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蜘蛛紡ぐ連立方程式

最終更新:2019年10月13日 18:24

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蜘蛛紡ぐ連立方程式



白銀の丘とでも言うべきかこの雪原。白は昨夜の悲劇をいい加減に覆い隠した。
次なる舞台を興す為、それまでの幕間劇を歌うために。

「く……無事か……カイル……」
ようやく定まったヴェイグの意識が一番初めに発した言葉はそれだった。
辺り一面を埋め尽くした流星の雪、その中でぽつんと緑を覗かせる場所があった。
瞬間とはいえ限界出力で氷の防壁を展開し倒れこんだヴェイグは、
見上げる形でその少年、否、戦士を目に入れた。
「ええ、おかげ様で」
カイル=デュナミスはディムロスを腹に掌を当て、剣を受けるかのような構えをしていた。
『上出来だカイル。オリジナルは追々仕込むとして今は晶力を高めるに留めた方がいいだろう』
「……そうですね、それにしても……これが、ソーディアン……」
彼らの周りには濛々と湯気が白く上っている。
ヴォルテックヒートによって展開される熱風が流星を相殺した結果だった。
「無事だったか。……グリッドと、トーマは!?急いで探しに」
立ち上がろうと足に力を入れる前にカイルがその襟を掴み上げ、ヴェイグは中途半端に体を起こされた。
「その前に一つだけ、聞いてもいいですか?――――あんた俺を嘗めてるのか!!」
「何を……」
「俺を守ろうとしてくれたことはとても嬉しいです。でも、俺だって自分に出来ることは知っています!
 今ここは、俺が壁となるべき場所だった!俺はあんたに守られる為にここにいるんじゃない!!」
鼻先が当たるかという距離で放たれるカイルの怒声がヴェイグの鉄面皮を振るわせる。
見兼ねたディムロスがヴェイグに助け舟を出した。
『だが、カイル。お前の晶術の詠唱時間を生み出したのは紛れも無くヴェイグの機転あってこそだ』
「そんなことは分かってる!!」
もう一度吼えてカイルはヴェイグの襟を放し、二人は極めて従順に重力に沿って両膝を突いた。
「また、俺が確りしていないから、誰かが俺の前から居なくなって行く。ミントさんも、クラトスさんも、
 ロニも、ジューダスも、リアラも……父さんも……俺はもう嫌なんだ!!だから……」
そういってカイルは項垂れた。ヴェイグの喉の奥底から何かが溢れようとしている。



違う違うんだ。俺はお前の為にお前を守ろうとしているんじゃない。全てはあの時あの時の過ちを罪を埋める為、
醜いほどの自己愛。お前を守ったところで彼女が蘇る訳でもないのに、それでも俺は俺の下らない自己満足の為に
お前を守らざるを得ない。そうだ、白状してしまおうか、俺だ俺なんです。貴方の母の仇は目の前にいます、
さあ殺して俺を罪から解放してください、苦しくないよう焼き払え火葬しろ、一切の何物をも残すなさあさあ早く

キュン、と一条の光が彼らの頭上を通り過ぎていく。
その三拍の後、豪風が吹きすさんだ。淡く地面に乗った雪化粧が花弁の様に舞い散っていく。
「……俺は、死なない。生きて、生きて為さなければならないことがある。だから、安心しろ」
竦むかのような死の閃光を目の当たりにし、溢れ出そうとする自虐を必死に嚥下する。
そしてヴェイグはそれだけをようやく紡いだ。ああ、まだ死ねない。ずっと、いつまでも死ねない。
もし、罪の償い方が死しか無いのならば、リオンの行動を全肯定するならば、
一度十字架を背負った者は何れ死ななければならないことになる。それだけは肯定する訳にはいかなかった。
ティトレイの為にも、命を惜しむ矮小な自分自身の為にも。
「どうして、見ず知らずの俺を守ろうとするんですか?」
カイルの疑問は至極当然のことだった。
『カイル……今はそんなことを話している時間は』
「いや、いい……ディムロス」
ハロルドとヴェイグの邂逅に立ち会ったディムロスはヴェイグの罪の形を知っている。だからこそ放った言の葉は
ヴェイグ本人によって遮られた。
「……確かに、俺にはお前を守る理由がある。だが、今は話せない」
「なら、せめて俺に何か出来ることはありませんか?」
「時間を、待ってほしい。お前に打ち明ける覚悟を持つまで……待ってほしい」
ヴェイグはディムロスを一瞥した。ディムロスも無言で了承する。
その断罪の時まで口を噤むこと、そして、ヴェイグが望む形で断罪の時が来なかった時の事後処理のこと。

「分かりました。待ちますから、絶対死なないで下さい」
「ああ……約束する」

この世界で最も信憑性の無い約束を自分がするのが、ヴェイグにはとても可笑しかった。



装備を編成し直しながら彼らは現状を考察する。ヴェイグの背中にはトーマから譲り受けたリオンのサックが乗っていた。
漆黒の翼の団員のサックは既にグリッドに返還してある。
「この場所で、ここまでの攻撃。そしてロイドの知識から総合すると敵は間違いなく魔杖を抑えている」
「そんなに凄いものなんですか?……キールって人の話を考えれば残った敵は4人。うち術が使えるのは2人。そして……」
『ミトス=ユグドラシルがC3にいるなら、残った敵はシャーリィ=フェンネスだ』
「その人、強いんですか?」
「俺は直接交戦したわけではないが、ハロルドを殺した相手だ。先ほどの一撃、滄我砲も考えるとトップクラスの強さだろう。
 ジェイから情報を貰っているが何処まで役に立つかはこの目で見ないと分からないな……」
ディムロスを握るカイルの手に力が入った。カイルの中にハロルドを殺した敵を憎悪する心は当然ある。
もう片方の手で、カイルはポケットを弄りクラトスの輝石を表面に沿ってなぞった。
過つことは避けられないことだとしても、もう二度と同じ間違いを犯すわけにはカイルには出来なかった。
死者から責任を引き継いでいる彼は、あの洞窟で得た物全てを糧として本当の意味で次の段階に成長する必要があるのだ。
だからこそ彼はその第一歩として、リアラの埋葬を了承した。

岩盤が崩れた中にあったリアラの遺体は実に不思議だった。
あれだけ盛大に飛散した大小の岩石があったのに、その一切がリアラを避けていた。
偶然だと思いたかったが、もしトーマの言う通りリオンの意志がこの結果を導いたならば。
必然カイルの中に当然の疑問が浮かぶ。
(リオン……あんたは本当に誰だったんだ、ジューダスとあんたはどう違うんだ?)
リアラを傷つけないようにしてくれたのだろうか。だが、彼はリアラのことを知らないはずだ。
そんなことがあるわけが無い。でもこれは偶然なんかじゃない。もしリアラの亡骸が無残なことになっていたら
ちゃんと埋葬するべきという仲間の声にも耳を傾けられなかっただろう。
いや、その前にプリムラ殺しの十字架に潰されて壊れていたか。結局その十字架を背負ったのも皮肉なことにリオンだ。
事実と真実の隔たりは遥かに深く、今のカイルにはその全貌を理解するに至れない。
ただ、最後に斬られた時の澄んだ瞳が、妙に焼きついている。
カイルが自分を殺すことを信頼していたかのよう―――



「カイル?」
「は、はいッ!!大丈夫です!!」
「……?まあいい、カイル。お前は今からE2に行け」
上の空の頭に入れられたヴェイグの言葉はカイルを簡単に紅潮せしめた。頬に張り付いた白色は直ぐに透明に変わる。
「な、何を言っているんですか!?」
「魔杖の入手に失敗し、シャーリィがここにいる以上俺たちの作戦は半分崩壊している。
 急いでキール達を退避させないと完全に詰む。グリッド達の安否は俺が確認するから急いで
「あんたさっきの話もう忘れたんですか!!」
「ディムロス達がグリッドにした話を忘れたのか!俺達は最悪のことを常に想定して立ち回らなければならない。
 ここで蛮勇を見せて無駄死にすることだけは絶対に避けなければならない選択だ。分かるか?」
ヴェイグの言葉は理論半分詭弁半分と言った所だった。
グリッド達の安否よりもまずはカイルを退避させることこそが重要だと思ったからである。
そして、この舞台での希望というべきグリッドとトーマの仇を討とうかという気分も幾ばくかあった。
それほどまでにヴェイグの中ではサウザンドブレイバーが影を引いていた。
「そんな、でも……ディムロスはどう……」
ここまで口走ってカイルはようやく失敗したと感じた。生粋の軍人であるディムロスがヴェイグの案に賛同しないわけが無い。
一度はその融通の利かなさに憤慨し、罵声を浴びせたこともある。

『お前達、仲間を信じることは出来るか?』
「何を言っている?」
『仲間を信じることが出来るかと聞いている』
ヴェイグはその唐突な質問に面を食らったが、カイルは迷い無く答えた。
裏切られたこともあった。出会い頭に攻撃されたこともあった。疑うだけの経験は積んだ。
だけど、その裏側で見出したものもある。この島にも信じるべき仲間達がいることを知った。
だからこそリオンに判定を下せない。真実は分からない。
「それを知るために、俺は仲間を信じます。俺は、俺を辞めてまで生きたくない」
カイルの言葉にヴェイグは頭を掻きながら続けた。
「……俺はカイルのように全てを信じることは出来ない」
全てを無条件で信じられるなら誰だって罪の念を抱かない。
目の前の少年に罪を打ち明けられないのは許してくれると信じ切れないからだし、
親友を信じ切る事が出来ないからこうやってヴェイグは親友への決断を迷っている。
しかし迷い右往左往しながらもヴェイグが歩くことを止めないのは、願うからだ。
「だけど、願おうとは思う。まだ希望は残っていると、いつかは信じられると。
 グリッドも、トーマもまだ生きていると願う」
舞った花弁はようやく運動を止め始めた。

絶妙な間をおいてディムロスは再び口を開いた。
『ならば戦友を信じろ、勝利を願え。トーマから言伝を言付かっている。
 この「状況」に「敵」は誘い込まれた―――ここで奴を潰す。誰一人として欠けることなく帰還する!!』
ディムロスは決して自暴自棄とは違う明瞭な口調でハッキリと言った。
別働隊指揮官としての安定感、そして‘突撃兵’としての威圧感が十二分にあった。



甲高い笑い声が冷え切った大気を満たしている。しかし地面に付着した狂気は雪に食ままれて広がらない。

殺した確り殺した。雪原に埋めてガリガリと削ってやったよこれで死なないはずがあるかあるわけ無いよ。
ほら晴れるよ死体を拝んであげよう、拝んで潰して呑んであげようかな?
とっても素敵。塵屑も私と一緒に抜け出せるんだからこれ程破格のサービスも無いよ。
私はとても気分が良いから大サービスで……あ?

愉悦に歪んだシャーリィの眼が一転怪訝そうに細まる。舞い散った雪花の嵐がようやく止み視界が晴れた。
そこにあった光景はまったく彼女の望んだ光景ではない。
眼を凝らした先には、妙な窪みがあった。白銀の中で異彩を放つ黒茶の色。窪みが隆起する、否。
ムクリと隆起したそれは紛うことなく、
「う……牛ィ……?」

「おう、久しぶりだな、この化け物……」
耳聡くシャーリィの声を聞きながらトーマは立ち上がる。約70cmあるかないかの凹から彼は顔を出した。
「嘘…嘘だ嘘、ウソウソウソ、何で生きてんのよ死んでなさいよ、息してんじゃねえええええええ!!!」
滄我砲発射直後で術もテルクェスも練りきれないシャーリィはUZIを取り出し、トリガーを軽く引いた。
10ッ発ほどが小気味良く発射され、そこそこの集弾を維持しつつ彼に襲い掛かった。
トーマは左腕を高らかに上げ、渾身の一撃を大地に見舞った。そして上がらぬ右手に仕込んだ「それ」に強く願う。
「ストーンブレイク!」
レンズより湧き出す晶力の補助を受けたトーマのフォルスが雪の奥の亀裂した地面に浸透し、直後地面が隆起した。
彼を覆うように地面は猛るがこの程度の即興術では防壁というには心もとない。
ただ、それはこの週域の大地を磁化させていなければ、の話である。
弾丸は磁気力を上乗せして加速的に土の中に突入し、その中から出ることなく彼らとともに磁石と還った。

「導術は趣味じゃねえんだがこの際文句は言えねえか。暫く貸して貰うぜ……リオン」
動かない右手にぐるぐると巻かれた布は、彼の掌とリオン=マグナスの遺品を固定させていた。
「ふ、ふざけんてんじゃないわよ……塵が二度まぐれで生き延びたからって調子に乗りやがってくそ、クソ、糞ッ!!」
シャーリィは目の前で行われるささやかな抵抗に嫌悪を募らせ、下品な獣特有の卑しい笑いに怒りを高ぶらせて視界を狭める。
強大な力を得たシャーリィにとって抵抗したことそのものが許せないのだ。
「畜生が……打ち殺して牛100%挽肉にして……ッ!?」
シャーリィはここでやっと理解する。‘もう一匹はどこに消えた!?’

エクスフィアによって鋭敏になった神経が漸く索敵を開始する。
しかし、怒気によって散々に乱された心では敵の一手に気付くに遅すぎた。
「ピッチャーグリッド振りかぶってェェェェェェ」
反射的にシャーリィが左後方に首を振り向く。ここまで先に首を向けては体を回すのにさらに数手遅れることに気付いたのは
敵が持っているそれを理解してからだった。
「ん投げたァァァァァァァ!!!!」
トーマが土の弾幕を放ったと同時に移動を開始したグリッドは極めてシャーリィの側面を大回りして左後方に回った。
気付かれた、持ち前の危機回避能力でそう認識した瞬間、その位置距離2mほどから迷わず左手を振りかぶった。
そして、渾身の魔球を相手に叩きつけ……

ガシャーン


盛大に叩きつけられた、彼女の足元に。
投げつけられた瓶は景気良く片を飛び散らせほんの少し彼女の「まだ人間の部分」を切り付けた。
「…………四球?ってかある意味、死球?」
流れ出た液体が雪に染み入る時間が妙に痛々しかった。
「ちょ、待て、待て!!ノーカンノーカン!もっかい、もっかいやらせて!!あれだよ今日パン一枚しか食ってないから!
 栄養管理的に問題あるから!!大体二次元キャラに食事という概念を持ち込む辺りナンセンスなんだよ
 飯は食っても排泄しないじゃないか、1日3食どころか一戦闘一食のテイルズでだぞ
 あれだよお前美形キャラは排泄行為をしないんだぞお腹の中やばいことになってるぞ
 そこで重要になってくるのは排泄なしで体内の改善をする手段だ。なあにイメージだけでいい概念として
 お腹が綺麗になっていればいいんだつまり何が言いたいって乳酸菌摂ってるぅ~~~~?」
半ばコミュニケーションの手段として機能不全に陥った言説を撒き散らすグリッド。
当然これは彼女にとって精神不快指数を二次関数的に上昇させるだけだった。
「シ、ネ」
シャーリィはケイオスハートを掲げ、初級古代爪術を唱える。ケイオスハートによって増幅された今なら
ファイヤーボール一撃で消し炭に出来るだろう。消し炭じゃこの煮えたぎった怒りは収まらない。
頭だけ吹き飛ばして体は解体してあげる、内臓も丁寧に晒し物にしてやる。さあ逃げて。その後頭部を確実に吹き飛ばして。

そこでシャーリィが疑問に思ったことが二つ、何故目の前の塵は逃げないのか。
慌てふためいているが尻を捲る気配が一向にない。
そしてもう一つ。この臭いは一体なんだ?下から這い上がってくるこの厭な臭い。
この二つをリンクさせた時にはまたしても手遅れだった。
グリッドの指に嵌められたそれの震えは彼の緊張を如実に表していた。口八丁で瓶を割ってからの時間稼ぎは済んだとはいえ
気付かれたら御仕舞いの奇策に恐れが無い訳ではない。が、彼は一つの事象を認識していた。
敵の手に納められた指輪、フェアリィリング。それは紛れも無く彼の団員が所持していた遺品なのだ。
そして敵は象が蟻の妨害など意に介さないかのようにこんな近距離で詠唱を始めた。
嘗められている。それは実に正当な評価であるが、嘗められていることに対する不快が晴れるわけではない。
「あんまり塵屑嘗めるなよ」
ソーサラーリングから火球が大して狙いを定めずに放たれた。
それは当然だ。あくまで狙いは‘気化したハロルドの発火薬品’なのだから。

一気呵成に彼女の周りが燃え盛り、低温の赤い炎が彼女を飲み込んだ。



少し遡り、彼らが四人で洞窟を調査していたときの話。
「ディムロス、少し話がある。……カイル、少しばかり貸してくれねえか?」
多少不安そうなカイルの表情を察したトーマは快活そうに、ちょっと荷物の分配の打ち合わせをしたいだけだ、とカイルの肩を叩いた。
カイルはリアラを埋葬して貰った手前文句も言えず、渋々トーマにディムロスを貸して未踏地域に向かった。
『何の話だ?』
「あまり他の連中には聞かれたくない。出来るか?」
『で、何の話だ?』
「E3にあの化け物、シャーリィがいる可能性がある」
『先程リオンが虚言を呈した後にそんな話か……根拠は?明確な根拠があるならば別に隠す理由が無いぞ』
「確証なんざなんにも無え……が、プリムラの推理が正しければいるらしい」
ディムロスのコアが鈍く光った。半信半疑よりも頼りない発言だがトーマの発言には特有の深刻さがあった。


「やっぱ納得がいかないわ。無理無理絶対無理」
プリムラは頭を掻きながら不機嫌そうに唸った。
「何が、だ?」
トーマは半ば萎えた様に相槌を打った。どうせ聞いたところでまた唸るだけで碌な返事は返ってくるまい。
リオンは既に相手にする気は無いようで彼らの遥か後方でゆっくり歩いていた。
決して一人だけブーツを装備していないからではない。
しかし、彼女の反応は予想に反していた。
「どう考えても説明が付かないわ。何の為にミクトランは地図を分断したの?」
「お前らが言っただろうが、参加者を西に集めるためだろう」
「それもあるでしょうけど、それだけな訳無いでしょ。少し西側の情報を掴んでいる奴なら充分この意図に気付くわよ。
 そして、幾ら脅そうが直ぐに東に行けなくなる訳じゃない。人数を集めて急いで走りこめば東に逃げることも出来る。
 つまり私達は今のところまだ心理的に既に封鎖された、東にはもう行けないと認識を植えつけられた‘だけ’なのよ……
 こんなものを第一目的として本気で期待する訳がないわ」
首を捻って考えてみる。ハロルドといいこの2人といいどうしてヒューマはこう勿体振るのが趣味なのだろうか?
「……あー、ってことは何か?ミクトランの封鎖‘予備動作’には何らかの即時発動型の実益が目論まれているってことか?」
「いいとこ突くじゃないワト○ン君。それが何なのかは微妙なところだけど」
誰がワトソ○だってかワ○ソンって誰だ、と思うトーマの心中なぞお構い無しに紙の上でプリムラの推理は続く。


“多分、私はシャーリィが怪しいと思うのよ。あのミュータント化が主催者の干渉である可能性も理由の一つだけど、
 実際の根拠は封鎖の‘順番’。
 まず抑えられたのがF5。これが意味する意図は簡単、私達とシャーリィを分断しようとする意思。
 突き詰めていけばハロルドの攻撃によって疲弊したシャーリィへの追撃という選択肢を封じようとする意思がある。
 尤もそれ以前に私達にはそんな余裕は無かったけど。

 そして次のD4、これは少し読み切れないけどシャーリィを戦場に送り込もうという意思、
 或いはシャーリィに対するミクトランのチアコールを本人に認識させようとする意思、この辺りのラインが濃厚だと思う。

 こう考えればB3は自ずとシャーリィを北上させたくないという意思が見え隠れしてくる。
 ミクトランが私達の位置を抑えているのは周知の事実だから、北に移動されると不都合な理由があるのね。

 B3は意味が分からない…いや、可能性はあるんだけど少なくともシャーリィとは関係ないわね、きっと”


トーマはプリムラの筆記を見ていたが今一つ信憑性が無かった。
確かにシャーリィだけに焦点を当てればプリムラの解釈が成り立つのは分かる。
だが、禁止エリアの配列とシャーリィを結びつける切欠に見当が付かないからだ。
これでは唯の妄言以下、少なくとも他人を信じさせるには弱い。

“これがもし、ハロルドの作戦だったとしても?”

その一文はトーマを驚かせるのに充分だった。

“ここからは本当に当て推量になるけど……あの女は1か0のギャンブルをする女じゃない。
 ミクトランがこういう風に並べてくることを読んで保険を掛けていたんだと思う。
 おかげで私達は後ろからの追撃を心配することなくG3に来ることが出来た。
 そもそもハロルドとシャーリィの戦闘の結果によってこの順番は決定されたといってもいい。
 もしハロルドがあっさり負けてF5とD4が入れ替わっていたら、
 シャーリィに追撃されて私達はここで地獄を見ていたことでしょうね”



……冷静に整理してみよう。
①「ハロルドは敗北し、シャーリィは何らかの理由によって北に撤退した」これが戦闘跡から俺たちが見出した結論
プリムラ曰く、これはハロルドがシャーリィに与えた圧力らしい。
②「ミクトランはシャーリィをこちらの追撃から保護し、尚且つ昼までに中央ルートから西側へ戦線投入したい(或いは北ルート潰し)」
曰く、ハロルドとシャーリィの戦闘によってミクトランが後手後手で打った手。
これは①との関係上シャーリィがあまり芳しくない状態まで追い詰められたことを意味する。
(あの拡散した波動から充分考えられることでもあるが)


この二つの線から浮かび上がるのがシャーリィが島の中央で休息しているという可能性なのよ。
いや、これは表現として正しくない……この二つの意思によってシャーリィは休憩せざるを得なかった、というほうが正しい。

結果、シャーリィが選ぶ次の展開は強い指向性を与えられることになる。

「ああ~~~なんか凄い探偵レーダーに感有りだわコレ、絶対裏にもう一枚絵があるわね。何色を選ぼうが絵は揺らがない。
 絵を描いてるのは……糸の主は何処で待ち構えてるのかしら?」
プリムラは特徴的な一本毛をブルブル震わせて、ニヤニヤと笑った。
「裏?イト?何だそれは?」
「憶測で全部を語るのは探偵的にマナー違反だし後にしましょ。
 私の勘が正しかったら……多分、ここでの仕事が終われば厭でも理解するわよ。敵は手強いわよ」
もう裏口は直ぐそこだった。



『で、何か分かることがあったのか』
ディムロスはプリムラの筆記を見ながら尋ねた。
「俺たちの次の目的地は何処だ?魔杖ケイオスハートを手に入れるためにE3に向かおうとしている。……厭な予感がしねえか?」
『真逆』
「正直俺も半信半疑だったが……あんたらと出会うことによって、新たな情報が二つ手に入った。
 そしてこの四つのほとんど無関係な情報は一つの流れを形成する。コレこそがプリムラの言いたかったことなんじゃねえか、って思う」
③E3に恐るべき魔力を秘めた魔杖ケイオスハートが存在している
④シャーリィはテルクェスと言う探査能力を持っている
四つの事象は殆ど無関係、ケイオスハートの所有者だったデミテルはシャーリィと面識はないし
シャーリィはケイオスハートなど知らない。だが、全ては出来過ぎている。
少しの溜めを置いてゆっくりディムロスが口を開いた。
『カイル達が戻ってくる前に結論を済ませよう……お前のいうことは妄想に過ぎないが、それは確かにとても強固な幻想だ。
 ならばこの幻想が意味するところは何だ?』
「もうF5は封鎖された……俺達とシャーリィの魔杖の奪い合い?そんな曖昧なものじゃねえ。詰まるところ」
「『E3でシャーリィと交戦しろ』」
それ以外に無いだろう、と2人ともが判断した。
『魔杖回収は断念するべきだ。こんな死人の妄想に踊らされるのは不愉快だが、最悪の事態になった場合希望の全てが打ち砕かれる』
ディムロスは苦々しく言った。もし全滅すればその後に待っているのは何も知らないロイド達の無常な死。
隊を二つに分けてE2とE3に向かわせるのは? 否定。この少ない戦力を分散させて敵に各個撃破の愚を許してしまう。
ならば兎にも角にもE2の同志と合流し、戦力の再編と今後の方針転換を行うしかない。
「それも折込済み、だと思うぜ。情報の⑤がその意思を砕く」
そう、情報の⑤、ミトス=ユグドラシルがC3に居るという情報がここで効果を発揮するのだ。
もしE2で戦力の合流が出来たならば?魔杖ケイオスハートを手に入れたシャーリィ相手に真正面から当たる愚は冒せないから
撤退を進言するだろう。(会ったことは無いがキールとやらが立てた作戦を考えるとこいつが進言する可能性大だ)
ミトスが北に、シャーリィが東に居るのだから南に逃げるしかない。(ティトレイが南に居るなら既に彼らは死んでいる)
後は馬鹿でも分かる。
既に南西地区は9時の時点で袋小路に追い込まれているのだから残ったマーダー全員と水際での防衛戦になって
ゆっくり戦力を減らして行き、死を待つことになるのだ。それ以前にロイドって奴が業を煮やして内部分裂を起こすシナリオもあり得る。

『既に私達を取り巻く包囲網は8割完成し、状況は最悪の事態一歩手前ということか……ミクトランめ……味な真似を』
ディムロスは地図を眺めながら思考を進めた。東側の情報を持つトーマ達と西側の情報を持つヴェイグ達、
そしてヴェイグ達が知り得なかったミトスの情報を持っていたカイル、
この三つが交わりほぼ全域の構図が見えたことによってバラバラに存在していた点は、
図らずとも線を描き面を形成し立体を顕現させる。
まるで情報そのものが悪意を持っているかのように配列している。
悪意、意思、意図、情報そのものが笑っているような感覚にトーマは先ほどの恐怖を思い出した。
「要は、俺達がここでシャーリィを止めなきゃゲームオーバーってことだ」
『絶望的だな』
「そうでもないぞ? ……ここまで‘妄想’できた俺達はあの化け物相手に先んじて手を打つことが出来る。
 ユアンが、ハロルドが糞ったれなワンサイドゲームに抗った今こそ、俺達に残された最後の好機に賭けることができる。
 ‘やっとあの化け物と全うな勝負が出来る’んだからな」
その眼の中に怯えと怒りを秘めたままトーマは下ひた笑いを見せた。



「そうか……プリムラがそんなことを」
グリッドとトーマは装備品を分配しながらゆっくり歩いていた。一縷の可能性に賭けて魔杖を探す為に、敵を罠に嵌める為に。
「この話はディムロスにしか話してねえ。もし唯のプリムラの勘違いだったらそれで笑い飛ばせば済む話だからな」
「いや、俺は団長としてあいつを最後まで信じる。あいつがそう考えるならシャーリィは‘いる’」
そこでどうして団長って言うかね、とトーマは口の中で悪態を付いた。
「で、具体的には如何するつもりなんだ?」
「これまでの二回の戦闘が俺達にヒントを与えてるぜ。奴は初手を奇襲で撃つことしか考えてねえんだ」
漆黒の翼を襲ったときは水中から近接して飛び道具、ハロルドを討ちに来たときはロングレンジからの(ヴェイグ曰く)滄我砲。
そしてユアンの嬲られ方、遺体を持っていかれたハロルドを考えれば……
「後は敵を徹底的に威圧して惨たらしく痛めつけて戦意を消失させ蹂躙するって所だろうな……俺の経験則からいうと
 こういう奴は後ろにある心理を持ってる」
「心理?」
「恐らく一度相当痛い目を見たんだろうな。自分の優位性が崩れることを兎に角恐れてるタイプだ」
トーマは右手に仕込んだシャルティエのレンズを確認する。
この読みは当たらずとも遠からずである。ダオスとミトスによって散々に討ち滅ぼされたシャーリィが果たして何処まで
その恐怖を胸に刻んだから誰にも分からないから。
「もし魔杖ってのが既に奴の手中にあるなら、その威力を試したくて仕方ないはずだ。初撃は導術、
 怯んだ所を追撃で滄我砲で跡形も無く消すって所だろうな。戦闘にまで段階が進むとは思ってねえだろう」
無論トーマはその魔杖に対面したことが無い。トーマはグリッドとヴェイグが語る言葉を‘信じて’この計画を練っている。
そして、皮肉なことに昨夜真正面で対峙したシャーリィ本人を信じてこの計画が練られていることも否定できない。

「だが、どんな術が来るかも何処から砲撃が来るかも分からないんだぞ?どうやって……」
「だから二手に分かれた。こんだけ距離が離れれば自ずと撃てる術も広域系に限定される。
 威力密度も制限されるから拘束系の術で来る。ジェイって奴のデータによると術の種類はそう多くねえ。
 来るとしたらブリザードかシューティングスターか……凍結系拘束だ。
 そんで拘束した後の滄我砲を確実に一撃で仕留めるために二手に分かれた俺達を同時に収める射線をとるはずだ」
「……お前本当にトーマか?」
グリッドは眼を細めた。こいつ確か馬鹿系のキャラじゃなかったか?
トーマはハロルドの発火瓶でこつんとグリッドを叩いた。
「こんな損な役回りはこれっきりだ。後はキールって奴とディムロスに任せるぜ」
そう言っておどけるトーマには一つの慙愧の念があった。もしあの場所でシャーリィを確り殺せていたのならば、
もう少しまともな物語が用意されていたのではないのだろうか。ハロルドもプリムラもリオンも死なない可能性があったのではないか?
(それはないか。どの選択肢を選んでも‘惨劇は増殖する’ってのが敵の絵らしいからな)
だが、信じることは出来る。ハロルドはここまでをお膳立てしてくれた。プリムラはギリギリの所でその構図の片鱗を読み取った。
だからこそ彼らは最高の状態でシャーリィを‘迎撃’できる。もしくはこれすら敵の思惑かもしれないけれど。
(俺を生かしておいたのは失敗だったなあ……情報戦は完全にお前の負けだぜ、この素人。
 一個一個落ち着いて考えれば穴だらけじゃねえか。グッフッフ……)
ディムロスにはもし滄我砲に変化が無ければ退却しろと言ってある。尤も、その威力を考えれば退却する間もなく死ぬだろう。
トーマが滄我砲をどうにかできなければ初手の段階で負けである。
だが、逆に言えば初手で絶対的優位を確保するシャーリィの基本戦術を砕くのもまた初手なのだ。
考えろ、ハロルドならどうやって計算する?プリムラならどう推理する?リオンならどう思考する?
ヒューマならどう考えるんだ?糞、頭が痛くて仕方がねえ!こんなのはこれっきりだ!!


「トーマ!良く分からんが何かヤバい!!」
グリッドが上を向いて吼えた。おいでなすったか!
トーマはレンズを固定した右手を地面に翳す。まだ勘は取り戻せてないがさっき餓鬼の死体を葬ったときと同じ要領でいけるだろう。
「主人以外に使われるのは不愉快極まりないだろうが俺の知ったことじゃねえ!もっかい力を貸しやがれ!!」
シャルティエのコアクリスタルは布の向こうで淡く光る。
力を貸さない理由は無い。四人の中でたった一人、リオンを理解しようとしたのは彼だけなのだから。
地面に少し大きめの窪みが出来上がる。急ぐな急ぐなフォルスが乱れる。
シャーリィが魔杖に酔ってこちらを過小評価している今なら焦らずとも十分間に合う。
「グリッド、入れ!!」
「お、おう」
グリッドがうつ伏せになって窪みに収まった。
「おい!これじゃ2人は入れないぞ!!どうするつもり……おい、真逆、俺の上に乗る……?」
「第一波を凌ぐにはこれしかねえ。それとも凍死してえか!」
ブリザードにせよシューティングスターにせよこればっかりはヒューマには耐え切れない。
土中とペルシャブーツを装備したトーマ自身でグリッドを堅守するしかない。
「どっちも厭に決まってるだろ!ってか向こうの2人はどうするんだよおい!!」
「ディムロスがいる。奴らを信じろ!一々疑ってたら切がねえんだよ!!この後の話をする。
 第二波も俺がなんとかする。その後俺は姿を敵に見せるがお前は直ぐには出るな。
 俺が目晦ましをするからその後迂回して何とかシャーリィの後方に回れ!限界だと思ったら迷わずその火炎瓶を投げつけろ!
 はずしたら最悪だから地面がいい。レシピ曰く五秒で充分揮発するからソーサラーリングで着火しろ。以上!!」
「肝心なところを「何とか」で済ますの反則だろ!」
「お前の奇跡を信じてるんだよ!むしろお前の奇跡なんか当てにしなきゃならんこの状況に危機感を持ちやがれ!!
 いいか?もう俺達は後がねえんだ!分かったらとっとと奇跡を63553個くらい起こして来い!……来やがった!!」
言い終わるのが早いか、トーマの背中に容赦なく均一に流星のような氷撃が襲い掛かる。
これが水でなくて良かった、確実にトーマの負けが決まっていただろうから。
しかしトーマにそんなことを気にする余裕は皆無だった。背中にひりつく凍傷特有の痒み痛みを歯を食い縛って耐え、
同時に地面の中の鉄分を集め磁化しておく。術で潰せなければ来るであろうマシンガンさえ凌げばやっと活路が開かれる。
「来るぞ、トーマ、肌が荒れてきた!本気でヤバいのが来る!!対策はあるのか?」
「もう少し待て、ギリギリまで引き付けねえと……お前の勘を信じる!発射されたら言え!!」
「だからどうやって止める気だ?あー!!もうくる!直ぐ来る!激ヤバ!!」
「止めるのなんて無理に決まっている……だがな……敵の攻撃が無駄に大きい力なら……」

「キターーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「少し曲げさせて貰う!マグネティィィィィックゲイザァァァァァァァァ!!!!!」


反発力を生み出しあらゆるものを吹き飛ばす障壁を形成するマグネティックゲイザー、
しかし魔杖を手にしたシャーリィの滄我砲の前には嵐の前のグミに等しい無力さだろう。
だが、真っ向から障壁をぶつけるのではなく推進するベクトルに別方向から力をぶつければどうなるか?
もっとはっきり言うなら、凄まじい勢いで横に推進する砲撃に下から上へ力を与えればどうなるか?
半球状に形成される障壁の頂点の微小な丸みに引っ掛ければどうなるか?
(五度…いや、三度でいい…曲がりやがれェェェェェェェッ!!!!)
力は相殺されること無く合成し、ベクトルの軌跡だけが変更される!!
それはほんの微細な変化に過ぎない。
巨視的な眼で見れば変化とすら思われないだろう。だが、ここでシャーリィが放ったのは唯の滄我砲ではない。
魔杖によって増幅されたあまりにも大きすぎる力!
地表に垂直方向への微かな変化もまた魔杖によって増幅され、地表から大人一人分の隙間を用意するのに充分ッ!
シャーリィはトーマに見せすぎた。零距離で一発、ハロルド相手に一発、あまりにも軽薄ッ!!
そして幾ら魔杖恐るべき力を備えていようと、滄我砲の力の‘大きさ’は変わろうと、力の‘向き’は変化無し!!!

そして策略によって‘射線’を限定させた今、トーマの意志一つで運命を‘曲げる’ことは不可能ではないッッ!!!



「楽に死ねると……思わないでよ……」
シャーリィはケイオスハートを振りかざしアイスウォールを唱え押し潰す様に炎を鎮めた。
分かっていることとは言え呪文を練る時間が焦燥に変わる。糞、糞ッ。
再び鼓膜の奥から乾いた破砕音が聞こえる。
分かってるわよ。こいつら殺してあんたに捧げるから、もう少し待ってよ、ねえ。
私が最初に見つけたはずだ。私がお兄ちゃんに至るための唯の肉の塊のはずだ。
煩い、パリパリパリパリうるさいったら!!
邪魔しやがって抵抗しやがって、死ね、死ね、皆死ね。
この手で抉って飛沫にしてやる。黙れ黙れ黙れ!!

殺意そのものを視線に込めて、シャーリィはグリッドを射抜く。しかし、グリッドの眼は揺るがない。
「それはこっちの台詞だ」
グリッドの心中に去来するのはほんの少し前の過去。
あの山の麓で彼らの何かが壊れた。それは修復不可能な不可逆の未来。
「お前に全ての元凶があるとまでは言わない。プリムラの言葉に沿えばお前もまた運命に踊らされた駒なのかもしれない」
別に彼女が引き金を引かなくても何も変わらなかったかも知れない。
代わりに引き金を引いたのはトーマだったのかも知れない。
漆黒の翼にとって彼女は置換可能な代用品の殺人鬼だったのかも知れない。

だが、彼らが無条件で罪を許し合うには溝が深い、死体を埋められる程に深過ぎた。

きゅ、と雪を踏む音がする。シャーリィは体ごと飛びのいて2人を視界に納めトーマの左手に握られていたものに眼を見開く。
「メガグランチャーの代用品だ。真逆女相手に武器を持つのは反則だとは、いわねえよなあ?」
リアラを弔って手に入れたその対価、砲弾は既に無くともその能力は天使の折り紙付き。
この距離までようやく近づけた。情報では肉弾戦にも警戒という話だが、やはりロング、ミドル、クロスなら
ミドル~クロスレンジが相対的に有利。グリッドの奇襲は全て鈍足のトーマがこの位置に至るための囮。

「だが、お前が撃鉄を叩いて全ては狂った。その罪を許す為に、お前にはここで罰を受けて貰う!!」



【トーマ 生存確認】
状態:HP70% TP45% 右腕使用不可能 軽い火傷 やや貧血気味 ハロルドのサック所持 背中が凍傷気味
所持品:イクストリーム マジカルポーチ ハロルドのサック(分解中のレーダーあり) パイングミ
    ジェットブーツ 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) 首輪×2 ミラクルグミ
    ウィングパック(食料が色々入っている)  金のフライパン ウグイスブエ(故障) レンズ片(晶術使用可能)
    ハロルドメモ2(現状のレーダー解析結果+α) ペルシャブーツ 銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲
基本行動方針:ミミーのくれた優しさに従う
第一行動方針:カイル・ヴェイグチームを信じてシャーリィを引き付ける
第二行動方針:シャーリィを倒す
第三行動方針:キールを探し、ハロルドメモの解読を行う
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点

【グリッド 生存確認】
状態:更に強まった正義感 プリムラ・ユアンのサック所持
所持品:マジックミスト 占いの本 ハロルドメモ プリムラの遺髪 ミスティブルーム ロープ数本
    C・ケイジ@I ソーサラーリング ナイトメアブーツ ハロルドレシピ スティレット
基本行動方針:漆黒の翼のリーダーとして生き延びる
第一行動方針:カイル・ヴェイグチームを信じてシャーリィを撹乱する
第二行動方針:シャーリィを倒す
第三行動方針:マーダー排除に協力する
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点

【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP30% TP55% 他人の死への拒絶 リオンのサック所持
所持品:チンクエディア アイスコフィン 忍刀桔梗 ミトスの手紙
    「ジューダス」のダイイングメッセージ 45ACP弾7発マガジン×3
基本行動方針:今まで犯した罪を償う(特にカイルへ)
第一行動方針:トーマ・グリッドを信じてシャーリィへの策を練る
第二行動方針:シャーリィを倒す
第三行動方針:キールとのコンビネーションプレイの練習を行う
第四行動方針:もしティトレイと再接触したなら、聖獣の力でティトレイを正気に戻せるか試みる
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点付近


【カイル=デュナミス 生存確認】
状態:HP45% TP65% 悲しみ 静かな反発 過失に対するショック 
所持品:鍋の蓋 フォースリング ウィス 忍刀血桜 クラトスの輝石 料理大全 要の紋
    蝙蝠の首輪 レアガントレット(左手甲に穴)セレスティマント ロリポップ ミントの帽子
    S・D 魔玩ビシャスコア アビシオン人形
基本行動方針:生きる
第一行動方針:トーマ・グリッドを信じてシャーリィへの突破口を見出す
第二行動方針:シャーリィを倒す
第三行動方針:守られる側から守る側に成長する
SD基本行動方針:トーマ・グリッドを信じてヴェイグ・カイルを指揮
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点付近

【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
状態:HP45% TP30% 「力こそ正義」の信念 ケイオスハートの力に陶酔
   ハイエクスフィア強化 クライマックスモード使用不可 上手く行かない状況への憤慨
   永続天使性無機結晶症(肉体が徐々にエクスフィア化。現在左腕+胴体左半分+左大腿部がエクスフィア化。
   末期症状発症まではペナルティなし?)
所持品:メガグランチャー ネルフェス・エクスフィア フェアリィリング ハロルドの首輪 魔杖ケイオスハート
    UZI SMG(30連マガジン残り2/3、皮袋に収納しているが、素早く抜き出せる状態)
基本行動方針:セネルと再会するべく、か弱い少女を装ったステルスマーダーとして活動し、優勝を目指す
第一行動方針:E3→E2→C3の順で島を巡り、参加者を殺しまくる
第ニ行動方針:目の前の人影を完膚なきまでに滅殺する
第三行動方針:索敵範囲内の参加者を殲滅したら、再び索敵を行う
第四行動方針:病気を回復させる方法・首輪を解除する方法を探す
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点



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