抱擁する天才
不死身の男、マウリッツが命を散らしたその少し後・・・・・・
暗がりの洞窟の仲から、若い男女の声が聞こえてくる。
「・・・そうか、それでキミは気を失って、この洞窟の前に居たんだね」
「はい。その後、一旦目が覚めて、近くに居たマウリッツさんという方を回復しましたが・・・」
少女はそこで口をつぐんだ。向き合って会話している男も少しうつむく。
そのマウリッツも、もう死んでしまったのだ。
「でも、その君を撃ったというジェイって子、ちょっと気になるな。
それまでに動いてる間には、そんな素振りは見せなかったんだろ?」
「はい・・・恐らく、何かやむにやまれぬ事情があったものかと・・・」
そう言う少女の顔には、あまり元気が無かった。
事情がどうあれ、自分が殺されかけたことに変わりはないのだ。
「とにかく、君だけでも無事でよかったよ」
大体の話が終わったと見て、彼は口調新たにそう言った。
「ありがとうございます、スタンさん」
少女も応えて、頭を下げる。所々焼け焦げた法衣が少女の内面を表しているように見え、痛々しかった。
金髪の男・スタンは頭を上げた少女・ミントと目が合い、少し微笑んだ。
「で、ハロルド?言われた物も仕掛けたし、そっちはどうだ?」
スタンは立ち上がり、ピンク髪の女性・ハロルドの居る方を見た。
彼らは今、洞窟内でも中心部と思われる特に広い場所に居た。
ここは水も流れているし、先程まで少女を寝かせていた様な小部屋に通じる穴がたくさんあったので、
ここを活動拠点にすることに決めた。何よりハロルドが気に入ったのは、この大部屋にある
縦一メートル横ニメートルほどの机のような平らな岩と
、 そばにあった椅子のようなこれまた平らな岩があったことだった。
彼女は研究するのに寸法ピッタリと言い、諸々の荷物を乗っけてごそごそと何やら始めた。
その間スタンは支給品にあった釣り糸を使い、洞窟の入り口と反対側の入り口に鳴子を仕掛けた。
洞窟の外で調達した木材を糸に結び付けてつなげたもので、誰かがこの洞窟に侵入しようとすれば
たちまち振動がこの大部屋まで伝わり危険を知らせてくれる。
ハロルド曰く、「術で攻めようにも私たちの正確な位置が分からない限りヤバイことは無いから、
これで全然安心よ。んー、私ってやっぱ天才」だそうだ。
ちなみに少し余った糸は適当な木の棒に結び付けて本来の用途通り釣り竿にした。
川にたらしているが、魚がかかる気配は無い。
「んーやっぱ明らかに植生がおかしいわね。
これはもしかして大気の異常な収縮率と関係あるのかしら?
でもだとしたらどうしてアイツはこの世界を・・・」
「ハロルド?」
「んん、ああ、ごめんなさい。で、何?」
「・・・彼女から話を聞いたんだけど」
「ああ、それならいいわ。私も聞いてたから」
さらりと言ってのけるが、明らかにミントが話をしている間ハロルドは研究だかをしていたはずだった。
・・・やはりこの人は只者では無い・・・
はあ、とため息をついてかぶりを振った。
「それで、これから具体的にどうする?まだはっきりしたことは何も言われて無いぞ、俺達」
んー、とハロルドが指を唇に当て考え込む。
スタンとミントがやや不安そうに彼女を見る。
「ねぇ、鏡ある?」
「は?」
鏡?そんなものがあるはず無い。
そう言うと、彼女は「やっぱそうよね」と言い、おもむろにスタンに近付いた。
「しょーがない」
「?」
怪訝な表情を浮かべるスタン。ハロルドは無表情に真っ直ぐ彼の顔の辺りを見つめた。
そして唐突に両腕を彼の首に回し、抱きついた。
「え!?」
あからさまに戸惑うスタン。
年上の割りに童顔な彼女に密着されて上目遣いで見つめられ、顔が赤くなった。
だがそんな彼の様子はおかまいなしに、彼女は絡めた腕を動かし後頭部から首の辺りを撫で回した。
「だっ、駄目だハロルド!まだ会ったばかりでこんな・・・・・・・・・」
パッと手を放し距離を取る彼女。スタンはぜいぜいと息も荒く、前かがみに両手を膝についた。
そしてハロルドはくるりと回り、無表情のままミントを見つめた。
ビクっと体を震わせ、一歩下がる少女。だがそんなささやかな抵抗に構う事無く、
彼女はズカズカと少女に歩み寄り、先程と同じように抱きついた。
「い、いけませんハロルドさん!私にはそういう趣味は・・・・・・・・・」
パッと手を放し距離を取る彼女。ミントはハァハァと息も荒く、ペタリとその場に座り込んだ。
そして最後に自身の首筋に手をやって、納得したように頷いた。
「ごめんごめん、ちょっと確かめたいことがあって」
「い、一体何を調べたんだよ?」
まだ落ち着きを取り戻していて居ないスタン等を余所に、
彼女は机(のような岩)に歩み寄り、ごそごそと何かを取り出しているようだった。
「んーとねぇ、世界の違いによる人体構造の相違点について調査したのよ」
そう言いながら机の上で何やら字を書いている。
スタンとミントは理解できないといわんばかりに息を吐いた。
そしてしばらく後、彼女は振り向いて紙を二人に見せた。
そこには彼女が熱く綴った字が書かれていた。
『でも、本当はそうじゃない』
二人は気の抜けたようにそれを見つめていた。
彼女が何を言いたいのかまだ分かっていないようだった。
そして二枚目が出される。
『首輪について調べたの』
二人は彼女の言に釘付けにされていた。
そして彼女は三枚目、最後の紙を見せた。
『私達、盗聴されてる』
呆気に取られて口を開けっぱなしにする二人を見て、彼女はにやりと笑った。
暗がりの洞窟の仲から、若い男女の声が聞こえてくる。
「・・・そうか、それでキミは気を失って、この洞窟の前に居たんだね」
「はい。その後、一旦目が覚めて、近くに居たマウリッツさんという方を回復しましたが・・・」
少女はそこで口をつぐんだ。向き合って会話している男も少しうつむく。
そのマウリッツも、もう死んでしまったのだ。
「でも、その君を撃ったというジェイって子、ちょっと気になるな。
それまでに動いてる間には、そんな素振りは見せなかったんだろ?」
「はい・・・恐らく、何かやむにやまれぬ事情があったものかと・・・」
そう言う少女の顔には、あまり元気が無かった。
事情がどうあれ、自分が殺されかけたことに変わりはないのだ。
「とにかく、君だけでも無事でよかったよ」
大体の話が終わったと見て、彼は口調新たにそう言った。
「ありがとうございます、スタンさん」
少女も応えて、頭を下げる。所々焼け焦げた法衣が少女の内面を表しているように見え、痛々しかった。
金髪の男・スタンは頭を上げた少女・ミントと目が合い、少し微笑んだ。
「で、ハロルド?言われた物も仕掛けたし、そっちはどうだ?」
スタンは立ち上がり、ピンク髪の女性・ハロルドの居る方を見た。
彼らは今、洞窟内でも中心部と思われる特に広い場所に居た。
ここは水も流れているし、先程まで少女を寝かせていた様な小部屋に通じる穴がたくさんあったので、
ここを活動拠点にすることに決めた。何よりハロルドが気に入ったのは、この大部屋にある
縦一メートル横ニメートルほどの机のような平らな岩と
、 そばにあった椅子のようなこれまた平らな岩があったことだった。
彼女は研究するのに寸法ピッタリと言い、諸々の荷物を乗っけてごそごそと何やら始めた。
その間スタンは支給品にあった釣り糸を使い、洞窟の入り口と反対側の入り口に鳴子を仕掛けた。
洞窟の外で調達した木材を糸に結び付けてつなげたもので、誰かがこの洞窟に侵入しようとすれば
たちまち振動がこの大部屋まで伝わり危険を知らせてくれる。
ハロルド曰く、「術で攻めようにも私たちの正確な位置が分からない限りヤバイことは無いから、
これで全然安心よ。んー、私ってやっぱ天才」だそうだ。
ちなみに少し余った糸は適当な木の棒に結び付けて本来の用途通り釣り竿にした。
川にたらしているが、魚がかかる気配は無い。
「んーやっぱ明らかに植生がおかしいわね。
これはもしかして大気の異常な収縮率と関係あるのかしら?
でもだとしたらどうしてアイツはこの世界を・・・」
「ハロルド?」
「んん、ああ、ごめんなさい。で、何?」
「・・・彼女から話を聞いたんだけど」
「ああ、それならいいわ。私も聞いてたから」
さらりと言ってのけるが、明らかにミントが話をしている間ハロルドは研究だかをしていたはずだった。
・・・やはりこの人は只者では無い・・・
はあ、とため息をついてかぶりを振った。
「それで、これから具体的にどうする?まだはっきりしたことは何も言われて無いぞ、俺達」
んー、とハロルドが指を唇に当て考え込む。
スタンとミントがやや不安そうに彼女を見る。
「ねぇ、鏡ある?」
「は?」
鏡?そんなものがあるはず無い。
そう言うと、彼女は「やっぱそうよね」と言い、おもむろにスタンに近付いた。
「しょーがない」
「?」
怪訝な表情を浮かべるスタン。ハロルドは無表情に真っ直ぐ彼の顔の辺りを見つめた。
そして唐突に両腕を彼の首に回し、抱きついた。
「え!?」
あからさまに戸惑うスタン。
年上の割りに童顔な彼女に密着されて上目遣いで見つめられ、顔が赤くなった。
だがそんな彼の様子はおかまいなしに、彼女は絡めた腕を動かし後頭部から首の辺りを撫で回した。
「だっ、駄目だハロルド!まだ会ったばかりでこんな・・・・・・・・・」
パッと手を放し距離を取る彼女。スタンはぜいぜいと息も荒く、前かがみに両手を膝についた。
そしてハロルドはくるりと回り、無表情のままミントを見つめた。
ビクっと体を震わせ、一歩下がる少女。だがそんなささやかな抵抗に構う事無く、
彼女はズカズカと少女に歩み寄り、先程と同じように抱きついた。
「い、いけませんハロルドさん!私にはそういう趣味は・・・・・・・・・」
パッと手を放し距離を取る彼女。ミントはハァハァと息も荒く、ペタリとその場に座り込んだ。
そして最後に自身の首筋に手をやって、納得したように頷いた。
「ごめんごめん、ちょっと確かめたいことがあって」
「い、一体何を調べたんだよ?」
まだ落ち着きを取り戻していて居ないスタン等を余所に、
彼女は机(のような岩)に歩み寄り、ごそごそと何かを取り出しているようだった。
「んーとねぇ、世界の違いによる人体構造の相違点について調査したのよ」
そう言いながら机の上で何やら字を書いている。
スタンとミントは理解できないといわんばかりに息を吐いた。
そしてしばらく後、彼女は振り向いて紙を二人に見せた。
そこには彼女が熱く綴った字が書かれていた。
『でも、本当はそうじゃない』
二人は気の抜けたようにそれを見つめていた。
彼女が何を言いたいのかまだ分かっていないようだった。
そして二枚目が出される。
『首輪について調べたの』
二人は彼女の言に釘付けにされていた。
そして彼女は三枚目、最後の紙を見せた。
『私達、盗聴されてる』
呆気に取られて口を開けっぱなしにする二人を見て、彼女はにやりと笑った。
【スタン 生存確認】
状態:精神の激しい動揺
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:ハロルド、ミントと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
状態:精神の激しい動揺
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:ハロルド、ミントと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
【ハロルド 生存確認】
状態:TP微消費
所持品:ピーチグミ 短剣 実験サンプル(植物やらなんやら色々)
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:スタン、ミントと共に行動
状態:TP微消費
所持品:ピーチグミ 短剣 実験サンプル(植物やらなんやら色々)
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:スタン、ミントと共に行動
【ミント 生存確認】
状態:精神の激しい動揺 TP小 小程度の疲労
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
現在位置:G3の洞窟内部
行動方針:スタン、ハロルドと共に行動
状態:精神の激しい動揺 TP小 小程度の疲労
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
現在位置:G3の洞窟内部
行動方針:スタン、ハロルドと共に行動