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テイルズオブバトルロワイアル@wiki

烏と香辛料

最終更新:2019年10月13日 18:44

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だれでも歓迎! 編集

烏と香辛料


確認した位置を認識し、全員を十分に収められる領域を設定した。
(これが現実だ。これこそが実情だ)
指で摘んだグミを口の中に含み、奥歯で二、三度噛んで一気に飲み干す。
すぐに彼の中に活力が戻って来た。
(一時のセンチメンタルに流されて情けを与えるなんて、何のメリットもない。
 敵とは倒すべき者なんかじゃなくて、殺すべきモノの名前なんだ)
人差指にフェアリィリングをはめて、その手に魔杖ケイオスハートを構える。
(誰かを助けて何かを得ようって考えがもう間違っているんだ。この戦いは減点法なんだから、何をしても犠牲がでてしまう)
反対側の手に持ったクレーメルケイジの中で水晶霊が活性化する。
それにリンクして魔杖がその力を増幅させる。
(失いたくないなら、失う前に終わらせるしかないだろ。不必要なものはそれだけで時間のロスだ)


「効果領域、固定。発動時間、指定。連続使用に於ける劣化速度、限定。癒せ――――リザレクション!!」
始まった詠唱の中に彼の苛立ちが浮き上がっていた。



「おつかれさん」
投げられた桃をキールは視線を合わせること無く無造作に掴んだ。
項垂れた顔の険しさからは疲弊を隠そうとする努力が見て取ることができる。
投擲された方向には、彼のほうに向かって歩きながら林檎を頬張るグリッドがいた。
目を細めてその桃を睨みつけるが、現状の疲労した彼の脳は果物自体の危険性や
果物を直接齧ることへの慣習的批判にまで思考を及ぼすに機能が至らず、そのままその顎で小さく噛んだ。
その甘さに彼の心は少し苛立つ。
「とりあえず俺たちが持ってきた食料はそこのウイングパックの中。
 しっかり確認はしてないけど中身は一通り無事っぽい」
「水は?」
キールの淡白な質問に、グリッドは水の入ったボトルを投げることで応じた。
「ウイングパックは一個しか無かったからな、こっちの残量と向こうの消費分・補給分全部合わせて丁度ボトル6本分だ。
 綺麗に一人一本一リットルだな。正直十分とは言えないが全員に渡るだけでも…
 ってオイィィィィ!なんでいきなりリミッター解除しちゃってんのォォォォ!!!」
補給物資に感慨耽るグリッドの目の前でキールがボトルに口をつけ、一気に水を体内へ流し込む。
半分ほど目傘が減ったところでボトルを下ろし、大きく息を吐いた。
「一人当たり1.2本だ。…この位の計算、間違えるな」
悪びれるそぶりすら見せず、さらにキールはグリッドに手を出す。
何かを言葉を投げかけようとしたが、グリッドはそれを見つけられずもう一本のボトルをキールに渡した。




「…………終わったな」
グリッドが辺りを見渡すと、そこには昨夜の惨劇ほどではないにしろそこそこの地獄が広がっていた。
積もった雪は半分解けている。溶けた半分は凍っている。
積もって無い草地は半分灼けている。残った内の半分は抉れて土と泥が露出している。
そして最後に残った草だけが、そのか細い命を立証していた。
彼らの居る場所はこの戦いの中心だった地。その草に自分たちを重ねてグリッドはそう言った。
「敵の一人が死んだだけだ。こちらの戦力も減少してトータルで見ればむしろマイナス……まだ何も終わっちゃいない」
そう言い切るキールの眼はその安堵すら拒否している。

トータルで見ればマイナス。なるほど、言い得て妙だとキールは思った。
本来ならこちらが先の先を取って、反撃の暇も与えず瞬殺する予定だった相手だ。
綿密に情報を集め行動経路を想定し、必要な人員を適所に配置して連絡を徹底し火線を集中させて一気に滅ぼす。
そうやってしかるべきだった相手をして、結果としてこちらが行ったのは遭遇戦からの戦力の逐次投入。
彼にしてみれば最悪の戦術だったといえる。
(グリッドはそうじゃないといっているが、馬鹿馬鹿しい。予測できていたのならこんな結果になるものか)
こんな結果。そう、こんな結果なのだ。キールが桃を強く噛み切ると、喰い跡に血の色が混じった。
得られた物資には満足しよう。だが、その物資を運用する人間に損害が出すぎた。
初手からシャーリィと交戦したG3帰還組の被害は悲酸に尽きる。
計4名のうち戦闘可能なメンバー3人は死者1名重症1名中度損傷1名。
しかも1人は下半身に重症を負い動けるかどうか、もう1人は片目を失っている。
リザレクションを連発したとは言え、生存2名とも前線で戦闘をするのには実に不安な状態だ。
(もっとも…それすら無かったら前線は完全に崩壊していたがな)
シャーリィを殺したからこそ手に入ったフェアリィリング、
そして合流したからこそ結果手に入ったグミに一瞬だけ皮肉を込めて笑う。
しかし、すぐに険しさが顔を支配した。ここまではまだ代償として看過できるレベルの話だからだ。


「済まなかったな。トーマ達を、東の連中を連れてくることが出来なかった」
グリッドは申し訳無さそうに俯く。
キールはそんがグリッドを見て、眉間に皺を寄せた。
「別に、お前達を責める気は無い。こうして治療に一番必要なクレーメルケイジとミトスの情報を持ってきた。
 少なくとも最初にお前が言っていたことだけは遵守されている」
キールは既にフリンジされたケイジをグリッドに見せる。
「いや、そうじゃなくて……その、なんだ」
グリッドはケイジのほうをチラチラと見ながらバツが悪そうに眼を泳がせる。
「何だ、どうでもいい話なら聞かないぞ」
急かされてようやく意を決したのか、グリッドは一回大きく唾を飲み込んだ。
「プリムラを連れてくることが出来なかった。済まん」
足を揃えて直立に立ち、深く頭を下げるグリッドは唇を噛んでこれから来るであろう対応に耐える防御を固めた。
彼はキールとプリムラの関係をプリムラ本人から聞いていた。
だからこそ、どうしても団長として自分が伝えなければならないと思いこうしてその場に臨んでいる。
しかし、一向に何も言葉が返ってこない。向こう側も何を言えばいいのか迷っているのだろうか。
そして顔を下げているグリッドの視界にキールの足が映る。そして直ぐに消えた。
不思議に思ったグリッドが顔を上げると、キールは彼らの荷物が一堂に集めてある場所へ向って小さくなっている。
「お、おい、待てよ!」


グリッドが追いついたとき、キールは既に屈んで全員の装備品の物色していた。
グリッドがかける声など最初から存在していないように一つ一つを取って眺め、戻していく。
「これが、例の…」
そうしてキールが一つの首輪とそれなりの量の紙束を二つ掴む。
「おいったら!」
グリッドの手がキールの肩を掴み、無理矢理キールの顔をグリッドの方へ向けさせた。
「……何か言えよ………何かあるだろ…」
顔を紅くしながらグリッドはキールを睨みつける。それは同時に何かを懇願しているような眼だった。
彼女の為に、すでに失ってしまった彼の団員の為に、期待した言葉があった。
それでも、彼に渡された言葉は目の前でグリッドを見下すその表情にふさわしいものだった。

「言っただろう。どうでもいい話は聞かないと言ったはずだ」

「どうでもいい、だと…それが、お前、あいつに言う言葉が、それか!!」
グリッドはキールの胸倉を掴み直し吠えた。拒絶しなければならない、そう彼の体が命令していた。
「お前のそのクレーメルケイジだってあいつが持っていたものだ!」
「だから?」
別に本心ではなくてもいいから一言が欲しかった。彼女の為に。
「あいつはマーダーなんかじゃなかった!最後の最後まで俺達の仲間だった!」
「だから?」
団員一人の命を守れなかった団長として、果たすべき責任があると思った。
「あいつは、あいつは!」
「だから?」
グリッドはプリムラの遺髪を取り出してキールに見せる。
せめて、何か救いが欲しかった。誰の為に?
「あいつは、プリムラは俺と、俺達漆黒の翼と出会った時から、ずっとお前のことを案じていたんだぞ!?」

「煩い。黄色い声を出すな」
だから、望んで外道に落ちようとしているキールの癇に障った。
こいつの言動は根本的に腐っている。
キールの手がグリッドの手を跳ね除けると、彼女の髪は風に舞って風景に溶けた。





落したハロルドのメモを拾い直し、かかった土を払いキールは言った。
「お前に言ったところで何が変わる?変わらないだろう。それとも何か?
 プリムラはマーダーだと僕が言ったのを撤回しろということか?そんな無駄なことをする理由が僕にはない」
「お前、本気でいっているのか」
グリッドは唖然としている。
抑えていた苛立ちが、キールの首からもげて堰を切った。
「こんなこと冗談で言うか。お前の言い分を否定する訳じゃない。事の顛末は治療の傍らヴェイグから聞いている。
 成程確かに僕の記憶と合致する程度に彼女は賢かった。こうしてグミの力でお前達を回復できたんだからな。
 だが、今更仲間と敵の認識を変えたところで彼女自身がどうこうなる訳じゃない。これ即ち無駄の一言で済む」
「無駄な訳が無いだろう!死者を侮辱する権利は誰にだってない!」
キールは鼻で笑った。どこまで足りないのか見当も付かない。
「否、ある。現に僕は結果としてここで殺した一人の少女だった化け物の死を物理的に凌辱している」
キールは肩越しに親指で自分の後ろを指差した。
そこにはシャーリィだった化け物「だった」モノが散らばっていた。
沢山の石ころが飛散している。その中で少しだけ残った有機物はすでに人のそれですらない。
キールがシャーリィの首輪を外した過程に於いて出来た廃棄物である。
無論、その過程は最短距離を意図的に通っていない。
「まったく、せめてエクスフィアとして使えればまだ役に立ったのに。どれも屑石、死ねば等しくみんなゴミだ」
わざとらしくキールは呆れたような素振りでグリッドを流し見る。
「いいか、僕は死者には敬意を払う意思がないわけじゃない。
 ただ、その為に時間を割いて貴重な戦力をこれ以上劣化させるに値しないと言っているだけだ」
「そんなのは理屈だ!お前の心はそう思ってはいない!」
キールは自身の何かが沸点に到ろうとするのを感じた。
「一応聞く。その論拠は?」

「決まっている!俺が漆黒の翼のリーダー・グリッド様だからだ!」

こいつ、死ねばいいのに。

そう思ったキールの手は、既に目の前の紛い物を打っていた。
非力な学士の手とはいえ突然の衝撃にグリッドは堪らずよろける。何が起こったのか、それすら理解に時間を要していた。
鼻も口も皮膚も過呼吸になっている自分を冷やかに観察しながら、キールはその激情を出来る限り順序立てて再構築する。
すでに自身の内にこの感情を抑えることは望めなかったし、望まなかった。

「何が漆黒の翼だ。そんなものの為にプリムラは死んでしまったんじゃないか!」
だから、まず一番先に言うべきことを口にした。

「そんなもの…だと?」
「ああ、そうだ。無論、直接的に殺したのはリオンだろうさ。
 だがな、その後プリムラが癒しを拒んで死んだのは紛れもなくお前の作ったもののせいだろうが!」
今度はキールがグリッドの胸倉を掴む。
「漆黒の翼の団員として誇り高く死んだ?そんなものはどうでも良いさ。
 問題の本質をお前は理解していない。いや、理解しようとすることを拒んでいる」
グリッドの瞳が散大する。顔面の汗腺が一気に開いた。
「お前が、本気で救いたかったのなら!お前はプリムラが何を言おうがグミを与えるべきじゃなかったのか!?
 団員の誇りとかお涙頂戴の状況なんか目もくれずにヴェイグから奪いそれを実行するべきだった!
 お前はそれをしなかった!何故か?!お前はプリムラ自身よりも漆黒の翼という体面の方が重要だったからだ!!」
「ち、違う!俺は救おうとした!死ぬなと命じた!だが、そうする前にリオン=マグナスが」
「問題を摺り替えるなよ。仮にリオン=マグナスの意向が何であったとしても、それはお前がグミを使っていれば回避できた事象だ」
喚くように否定するグリッドの体を言葉を釘に、理論を板にして括り付ける。
確かに回避できた。リオンがグミを守るためにプリムラを殺そうとしたのならば、
先にグミを使ってしまえばリオンがプリムラを殺す意味はなくなる。
同様にマーダーとしての行動だったとしても、回復が済んでしまえば弱いプリムラを率先して殺す理由もなくなる。
いずれにしても、キールの言葉は悪意にまみれているが一つの真実に至っている。





理論だった悪意は止まらず、グリッドに容赦なく叩きつけられる。
「……勘違いするなよ。決してプリムラを見殺したことを責めている訳じゃない。
 お前の行動に対するその矛盾に満ちた言葉が僕の気に障ってしょうがないだけだ」
「矛盾、だと?」
「ああ、矛盾だらけだ。城跡で会ったときからこの歯のかみ合わないような不快感はあったが、ようやく正体が掴めた。
 お前、本当にプリムラが死んだことを気にしているのか?いや――――」
いないだろ。最後まで言わなくともそれが反語であることは十分グリッドに伝わっていた。
「さっき僕にプリムラへの弔辞を求めたな。ああ、もし純粋にお前がプリムラのことを思って言ったのならば宗旨替えもするさ。
 だがな、それがお前を楽にするためだけの薬剤にしかならないのなら、そんなものやらない。
 お前は死んでしまった団員への責務を果たすことで団長としての自分を満足させたいだけだ!」
足から力が抜けグリッドの体ががくりと落ちるが、キールはそれを非力に似合わず持ち上げる。
原動力は体から湧き上がっていた。
「大体だな、節操が無いと思わないか。出会う人間を片っ端から当人も仲間の意向も無視して入団させて。
 まるで玩具箱に適当にオモチャを詰める子供みたいじゃないか。無造作に入れられるオモチャの気持ちを考えたことがあるか?」
瞳は黒い炎で燃えあがって、口は僅かに微笑を湛えている。
「しかもお前はオモチャ一個一個に愛着をさほど持っていない。団員が居なくなれば次の団員をすぐに補充する。
 何故ならお前が求めているのは団員でも仲間でもなく、漆黒の翼という玩具で満たされた玩具箱そのものだからだ」
キールは力強くグリッドの顔を自分の方へ近づけた。
「違う…俺は、そんなんじゃない…」
涙を眼に湛えながらグリッドは首を横に振った。今まで誰も触れなかった彼の矛盾が鋭利なメスで切り裂かれていく。
「じゃあ、聞くが、お前これまでに何人殺してきた?」
「な、何をいっているんだ。誰も殺してないに決まっているだろう!!」
キールはぱっと手を放す。グリッドの体は自然に重力に従って倒れた。
立ち上がろうとするグリッドの頭をキールは魔杖の先で制す。
「団長のお前を守って、何人が死んだと聞いている」
言ってはならない一言を、キールは躊躇いなくあっさり言った。
「な、な」
「どいつもこいつもお前に何を見出したかは知らないが、お前を信じて散っていった連中に申し訳が立たないと思わないか?」
グリッドの表情は既にいつもの様相はまるで無い。
「別段驚く話じゃないだろ。何の能力もない凡才のお前がここまで生き延びるには対価が必要だ。
 お前はそれを団員で補っている。実に上手いやり方じゃないか」
キールが皮肉を言うのを聞きながら、グリッドの脳裏に光景が浮かぶ。
ユアン、カトリーヌ、ハロルド、プリムラ、トーマ、自分を信じて散った人、自分が頑張れば助かったかも知れない人、
その全てはお前が殺したのだと、目の前の預言者は語る。
「だがな、お前の一番問題な所はな、「今こうして生きながらえているのを何がしかの自分の力だと思い込んでいること」だ。
 お前、まさか自分が奇跡のヒーローか何かだと勘違いしてないか?その後ろの死を蔑ろにして」
刺して、刺して、まだ刺す。
「お前の正体を教えてやる」
それでもキールは刺すことを止めない。

「お前はリーダーでも正義のヒーローでも何でもない、唯の普通の凡人だ。
 漆黒の翼という居場所を構築し、団長という衣を纏わねば呼吸することも適わない弱い生物。学術名をグリッドという」




それは、最後の葉っぱだった。

常に漆黒の翼の団長という肩書きに縋って虚勢を張って来た、グリッドの弱さの本質。
漆黒の翼という箱庭でしか存在できない架空のヒーロー。
リーダーとしての務め、団長として、そういった口実が全てキャンセルされる。
「ち、違う!絶対に違う!!俺はそんなつもりで漆黒の翼を作った訳じゃない!!
 俺は、仲間を守るためにここにこうして立っていて」
グリッドは立ち上がろうとする。ここで立ち上がらなければ絶対に不味いという確信があった。
片膝を地面に突いて、反対の膝を掌で押して立ち上がろうとする。だが
「それはグリッド、お前の言葉か?それとも漆黒の翼団長としての言葉か?
 お前の綺麗事は偽善ですらない。なにせその言葉すらお前のものじゃないんだから」
膝が崩れて両の手が地面を突いた。
虚構に縋って生きてきた彼が、露出した現実の大地に一人で立てる道理が無かった。
剣も、銃もどれほどに意味があるのか。少なくとも今この場で一番威を持っていたのは言葉だった。
グリッドは唯々キールの弾丸に怯えている。
しかし、グリッドに渡されたのは弾丸ではなく、刀だった。
「…………これは?」
「お前の御所望の品だ。メルディを消耗させてまで作った逸品だよ」
グリッドは縋るようにしてその刀を手に取り、繁々と眺める。
その涙の溜まった目でも、ここまで近づけてみれば直ぐに刀身の異常に気がついた。
「…穴?」
「そうだ、お前にとって必要になる、孔だ」
キールは袖から一つの瓶を出す。毒々しい黒にまで煮詰まったその悪性の体現、謀略の結晶。
「あと一時間もあれば煮詰まるだろう。防空壕に戻ってからでは人目に付くから今のうちに渡しておく」
「そうじゃなくて、毒って何だ?俺はそんなこと一言も頼んじゃいないぞ」
「このことはロイドたちに言うなよ。もし敵に際したときに感づかれれば文字通り水泡に帰る」
「まてよ」
「完全に煮詰まればかなりの毒性になるはずだから使用の直前に刀身に塗ってくれ。くれぐれも自滅だけは」
グリッドがキールの手を払って、瓶が地面に落ちる。草の上ですぐに止まり、キールはそれを拾った。
「俺は、こんなもの使わないぞ」
「何故だ」
「…正義に悖る。悪を討つ正義の刃にそんな毒を塗るのは、その」
どもるグリッドにキールは瓶を突きつけた。リバヴィウス鉱の周りで気泡が発生している。
「まだ分からないのか?ロイドやカイルも大概夢想家だがな、それでも中身がある。
 だが自分の無いお前の正義なんて空っぽだ。そんな物で出来た刃で誰が斬れるんだよ」

吐き捨てるようにキールは言って足元の襤褸切れを俯瞰する。
吐き捨てられたグリッドは既に漆黒の翼の団長などではなく、唯のグリッドだった。
最後の砦だった正義の心も、正体の知れた今となっては夢霞に等しい。




グリッドは蹲ったまま何も喋らない。
一息ついてキールがグリッドに背をむけると、ぼそりと後ろから声がした。
「どうして、何の恨みがあるんだ。お前だって、何も無いじゃないか」
キールはしばらく立ちつくした後、両手を前に突き出して答えた。
「ああ、痛いほど分かっているさ。所詮この身は凡人、その限界を身をもって知っている。
 この島では確実にこの手から何かが零れおちる。ならば僕にできることは一つ。
 本当に掴んでおきたいものの為に、掴めないものを切り捨てることだけだ。
 だから同じ凡人の分際で夢想に逃げ込むお前が気に入らない」
キールはその手を力強く握った。

「お前が死ねばよかった。お前が本物だというなら、お前がシャーリィを抱きしめてやれば良かった。
 ロイドの代わりにお前が心臓を差し出せばよかった。それが僕がお前に八つ当たりする理由だ」
キールは目を瞑り彼に吐いた罵詈雑言を振り返る。
「……カイルの怪我の具合を見てくる。次の敵が誰になるかは分らないが、
 その時までに使うかどうか決めろ。使わないならお前を戦力から外して次の手を考える。だが」
しかし撤回はしない。ロイドという旗印はすでに燃え尽きかけている。
自分の中に必死に生存確率を上げようと計算している自分がいる。
「お前は、自分の妄想と現実の差を埋めるのに後何人の団員の死体が必要なんだ?
 少なくとも僕は、お前に搾取し尽くされて死ぬのなんてゴメンだね」
そう言ってキールは手に握った漆黒の翼のバッチを、失敗したレポートのように捨てる。
既に背中で蹲っているガラクタにどれだけ聞こえているのだろうか。

 「……喜べよ。その毒で差を埋めろ。それだけでお前は本物の団長に、正義のヒーローになれるんだから」
ハロルドのメモを見ながらキールは思考を巡らせる。
どうやらメモ1が暗号表でそれを使ってメモ2を見ればいいらしい。まずはメモ1からだ。
キールはそうしてカイルの下へ行った。
御旗が燃え尽きたなら、別の旗を掲げればいい。
メモを見る最中もそう計算する自分を抑えてくれるように、グリッドに淡い願いを託して。



「畜生…畜生……違う。俺は、違う…」
グリッドはそのまま跪いたような体勢で煩悶していた。
まるで今まで食潰してきた命の重みに今更耐えるような恰好だった。
ころころとグリッドの目の前に転がるものがあった。
赤くて、丸い人の頭。
「ヒッ…うぷっ……おぅ、おうええええええええええええええええ」
グリッドの中で全部が逆流する。
今まで食べていた果物も、目を背けてきた矛盾も、知りもしなかった自分の業も。

食いかけの林檎の周りが白く濁っているなかで、
既に翼も嘴も失い、ただ涙する汚れた烏が遠くにキラキラと光るものの中でキラキラ光るものを見つけた。
立ち上がってよろよろとそこに近づく。
何が正義で、何が信じるものなのかもよく分らない。
だから、唯この一瞬だけは、その石が綺麗だと素直に思った。


【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:TP50% 「鬼」になる覚悟  裏インディグネイション発動可能 ゼクンドゥス召喚可能
   ロイドの損害に対する憤慨 メルディにサインを教授済み
所持品:ベレット セイファートキー キールのレポート ジェイのメモ ダオスの遺書 フェアリィリング 首輪×3
    漆黒の翼のバッジ ハロルドメモ1・2 C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) 魔杖ケイオスハート
基本行動方針:脱出法を探し出す。またマーダー排除のためならばどんな卑劣な手段も辞さない
第一行動方針:ロイドを生き残らせる
第二行動方針:治療後E2へ撤退
第三行動方針:ハロルドメモ1の解析
第四行動方針:首輪の情報を更に解析し、解除を試みる
第五行動方針:暇を見てキールのレポートを増補改訂する
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点

【グリッド 生存確認】
状態:価値観崩壊 打撲(治療済) プリムラ・ユアンのサック所持 嘔吐
所持品:マジックミスト 占いの本 ロープ数本 ソーサラーリング ナイトメアブーツ ハロルドレシピ
    ダブルセイバー タール入りの瓶(中にリバヴィウス鉱あり。毒素を濃縮中) ネルフェス・エクスフィア
基本行動方針:???
第一行動方針:毒を使うかどうかを決める
現在位置:E3の丘陵地帯・ケイオスハートの落下点

notice:食糧及びキールに2本、ロイド・キールを除く全員に1本分水が補給されました。

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