砂塵の果て
既に空は暗く、放送があってからだいぶ時間が過ぎた。
この放送により、多くの者が嘆き傷つき動揺した。
マリー・エージェントもその内の一人だった。
あの後、ロニ・デュナミスと別れた後、武器や道具の類が無いかしばらく砂漠を探索していたが、
特にめぼしい発見も無く、時間だけが消費されていった。
そして放送を聴き、彼女の最も信頼する仲間が脱落したことを知った。
悲しみも多かったが、あえて彼女はその感情を押し込めて、生きることを優先した。
取り乱してはいけない。落ち着いて、これからどうするべきかを検討しろ・・・
自分にそう言い聞かせて彼女は砂漠を放浪し続けた。
そして彼女は今、砂漠の小高い丘の陰に独り座っていた。
もうこのまま砂漠で朝まで過ごそうか、そう考えていた時・・・・・・
不吉な予感がした。
立ち上がり、周囲を見回す。
彼女の視界が、すぐにこちらを向いている二人の男の姿を捉えた。
一人は胸まで届く波打つ深い青色の髪をし、巨大な銃剣・・・いや、大砲を持った男。
もう一人は赤いドレッドヘアをした粗野な男。こちらも巨大な戦斧を持っている。
後者には見覚えがあった。恐らく今、参加者達の間で最も警戒されている男・・・
ゲーム開始前に殺し合いに乗ることを宣言し、その場で一人の男性に手を下した男、マグニスだった。
マリーの全神経が彼女の脳髄へ一瞬で指令を出した。『危険だ』と。
間違い無い、奴等は・・・やる気だ!
そう判断すると同時に、青髪の男が右手を上げた。
途端に彼女の前方の空間が歪み、闇の魔力が収縮し彼女を吸引してきた。
「くっ!」
強引に体をそこから引き剥がし、後ろ飛びに離れた。
体の前面がいくらか裂かれ、小さな血飛沫を上げた。
右手を地に着き、体勢を立て直す。反撃に出ようと杖を構えた。
だが、そこには人影が一つしか無い。赤髪の男が消えている。
刹那、左から強烈な殺意を感じた。振り向けば、男が猛烈な勢いでこちらへ突進してくる。
「うぅおらぁああ!!」
上段からの渾身の振り下ろし。右へ避ける。砂塵が巻き起こり、視界を濁した。
リーチも、攻撃力も、圧倒的に劣っている。この状況でどうする?どう戦う?
迷う暇は無かった。赤髪の男が放った斬り返しの一撃。斧の刃より内側に入り込み、杖で柄を抑えた。
「はっ、なかなかやるじゃねぇか!」
男が大口を開けて笑う。
自分が殺戮行為をしているのに、後ろめたさや罪の意識といった者は全く感じていない様だった。
「確かマグニスと言ったな、こんな殺戮に乗って、何を求めるつもりだ!」
「求める?願いのことか?俺さまはそんなちんけなもん必要ねぇ。
ただお前等劣悪種の豚共を皆殺しに出来りゃぁそれでいいのよ!」
言葉を失い、マリーはマグニスを睨みつけた。この男は、戦士ですら無い・・・ただの殺戮者だ!
「それと、もう一つ。最初にちゃんと言っただろうが?」
じりじりと、押され始めた。マリーは足を踏ん張り、こらえようとした。
「マグニスさま、だ。豚が!!!」
そう叫ぶと同時に男が全力を込めて斧を振りきった。
マリーは体勢を崩し、後ろ向きに尻餅をついた。
手にした杖は、あっけなく折れた。更に、左肩から脇腹までが深く切り裂かれていた。
直も追撃をやめないマグニスは、数歩踏み込み再び斧を振りかぶった。
彼女はさっと左右を見ると、素早く右腕を伸ばした。
「がああああ!!!」
それは、確実に彼女を頭から割ってしまう一撃だった。
だがしかし、実際に割れたのは別のものだった。
彼女は血が出るのも構わず両手で壷を持ち、自分と男の間、前方へ突き出していた。
壷は盾の役をこなし、中に入っていた水が衝撃を緩和させた。
破片と、水飛沫が二人の間を舞う中、マリーは一気に立ち上がった。
そしてそのまま赤髪の男に走り寄り、一気に闘気を放出した。
「獅子、戦吼!!」
マグニスは斧を手放し、両腕を交差させてマリーの攻撃を受け止めた。
微動だにせず、腕によって表情が隠れているが、少なくとも致命傷を負っていないことは確かだった。
「ふっ、なかなかの一撃だったぜ。だがな・・・」
マリーは咄嗟に地面に放置された男の斧を拾おうとしたが、それより速く男が動いた。
「煉獄、崩爆破ぁ!!!」
灼熱の焔と衝撃は、彼女を遥か後方へ吹き飛ばした。
そしてそのまま彼女は立ち上がらなかった。
「・・・・・・・っ・・・・・・・・・・」
残る力を振り絞り、上半身だけでも体を起こす。
斧を持ち、こちらを見下ろす男の後ろで、青髪の男が術を詠唱しているのが見えた。
・・・・・・ルーティ、どうやら・・・・・・
青髪の男が腕を上げる。彼女は地面より現れた暗黒の刃により、天高く打ち上げられた。
・・・・・・どうやらお前とは、案外早く再会できそうだ・・・・・
男が腕を振り下ろした。闇の魔力は形を変え、彼女を中心とした十字架を描いた。
そうして彼女は落ちた。もう、終わっていた。
この放送により、多くの者が嘆き傷つき動揺した。
マリー・エージェントもその内の一人だった。
あの後、ロニ・デュナミスと別れた後、武器や道具の類が無いかしばらく砂漠を探索していたが、
特にめぼしい発見も無く、時間だけが消費されていった。
そして放送を聴き、彼女の最も信頼する仲間が脱落したことを知った。
悲しみも多かったが、あえて彼女はその感情を押し込めて、生きることを優先した。
取り乱してはいけない。落ち着いて、これからどうするべきかを検討しろ・・・
自分にそう言い聞かせて彼女は砂漠を放浪し続けた。
そして彼女は今、砂漠の小高い丘の陰に独り座っていた。
もうこのまま砂漠で朝まで過ごそうか、そう考えていた時・・・・・・
不吉な予感がした。
立ち上がり、周囲を見回す。
彼女の視界が、すぐにこちらを向いている二人の男の姿を捉えた。
一人は胸まで届く波打つ深い青色の髪をし、巨大な銃剣・・・いや、大砲を持った男。
もう一人は赤いドレッドヘアをした粗野な男。こちらも巨大な戦斧を持っている。
後者には見覚えがあった。恐らく今、参加者達の間で最も警戒されている男・・・
ゲーム開始前に殺し合いに乗ることを宣言し、その場で一人の男性に手を下した男、マグニスだった。
マリーの全神経が彼女の脳髄へ一瞬で指令を出した。『危険だ』と。
間違い無い、奴等は・・・やる気だ!
そう判断すると同時に、青髪の男が右手を上げた。
途端に彼女の前方の空間が歪み、闇の魔力が収縮し彼女を吸引してきた。
「くっ!」
強引に体をそこから引き剥がし、後ろ飛びに離れた。
体の前面がいくらか裂かれ、小さな血飛沫を上げた。
右手を地に着き、体勢を立て直す。反撃に出ようと杖を構えた。
だが、そこには人影が一つしか無い。赤髪の男が消えている。
刹那、左から強烈な殺意を感じた。振り向けば、男が猛烈な勢いでこちらへ突進してくる。
「うぅおらぁああ!!」
上段からの渾身の振り下ろし。右へ避ける。砂塵が巻き起こり、視界を濁した。
リーチも、攻撃力も、圧倒的に劣っている。この状況でどうする?どう戦う?
迷う暇は無かった。赤髪の男が放った斬り返しの一撃。斧の刃より内側に入り込み、杖で柄を抑えた。
「はっ、なかなかやるじゃねぇか!」
男が大口を開けて笑う。
自分が殺戮行為をしているのに、後ろめたさや罪の意識といった者は全く感じていない様だった。
「確かマグニスと言ったな、こんな殺戮に乗って、何を求めるつもりだ!」
「求める?願いのことか?俺さまはそんなちんけなもん必要ねぇ。
ただお前等劣悪種の豚共を皆殺しに出来りゃぁそれでいいのよ!」
言葉を失い、マリーはマグニスを睨みつけた。この男は、戦士ですら無い・・・ただの殺戮者だ!
「それと、もう一つ。最初にちゃんと言っただろうが?」
じりじりと、押され始めた。マリーは足を踏ん張り、こらえようとした。
「マグニスさま、だ。豚が!!!」
そう叫ぶと同時に男が全力を込めて斧を振りきった。
マリーは体勢を崩し、後ろ向きに尻餅をついた。
手にした杖は、あっけなく折れた。更に、左肩から脇腹までが深く切り裂かれていた。
直も追撃をやめないマグニスは、数歩踏み込み再び斧を振りかぶった。
彼女はさっと左右を見ると、素早く右腕を伸ばした。
「がああああ!!!」
それは、確実に彼女を頭から割ってしまう一撃だった。
だがしかし、実際に割れたのは別のものだった。
彼女は血が出るのも構わず両手で壷を持ち、自分と男の間、前方へ突き出していた。
壷は盾の役をこなし、中に入っていた水が衝撃を緩和させた。
破片と、水飛沫が二人の間を舞う中、マリーは一気に立ち上がった。
そしてそのまま赤髪の男に走り寄り、一気に闘気を放出した。
「獅子、戦吼!!」
マグニスは斧を手放し、両腕を交差させてマリーの攻撃を受け止めた。
微動だにせず、腕によって表情が隠れているが、少なくとも致命傷を負っていないことは確かだった。
「ふっ、なかなかの一撃だったぜ。だがな・・・」
マリーは咄嗟に地面に放置された男の斧を拾おうとしたが、それより速く男が動いた。
「煉獄、崩爆破ぁ!!!」
灼熱の焔と衝撃は、彼女を遥か後方へ吹き飛ばした。
そしてそのまま彼女は立ち上がらなかった。
「・・・・・・・っ・・・・・・・・・・」
残る力を振り絞り、上半身だけでも体を起こす。
斧を持ち、こちらを見下ろす男の後ろで、青髪の男が術を詠唱しているのが見えた。
・・・・・・ルーティ、どうやら・・・・・・
青髪の男が腕を上げる。彼女は地面より現れた暗黒の刃により、天高く打ち上げられた。
・・・・・・どうやらお前とは、案外早く再会できそうだ・・・・・
男が腕を振り下ろした。闇の魔力は形を変え、彼女を中心とした十字架を描いた。
そうして彼女は落ちた。もう、終わっていた。
十数秒後、二人の男は彼女の所持品を回収し、一言二言、言葉を交わした後に歩き出した。
彼らの目的地は、もうすぐそこだった。
彼らの目的地は、もうすぐそこだった。
・・・既に空は暗く、放送が終わってだいぶ時間が経っていた。
彼らが通り過ぎた後の砂漠の砂を、とめどなく流れる女戦士の血が固めていた。
彼らが通り過ぎた後の砂漠の砂を、とめどなく流れる女戦士の血が固めていた。
【バルバトス 生存確認】
状態:TP微消費
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸4発付き。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。
状態:TP微消費
所持品:銃剣付き歩兵用対戦車榴弾砲(弾丸4発付き。一射ごとに要再装填) クローナシンボル
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:マグニスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する。特に「英雄」の抹殺を最優先
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。
【マグニス 生存確認】
状態:ほぼ無傷
所持品:オーガアクス ピヨチェック
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。
状態:ほぼ無傷
所持品:オーガアクス ピヨチェック
現在位置:E4の砂漠地帯からF4へ移動中
第一行動方針:バルバトスと同盟を組み、残る参加者を全員抹殺する
第二行動方針:F4で起こった煙が気になり、移動する。
【マリー・エージェント 死亡】
【残り44人】
【残り44人】