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  • 魔氷の射手

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

魔氷の射手

最終更新:2019年10月13日 19:16

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だれでも歓迎! 編集

魔氷の射手


彼女はぼうっと空を見上げた。
後ろに回した両手を地面につけて上半身を支える。
形の整ったお尻は下半身を支えずに気楽なままで。
先程まで折っていた膝は既に伸び、足は自然な形でまっすぐと。
こんなに綺麗な空ならば、どこか綺麗な高原で誰かと一緒にだらだら出来たら楽しそうだ。
そんなことを、考えた。そんな下らないことを、考えた。

それが仮定法でしかないのは、そんな彼女の傍に並ぶ誰かは既に存在せず、それに―――
「無い、無い、無い。何で無いんだ」
だらしなく広げた足の間に一本の魔剣が深々と突き刺さる。
それに、この彼女の瞳から映る空の半分は、“目の前の殺人鬼が覆ってしまっている”のだから。
前髪が眼に掛からないようにする為のバンダナを失ったその顔は、かかってしまった血と髪でその双眸を隠している。
ただその卑しげな口元が、表情の分からぬ男の中から狂気だけを抽出し、呼吸とともに排出していた。
一向に太陽の見えない空に飽きたのか、彼女は眼を下ろし自分の宿主の有様を観察した。
その白い服には斜めに大きく赤い線が刻まれている。
切れ目から見える肌も真っ赤に染まり、良く眼を凝らせば内側の肉も覗けるかも知れない。
緊急を要する外傷は、それ一つ。だが問題は「足りない」スバシュ。

彼女の肩を風が通り過ぎる。
ジワリと滲む血液、切り離れる肉と皮膚を無視したまま、彼女は殺人鬼の剣だけを見ている。
地面に突き刺さっていたはずの大剣が何時の間にか彼の右手に納まっているのを、見ている。
一体どの段階で斬られたのかさえ分からない、研ぎ澄まされた剣撃。
その技に因って仮初の肉体に刻まれた傷は十余に及んでいる。
もう既に10回以上観察しているのに、分かるのは精々が抜く瞬間のみという出鱈目振りにアトワイトは唯々感心する。
成程これはどうしようもない。
こいつは、この強さは、剣に愛されているのでもなく剣を愛するのでも未だ足りない。
愛し過ぎて愛され過ぎて、遂に剣と一つになってしまったかのような強さだ。
担い手は力を欲して欲してまだ欲して、剣は対価として命を欲して欲してまだ欲する。
飽くなき循環が希求と技巧を煮詰め、泥のような殺意を蓄えていく。
しかも一番性質が悪いのは、妖刀などの剣に操られているとの類ではなく、
ただ剣としての存在理念に従っているだけという点だ。
道具は道具である以上、用途というものが必ず付随する。
彼らソーディアンに、兵器としての用途があるように。神の眼を破壊するという運命があるように。
だが目の前の男が一つと成った道具の用途は、ソーディアンのような複雑なものも大層な理念もない。

「剣」は唯、人を斬る為にそこにある。故に殺す。“そこに理由は無い”。
この殺人鬼はそんな理由で殺せる人間なのだ。




問題なのは「アレは僕を」ガシュ。
何で私は「ここまで満たしてくれたのに」ザシュ。
このバケモノを「まだ足りない」ヒュパ。
理解「足りないのに」ビリッ。
しようとしてい「お前で満たしたいのに」ビュォ。
る?「何が足りない?」ジィン。


クレス=アルベインの左手がぬぅっと顔面を塞いだと思いきや、彼女の身体が頸を支点として宙に浮く。
小柄な少女の肉体とはいえ、それを片手一本で支える左手は表情の涼しさとは裏腹に血管を浮かび上がらせていた。
そのままクレスは左手を引き彼女の顔を間近に近づける。
クレスの呼吸は静かなものだが、その息で彼女の金髪が揺らいだ。
「お前を穢したい」
そうクレスは口火を切って、言葉を続けた。まるで彼の口が勝手に喋っているかのような流暢さで。
「髪の毛一本から足の爪の先まで、全身を犯す。
 指を侵して肺を嬲り肝臓を弄び紛いの瞳を穢して血液を晒し肩甲骨を舐る。
 腿を磨り潰して内耳まで挿入し歯を愛撫して、その肉の一筋から恥辱に染め上げる。
 汚辱に悶える音を聞きながら虐めてまだ虐めて更に虐めて虐め抜いてしまいたい」
言葉を切って、空いたクレスの右手は剣を靡かせる。
「確信だ、これは。そうすることで俺は満たされる。
 足りないものを満たせるのに、何故だ。何故“僕の中にはお前を殺す武器が無い”?」
心底不思議そうに語る殺人鬼の言葉は、アトワイトには理解の外だった。
ただ、クレスとは真逆の確信だけがある。
このままなら彼女は今から死ぬよりも惨めなことになる。


「あの男は確かに強かった。実際の所は、一撃貰えば消し飛ぶような紙一重の勝負だった」
恐い。怖い。こわい。恐怖が身体を支配し続ける。
「あそこで彼が折れなかったら『零距離』を抜くしかなかった位に。アレを殺す為の秘蔵の一刀を」
ギリギリと頸を絞める力が強まっていく中、魔剣の剣先が彼女の顔に近づく。
「それほどまでにあの瞬間までの僕は満たされ、最後の所まで行けそうだったのに。
 最後の最後であの腑抜けでは詰まらなさ過ぎる。僕の願いをどうしてくれる?」
誰か、誰か、私を助けて。ディムロス。ディムロス……

(無理だよ。そう希っても叶わなかったから、アトワイトはこうして此処にいるんでしょ?)

彼女の瞳に、微細な変化が走る。同時に、クレスの切っ先がブレた。
もし自分のオリジナルの肉体だったなら、泣いていたかも知れないとアトワイトは思う。
自分でも明瞭に認識できるほど、リアラを見殺しにした自分を棄てた記憶が蘇ってくる。
無論、これは唯の感傷だとアトワイトは明瞭に自覚していた。
ディムロスに非は無いし、ましてや決して腰抜けでもない。
それは自分の方だ。無能なのはミトスを止められなかった自分の方だったのだ。
あの状況では助けに来る筈が無いことを分かっていたのに、奇跡など起こらないことを知っているのに。
それでも何処かで期待してしまった自分の愚かさなのだ。




『大気中の水分子、固定。晶力起動。エンジェルロアを晶術運用に併用して運転開始』
アトワイトは彼女を詠唱装置として起動させた。
エクスフィア内部のEXジェムをなけなしの増幅器として詠唱速度を最大限加速する。
最初からありもしない希望に裏切られて、意識をズダズタにされながら願った。
届かない祈りなら、伝わらない想いなら、傷付くだけの愛情なら、“いっそ棄ててしまえ”と。
『神は……いないわ。だからこそ私は彼に縋った。希望を持たずただ理想のみを追求する彼を哀れみ、同時に羨望した』
アトワイトに寄生するエクスフィアが、飛び上がるかのように一際強く輝いた。
擬似人格である彼女に湧き上がる負の感情を恐怖すら含めて喰らい上げる。
発狂など最初からしない。そうなる前に痛みも苦しみも恐怖も石の餌だ。
だからこそ、恐怖を侍らせながらも発狂を飽和することなくクレスを観察することが出来る。
これこそが、苦しむ彼女があの場所で得た力。絶望を抱いても耐えられる虚ろなる心と自身の無能を許容する天使の身体。
立場も、建前も、嘘も無い。姉の復活というその歪んだ愛だけに全てを捧げるマスターの生き方を、欲しいと思ったのだ。
私を絶対に愛さないソーディアンマスターこそが、堕ちた私には相応しい。
『準備完了。発動まで待機。目標は目視でロック。貴方は、神なんかじゃない。唯の気狂いの殺人狂。
 いえ、例え神だろうとも私の仕事の邪魔になるなら蹂躙します』
彼女の瞳が紫を含んだ偽物の青を失い、本当の真紅に染まる。
無機物にエクスフィアが寄生した場合、その無機物は動力として能力として更なる力を得る。
その対価として、いずれ機能はエクスフィアに侵食されて崩壊を迎える。
だが無機物に心があるのならば、きっと思うだろう。
道具としての用途を突き詰めるこの力が得られるのならば、代償としていずれ来る終末など恐怖に値しないと。

「……どうして……」
目の前の力の奔流を見ながらも、金縛りに有ったように動かないクレスは呟く。
その手の魔剣が、だらりと垂れた。
一瞬の隙を確認したアトワイトは、それが求められた答えになるかどうかは考えずに返答内容を決める。
自嘲気味に笑みを彼女に浮かべたアトワイトは、殺人鬼に答えながらその指を弾いた。
『それが、今の私の唯一の拠り所……任務だからよ。アイスニードル、一斉掃射』
号令に因ってクレスの周囲に大気から凍結・出現したアイスニードルはその数32本。
その全てが一つの意思の下に、殺人鬼を串刺しにすべく降り注いだ。


アトワイトが彼女の頸を絞められる心理的な不快感から解き放たれたのと同時に、
彼女の目の前で槍衾がススキの草原の様に出来上がっていた。
膝の高さ程の氷の草原越しに、クレス=アルベインが転移で出現する。
『神でも傷は付くし血は流れるのね。なら別にいいわ、神でも魔王でも』
アトワイトは、クレスの肩に刺さった一本の氷針を見て彼女をにやりと笑わせた。
恐怖を克服したわけではない。今も彼女の奥歯を割れそうなほどに噛み締めている。
蛇口を勢い良く捻り出したように恐怖がどんどん湧き出てくる。
だが、今のアトワイトは恐怖しながらも任務遂行の為の判断を出来る刃外の存在なのだ。
命を惜しむのは道具の役目ではない。どうやってその役割を完遂するか、その一点のみ。




クレスが肩に刺さったニードルを引き抜く。
その浅い刺さりから見て骨には到達していないだろうが、開いた傷からジワリと湧く血が確かなダメージを認識させる。
殺人鬼の手が自分の血が付いた氷を握って砕く。顔の上半分は依然として不明だが、
あの饒舌な舌と、品格の無い下種の笑みが、スイッチの切り替わったように止まった。

そのスイッチは世界を止めるスイッチなのだろうか。そうアトワイトは思った。
空も、大地も、そこの民家も、一切合財の全てが、押し黙ったかのような静謐の中で、
クレスの魔剣がカチャリと鳴って、

「“返せ”」

彼女の周りを取り巻くアトワイト以外の全ての世界が、狂を発した。
少なくともそれに足る殺意が、彼女の目の前に現実として存在を許されていた。

殺意を漲らせたクレスが恐るべき速度で、突進してくる。
『アイスウォール、三重防壁』
クレスの最高速度は先程の戦いで既に見積もっていたアトワイトは、恐怖しつつも冷静に最短行程で術を展開する。
彼女の目の前に3つの氷壁が30cmほどの間隔で出現しクレスの剣とぶつかる。
見くびっているのだろうか、次元斬を纏わせていないその一撃はそれでも易々と一枚目を紙のように切断し、
二枚目を無理矢理圧し折る。そして三枚目を切り捨てようとする直前。
『バリアー、防壁強化』
防御補助を付加された三枚目の中程でようやく動きを止めた。
クレスが剣を仕方なさ気に引き抜く暇に、アトワイトはバックステップで距離を大きく取りつつ戦略を練る。
メイルシュトロームかタイダルウェーブで薙ぎ払う。不可。目立ち過ぎるし、大技では奴を見失う可能性がある。
ならば初級中級の氷系晶術で何とかするしかないが、術だけでは遠からず詠唱中に斬られるだろう。
その尋常ならざる殺気とは裏腹にあくまで次元斬を纏わせないまま、クレスは腰溜めに剣を構えた。
『だったら彼女を使わせてもらうわ』
アトワイトが自らを振ると同時に、彼女が詠唱の輝きを纏う。
先程のような奇襲を警戒してかクレスの肉体が一瞬強張ったが、殺人鬼の周りには氷が出現する気配が一向にない。
その数秒の硬直に、アトワイトは素早く術を構築した動体相手ではなく目標地点指定ならば少しは計算が楽だ。
ましてや、それが自分に近ければ尚更のことに。
『アイシクル、氷柱凍結』
彼女の脇に勢い良く氷の塊が出現するが、それはいつもの無骨な氷塊ではなく直径は80㎝程、高さは2m程の氷柱だった。
普通の相手ならば“何で敵にも当てずにそんな氷を?”と思うだろう時間に、
彼女はクレスを見定めたまま、躊躇い無く自分の右手を氷柱の中に捻じ込む。
亀裂を走らせながらも、確実に中程にまで進入する指と掌。
そして普通なら“え、何で指が入るの、それどんなマジック?というより手を突っ込んで何を?”
と疑問をシフトするだろう僅かな時間に、更にアトワイトは詠唱を紡ぐ。
『シャープネス、筋力強化』
そう言い終わったが早いか、氷に突き刺したままの右腕を彼女はそのまま振る。
バキン、と氷特有の割れる音を響かせて、氷の柱は折られた。
自らの重さに従い、折れて1m半程になった柱は地面に落ちようとするが接地の瞬間にピタリと止まる。
地面に付きそうになった柱のその逆の端で彼女の右手と左手が柱を、彼女の武器と化した氷柱を掴んでいる。
クレスが再度、攻撃を仕掛ける。有効射程で切り捨てる為に間合いを詰めようとして漸近する。
『速さは足りないけど、このリーチなら…スナイプエア!』
しかしその倍はある彼女の一撃が、彼にその射程まで近づかせない。
体躯に見合わないその氷柱を掴んだまま、彼女は飛翔し、落下と同時にクレスに柱による突きを打ち込む。
本来の使い手の技と理念とは大きくかけ離れているが、その名を借りたこの突撃はそれを補う力と射程があった。
大きすぎて避けきらないと判断したのか、クレスは魔剣を盾にして凌ごうとするが、
鈍い音と共にその身体を大きく吹き飛ばされる
彼女の元の膂力に強化を施せば、術であるゆえ剣技と掛け合わせなければ応用性に欠けるその氷系晶術も
氷というだけでそれは恐るべき武器と化す。
それは正に、彼女がまだコレットだった時に握っていた得物を振るう様と酷似していた。





しかし、それでも勝てないこともアトワイトは良く理解していた。
武器で勝負すれば、否、どんな勝負だろうと自身はこの殺人鬼には勝てない。
「得物から殺す」
受身を取って着地した後、不機嫌の極みのように言葉を吐き棄てた瞬間に、
クレスの剣が次元斬の代わりとばかりの膨大な殺意を乗せて、閃いた。
突撃に合わせ彼女がクレスを近づかせまいと柱を再度振りぬくが、交差の瞬間に殺人鬼の魔神剣が膨張する。
魔剣から次元斬とは別種の気が噴出し、術で出現させたとはいえ榴弾砲よりも遥かに脆い氷柱を粉砕した。
魔神剣を終えてもクレスの殺意は止まらない。
「魔神、閃空破」
『アイストーネード、縮小回転!』
切り上げと同時に、紅い殺意が昇る。
使っていない彼女の部分で練り上げた極小の高密度竜巻がぶつかり合う。
「返せ、返せ!返せ!!それを返せ!!!」
しかし、無尽蔵の如き殺意は止まることを知らず容赦なく竜巻を削り殺していく。
『…………アイストーネード、“環状収束”!!』
竜巻が消失し、最後の守りが吹き飛ぶ。
大きく彼女の体が後ろに傾く中、切り上げたクレスの剣が締めの一撃を繰り出そうと腰を貯める。
闘気を乗せた閃空裂破が仕返しとばかりに彼女に突き立たろうとする。
最後の瞬間、彼女が苦し紛れに何かを投げた。この程度の攻撃、殺人鬼相手には如何ほどの効果も
「……………ト……ッ!」
斬撃が鈍る。白い何かが殺人鬼の顔を掠める。
尻餅を付く彼女の上を通り過ぎる凶器。
ぼたり、と彼女の靴に赤い斑点が浮かぶ。真っ赤な雫がぼたり、ぼたぼたと。
切れた髪の毛がはらりと落ちていく中、クレスの空いた髪の向こうから瞳が現れる。
それを切った白い何かは、遠くの方で地面に突き刺さる。
切った瞼から滝のように流れる血は、まるで涙のように彼の右目を覆い隠した。
氷の旋より生み出された白銀のチャクラムは、その血に良く映えていた。
ここが限界。そう判断したアトワイトは素早く、今までと同質の霧を周囲に沸き立たせた。
殺人鬼が半ば反射的にその場所に剣を突き立てる。
霧はすぐ晴れた。そこに残っていたのは、地面を抉る手応えだけだった。

殺人鬼の声が周囲に木霊する。狂った世界の中で、悲しむように憤るように、祝うように。





『ハアッ…ハアッ、ファーストエイド、等間隔連続……』
彼女の胸から流れ落ちる血が、まともではない速度で止まっていく中、
アトワイトは家々に隠れるようにして彼女に回復魔法を、間隔を空けつつ掛け続けていた。
恐るべきは天使の能力。代謝に意味はないため、それなりの傷だと言うのにこの程度の処置でも血はほとんど流れない。
血の痕を辿られて見つかるような、下らない死に方だけはしなくて済みそうだ。
『……まあ、血とか関係なく、狙われているんだから、関係ないわね。
 足音が近づいている……偶然、というのは虫が良すぎるか。神じゃ無くとも化け物であることは認めるわ』
彼女の強化された耳から聞こえる音。
ゆっくりとしかし着実に、砂利を丁寧に踏みつぶすような力強さの足音は、多少の揺らぎを見せながらも確実に彼女へ近づいていた。
『本当に、この体は……凄い。ルーティとは少し系統が違うけど、私を十分に生かせるわ』
特に、その圧倒的な“力”は天使の能力を差し引いても目を見張る物がある。
氷を直接使うことによって詠唱の負担を縮めることが可能だというのは、この任務を単独で遂行するに当たっては強力な利点である。
多少脆く、すぐに消えるとはいえチャクラム精製すら可能となれば、力だけではなく彼女の技を最大限運用することも可能だ。
『でも、これで確定ね。生け捕り前提じゃクレスは私1人じゃ手に負えないわ。
 さっきのような時空剣技を使ってこない状態でやっと4分6分ってところかしら』
はち切れんばかりの恐怖を限界まで制御しつつ、慎重に慎重に自分と標的の彼我戦力差を見極める。
差し違えも出来るかどうか、とまで考えた辺りで、アトワイトは彼女の首を振らせた。
『……見失うな。あくまで任務はどちらかの生け捕りと魔剣の確保。そして器の安全確保。
 クレスへの攻撃は手段の1つ。確保した標的を、ミトスの所まで輸送するのであればここで死ぬのは論外よ』
しかし、アトワイトの手札はほとんどクレスに曝してしまった。
多少器に傷を付けた所で回復のエキスパートである自分なので、多少の無茶は叶う。
しかし本来は支援用のソーディアンであるアトワイトでは単体で運用しても効果が半減してしまう。
ましてやあの驚異的な技巧吸収能力相手では、次は通用するかどうかも怪しい。
『でもこれ以上のカードとなると、もう天使術しか無いけど…』
それにはコレットの完全屈服が絶対条件となる。しかも、それがクレスにとって有効打足り得るのかさえ分からない。
ありもしない天使術含めても、もう一枚決め手が要る。それがクレス攻略の絶対条件。
自分を、アトワイトを完全に生かせる、とびきりの前衛が。
『そうか……その手があった』
アトワイトの中に、天啓を得たような閃きが奔る。
アトワイトは彼女の聴覚を最大限に研ぎ澄ます。クレスの足音の中にノイズの様に混じる、筋肉と骨の軋み。
『この様子じゃまだ動けないのね。丁度良いわ』
使えない天使術と、死にかけの剣士。二つを組み合わせてアトワイトの中に計略が巡らされる。
彼女はニヤリと笑い、そして再び歩を進めた。





殺風景な空と無機質な粘性を帯びた海。
モノクロームな彼女の内的空間で、再び二人の女性が邂逅する。
「……そうやって、目を閉じて耳を塞ぐのもさぞや楽なのでしょうね」
大人の女性が、その経験の差を誇示するようにまだ年端もない少女を嘲った。
「最後に聞くわ。素直に私に全てを明け渡す気は、無い?」
少女は膝を折って顔を埋めたまま、何も反応しない。
沈黙が、波紋を広げていく。
その波紋が広がりきって、再び静寂が訪れた時、女性は少しだけ眉を顰めた後、指を弾いた。
「聞かせてあげる。見せてあげる。貴方の耳で、貴方の目で、克明に記された私の記憶を」
何もない空間に1人の少年が映し出される。
紅い服を、さらに血で染め上げ、骨が折れても内臓が潰れてもまだ足掻く少年の姿が。
慟哭を、それでも尚、絶対的な暴力の前に涙しながら、崩れ堕ちるその叫喚を。
「……どうして……」
少女が膝を抱えたまま、それだけを心の中から搾り出す。女性はその様を冷静に観察して、言葉で責める。
「哀しいでしょう。悔しいでしょう。貴方を助ける前に彼は崩れ落ちた。無様に無様に、あの人の様に」
少女の肩が、小動物の痙攣の様に震える。悔しさに、しかしどうしようもない自分自身に。
女性は、まるで聖母の様な慈愛の手つきで、その震える肩を撫でた。
そして、ゆっくりと子供をあやすように、耳元で声をかける。

「彼はまだ舞台を降りるには早すぎる……手を貸してあげましょうか?」
計略といっても、彼女は軍師でも指揮官でもない。
「これは契約よ。彼を助けてあげる。貴方に“彼女を殺した罪をやり直すチャンスをあげる”」
自分に出来もしないことを自発的に行うほど、彼女は自分の能力に酔ってはいない。これは唯の取引だ。
「賢い貴方なら分かるでしょう。彼を取り巻く状況を打破する為にはあの天使術が必要な事を。
 そして、今の支配差では貴方一人でそれを使えないことも」
少女がゆっくりと顔を上げる。その顔は、心の中であっても、まるで人形のようだった。
初めて自分の言葉に対応した少女を見て、彼女は聖母とは真逆の、人を棄てた軍人としての冷酷な言葉を放つ。

「彼を助けてあげましょう。その対価として、貴方の精神の死を以って今度こそ完全にその器をミトスに捧げなさい」

まるで、自分の中に湧き上がる、これからの彼女への同情を堪えるかのように。




【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:TP45% 善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 ??? 右の瞼に切傷・流血中
   戦闘狂 殺人狂 殺意が禁断症状を上回っている 左肩に傷・出血中 バンダナ喪失
所持品:エターナルソード クレスの荷物
基本行動方針:力が欲しい
第一行動方針:彼女を追う
現在位置:C3村・西地区ミトスの拠点跡付近

【アトワイト=エックス@コレット 生存確認】
状態:HP30% TP25% コレットの精神への介入 ミトスへの羨望と同情 
   思考を放棄したい クレスに対する恐怖 胸部に大裂傷(処置済)
所持品:苦無(残り1) ピヨチェック ホーリィスタッフ エクスフィア強化S・A
基本行動方針:積極的にミトスに従う
第一行動方針:ロイドを舞台に引き戻す
第二行動方針:エターナルソード・時空剣士の確保
現在位置:C3村・西地区ミトスの拠点跡付近

【コレット=ブルーネル 生存確認】
状態:魂をアトワイトにほぼ占領されつつある 無機生命体化 外界との拒絶
所持品:アトワイト・エックス@コレット・ブルーネルと同じ
基本行動方針:アトワイトの契約を受けるかを選ぶ
現在位置:アトワイト・エックス@コレット・ブルーネルと同じ

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