鬱蒼とした森。乱雑に立っている木々の上を飛び越しながら、男はあるモノを追い続けていた。
そのあるモノこそ、彼が追い求める獲物。
戸惑い、恐怖に怯えながら彼から逃げる姿を見て、男は一種の快感すら覚えた。
そのあるモノこそ、彼が追い求める獲物。
戸惑い、恐怖に怯えながら彼から逃げる姿を見て、男は一種の快感すら覚えた。
男・・・鼻までかかる覆面をし、派手に尖った頭髪を持ち、忍者の如き身のこなしを見せる男・・・
ここに来るまではトリプルカイツの一員として名を馳せていた男、
『幽幻』のカッシェルは、どこまでも続く森である男との追いかけっこをしていた。
ここに来るまではトリプルカイツの一員として名を馳せていた男、
『幽幻』のカッシェルは、どこまでも続く森である男との追いかけっこをしていた。
彼はゲーム開始当初から、殺し合いに乗ることを決めていた。
今回集められた面子の中には、彼の知り合いは一人も居なかった。
同じトリプルカイツのメラニィ、スティングル、そして隊長のヴァーツラフ・・・・・・
そういった仲間(彼にとってはただの同僚でしか無いかもしれないが)も無く、
他の連中にも信用できそうな者は一人も居ない。
更に彼の性格を考慮すれば・・・残虐で冷酷な特殊工作員としての彼・・・
このゲームのルール、たった一人が生き残る、死の試合に乗ることはさほど不自然なことでは無いと思われる。
今回集められた面子の中には、彼の知り合いは一人も居なかった。
同じトリプルカイツのメラニィ、スティングル、そして隊長のヴァーツラフ・・・・・・
そういった仲間(彼にとってはただの同僚でしか無いかもしれないが)も無く、
他の連中にも信用できそうな者は一人も居ない。
更に彼の性格を考慮すれば・・・残虐で冷酷な特殊工作員としての彼・・・
このゲームのルール、たった一人が生き残る、死の試合に乗ることはさほど不自然なことでは無いと思われる。
そうしてカッシェルは始動した。瞳に、冷たい闇を宿して。
彼の支給品は二つあった。
一つは両刀の剣・・・だが幾分刀身が短い、ショートソード。 本来彼が扱い慣れていた獲物とは勝手が違うが、握ってみれば案外使い心地は良い。
もう一つは変わった透器で、特殊なアイテムらしいが、使いどころを誤らなければいい働きをしてくれそうだ。
彼が動き出して十数分、森を移動していた彼はとうとう最初の獲物を発見した。
ローブを着込み、青い髪を後ろで束ねた、理知的な雰囲気を持つその男は、
カッシェルが襲い掛かった瞬間、脱兎の如く駆け出してしまった。
彼の負の雰囲気と鋭利な両刀を見て怯えたか、
それとも男にまともな武器が支給されていなかったか。
どちらにせよ不意打ちの機会を失った彼は、今こうして男を追いかけている。
体力が無いのだろう。大した時間もかからずに、男は疲弊し始めた。
彼の支給品は二つあった。
一つは両刀の剣・・・だが幾分刀身が短い、ショートソード。 本来彼が扱い慣れていた獲物とは勝手が違うが、握ってみれば案外使い心地は良い。
もう一つは変わった透器で、特殊なアイテムらしいが、使いどころを誤らなければいい働きをしてくれそうだ。
彼が動き出して十数分、森を移動していた彼はとうとう最初の獲物を発見した。
ローブを着込み、青い髪を後ろで束ねた、理知的な雰囲気を持つその男は、
カッシェルが襲い掛かった瞬間、脱兎の如く駆け出してしまった。
彼の負の雰囲気と鋭利な両刀を見て怯えたか、
それとも男にまともな武器が支給されていなかったか。
どちらにせよ不意打ちの機会を失った彼は、今こうして男を追いかけている。
体力が無いのだろう。大した時間もかからずに、男は疲弊し始めた。
勿論カッシェルの身体能力を考えれば、木々を自在に移動できる彼が男をすぐ簡単に捉えられるはずだった。
だが、そうしないのはただ男が疲れるのを待っていたから、
それだけではなく、彼の持つ異常なサディズムによるものなのかもしれない。
不意に男が立ち止まった。そして振り向きこちらを見上げた。
その表情は何かにとり憑かれたようにこわばっている。
諦めたか、それとも意を決したか。
だが、その奥に宿る光をカッシェルは確かに見た。
(気に入らないな・・・・・・・
) 頭の中でつぶやくと、カッシェルは木の枝から一気に跳躍した。とても生身の人間とは思えない身のこなしである。
男は更に上空に跳んだ彼に眼をやると、激しく両腕を振り始めた。
詠唱に入っているのだ、と空中に居るカッシェルは判断した。
「アクアエッジ!」
男が術を唱えた。
小さな水流の塊が渦を巻き、カッシェルに襲い掛かっていった。
しかしそれは命中しなかった。空中に居る彼に当たる寸前に、彼の姿が消えてしまったのだ。
目標を見失った水流は頼りなく宙に消えていった。
「!?」
男は狼狽し周囲を見回した。居ない。どこにも。
「俺は幽幻と呼ばれていてね・・・」
背筋の凍る、ぞっとするような声を聞いて男は硬直した。まるで地の底から這い出てきたような声だ。
しかし何より男を驚かせたのはその声が男のすぐ左から聞こえてきたことだった。
次の瞬間男の視界に鋭利な刃物が飛びこんできた。
咄嗟に身を反らせ致命傷は免れたが、左眉の上、額のあたりに浅い切創を負ってしまった。
そしてほとんど本能的に男はバックステップし距離を取った。
今は彼の姿が見える。
血を滴らせる刃物を手に漆黒の眼差しを浴びせてくるその姿は、暗殺者、死神を容易に連想させる。
そしてその獲物は確実に男・・・自分に向けられているのだ。
「こんな所で僕は!」
男はそう言うと懐から杖を取り出した。
柄の先端に鉄製のトゲ付き輪が付いている・・・打撃戦を想定して作られた戦闘杖、バトルスタッフだ。
そんなものを隠し持っているとは、この男、術で戦うのにこの杖では得は少ないと判断したか。
あるいはやはり最初から戦う気は無かったのか。
気に入らないな。カッシェルはそう思った。
自分以外は全て敵というこの状況で、戦わないという選択肢などありえなかった。
戦わずに逃げてもいずれ戦う時は来る。それともこの男はその時まで耐え凌ぐつもりなのかもしれない。
そう考えている内に彼の周囲の空気が荒み始めた。次第にそれは緑色の真空を帯び、周辺の物を切り裂き始めた。
「エアスラスト!」
風の爪術か・・・彼はそう思った。実際には彼は風を利用した爪術をほとんど知らない。
もしかしたらこの男が使っているのは爪術とは別のものなのかもしれない。
カッシェルは慌てる素振りも見せず跳び上がり、再び空中から襲い掛かろうとした。
だが、彼の思惑通りには行かなかった。
緑色の真空は、凄まじい勢いで回転しながらこちら目掛けて浮き上がって来たのだ。
「ん・・・!?」
宙を舞っていたカッシェルは、その攻撃を避けることは不可能と思われた。
だが、森は彼の最も得意とする戦場である。空中ですばやく身を翻し身近な木に捕まるなど造作も無いことだった。
直も真空の刃は彼を追うが、すばやく木々を移動してかわす。
回避運動をしつつ、序々に男との距離を詰めていった。
そしていつの間にか彼は男の間近まで接近していた。
だが、そうしないのはただ男が疲れるのを待っていたから、
それだけではなく、彼の持つ異常なサディズムによるものなのかもしれない。
不意に男が立ち止まった。そして振り向きこちらを見上げた。
その表情は何かにとり憑かれたようにこわばっている。
諦めたか、それとも意を決したか。
だが、その奥に宿る光をカッシェルは確かに見た。
(気に入らないな・・・・・・・
) 頭の中でつぶやくと、カッシェルは木の枝から一気に跳躍した。とても生身の人間とは思えない身のこなしである。
男は更に上空に跳んだ彼に眼をやると、激しく両腕を振り始めた。
詠唱に入っているのだ、と空中に居るカッシェルは判断した。
「アクアエッジ!」
男が術を唱えた。
小さな水流の塊が渦を巻き、カッシェルに襲い掛かっていった。
しかしそれは命中しなかった。空中に居る彼に当たる寸前に、彼の姿が消えてしまったのだ。
目標を見失った水流は頼りなく宙に消えていった。
「!?」
男は狼狽し周囲を見回した。居ない。どこにも。
「俺は幽幻と呼ばれていてね・・・」
背筋の凍る、ぞっとするような声を聞いて男は硬直した。まるで地の底から這い出てきたような声だ。
しかし何より男を驚かせたのはその声が男のすぐ左から聞こえてきたことだった。
次の瞬間男の視界に鋭利な刃物が飛びこんできた。
咄嗟に身を反らせ致命傷は免れたが、左眉の上、額のあたりに浅い切創を負ってしまった。
そしてほとんど本能的に男はバックステップし距離を取った。
今は彼の姿が見える。
血を滴らせる刃物を手に漆黒の眼差しを浴びせてくるその姿は、暗殺者、死神を容易に連想させる。
そしてその獲物は確実に男・・・自分に向けられているのだ。
「こんな所で僕は!」
男はそう言うと懐から杖を取り出した。
柄の先端に鉄製のトゲ付き輪が付いている・・・打撃戦を想定して作られた戦闘杖、バトルスタッフだ。
そんなものを隠し持っているとは、この男、術で戦うのにこの杖では得は少ないと判断したか。
あるいはやはり最初から戦う気は無かったのか。
気に入らないな。カッシェルはそう思った。
自分以外は全て敵というこの状況で、戦わないという選択肢などありえなかった。
戦わずに逃げてもいずれ戦う時は来る。それともこの男はその時まで耐え凌ぐつもりなのかもしれない。
そう考えている内に彼の周囲の空気が荒み始めた。次第にそれは緑色の真空を帯び、周辺の物を切り裂き始めた。
「エアスラスト!」
風の爪術か・・・彼はそう思った。実際には彼は風を利用した爪術をほとんど知らない。
もしかしたらこの男が使っているのは爪術とは別のものなのかもしれない。
カッシェルは慌てる素振りも見せず跳び上がり、再び空中から襲い掛かろうとした。
だが、彼の思惑通りには行かなかった。
緑色の真空は、凄まじい勢いで回転しながらこちら目掛けて浮き上がって来たのだ。
「ん・・・!?」
宙を舞っていたカッシェルは、その攻撃を避けることは不可能と思われた。
だが、森は彼の最も得意とする戦場である。空中ですばやく身を翻し身近な木に捕まるなど造作も無いことだった。
直も真空の刃は彼を追うが、すばやく木々を移動してかわす。
回避運動をしつつ、序々に男との距離を詰めていった。
そしていつの間にか彼は男の間近まで接近していた。
男が気付いた時にはもう遅かった。彼は一気に飛び掛り、両刀の刃を彼に向けた。
「くっ!!」
咄嗟に杖を構え応戦しようとするが、術士である彼にとって接近距離での格闘戦など不慣れなものであった。
「解体作業・・・その1」
不気味につぶやくと同時にカッシェルはショートソードを高速で振り回し、男の杖をバラバラに解体した。
「何っ!?」
「ハッ」
自身を守る唯一の装備を失い、男は激しく動揺したようだった。
しかしカッシェルは少しも気を緩めることなく更に間合いを詰めた。狙いは一つ。
詠唱する暇も与えない。彼は刃を男の首筋にあてがい、振りかぶった───
「くっ!!」
咄嗟に杖を構え応戦しようとするが、術士である彼にとって接近距離での格闘戦など不慣れなものであった。
「解体作業・・・その1」
不気味につぶやくと同時にカッシェルはショートソードを高速で振り回し、男の杖をバラバラに解体した。
「何っ!?」
「ハッ」
自身を守る唯一の装備を失い、男は激しく動揺したようだった。
しかしカッシェルは少しも気を緩めることなく更に間合いを詰めた。狙いは一つ。
詠唱する暇も与えない。彼は刃を男の首筋にあてがい、振りかぶった───
「・・・・・斬首」
「うわぁぁぁあぁ!!!」
男の悲鳴が森にこだました。
カッシェルは振りかぶった剣を中途半端に構えたまま、呆気に取られて眼下に消えていった男を見やった。
あの一瞬、男は微かに身を後退させたようだが、そのまま一気に茂みの中へ落ちていってしまった。
どうやらこの森の中で結構な段差ができていたようだ。
男が立ち止まった理由もこれか。カッシェルは独り納得した。
男の悲鳴が森にこだました。
カッシェルは振りかぶった剣を中途半端に構えたまま、呆気に取られて眼下に消えていった男を見やった。
あの一瞬、男は微かに身を後退させたようだが、そのまま一気に茂みの中へ落ちていってしまった。
どうやらこの森の中で結構な段差ができていたようだ。
男が立ち止まった理由もこれか。カッシェルは独り納得した。
さて・・・これからどうする。
段差は結構あったが、男はそう遠くに行っているとは思えない。
探索は面倒そうだが、今すぐ追いかけて行くのが妥当な判断だ。
段差は結構あったが、男はそう遠くに行っているとは思えない。
探索は面倒そうだが、今すぐ追いかけて行くのが妥当な判断だ。
しかしそうはできなかった。彼は背後から、また別の誰かの気配を感じ取っていた。
まだ遠くに居る。こちらに気付いてはいないようだ。
あの男は恐らく重症を負ったのだろう。当分動けはしまい。
まずはこちらの様子を伺うのを優先すべきか・・・
まだ遠くに居る。こちらに気付いてはいないようだ。
あの男は恐らく重症を負ったのだろう。当分動けはしまい。
まずはこちらの様子を伺うのを優先すべきか・・・
そう結論付けたカッシェルは音も無く跳躍し、再び木々の中に消えていった。
【カッシェル 生存確認】
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯
状態:無傷
行動方針:ゲームに乗る、近くに居る者の追跡
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯
状態:無傷
行動方針:ゲームに乗る、近くに居る者の追跡
【キール 生存確認】
所持品: バトルスタッフ(破壊) ???? ????
現在位置:B2の森林地帯
状態:額に切創、 全身打撲
行動方針:なるべく戦いを避ける?
所持品: バトルスタッフ(破壊) ???? ????
現在位置:B2の森林地帯
状態:額に切創、 全身打撲
行動方針:なるべく戦いを避ける?