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テイルズオブバトルロワイアル@wiki

Turn of the stray crow

最終更新:2019年10月13日 20:31

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だれでも歓迎! 編集

Turn of the stray crow


そうして彼らが最後に歩を進めてこそカーテンが上がり、物語は本当の開幕を歌う。
しかして既に舞台は混沌、演目を仕損じれば端役に死す。では、始まりを告げる第一手を示せ。


俺の体はやけに正直だ。走り抜いて息を切らしたグリッドは自分をそう評価した。
まるで雲海の中にいるか――実際には知らないから、雲海という言葉に対する自分の想像図だけど――のように目の前には乳白色の世界が広がっている。
この色のせいで境界は定かではないが、ここは地図上で言うところの唯一の村C3だ。そしてこの島で今一番危険度の高いエリアでもある。
俺は息も絶え絶えに二人のほうをちらりと見た。
一番分かりやすく息を呑んで身構えるキールと何を考えてるのか一向に推し量れないその目を閉じたメルディ。
二人の反応は確かに対照的だったが、その反応をもたらした思いはきっと同じだ。
眼前の光景はミクトランの仕業か、果実作物などといった生命感は欠片もなく、背丈の低い雑草が何本かぽつぽつとあるだけだ。
遠くを見渡すことのできない以上、この死にかけの南地区は視界が開けている分、逆にぼんやりとしか景観を把握できない。
ここは文字通りの意味で、五里霧中の世界だ。
そんな何も見えない靄の中、二人はその向こうに待っている“何か”に対して覚悟のようなものを決めようとしている。
はは、と自分をせせら笑う様な声が内側から聞こえる。
覚悟? “そんなものすら俺には無い”。
俺は確かにこの光景に驚いてはいるさ。でも、驚いているだけ。動物にだってそれくらいはできる。
そこから沸き立つべきものが何処にも無い。
ただ純粋にファンダリアとは違う白い世界というものの珍奇さ、物珍しさに驚いていると自分を解釈したグリッドはそう思った。
真っ白な世界に人影はない。ロイドもヴェイグもカイルもこの奥に行ってしまったようだった。
「この霧……―――め、入って―――らを闇討ち――――めて――って魂胆か」
誰かの音に、俺には何も返さなかった。
まだ息が弾み単語を紡ぐことすらできないし、それに、返すべき言葉が見つからなかった。
明らかに自然と生まれたものではないこの霧には意図がある。何かを成そうという意思がある。
でも、きっとその意思の中に俺はいない。この霧の主の眼中にきっと俺は入っていない。
魚を獲ろうと網を張って、引き上げたときについてくる海月か昆布のようなものだ。
この霧の向こうには俺を待っているものが無いのだから、俺にとって意味を成さない。故にかける言葉が無い。

歯牙に掛けてくれる誰かなんて、俺にはもう有り得ない。


呼吸は水分と交じり合い、窒息しない程度の息苦しさを常に与え続けている。
思考にも、精神にも何かが息苦しい。しかしこの圧迫感は海の膨大さのそれとは違う。
まるで閉じ込められたよう――そう、箱の中に閉じ込められたように。
その時だった。少し、何処からかむず痒いような煮え切らない視線を感じて、そちらをちらりと振り向く。
全てを覆い隠す白の結界の中でに浮かぶ彼女の褐色は妙に、俺の視線を集中させる。
自然と目線が体から、その幼子らしい大きな頭に移っていく。
直ぐにでも手折られてしまいそうな頸、片手で塞げる口、親指だけで潰せそうな鼻と移り、そうして挿れれば呑み込まれてしまいそうな暗い淵へ。
視線の先にいた少女はキールに寄り添いながらこちらを見ていたような気がした。
あ、と声を出そうとして、未だ息荒げる身体が吸い込もうとした酸素と口で鉢合って噎せる。
ガハンゴホンと悶え、呼吸が整うまで数秒。その後に面を上げた俺の前には、もう俺の方を向いた彼女は、何処にもいなかった。
錯覚だ、そう思う自分がいる。
彼女が俺を見る理由がない。詳しい話は聞いても理解しきれなかったが、彼女はもう心を病んでしまったらしい。
そんな彼女がどうして俺を見る。
いや、そもそもがただの勘違いじゃいのか? 或いは壮大に滑稽な思い上がり。
偶さか向いた先に俺が居ただけで、実際は“俺の背中にあるモノを見たかったのに、俺が邪魔だっただけなのかもしれない”じゃないか。
酸欠なのか、考え方自体が自意識過剰だとは思う。
だが、それを素直に享受出来ない何かが、俺の中で潮騒の様に唸っている。
それじゃ余りにも俺が惨めじゃないか。俺なんか比べものにならない位惨めな彼女の眼中にすらなかったら、俺は虫螻以下じゃないか。
一瞬に刻まれた、無感動な彼女の少しだけ悲しそうな瞳が脳裏で際立つ。
何が俺をざわめかせる。何も残っていないこの俺に、ざわめかせる何かが残ってるとでもいうのか。
だとしたらメルディ、お前には“この矛盾”が見えてるっていうのかよ。
教えろ。なんだそれは。
教えて。いや、教えて下さい。それがお前にとって一瞥に過ぎない塵芥でも構わないから。
頼むから、俺に、何もない俺に、何かを呉れ。
“それがなければ俺はここに居られない”



「――――――――ッド。聞いているのか?」
聞き慣れた筈の声が、まるで冷や水のように鼓膜を打った。痙攣に近い反応でグリッドはキールの方を向く。
未だ過ぎた呼吸音だけが反響し、心臓を酸素で満たすように心音は頭蓋を圧迫している。
それだけで、今も吸い込んだ霧の様にその身は真っ白に塗り潰されそうになる。
「あ、ああ。聞、いてる……」
キールが何を言ったかも判らないまま、グリッドは曖昧に濁った返事をした。
こういっておけば、当りこそすれ、会話を途切れさせてバツの悪い気分にする程外すこともない。
そう思ってから、ようやく自分の変化に気づいた。
なんだ、俺って空気読めたんだ。この俺が“空気を読んだのか”。
嘗ての俺なら、例え身体が疲労困憊でもきっとこんな時に周りに合わせたような発言はしなかっただろう。
俺は漆黒の翼の団長だったからだ。ミリーやジョンの手前見得を切り続けなければならなかった。
でも、今は、もうそんなどうでもいいものの為なんかに縛られる理由も
「ガハァッッ!!」
気道が裂く気分で息を一気に吸い込み、脳に浮かんだ何かを押し潰す。
(い、今、今何を考えた!? 違う。違う。ちがう。それだけは違う!!)
それだけは認めてはいけない。それを認めたら全部終わる。
俺がいままでやってきたことが全部強迫観念だと、奴の言葉を肯定してしまえば俺の意味が本当に無くなる。
「2人ともロイドやミントを発見できていればいいんだが……」
それを俺に知らしめた男は、酷くどうでもいい言葉を紡いでいく。
なんて白々しいのだろう。あの呪いの言葉を全身に浴びた俺には、そうとしか思えなかった。
俺の全部を残さず奪い取っておいて、今更気休めを吐くなんて論外にも程がある。
自然と、奥歯を噛む力が強くなっていた事に気づいた。乳臭い反抗心が、発作的に浮かんでくる。
絶対に手放さない。例え奴の言う通りにスカスカな伽藍の夢だとしても、これだけは手放しては“いけない”。
その為なら何だってできる。それを得られるのならば、何かを失っても仕方ない。
それが、それこそがバトルロワイア



「どっちにせよ1歩遅かった、か」
キールのほんの少しだけがささくれた声が俺を現実に引き戻す。耳を澄ませば、確かな戦場音楽が流れていた。
「そんなこと、言う暇、あったら、早く、応援に」
言葉は発せても未だ絶え絶えな呼吸の中、グリッドは言うが、キールは何かを考えたように爪を噛んだまま反応しない。
そしてやっと呼吸が落ち着いてきた矢先の俺に、キールはようやく口を開く。
「その前に……グリッド、もう一度だけ問う」
はあ? と自分の中に疑問符が浮かんでくるのを俺は実感した。もう少し呼吸が整っていたら実際そう言っていたかも知れない。
「……何をだ?」
「同じ問いだ。“使う勇気は出たか?”」
意図の掴み切れない言葉に、俺は心の中で首を傾げた。
「何で、もう一度聞く? 村に入る前に、言っただろ?」
「……別に大した意味はない。強いて言うなら覚悟の“硬さ”の確認だ。
 なまじ軟弱な覚悟は余計に性質が悪い。怯んだ拍子にその刃が僕に向かないとも、限らないだろ?」
キールが特大にいやらしい笑みを浮かべた。だが、俺の心は怒りを覚えなかった。
もしそのいやらしさ、陰険さが直に俺を刺していたのなら確実に怒り、しかし卑屈に返したと思う。
だが、それは皮肉というよりはむしろ自虐的な印象を俺に与えていた。
「大した意味はない。もう一度、聞いてみたいだけだ。その覚悟が嘘じゃないなら、簡単だろ?」
言っている本人が揺らいでしまいそうな、そんなちぐはぐな雰囲気。
その違和感に小さな棘のようなもの感じながら、俺はその問いに意識を向けた。
「同じことを言わせるなよ。俺はこの手で――――」



その瞬間、メルディの瞳が俺を捉えた“気がした”。と同時に、喉が詰まる。
強烈な違和感だった。すんなり行く筈の言葉が体内で粘って通らない。
「た、いせ」
何でそんな責めた目をする。そんな眼を俺に向ける。俺はお前となんの関係もないだろう?
先ほどまでの酸欠に近い苦しみを受けながら俺は気づく。
違う、メルディの眼は相変わらず俺の背中だ。
「つ…………な……」
俺がメルディの視線を感じているんじゃなくて、メルディの眼に映った俺の視線が気になるんだ。
不自然なまでの自分の視覚と、今更問い直したキールを強く怨みたくなった。
何でもう一度聞いたんだ。聞き直さなきゃ、その機会が無ければ答えはもう覆らなかったのに。
揺らいでいる自分が、その答えにまだ納得してない俺がそこに写ってしまったじゃないか。
ああ、だからなんだ。俺のバカな頭は漸く理解した。
人は神ではない。俺にメルディの何かが解らない様に、メルディにも俺の苦悶が解るわけがない。
だから、この矛盾の病根は俺の中にしか有り得ない。“納得してないのは俺なんだ”。だから矛盾が残り続けるんだ。
左手に埋め込んだものがじくりと痛んだような気がする。ポケットの中の、要の紋を摩っても慰めにもならなかった。
なんでだよ、何に納得してないんだよ。
解ってるだろ。俺にはもう何もない。全部嘘っぱちだったんだ。
でも何も無いままじゃ俺は俺でいられない。だから本物になるんだよ。本物を手に入れて俺は、俺を取り戻すんだ。
何の為に俺はその手にそれを嵌め込んだんだ? 何の為にその紋を預かってるんだ?
こんなにもやるべきことはハッキリしている。馬鹿でも分かる答えに何で納得しない?
1+1が2になることに疑問を持ってたらなァんにも始まらないだろう!?
頼む。誰か俺の背中を押せ! ほんの少しでいい、この揺らいだ天秤を傾けろ。
刃で刺してくれても魔法で焼いてもいい。その一押しで俺の覚悟は其方に傾く。“結末は決定する”。
なんで今更惑うんだよ惑いっぱなしなんだよ。今更感バリバリじゃんか。
正しいのはどっちだよ現実はこっちだろ真実はそっちだろ正解はあっちだろ!?

阿亜、蜘蛛のイトがグルグルグルグルグルルルルルルグルルンルン。
“いい加減に認めろよ。『それしか道は残ってない』んだろ? グリッドよお!!!!!!!!!!!”
                                俺のココろヲガラみとっていく。此処は、蜘蛛の巣だ。





その時だったか。
圧殺されそうな心の中の悲痛な軋みが、何かを喚んだのだろうか。
安易な金属音の甲高い合唱でもなく、野趣溢るるとも打撃音とも違う戦場音楽が響き渡る。
今までただの剣戟音だと思っていたものが、どんどんと大きく、大胆に、そして複雑になっていく。
一対一では絶対に出せない複雑なオーケストラ、“混戦”の剣戟音が、霧の中を満たしていた。
その凄烈な剣の音が、ホンの少しだけ繭のように絡む糸を千切った感覚。
深海の中で、微かな酸素を得たような安堵感。
そんな錯覚と共に俺の中に出来た微かな隙間で何かがザワついたのは殆ど同じ時だった。

この直感は――――――――――――――――ヤヴァイ。



「どういうことだ? “何故来ない”?」
キール=ツァイベルは口元に手を当て、その言葉がその掌より先に漏れないようにして言った。
今自分はいったいどんな顔をしているのだろうか、考えたくもなかった。
片思いの相手が自分のことも好いているのではないかという妄想が裏切られたかのような情け無さの極致の表情。
そんな第一候補でも少し緩めの第三候補でも、ともかく表情に出すわけには行かなかった。
グリッドに悟られないようにそれとなく質問を与えて時間稼ぎをしてみた意味が無くなる。
だが、堪らず口を押さえてしまっていた。それ程キールが受けた衝撃は“持続的”だった。
一秒経つごとに累乗で焦燥が募っていく。
西でロイド達が誰かと戦っていることを確認して半ば確定させた推論が音を立てて崩れていく。
キールの読みでは、ミトスは自分達が来たと同時に威力接触を試みてくるはずだった。
気づくのに遅れて多少時間を過ごしたとしても、これだけの時間気付かないと言うのは考え難い。
此処まで時間が経ってもミトスが来ないとなると、一体どういう可能性があるのか。
自分達の存在が最初から無用の長物と断じたか、否、それは考え難い。
拡声器でキール達を呼んだのは確実に“首輪の知識”を欲してのことだ。それ以外の解釈は楽観論に過ぎる。
あるいは自分の読みにミトスの読みが追いついていない、この裏切りの脚本にミトスがついて来れていない可能性があるか。
これも無しだ。そこまで自分を過大評価する気にはならないし、過小評価していたならそもそもこんな計画は立てない。
この水面下の策謀に呼応できるという確信あってこその一手なのだ。
だが、ならばなんで来ない。西で誰かが戦っている今この瞬間しか、勝利を確定させられるタイミングは存在しないというのに。
何か、来る事の出来ない事情が発生したとでも言うのか。



「グリッド、西に移動するぞ」
落ち着き払った所作を目指そうとして、微かに声が上擦る。
動揺が、焦りが全身を支配していく気がした。
ミトスが意味も無く僕たちを見逃している、という可能性を捨てるなら、残った可能性は一つしかない。
今ロイドと戦っているのはクレスだとばかり思っていた。
もしクレスもティトレイもここにいないなら、ミトスが態々ロイド達を相手にする理由が無い。
陣地を先んじて手に入れた者の特権、地の利とこの罠を利用して待ちに徹すればいいからだ。
いや、むしろ率先して僕達の合流を水際で止める為にこちらに仕掛けてくるはずだ。
論理に照らせば首輪解除の法を今からミトスが得るならこのタイミングしかない。
故に戦闘が起きていようが起きていまいが、ミトスはこちらにくるはず。キールはそう思っていた。戦いが起きているなら尚更だ。
ならば戦いが起きているにも関わらず、ミトスがこちらに来ることが出来ない可能性は一つしかない。
西の渦中にミトス本人が飲み込まれている可能性だ。
少なくとも現在奴はこちらに手を回す余裕を喪ってしまっているという推測は、疑いこそ出来ても否定は不可能だ。
ならばどうするべきか。その明確な方策を打ち立てるよりも先に、キールの心は焦りに駆られていた。
身体が北西に向いて、メルディの手を引き、情報を得て筋を改め、それからそれから――――

キール=ツァイベルはそこで初めて、何か酷く歯車が噛み合わぬことを理解したのかもしれない。
「どうした? 何をしている?」
眉間に寄った皺と苛立った眼を向けながら、東を向いた。
雲海に真っ向から対峙するかのように背を向けて直立に立つ男が其処に居た。
キールにとって捨て札に過ぎない男は、不動のままじいっと東を向いている。
「おい、僕の話を聞いているのか?」
「なんか、感じないか?」
その左手は懐に入れたまま姿は見えないが、空いた右手の拳が未だ真白い刀を力強く握っていた。
「はあ?」
「だから、なんか、東がヤバくないか? こう『ざわぁ』としたような」
狂ったとしか思えない発言に、キールの精神がささくれる。
人の気も知らないで電波ユンユンか、この愚図が。
「東に何があるっていうんだ。時間が無いから詳しくは言わないが、東サイドからティトレイ達が村に寄ってくる可能性は乏しく、
 西で戦端が開いている以上少なくとも二つの陣営がそこで拘束されてるんだ。手間の空いているだろう―――」
ミトスが僕達の所へ来ないんだから、誰も居ない東南になんて用がある訳が無い。
そういいかけるところをキールは渾身の力で抑え切った。それの情報を晒す事は確実に失着以外の何物でもない。
「と、兎に角お前の思い過ごしだろ。下らない当てずっぽうで目の前の現実まで引っ繰り返されて堪るか」
何よりも理屈理論から推するキールにとって、グリッドの言葉は気の弱さ以外の解釈は有り得なかった。
「だけどよ何か、よく解んないけど、何か厭なんだよ」
この莫迦は、あれだけ懇切丁寧に言ってもまだ解らないのか。

「厭なのはこっちなんだがな。厭だ嫌だと言えば現実が変えられるとでも思っているのか、この盆暗が」



青筋が立っても不思議ではない凶相で、キールは吐き捨てた。あの時と同質の感情が胆の中で急速に生成されていく。
ここに来る前とまったく同じことをまだ言う。この期に及んでも、お前はどうして自分と相反するのか。
「グダグダ言って、お前唯西に行きたくないだけじゃないのか? 音で聞くだけでも危険地帯だって分かるものな。
 ああ嫌だ嫌だ、戦いなんてしたくない血なんて見たくない。アレか、面倒に巻き込まれたら負けかなと思ってるという奴か?
 屑か、お前は屑か何かか。成程その観点に立てばそのぶっ飛んだ話も言い訳にしては面白いな」
駄目だ。そう客観的に思うキールの中で自制のブレーキが火花を散らして現実と擦れ合うも、どうにも制御が利かない。
ロイドを呪い殺すプロセスは冷徹に組めるのに、こいつにはどうしても生の感情が言葉に乗ってしまう。
「言っただろう? お前の本質は凡人だ。無能だ。虫螻だ。それを上手く嘘で自分を誤魔化して来たに過ぎない。
 それはもう剥ぎ取った、この僕がな。卑劣には戦いたくはない毒は使いたくない手は汚したくない―――“そんな物語の主人公みたいなことをいうなよ”。
 唯の端役の僕らが、そんな高貴な立ち位置に居られる訳が無いだろう?」
自分という存在はなんと卑劣なのだろうか。
自分の感情が何であるかを客観的に把握できているのに、それを止められない愚劣さは実に許容しがたい。
これは唯の“嫉妬”なのだ。そんな低級の感情に振り回されている。
僕は今から手を汚す。ミトスに尻尾を振って、ロイドを殺し、クレスを殺し、“条件が整えばミトスも殺すかもしれない”。
「光があれば闇があるように、なんて洒落た事は言わない。だが“零和の損得で成る”このバトルロワイアルで、対価無しに願いは叶わない。
 望みを捨てない限りは僕達は、光ってる奴等よりもより多く手を汚し続けるしかない。これが現実だ」
そう、現実なのだ。その身に何一つ秘めない自分は、このたった一つの願いを叶えるだけでもそれだけ外道に落ちなければ成らない。
もしかしたら、それでも願いに届かないかもしれないという弱者振り。
それはとても痛くてとても痒くてとても辛くてとても死にたくてとても苦しいことだと分かっていても、“それしか手は無いのだ”。
ロイドやカイルには絶対に理解できないこの業を、誰が理解してくれるというのか。

それを理解できるとしたら、きっと、凡人以外に有り得ない。

「戦場で手を汚せよグリッド。悩むことなんて何一つ無い。“お前はこっちの住人だ”」
同病相哀れめる存在が一人でも欲しい、という哀願。
僕はこれだけ手を汚してるのに、お前はまだ綺麗なままでいようというのか、という妬み。
穢しこそできても“僕はきっとこいつを殺せないだろう”。
この軟弱こそが、凡人が凡人たる虚弱。
その弱さを、僕はグリッドを鏡として自分に写し取っているのかもしれない。
だからこそ、アイツがが綺麗なままでは困るのだ。穢してしまえと感情が戦慄く。
凡人にもそんな生き方が出来るのかと、有り得ない夢を見てしまうから。




グリッドは微かに肩を震わせ、無言でその罵倒を背中に受けていた。
耐える、という言葉が正に相応しい有様だった。
「わからねえよ……やっぱり俺には何にも分からねえよ!!」
堰が切れたように放たれた叫び声が微かに靄を吹き飛ばしたような気がした。
「俺は確かに何も無い。何も残ってないし残るものも無い。俺に出来ることなんて、一つ有るか無いかだ」
霧に滲んで曖昧な境界が、さらに曖昧に暈けていく。
背に隠れてキールに見えない位置で、グリッドは自らに埋め込まれたエクスフィアを翳す。
ここまで、ここまで来ているのに、最後の踏ん切りが付かない。もう逃げ道など無いというのに。
「でも、だからって……悩んじゃいけないのかよ……何にもない奴は、悩む資格もないってのかよ……
 凡人の屑にだって、悩むことぐらいあるんだ!! 俺は、せめて自分で納得したい。それすらも許されないのか? お前だって凡人じゃないか!」
「それぐらい自分がよおく知ってるさ!! だから断言できる。悩むなんて贅沢、僕達には許されないに決まってる。 
 ここで命を落とした44人、一体どれほどの奴が悩み抜くだけの時間を与えられたと思ってる!?
 何人が事態を掴めずに死んでいったと思ってる? ここはそういうモノなんだ! 納得出来なきゃ、息もままならない世界なんだ!」
キールは激しく感情を振りまいた。ここに至るまでの自分の苦しみが無価値にされてしまうような気がしたから。
だから、まるで自分に言い聞かせるように自らの言葉が痛かった。

痛みを傷みで塗りつぶすようにして、最後の言葉を絞り出した。
迷わぬように、惑わぬように。どれほど不器用でも、自分にはこの生き方しか残っていない。
「だからそうやって綺麗事に逃げ込むなよ弱者。そんなだからお前は全部を失った。
 僕は絶対に失わない。たった一つ、たった一つ最後に守りたいモノだけは、例え全てを敵に回してでも守ってみせる! 
 僕は間違っているか? さっきみたいに根拠ゼロでやってみせろ。いくらでも論破してやるから。さあ、お前は僕を否定できるのか!?」
まるで逃げ出すような有様で東に突撃するグリッドに出来たことは顔をキールに向けず、無能の言葉絞り出して逃げ出すことだけだった。
それに応じたグリッドの声は悲痛を越えて、もはや末期の拷問のようだった。

「違う、そんなんじゃ、何かが違うんだよォ!! ちっくしょうがああああ!!!!!!!」

そうして烏は逃げ出した。
進退は極まり、降参とも言えず、自らが感じた違和感の指す方向へ逃げ込むしかなかった。
何が違うとも、かといって何が正しいのかも反論できない赤子の言葉は掻き消える。
その速度が、最早異常としか思えないほどだった事実は、直ぐに霧に呑まれて見えなくなった。




呼吸を荒げながらキールは自らの顔に手を当てる。顔全体から噴き出る玉のような汗が掌に吸われ、また皮膚を濡らす。
自分の息を吸うようにして、キールは可及的速やかに自らを立て直していた。
「…………行くぞ、メルディ」
そういって、キールは踵を返した。メルディはただ一言『いいの?』と云っただけで何も言わない。
「別に、あってもなくても困らない屑札が消えただけだ。本命は、ここにあるからな」
キールは懐の中のハロルドのメモを服の上から確認した。
エクスフィア技術とレンズ技術、未知の技術の複合で成り立つ首輪のシステムとそこから推察できる首輪の統合制御装置の存在。
燃えカスの存在しない首輪の爆破の正体とは、内蔵された要の紋を破壊することによる局所的なエクスフィギュア化=体細胞の過剰増殖という絡繰り。
その3つは彼女のメモと自らの調査から把握されていた。
恐らくは誰も持ち得ないこの情報こそが、あらゆる計略の要になる。この手札を慎重かつ大胆に運用する以外に凡人たる自分に活路はない。
それに比べれば捨て駒程度のグリッドを切ったところで問題は欠片もない。
村から逃げ出すなら問題ない。万が一誰かと接触しようが、アレは重要な事項を殆ど何も知らない。幾らでもフォローが可能だ。
万が一、優勝しなければならない状況に陥ったときだけが不安といえば不安か。
ようやく落ち着いた手でキールは懐中の時計を開く。まだ時刻は3時を切っていない。
今から全力疾走すれば、橋を越えて東側への亡命が成らないこともない。禁止エリアの柵が完成しその局面に陥ると面倒だ。
が、現時点で案ずる必要はあまりない。少なくとも凡そ正午のシャーリィの死から24時間は首輪による爆殺は無い。
エターナルソードさえ押さえることが出来れば、それまでの手間を考えても釣りが来るだろう。
“いざとなれば、もう一つの時の鍵を使って向こう側に渡ればいいのだ”。
「とにかく、情報が足りない。西で誰が戦っているのかが分からないと埒も開かないか」
もし、西で戦っているのがミトスならば、急がなければならない。
ミトスが死亡する可能性。確実に、確実に最悪の可能性だ。クレスとロイドではクレスの勝ちは火を見るより明らか。
そしてクレスは僕の制御下には絶対に収まらない。これでは詰んでしまう。
キール、額を揉みながら唸った。
西への歩みを始め、キールの脳は回転し続ける。



ミトスの死。それが最悪だ。だが、本当に最悪な可能性が未だ残っている。
もう一つの最悪。ロイドが生き残ってしまう、もしくはロイドが勝つ可能性が残ってしまった場合。
その時、僕はどうするのか。まだ僕は旗色を変えてはいないが、ロイドを見殺しにする覚悟で此処に来た。
そんな僕が何食わぬ顔で何もなかった様に、ロイド側に付くなんてことが出来るだろうか。
ミトスの立場が弱くなって、ロイドと拮抗した場合、僕はどちらに付くのか。
『ロイドには先がないからミトスに付く』という大義名分を失った後で、僕はこの外道を歩み続ける事が出来るのか。
キールは口を大きく歪めて笑いを作ったが、到底和めるようなものではなかった。
ロイドが勝つ。有り得ないとはいえ心を痛めない最高の結末な筈なのに、それを放棄してしまった自分にはそれは最悪の結末でしかないというのはなんという皮肉か。
どっちにしても何れ遠くない未来で確実に僕は手を穢す。そんな未来の裏切り者に、相応しい地獄と云うことか。

「いいさ。この局面甘んじて受けてやるさ。それでも僕が勝つ。その結果だけは譲らない」

狂ったような笑いを浮かべることだけが、推論不可能な未来への恐怖を堪える術だった。


キールの横を歩く少女は、一度だけ東の方に振り向いた。
ぼそりと呟き、再び彼の背中を追い続ける。
「バイバ、無理だよ。ロイドの翼でも越えられない。そんな羽根じゃ、何処にも飛べないよう」

その声は彼女の望んだとおり誰にも聞こえない。意味のない言葉なのだから。


こうして、役者は全員が壇上に立つのです。
咎の娘も、狂い始めた歯車も、迷う烏も霧の中に呑み込んで、演目は静かに――――――――――――――――――ようやくその幕を上げました。


【メルディ 生存確認】
状態:TP50% 色褪せた生への失望(TP最大値が半減。上級術で廃人化?)  神の罪の意識 キールにサインを教わった 何かが見えている?
所持品:スカウトオーブ・少ない トレカ カードキー ウグイスブエ BCロッド C・ケイジ@C(風・光・元・土・時)
    ダーツセット クナイ×3 双眼鏡 クィッキー(バッジ装備中) E漆黒の翼のバッジ
基本行動方針:もう少しだけ歩く
第一行動方針:もうどうでもいいので言われるままに
第二行動方針:キールと共に西へ
第三行動方針:ロイドの結果を見届ける
現在位置:C3村南地区→C3村西地区

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:TP55% 「鬼」になる覚悟  裏インディグネイション発動可能 ミトスが来なかった事への動揺
   ロイドの損害に対する憤慨 メルディにサインを教授済み 先行きに対する不安
所持品:ベレット セイファートキー キールのレポート ジェイのメモ ダオスの遺書 首輪×3
    ハロルドメモ1・2(1は炙り出し済) C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) 魔杖ケイオスハート マジカルポーチ
    ハロルドのサック(分解中のレーダーあり)  実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ミラクルグミ 
    ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック(メガグランチャーとUZI SMGをサイジング中)
基本行動方針:脱出法を探し出す。またマーダー排除のためならばどんな卑劣な手段も辞さない
第一行動方針:西地区に向かい、今後の戦略を立て直す
第二行動方針:首輪の情報を更に解析し、解除を試みる
第三行動方針:暇を見てキールのレポートを増補改訂する
現在位置:C3村南地区→C3村西地区

【グリッド 生存確認】
状態:価値観崩壊? プリムラ・ユアンのサック所持 エクスフィアを肉体に直接装備(要の紋セット) 東に違和感 苦悶
所持品:マジックミスト 占いの本 ロープ数本 ソーサラーリング ハロルドレシピ リーダー用漆黒の翼のバッジ 要の紋
    ダブルセイバー タール入りの瓶(中にリバヴィウス鉱あり。毒素を濃縮中) ネルフェス・エクスフィア
基本行動方針:ちっくしょおおおお!!!!!!
第一行動方針:南東エリアへ向かう
第二行動方針:失った物を取り戻す為に力を得る?
現在位置:C3村南地区→C3南東地区


――――――――――――――――カードとは、不思議な物だと思いませんか?

私を除けば唯の13のランクと4のスート、掛けて52枚の紙切れを一つのデックとして、ただ其処にあるだけです。
しかし、その遊び方は千変万化。
ポーカー、スペード、神経衰弱にダウト、ナポレオンetc……一人ならばソリティアなど、既に構築されたゲームだけでも無数にあります。
たった52枚のカードの並べ方配り方送り方だけで、正に無限の物語を作ることが出来るでしょう。
しかも、“この遊び方で遊べと主張をしない”、というのもカードの内包する一つの特異性かもしれません。
双六ならば上がれ、チェスならキングを討て、モノポリーなら破産させろ……
まあ……将棋崩しと将棋、五目並べと囲碁の様に、カードに限定することは難しいのですが。
ゲームは進化と同時に複雑化・限定化していくもの故……歴史が古ければ古いほど遊び方は構築されるものです……

おっと、これは申し訳ない。脱線してしまいましたね…………いえ、今までブラックジャックの勝負を観ていた物で。
少し其方に傾いていたのかもしれません。いけません、私は公平であらねばなりませんから。
詰まるところ、其処にカードがある、カードゲームにおいて確定した事実とはそれだけなのです。
ババ抜きでそろった2を二枚捨てるのと、大富豪で2のツーペアを切るのでは
2を二枚放るという現象は同じでも、意味合いがまるで変わってきます。どちらもやってることは同じなのに、不思議だとは思いませんか?
カードは何も言わない。七並べをしろともページワンをしろとも言いません。
遊びに戯れるのが人である以上そのルールは人が決めるのです。ゲームの道具は決してゲーム内容を強制することは致しません。


……おやおや、これは重ねて申し訳ない。
未だ名乗ってもいなかった……ホストとしてはかなりの痛手……
申し遅れました。私、サイグローグと申します。以後お見知りおきを……
尤も、ここではない何処かで、既に会っているかもしれませんが……
それに、やはりこんな意味のない話は退屈のようで。気が回らず申し訳ありません
私も腐っても道化ですから、客を愉しませることが出来ないというのは名折れというもの。

今、丁度ボードゲームが行われているところで……少し観ていきませんか?
……貴方は今、観てみようか迷った……怪しげな言葉に裏がないか、迷った……ふふふ……

そうですか……ではご案内致します。どうぞお手を……
ああ、其方の盤はお気になさらず。“もう決着がついてしまいましたから”。


此方の盤は今し方始まった所……先番を取った下座の挑戦者が長らく長考をしておりまして……漸く第一手を指した所です。
始まった、といっても、既に駒の並びは終局にさしかかっていおりますが……

先手を取った下座はどうやらまず見に回ることにした様子……
『凶剣』と『氷剣』そして『二刀』がぶつかるという怖い西の局面ではありますが、『射手』と『炎剣』は動かさず温存して後手の攻め手に対応できるようにしている……
下座は、彼方の勝負を観ていたのでしょうか……ククク……アレは先番を得ていたとはいえ上座の圧勝でしたからね……

後手が指しました……『人形』を西へ動かす……確かに、座して見守るには勿体ない漁夫の利の好形……
そして……当然、先手は『炎剣』で『人形』を迎え撃つ……『射手』は……まだ動かさない……ああ、おかげで警戒線を破られました。

そして。後手は……んん? 『天使』を、『南東』に? 失着ですか…… 
いや、これは……成程……『人形』の楔で西の局面を崩し『天使』の大技で屠る……文字通りの離れ技ですか。
以前も在った陣形ですね……コレは分かっていても辛い……
先番は気付くのが一手遅れました……これでは『炎剣』でも『射手』でも『天使』を追撃できない……
となると、これを止めるとなると……南に残っている三つの駒しかありません……

下座が、長考に入りましたか……確かに、西の趨勢がまだ決まっていないこの状況で『天使』の行動の自由を許せば、
下座は受けに回らなければならなくなる……となれば後は、上座の必勝形にズルズル引き込まれていくだけ…………
クク……どういう絡繰りか、何にせよ、あの敗北を少なからず識っているようです……
ああ、指しました……これは……2つに分割、『烏』を南東へ単騎駆けにし……残りの二人を、西へ送る……
“そう、それが正解です”
三人纏めて南東に送れば……『学士』の駒が引っ繰り返ってしまう……挟まれて『烏』は討たれる……それを識っているならば、確かにこれは悪手……
かといって、他の組み合わせでもそう大した組み合わせは無い……それほどまでに『学士』の駒を用いた先手の罠は強力……
作動させず、尚かつ『天使』を押さえるならば、これほど最適な戦略はありません……

烏と天使が単騎でぶつかり合えば……勝つのは決まっていますから……そう……『烏』が裏返って『怪物』となり、『怪物』が『天使』を殺す。この事実は確定してます。
貴方は知っているか分かりませんが……『鼠』と『人形』の駒を合わせて漸く『天使』は『怪物』を倒せる……そういう戦力差なのです……
今の徒手空拳の『天使』では、勝ち目は無い……逃げられもしない……結果は見えています……

ええ、見ての通りもう詰んでいます…………そう…………“下座がチェックメイトをかけられました”。


……納得が行きませんか……確かに一見すれば、『天使』を討つ絶好の機会ですが……『怪物』は『天使』がいなくなっても盤を荒らすことが出来る……
それほど強力な駒なのです……『怪物』が一度出てしまえば……どうなるか……先程見た、終わった盤と、そう変わらない投了図になるでしょう……
上座は『天使』を失っても『怪物』を動かせばいいのですから……“『天使』の有無など、上座には関係ない……
それを避けるには……『烏』を逃がすなり、受けに回らなければならない……詰めろの状態……そして、受けに回れば……『天使』の攻めが一気に生きる……
受けに回っても、攻めに回っても……詰む……“これが、真成る上座の必勝形”です……
下座が、再び長考に入りました……
下座は……紡ぎ手は、導き手の盤に囚われすぎた……上座にとって、『天使』は一つの駒に過ぎない……そこを見逃した……
どうやら、暫くは長考が続きそうです……どうですか? 貴方ならどう指しますか? いや、指してみてはどうですか?
貴方のターンです。
『天使』を取っても詰む、『怪物』を出さなくても詰む。
他にも対処しなければならない駒は幾らでもある……
さて、あなたはどちらの手を取る?
どちらを選んでもよかった。どちらでも結末は同じなのだから……
あなたは今考えた……あなたは今迷った……苦しみながら、絶対に詰むと分かっていながら、打った……
それこそが『絶望』。
最悪の盤で踊り続ける。
それこそが私の喜び。

そして、彼女の悲しみ

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