再会そして再戦
「はあっ!」
一瞬の隙を付いて現れたカッシェルの斬撃をかわし、リッドは素早く剣を振った。
だが既に男はその場から消え、彼の一撃は樹木の幹を刻むだけだった。
軽く舌打ちをし、顔を上げ視界を広げる。
今度はどこから来る?右か、左か、後ろか、上か、下か・・・
「正面!」
突如目の前に出現したカッシェルが顔面狙いの突きを繰り出してきた。首を回し、ギリギリでかわす。微かに頬を擦る。
そのまま上体を泳がせ、腕を前に出した体勢の覆面男の腹に膝蹴りをかました。
男の身体が震えたが、覆面のせいで顔を歪めたかどうかも分からない。
そしてお互いの身体が密着した状態のまま男は跳躍し、また森の中に消えた。
男が名乗った『幽幻』の名の通り、気配も感じられない。
くそっ。リッドは小声でそうつぶやいた。
こんなことをしていても埒が明かない。しかし何とかして奴を撃退しなければ、自身の安全すら危うい。
不意に背後から何かが飛来する気配がした。急ぎ振り向き、ムメイブレードを振り回す。
断ち切った手ごたえがしたが、だが、それは折れた木の枝だった。目を見開き、戸惑いの表情を浮かべる。
しまった──
それがフェイントと気付いた時には、彼は背中に一閃を喰らっていた。
敵のショートソードが破壊力の低い武器とはいえ、戦闘の優劣を付けるには充分な一撃だった。
それでも歯を食いしばり、身をよじりながら剣を振る。
男はテンポ良く後方に跳ね飛んだ。しかし彼は男を逃がさなかった。
「魔神剣──」
剣を地に這わせ、一気に振り上げる。地を這う衝撃波が男目掛け発射された。
男はやはり動じることなく跳躍し、辺りに群立してる木々を蹴り飛びながら接近してくる。
「隙だらけだな・・・?」
不気味な笑みを浮かべて(しかしリッドには確認できなかった)、男が言った。
剣を振り上げた体勢のままのリッドへ、急接近するカッシェル。
そして男が彼に再度肉迫したその時、彼は一気に剣を振り下ろした。
「──双牙!!」
一度目より格段に大きい衝撃波が、彼と男の間で爆発した。男は直撃を喰らった。覆面が破れ、身体の節々に裂傷が出来た。
男は左手で顔をかばいながら、とても優雅とは言いがたい飛翔をし、近くの木の茂みに隠れた。
リッドは男が逃げ込んだ木の上空を見やると、その木に思い切り剣を突き立てた。
「雷神剣!!」
迸る電流が剣を伝わり、樹木を駆け上がっていく。バチバチと音を立て木の皮を砕きながら進むそれは、そのまま木の先端まで届いた。
微かに男の悲鳴が聞こえた気がした。そのまま上を見ていると、やがて大きな何かが落ちてきた。
リッドはそれに近づき、見た。男の服を着た、切り株を。
「!?」
気付いた時には遅かった。男は彼の背後に接近し、血塗られた剣を今にも彼の首元に突きたてようとしていた。
その凶刃は確実に彼の頚動脈を断ち、即死に至らせるだろう。
間に合わない──
かろうじて視線だけ後ろに反らせながら、彼は己の死を悟った。
いや・・・・・・駄目だ。
死ねない。俺はまだ、死ぬわけにはいかない。この島にはまだ、俺の仲間が居る。
あいつらの無事を確かめるまでは・・・共に生きて帰れる時までは、諦めてはいけない。
放っておけば、何をしだすか分からない仲間達を──残していくわけにはいかなかった。
俺は・・・・・・死ねない。
一瞬の隙を付いて現れたカッシェルの斬撃をかわし、リッドは素早く剣を振った。
だが既に男はその場から消え、彼の一撃は樹木の幹を刻むだけだった。
軽く舌打ちをし、顔を上げ視界を広げる。
今度はどこから来る?右か、左か、後ろか、上か、下か・・・
「正面!」
突如目の前に出現したカッシェルが顔面狙いの突きを繰り出してきた。首を回し、ギリギリでかわす。微かに頬を擦る。
そのまま上体を泳がせ、腕を前に出した体勢の覆面男の腹に膝蹴りをかました。
男の身体が震えたが、覆面のせいで顔を歪めたかどうかも分からない。
そしてお互いの身体が密着した状態のまま男は跳躍し、また森の中に消えた。
男が名乗った『幽幻』の名の通り、気配も感じられない。
くそっ。リッドは小声でそうつぶやいた。
こんなことをしていても埒が明かない。しかし何とかして奴を撃退しなければ、自身の安全すら危うい。
不意に背後から何かが飛来する気配がした。急ぎ振り向き、ムメイブレードを振り回す。
断ち切った手ごたえがしたが、だが、それは折れた木の枝だった。目を見開き、戸惑いの表情を浮かべる。
しまった──
それがフェイントと気付いた時には、彼は背中に一閃を喰らっていた。
敵のショートソードが破壊力の低い武器とはいえ、戦闘の優劣を付けるには充分な一撃だった。
それでも歯を食いしばり、身をよじりながら剣を振る。
男はテンポ良く後方に跳ね飛んだ。しかし彼は男を逃がさなかった。
「魔神剣──」
剣を地に這わせ、一気に振り上げる。地を這う衝撃波が男目掛け発射された。
男はやはり動じることなく跳躍し、辺りに群立してる木々を蹴り飛びながら接近してくる。
「隙だらけだな・・・?」
不気味な笑みを浮かべて(しかしリッドには確認できなかった)、男が言った。
剣を振り上げた体勢のままのリッドへ、急接近するカッシェル。
そして男が彼に再度肉迫したその時、彼は一気に剣を振り下ろした。
「──双牙!!」
一度目より格段に大きい衝撃波が、彼と男の間で爆発した。男は直撃を喰らった。覆面が破れ、身体の節々に裂傷が出来た。
男は左手で顔をかばいながら、とても優雅とは言いがたい飛翔をし、近くの木の茂みに隠れた。
リッドは男が逃げ込んだ木の上空を見やると、その木に思い切り剣を突き立てた。
「雷神剣!!」
迸る電流が剣を伝わり、樹木を駆け上がっていく。バチバチと音を立て木の皮を砕きながら進むそれは、そのまま木の先端まで届いた。
微かに男の悲鳴が聞こえた気がした。そのまま上を見ていると、やがて大きな何かが落ちてきた。
リッドはそれに近づき、見た。男の服を着た、切り株を。
「!?」
気付いた時には遅かった。男は彼の背後に接近し、血塗られた剣を今にも彼の首元に突きたてようとしていた。
その凶刃は確実に彼の頚動脈を断ち、即死に至らせるだろう。
間に合わない──
かろうじて視線だけ後ろに反らせながら、彼は己の死を悟った。
いや・・・・・・駄目だ。
死ねない。俺はまだ、死ぬわけにはいかない。この島にはまだ、俺の仲間が居る。
あいつらの無事を確かめるまでは・・・共に生きて帰れる時までは、諦めてはいけない。
放っておけば、何をしだすか分からない仲間達を──残していくわけにはいかなかった。
俺は・・・・・・死ねない。
目の前を、紅い球が飛び交った。
いつの間にか男は彼から遠ざかっていた。そして油断の無い視線をこちらに向けている。
否、正確には彼の背後に向けていた。彼が振り向くと、そこにはもう一人、男が立っていた。
「やれやれ、危ない所だったじゃないか、リッド」
後ろで束ねた青髪に、足元まであるローブ。その男こそ、リッドが最も信頼を置く仲間の一人。
キール・ツァイベルだった。
「貴様は・・・さっきの!」
覆面の(殆ど破れていたが)男が叫ぶ。
その言葉がどういう意味を持つか、リッドは微かながら理解した。
キールは全身の所々が土や泥で汚れていたが、顔の上部、額の辺りに丁度リッドが負ったのと同じような傷跡がある。
彼の友人もまた、この男と戦ったのだ。その代償があの姿である。
「何とかこいつから抜け出してから、近くで戦闘が起こったと思って見にきたら、まさかお前がこいつと戦ってるとはな」
皮肉めいた口調だが、友人は彼との再会を喜んでいるようだった。
「お前も、よくこいつとやりあって逃げ切れたな。支給品にジェットブーツでもあったか?」
「何だと!」
いつの間にかリッドは自分が安心感に包まれていることに気付いた。
この誰が敵とも分からない状況で、よく見知った人間と再会できることが どれだけ心に平穏をもたらすか、彼は身をもって痛感していた。
だが、今は再会を喜んでいる時では無かった。
まずは目の前に居る敵を撃退することが最優先だった。
キールもまた、そのことを分かっているようだった。
「よし、いくぞ!」
「ああ!」
リッドは剣を構え直し、カッシェル目掛け突進した。キールも彼の後ろで両腕を激しく振り、詠唱に入った。
だが、予想外に男は後方高く跳躍した。
「流石に二体一はな・・・どうやらよく知った仲間同士のようだし、ここいらで撤退しておくか」
「逃がすか!」
キールが叫び、彼の周辺から真空の刃が生まれ、男に襲い掛かった。
しかし男はまたしても煙の様にその場から消えると、そのまま遠ざかっていった。
「覚えておけ・・・」
男の声だけが聞こえてくる。リッドとキールは油断せずに、周囲を見回し続けた。
「貴様等が誰と手を組もうと勝手だが、このバトル・ロワイアルのルールは絶対だ。
いつかお前達も殺しあう時が来る。それが出来なければ二人仲良く奈落行きだ。
いいか、このゲームに殺し合い以外の選択肢は無い・・・・・・」
いつの間にか男は彼から遠ざかっていた。そして油断の無い視線をこちらに向けている。
否、正確には彼の背後に向けていた。彼が振り向くと、そこにはもう一人、男が立っていた。
「やれやれ、危ない所だったじゃないか、リッド」
後ろで束ねた青髪に、足元まであるローブ。その男こそ、リッドが最も信頼を置く仲間の一人。
キール・ツァイベルだった。
「貴様は・・・さっきの!」
覆面の(殆ど破れていたが)男が叫ぶ。
その言葉がどういう意味を持つか、リッドは微かながら理解した。
キールは全身の所々が土や泥で汚れていたが、顔の上部、額の辺りに丁度リッドが負ったのと同じような傷跡がある。
彼の友人もまた、この男と戦ったのだ。その代償があの姿である。
「何とかこいつから抜け出してから、近くで戦闘が起こったと思って見にきたら、まさかお前がこいつと戦ってるとはな」
皮肉めいた口調だが、友人は彼との再会を喜んでいるようだった。
「お前も、よくこいつとやりあって逃げ切れたな。支給品にジェットブーツでもあったか?」
「何だと!」
いつの間にかリッドは自分が安心感に包まれていることに気付いた。
この誰が敵とも分からない状況で、よく見知った人間と再会できることが どれだけ心に平穏をもたらすか、彼は身をもって痛感していた。
だが、今は再会を喜んでいる時では無かった。
まずは目の前に居る敵を撃退することが最優先だった。
キールもまた、そのことを分かっているようだった。
「よし、いくぞ!」
「ああ!」
リッドは剣を構え直し、カッシェル目掛け突進した。キールも彼の後ろで両腕を激しく振り、詠唱に入った。
だが、予想外に男は後方高く跳躍した。
「流石に二体一はな・・・どうやらよく知った仲間同士のようだし、ここいらで撤退しておくか」
「逃がすか!」
キールが叫び、彼の周辺から真空の刃が生まれ、男に襲い掛かった。
しかし男はまたしても煙の様にその場から消えると、そのまま遠ざかっていった。
「覚えておけ・・・」
男の声だけが聞こえてくる。リッドとキールは油断せずに、周囲を見回し続けた。
「貴様等が誰と手を組もうと勝手だが、このバトル・ロワイアルのルールは絶対だ。
いつかお前達も殺しあう時が来る。それが出来なければ二人仲良く奈落行きだ。
いいか、このゲームに殺し合い以外の選択肢は無い・・・・・・」
男の声が消えた。既に遠くに飛んでいってしまったのだろう。
やがてリッドとキールは顔を見合わせ、疲れた、と言いたげにその場に座り込んだ。
「まさかこんな所でお前と会うとはな」
「僕も信じられなかった。この広い島で、同じ世界の者同士がこうも近くに飛ばされるなんて、全く信じられない」
「信じないも何も会っちまったじゃねぇかよ」
「まあ結果論から言えばそうなるな。
それよりまずはお互いの近況を知るべきだ。これまで何が起こったか、何をしていたか」
リッドはここに至るまでの経緯、マグニスとバルバトスが行動を共にしていたこと、
その直後にカッシェルに襲われたことを話した。
「なるほど・・・それは・・・かなり厄介だな・・・まあそれは今は置いとこう」
次にキールが語りだした。
この土地の環境を調べていたところをカッシェルに急襲されたこと、その最中転落してしまったこと。
「よくそれで無事だったな」
「まあ話せば長くなるが、とりあえず僕は──」
やがてリッドとキールは顔を見合わせ、疲れた、と言いたげにその場に座り込んだ。
「まさかこんな所でお前と会うとはな」
「僕も信じられなかった。この広い島で、同じ世界の者同士がこうも近くに飛ばされるなんて、全く信じられない」
「信じないも何も会っちまったじゃねぇかよ」
「まあ結果論から言えばそうなるな。
それよりまずはお互いの近況を知るべきだ。これまで何が起こったか、何をしていたか」
リッドはここに至るまでの経緯、マグニスとバルバトスが行動を共にしていたこと、
その直後にカッシェルに襲われたことを話した。
「なるほど・・・それは・・・かなり厄介だな・・・まあそれは今は置いとこう」
次にキールが語りだした。
この土地の環境を調べていたところをカッシェルに急襲されたこと、その最中転落してしまったこと。
「よくそれで無事だったな」
「まあ話せば長くなるが、とりあえず僕は──」
「──つまり支給品にあったホーリィリングのおかげで体力が回復して動けるようになったんだな?」
「う、ま、まあ要約すればそうなるな」
リッドはおもむろに腰を上げ、荷物をまとめ直した。
「それで?これからどうする?もう脱出の方法は思いついたか?」
「馬鹿言え。いきなりそんなこと、思いつくわけが無いだろう。
それと、いつまでもこんな所で会話しているのはまずい。いつまた誰かの襲撃を受けるとも限らない。
とりあえずあの塔に行こう。そこでこれからの行動方針について話し合おう」
リッドは了解すると、荷物を持って塔を見上げた。
ふと、カッシェルの言葉が頭をよぎった。
──いつかお前達も殺しあう時が来る──
彼は頭を振り、その言葉を打ち消した。そんなことはありえない。
自分が、キールやファラ、メルディといった仲間と殺しあうなど。
ファラ・・・それにメルディ。どこに居るんだ。
こうしている内にも彼女等に危険が及ぶ可能性は充分あったが、うかつに動けば危険である。
自分達の傷もあり、まずはあの塔に行き落ち着くのが先決だ。
「どうした?置いてくぞ」
いつのまにかキールも荷物をまとめ、歩き出していた。
「体力ねぇくせに無茶すんなよ・・・」
リッドもまた歩き出した。
「う、ま、まあ要約すればそうなるな」
リッドはおもむろに腰を上げ、荷物をまとめ直した。
「それで?これからどうする?もう脱出の方法は思いついたか?」
「馬鹿言え。いきなりそんなこと、思いつくわけが無いだろう。
それと、いつまでもこんな所で会話しているのはまずい。いつまた誰かの襲撃を受けるとも限らない。
とりあえずあの塔に行こう。そこでこれからの行動方針について話し合おう」
リッドは了解すると、荷物を持って塔を見上げた。
ふと、カッシェルの言葉が頭をよぎった。
──いつかお前達も殺しあう時が来る──
彼は頭を振り、その言葉を打ち消した。そんなことはありえない。
自分が、キールやファラ、メルディといった仲間と殺しあうなど。
ファラ・・・それにメルディ。どこに居るんだ。
こうしている内にも彼女等に危険が及ぶ可能性は充分あったが、うかつに動けば危険である。
自分達の傷もあり、まずはあの塔に行き落ち着くのが先決だ。
「どうした?置いてくぞ」
いつのまにかキールも荷物をまとめ、歩き出していた。
「体力ねぇくせに無茶すんなよ・・・」
リッドもまた歩き出した。
──それは、このゲーム開始以来初の同じ世界の仲間同士のチームでもあった。
【リッド 生存確認】
状態:背中に刀傷 頬に擦り傷 所持品:ムメイブレード エルヴンマント
現在位置:B2の森林地帯から同エリアの塔へ移動中
行動方針:塔への移動 :ファラ、メルディとの合流 :襲ってくる敵は倒す
状態:背中に刀傷 頬に擦り傷 所持品:ムメイブレード エルヴンマント
現在位置:B2の森林地帯から同エリアの塔へ移動中
行動方針:塔への移動 :ファラ、メルディとの合流 :襲ってくる敵は倒す
【キール 生存確認】
所持品: ホーリィリング ????
現在位置:B2の森林地帯から同エリアの塔へ移動中
状態:額に切創、 全身打撲(回復中)
行動方針:塔への移動 :ファラ、メルディとの合流 :脱出法を考える
所持品: ホーリィリング ????
現在位置:B2の森林地帯から同エリアの塔へ移動中
状態:額に切創、 全身打撲(回復中)
行動方針:塔への移動 :ファラ、メルディとの合流 :脱出法を考える
【幽幻のカッシェル 生存確認】
状態:全身に軽い裂傷 軽い痺れ 覆面損傷
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯から移動
行動方針:ゲームに乗る :決して徒党を組まない
状態:全身に軽い裂傷 軽い痺れ 覆面損傷
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯から移動
行動方針:ゲームに乗る :決して徒党を組まない