、しかし内容を答えるのを躊躇った。
彼が知らない人物ならこんな風に迷う筈がない。ただ、その人物が彼にとっても自分にとっても、親交のある人物だったのである。
自分は彼の死神だと自嘲する。実に彼に関わる人物、自分が関わった人物が死んでいると思う。これ以上彼を傷付ける理由も必要もない。
しかし思いは脆く、いやそれよりも強いものに、発言を求めるカイルの強い瞳に折れてしまったのは、彼の方が先だった。
『……ハロルドだ。その内で、死んだのは』
「ハロルドと一緒だったんですか!」
その語勢の強さに、ディムロスは今度こそ叱責されるのを覚悟した。
全く以て立場が逆だ。自分が子供のようではないか。
だが、聞こえてきた言葉の響きは、実に静かなものだった。そっか、と彼は確かに言った。
カイルはどこか嬉しそうな、しかし寂しそうな表情をして、地を見つめていた。氷は氷と呼べない程に薄すぎて、何も映っていない。
「ハロルドが死ぬって、何か想像つかないな。実は何処かで生きてたりして」
そんな呟きも、ただ自分がそう望んでいるだけで、叶いはしない空しい夢なのだと分かっていた。今は氷に仲間の影を映す。
勿論ミクトランの言葉が正しければ、死んだ仲間を皆復活させることも可能なのだろう。しかし、カイルはその選択肢をとうに捨てていた。
結局、また誰かに甘えて縋ってしまうことになる。自分が決めた「生きる」ということに背くことになる。それでは意味が無いのだ。
ひゅう、と流れ込んできた風が鳴る。よく誰かの泣き声に聞こえると言われる奴だ。何となく、その誰かはついさっきの自分に似ている気がした。
ただ今に思うのは、生きてて良かったということ。あの時死んでいたら、それこそ先に逝ったロニやジューダスやハロルドに馬鹿野郎と言われていただろう。父さんにも、母さんにも言われていたかもしれない。リアラにも言われていたかもしれない。
それはそれで幸せそうだと思った。けれど、それはもう出来ない。現実でも天国でも。
氷は炎に溶けていく。面影の像も歪んでいく。
ディムロスは拍子抜けしながら、だが記憶に残る少年が少し大人びた姿に、ふっと笑みが零れて出た。
『案外、そうかもしれんな』
以前、「あなたは英雄じゃない」と言ったのは誰だったか。尤も、あの言葉にも影響された自分を思い出して、いつも自分がカイルの下に回るのも不思議と納得がいった。
「……その人はもう西に来てるのかな」
『どうだろうな。私がハロルドと別れたのは、0時よりも前だ。だが……北には行ってはいないだろうと思う』
「どうして?」
『その時、北には敵がいることが分かっていた。みすみす敵の方に向かう理由もないだろう。逃げるのなら、わざわざ禁止エリアを回り込んで北方に行くよりは、南に行った方が早い。合流の約束もあったしな』
何よりも、その敵は死んでいない。放送で呼ばれなかった。
放送で名前が呼ばれた、呼ばれなかっただけでは、何が起きたのかはてんで分からない。
「じゃあ、やっぱりその人も西に?」
『既に来ているのなら、半数近くが西にいることになる』
最初の仮定した4人に、ヴェイグとグリッド、ティトレイ、東から来る1人。占めて8人。しかし、イーブンでは駄目だ。寧ろ1番駄目だ。
「ミトス達は? ここに行くって言ってたのに」
『私が会った時も、この洞窟に行くと言っていた。……彼女の遺体があることが何よりの証拠だ』
コアクリスタルを暗闇の中で光らせ、ディムロスはリアラを一瞥する。少し笑ったように見える顔が彼にとってはまだ救いだった。
『問題はそれから何処に行ったか、ということか。生憎、ここは橋も近い。東に行った可能性も捨てきれないだろうが……』
そこでディムロスは口ごもった。腑に落ちない。東西に均等に分けるため、分断するというのか? 元から優勝などさせる気はないのか?
おかしい。それなら最初のあの広間で話はつく。どうせなら歴戦の強者を戦わせ楽しもうとでも?
更におかしい。それなら「あれ」の説明がつかない。ただ楽しむのが目的なら、今回のミクトランの采配は失敗だ。だから失敗を成功にせねばならない。
ディムロスがひたすら考え黙り込んでしまい、仕方なしにカイルは名簿を見つめていた。そこにはまだ線の引かれていない、ミントとコレットの姿があった。
「ミントさんとコレット……無事かな」
『……共犯、ということも考えられないか?』
ディムロスはカイルの切とした呟きに気付き、思考を中断させ重く篭った口調で返す。
カイルは一転驚いた表情で、しかし微かに怒気が混ざった表情でディムロスを見つめ返す。
『意地の悪い聞き方だとは思っている。しかし、そうでなければ、何故彼女だけが死ぬことになるのだ?』
「……でも! ミントさんは悪い人じゃない! 泣いてる俺を諭してくれたんだ。あんな優しい人が悪い人な訳ない! コレットだってずっとリアラを守ってくれたんだ。俺はミントさんもコレットも信じたい」
カイルはぎゅっと強く、ここにいないミントの帽子を握り締め答えた。
勿論、今カイルが持ち得る情報を掻き集めれば、ミントがミトスとコンタクトを取っていたということは否定出来る(残念ながらコレットについては難しい。そもそもその場で寝返ったのなら話は別だが)。
だが、彼にそれを上手く説明する頭はなかった。いや、そもそも彼は論理を組み立てるより感情が先行するタイプの人間なのだ。
今のカイルは、信じようとする気持ちが何よりなのだ。
(信じることで裏切られても、尚信じようとする、か。やはりあの馬鹿に似ているな)
スタンも、どちらかと言えば頭を使うよりは感情論で走る方だった。というよりはお人好しなだけで信じることが第一だったのかもしれないが。
この少年と話している時に起こる心地良いノスタルジー、感覚で言えば微温湯に近いものに浸りながら、彼はそう考えた。
『そうだな、すまなかった。そうなると2人とも脅迫なり何なりで身柄を拘束されている可能性が高い。それならばまだ殺される心配は……』
水の温度は氷点下にまで下がった。再び言葉が詰まる。デジャヴ、否、確実に記憶にある事柄。
同じことを言っていた。あの時ミトス達に会った時、アトワイトからのSOSを受けた時、グリッドに全く同じことを言った。
まだ大丈夫だと高をくくったその結果、リアラは死んだ。
無論これは結果論だ。それに、一般人のグリッドと手負いのヴェイグでリアラを死なせないことは出来たかと聞かれれば、正直厳し過ぎる。一介の兵士と瀕死のソーディアン・マスターただ1人でミクトランに挑むようなものだ。
だが、運命は変えられたかもしれない。逃がすことぐらいは出来たかもしれない。
『……いや、安心してはいられない。ミトスはただ、舞台を変えただけかもしれん』
同じ過ちは2度繰り返さない。戦場での過ちは、死に直結する。
今回は死なずに済んだのだ、それに感謝せずまた自分から死に足を踏み出すような真似をしてはならない。
彼もまた、カイルと同じく、前に進むだけだった。
『だが、その舞台が西にあるのだとすれば……11人がいることになる。ここまで来れば、何かに気付かないか?』
「えっ?」
素っ頓狂な返事はまたディムロスに溜息をつかせた。
『君は最初に言っただろう? このままでは東に行けなくなる、と』
「? 確かに言いましたけど……」
『答えは簡単だ、東に行く必要がないからだ』
えっ、と再びカイルの素っ頓狂な声。
『真っ先に封鎖されるのはF5、つまり、南側だ。西にいると確実視した参加者は、昨夜の戦闘からE2周辺に固まっているだろう。南の橋を封じれば、まず東には行けなくなる。直接橋ではなく、少しずらして時間を稼いでいる辺りなど、全くいやらしい』
「けど、東にならこの山の裏からも行けますよ? 距離は大して変わんないし」
『そうだ。ここはミクトランも苦渋の決断だっただろう。しかし、ミクトランは南を先に封鎖した。……そもそも、何故ミトスはその紙を置いていった?』
「紙?」
カイルは不思議に思いながらディムロスを見遣る。何となくリアラの方を向いているような気がして、カンテラを掴み彼女の元へと近付く。
変わらぬ彼女の足元に、何かがあることにやっと気付く。そこに照らされたのはまず飴型の杖、そして手作りのペンダントと、それらが乗せられた1枚の羊皮紙の手紙だった。
手が震えた。ぶるぶると、怒りに震えた。思わず光を取り落としそうになった程に。


神の磔、心への鍵、天使は魔剣を求め、女神の眠る地へ


「……また、何かする気なんだ……!!」
血文字は凍り、カンテラの光に煌いた後、じわりと溶けていった。そして不気味に赤が滲んだ。文字が生きているようで、まるで誰かの怨念が込められているようだった。
『そう、何かする気だ。置き手紙を置くほどだからな。もう1度聞く、何故ミトスはこの紙を置いていったと思う?』
「それは……見てもらいたいから?」
『ストレートな回答だな』
もう何度目になるかも分からない息をつく。スタンにもこうしていた記憶がある。
カイルはミトスからのメッセージを受けた気分も相まって、少しムッとした気分になった。何となく、ストレート、イコール、単細胞と言われたような気がしたからだ。
『だが、間違いではあるまい。自己満足でもない限り、こんな手紙は置かないだろう。……私が考えるに、誰かに……恐らくロイド達に、この洞窟に来るよう、仕向けてあるのではないか? この手紙と同じ様に』
まさか、と言ったように手紙を見る。
しかしこの手紙自体、何処かに導く招待状のような意味合いがある。考えられなくはない。
『そうすればD4からは遠ざかる。時間は自ずと厳しいものとなる』
「だから、D4を後に……」
『もう1つ、ロイド達はまだここに来ていないな。……もし仮にミトスが東に行ったとして、ロイドがこれを見てからミトスを追いかけることは可能だと思うか?』
ぱっとしない表情でカイルは俯く。分からないという意思の表れだ。
『放送がなければ、可能だっただろう。しかしF5が封鎖されることにより、それは不確定要素となった。……ミクトランがそれを作ると思うか? ショーをわざわざ台無しにしかねないような真似を』
「……ショーだなんて!」
『奴からすればそうだろう。元々、天上人以外は何とも思っていない輩だ』
彼からすれば地上人など塵に等しい存在だ。この殺人ゲームすら、奴には娯楽に過ぎないのかもしれない。「ゲーム」という名の通り。
気まぐれとも、我が侭とも言えるだろう。それで既に30人近くの命が奪われているのだ。もしこれでミクトランが王というものの気分を味わっているのだとしたら、すこぶる気分が悪い。
両名とも黙り込み内なる何かを燃やす中、カイルが顔を顰め、やけに軽めな疑問の音を上げ、沈黙を破る。
「ちょっと待てよ? 何でミクトランはロイドが南に行くだろう、って予想がついたんだ? だって、ミトスが手紙を残してるなんて分からないじゃんか」
『そう、この封鎖はまず全員の位置、そして思考が分からなければ到底成せないのだ。その内の思考を知る方法として……』
意味もなく咳払いし、ディムロスは問う。
『何も言わず、首を振って反応しろ、いいな? 君は盗聴が行われている事実を知っているか?』
大きく1回縦に頷く。
『盗撮は?』
「と、とうさっ……!?」
言っている傍から口に出してしまい、すぐに馬鹿者、と怒声が飛んでくる。
慌てて口を押さえて(と言っても当に言葉は出ているのだが)、どうしようかと彼なりに必死に考える。
もう頭がぐるぐる回っている感覚で、渦潮にでも巻き込まれたような気分だ。自分がアクアスパイクになったような感じだ。
どうにかしなければ、どうにか、どう、ど、怒涛、とう、盗撮、トウサ、とう……
「――父さんから聞きましたっ!」
何とか誤魔化す。ナイスだ俺。
『……父さんとは誰だ、父さんとは』
あながち間違ってもなさそうだが、事実に未だ気付かないディムロスはただ呆れていた。
『とにかく、盗撮は行われている可能性が高い。手紙の存在を盗聴だけで知るのは難しい。とりあえず私との会話は大丈夫だろうが……迂闊なことをしないよう、気をつけてくれ』
こくこくとカイルは水飲み鳥のように頷く。彼にこんなこと言っても無駄な気が今になってしてきた。
ディムロスは以前、首が飛んだ死体を見ている。首が飛ぶどころじゃない。頭部が滅茶苦茶になるのだ。
リオンと同じく、彼もまた、最も近くで見ていた1人だった。美しい顔が裂けていくのを見ていた。
親密な仲であったリオンだからあそこまで取り乱した、とは言えない。誰だってあれを見れば泣き叫びたくなる。恐怖に戦慄きたくなる。
そうして、自分は戦場にいる者として多くを麻痺してしまったのだな、と思った。自分は泣きも恐れもしなかったから。
カイルにとって、彼女の死がこんな安らかな顔であった分、まだ幸せである。それこそマリアンの様な死に様だったら、カイルは自殺どころか、狂っていたかもしれない。
その点だけはミトスに感謝出来る。
「あの、ミクトランは俺達の居場所が分かってるんですよね? で、ディムロスさんの言う通りなら、またミトスは何かしようとしてるんだから……あ、大体も西にいるんだから……西側にいるってことですか!?」
唐突なカイルの声に、柄にもなくセンチメンタルな気分に浸っていたディムロスは、
『間違いない。もし東側が舞台になるのなら、封鎖を行うのは寧ろデメリットだ。恐らく、全員の位置が分かっているからこそ、この封鎖に踏み切ったのだろう』
と、いつもらしく毅然とした態度に戻る。
ミトスは西にいる。そしてまた何かをしようとしている。ただその事実だけが今は全て。
既に眠ったクラトスの言葉が正しいのなら、ミトスは殺された姉を復活させようと、全員を殺そうとしていることになる。
リアラを殺したのも、この置き手紙も、これから起こそうとしていることも、その一環だ。
そしてロイド達に見せ付けるために手紙とリアラを残し、再び誘導する。
恐ろしく、上手い程にミトスの手の上で踊らされている。その事実にカイルは震撼し憤りを感じた。
『それで、女神の眠る地……何か思い当たる場所はないか?』
女神、と言われて彼はフォルトゥナを思い出した。時を越え、歴史を変え運命を変える神。人々の幸せを願う心の化身。この世界にもいるのだろうか?
だが仮にフォルトゥナだとしても、あるかも分からない彼女の影をまだ見ていないカイルには、何処かは分からない。
第一この文面だけでは、何を指しているのか全く見当がつかなかった。せいぜい分かるのは神の磔という所だけだ。
あの時ミトスに振り回されていた自分の姿が思い出される。しかし経緯を思い出しても、彼の姉が女神であるということには結び付かなかった。
『……1度、誰かから情報を得た方がいいかもしれんな。それ以外にも気にかかるキーワードが多過ぎる』
「このままここにいれば、東から人が来るんですよね? それにロイドも」
『いや、確かに合流場所はここだ。だが、裏口から入る場所だと言っていた。ここは正面から入った場所だろう?』
裏口と呼べる場所に、カイルは心当たりがあった。ミントと共に出てきた場所だ。出た時に海ではなく緑が見えたことを覚えている。
『どうする? ここで待ちロイド達に会うのも手だとは思うが。……まぁ、来ると言うのは確定してはいないがな』
「それもそっか。じゃあ先に裏の方に行きましょう。そっちの方が近いし」
何とも彼らしい能天気な回答だった。またそこにスタンの影を見出し、懐かしさに浸かる。
カイルはリアラを見上げていた。白い肌に赤はよく映える。雪原に散る鮮血のように。
何度その胸のものを取ろうと思っただろう。だが、これ以上リアラを血に染めたくなかった。
引き抜いた瞬間に、絶叫と苦痛に歪んだ顔が現れるような気がした。その幻影と幻聴がリアラの体と重なる。
そんな顔を、そんな声を、させたくなかった。死んだと分かっていても、リアラにそんなことをさせたくなかった。
そして、何故ミトスはこんなことをしたのだろうと考えた。自分にこんなリアラを見せ付けて、何をさせたかったのか。
あいつの気持ちなど考えたくも無い。同情もしない。だが、ミトスも姉が殺された時、自分と同じ位悲しかったのだろうと、それだけは思った。
首を横に振り、手に持っていたミトスの手紙をその場に置く。更に自らも「洞窟の裏口にいる」と書いたメモを近くに添えた。
彼の様子をディムロスはぼんやりと見つめている。
『君は……やはり、西に残るのだな』
ディムロスの切とした呟きはやけに重かった。
彼の考え通りなら、西に多くの人物が集結し、混戦乱戦となるのは明らかだ。戦闘が起きれば、死ぬ確率も高くなる。
簡単に生き延びれる程、この世界は甘くない。
正直、多くを失い過ぎたこの少年を戦わせるのは、酷な気さえした。
「俺だけ取り残されたりなんかしたらやですよ」
それでもカイルは小さく笑った。

『君が決めた生きるとは何だ?』
「死んでいった皆の分まで、俺が生きることです」
格好付けな台詞のような気もするが、本当のことだ。
『それならやはり東に行った方がいい。明らかに戦闘は西より少ないだろう。何故、残る?』
暫く包み込む静寂。どちらも口を開けない。水滴の落ちる音がやけに大きく響く。
「俺……やっぱり、どっかではリアラを殺したミトスや父さんを殺したあいつを許せないんだと思います」
先に口を開けたのはカイルだった。元からディムロスは先に喋るつもりはなかった。どれだけ時間が経とうと、カイルの思いを聞こうと決めていた。
根拠の無い予想ではあったが、ディムロスはカイルがこう言うのは分かっていた。
大分落ち着いたとはいえ、憎しみに捕われない程、彼は大人ではない。仲間の死を乗り越えることと、仲間を殺した人物を憎むのは別である。
雨の中のカイルが、根拠と言えるかもしれない。
だが今のカイルの感情は、憎悪であり憎悪でない、不思議な感情だった。滾るものを感じない。その憎悪が、殺戮に向いてはいない。
そう、許せないだけなのだ。ただ復讐のために殺すなど、そんなことは少しも思ってない。ただいつかは立ちはだかる敵だというだけなのだ。
相手を憎むことと、相手を許さないことも別である。
「……戦うべき時からは逃げない。生きるために」
自らの感情を押し込めている訳でもない。胸に秘められた、ミトス達への反発行動である。正義感とも似ているが、彼にそんな考えは1つもない。ただの私情。
ミトスを見てきた、そして似た存在として、カイルは憎悪に身を任せることを良しとしなかったのかもしれない。それではミトスと同じだから。
殺戮に歓喜を見出す、つまり復讐に自己満足するのも、クレスに近い物を感じて嫌だったのだろう。
だがこの2人の存在がなくとも、カイルはこの感情に収まっていただろう。
それが皆のために生きること、憎しみなどには染まらないということだった。
ディムロスはそんな姿を見て、彼の意思を尊重しようと思った。これまでゲームは彼から多くを奪ってきた。ならば次は、喪失の少年に与える方だ。
そして自分は手助けする側になればいい。引っ張るのではなく、後ろから見守るようにして。
それが物として、ソーディアンとして、何よりもスタンの後継者を見届ける者として、下した判断だった。
『生きるためには戦いも辞さない、ということだな?』
1度だけ、自分の意思を確認するように。カイルの決意を確認するように。
「クラトスさんも言ってました。躊躇うな、自分の道を進め、って。どんな時でも、俺は俺の決断を信じます。運命は俺が切り開く」
はっきりとした口調。以上も以下もない。それでディムロスは満足した。
暗い心に堕ちてはいない。カイルの心に宿るのは、彼らしい真っ直ぐな心。狂気の欠片なく澄み渡っている。
歓喜のために人を殺し翻弄するソロンとは違う。愛する者を奪われたが故に皆を殺そうとするリオンとは違う。
大切な人達を奪った人間が許せないだけという、純粋な感情。
今なら、彼に自分を委ねてもいいと思える。スタンと同じように。
ただ、今になって1つのフレーズが気にかかった。
父さんを殺したあいつ。父さん。
その言葉に、ディムロスは違和感を拭えなかった。あの時、自分は父さんとスタンを無意識に結びつけていたが、今疑問を覚える。
何故か昨夜の豪雨のノイズが耳に広がってきて、無音の筈の洞窟のBGMになった。

いや、カイルの友達らしいし。あ、カイルって言うのは……


全ての音を掻き消す雨の音の中、その声だけがはっきりと聞こえる。雨が弱まっていき、あの時聞こえなかった声が聞こえる。

父さん! 眼を開けて父さん! しっかりして父さん!!


そして時が逆行し、雨は霧となり、晴れなかった霧が晴れる。

カイルはね、未来でルーティと、この……スタンの間に生まれるの。

(まさか……いや、君は……!)
もし体があったならば、空からベルクラントが発射されるのを見上げる勢いで、顔を上げていた。それ位早く、ディムロスはカイルを見た。
そしてその時見た。炎の光に照らされた、1つの痣を。治療を受けるスタンにも、確かにあの位置に、同じ痣があった。彼は確信する。
「俺、父さん……スタンさんの、子供なんです。実は」
だとしたら、何て酷い運命だろう。
例え生き抜こうと、この少年に待ち受けているものは、何て皮肉過ぎるものなんだろう。

2つの記憶を持つというのは、何とも奇妙な感覚だった。鏡合わせの間違い探しをするのとよく似ている。
明らかな違いがある筈なのに、どちらも記憶違いではない。どちらも覚えているのだ。
1000年前の天地戦争、まだ自分が生きていた頃。そして現在、ソーディアンとして生きる中。あまりにもかけ離れた時を越えて、同じ姿の少年を見た。
突如現れたバルバトス、既に奪われた筈のシャルティエ、神の眼に突き刺されたのを最後に、記憶は途切れた。
そして、それと全く同じ光景、しかし足りない光景が繰り広げられる。記憶が正しければ自分はその後死ぬ。しかし何故かここにいる。
未来を見せられ、だがそこにはまだ至らない。目の前に待つ死。同じ時を繰り返す、リフレイン。
ひょっとして今まで気付かなかっただけで、気付いていないだけで、自分はこの死の時を繰り返しているのではと思い、1000年生きるよりも果てしない忘却に陥る。
死自体は恐怖ではない。覚悟は決めているのだ。
しかし、カイルはまだ知らない。ただ生きようと、必死に生きようとしている。未来を知らないから。1000年と15年の差は、あまりに違い過ぎたから。
びっくりしました? 突然のプレゼントを親に差し出す子のように、カイルは無邪気な笑みを湛えている。
心が痛むのをディムロスは確かに感じる。
彼は知らない、しかし、今を生きようとするカイルに、その真実を告げることは出来なかった。あまりに、残酷過ぎる。
ただ、ディムロスは「ああ」と、作り笑いを交えて言うしかなかった。


1人の少年と1本の剣が、神の磔から離れていく。

彼は未来を知っているという。しかし、それは運命を享受しているだけだった。
「修正前」の歴史の記憶が中途半端なだけで、「修正後」の先に待つ事象、未来の未来は、何も知らなかった。
それは思い出していないだけなのか、それとも、本当にないのか。

運命は俺が切り開く――
願わくば彼に定められた運命が来ないことを。



【カイル=デュナミス 生存確認】
 状態:HP45%、TP70%、悲しみ、静かな反発
 所持品:鍋の蓋、フォースリング、ウィス、S・ディムロス、忍刀血桜、クラトスのエクスフィア
     蝙蝠の首輪、レアガントレット(左手甲に穴)、セレスティマント、ロリポップ、料理大全、要の紋、ミントの帽子
 基本行動方針:生きる
 第一行動方針:G3洞窟裏口へ向かう
 第二行動方針:場合によっては戦いも辞さない
 現在位置:G3洞窟→G3洞窟裏口

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