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魔道学院 総務部広報課フェオ=ニーミル女史による履修お披露目会案内~
はーい……って、あれれ。
広報課に学生さんがいらっしゃるのは珍しいですねぇ。
いえいえ、ゆっくりしていってくださいね……ほえ?履修お披露目会についての質問ですか?
そうですねぇ……履修お披露目会はざっくり言うと、学生さん方の日々の学業習熟度を広く外部の方にまで理解して頂くことを目的として開催される、学院秋の一大イベントですねぇ。
特に専門分野の魔道技術者の獲得を視野に入れている企業や組織にとっては格好の人材発掘の場でもありますから、魔技師課程の皆さんが活気づく祭典でもあります。
もちろん術士課程の生徒さんも、既存術式の威力・制御・連続使用等の演習披露や、独自に研鑽を重ねた術式の披露、場合によっては解説などを行いますから、優れた術士を欲しがっている各地の騎士団や宮廷魔導師団からも人が訪れますよ~。
噂では、うちの卒業生で賢者の塔にスカウトされる人材の殆どは、この履修お披露目会を通じて在学中からマークされてる、なーんて話も聞きますしねぇ。
まぁ表向きはそういう目的で開催されるんですけど一年を通じて唯一、一部ではありますが学院敷地が一般開放されるので、お子様を預けられたご家族にとっては自分の子供がどんな環境で学業に励んでいるのかを知る数少ない機会ですからね。
子供の発表会って趣で足を運ばれる方も多いです。
そんなもんですから、この時期は入学手続時期以上に学院領の外からお客様をお迎えするので、外郭街の普段は休業している宿泊施設や飲食店なんかの開業の為にぞくぞくと人が詰め掛けますし、治安維持の為に警備部隊の方々も大変みたいです。
あ、もちろん帝国領各地や他国からも賓客が訪れられますから、私たち広報課も目の回るような忙しさなんですよ~。
なんです?その疑わしげな目は~。
私だって開催中は賢者の塔から視察に訪れられる導師のご案内を仰せつかってるんですから。
なんでも評議会入りも間近と噂される方だそうですよ~。
名前は忘れちゃいましたけど。
でもまぁ学院の卒業生だそうなので私がご案内するようなことはあまり無いだろうな~と思って、実のところは気が楽なんですけどね~。
さっきも言いましたけど、お披露目会開催前後は人が一杯いらっしゃいますので、街のあちこちや学院の解放区画で出店や模擬店が開かれたり、歓迎の意味も込めての演劇や合唱会の開催もされますよ~。
年少の初等部生や初等準備院の子供たちが、揃いのローブとベレーで着並んでの合唱はそりゃぁもう可愛いったらないんですから♪
今や魔術による聴覚・視覚効果は歌劇に欠かせませんから、そういう分野でも商工連邦の雅芸都市から著名な演出家さんなんかが見に来たりもするそうです。
有名人とお知り合いになるチャンスでもありますよねぇ、私はサイン帳を携帯しようと思ってます♪
そうそう、忘れちゃいけないのが闘技大会ですね!
あ、いやいや。人じゃなくて魔人形を用いたものです。
さすがに事故があってはいけないですからね、模擬戦といえども学生同士のはありませんよ。
本来は魔人形や、擬体、素材なんかの実用耐久評価を目的として始められたんですけど、やはり披露する側はともかく、見物する方も人形とはいえ対峙した双方が競技場を舞い、ぶつかり合うのを見ると白熱しちゃうじゃないですか?
で、今やお披露目会の目玉の一つです。
闘技大会をはじめたばかりの頃は生徒同士が製作した人形を披露するだけだったそうですが、あまりに出来がいいってことで工房都市のいくつかの人形工房から参加申し込みが来たのを皮切りに、今や大陸中の人形技師の選手権大会みたいな扱いらしいですよ。
確かに大会の上位入賞者や特別表彰を受けた方の殆どが魔道人形界でも著名な名匠となってるそうですしね。
外部参加の方は事前審査がありますが、うちの学生は自由に出場できるので、出場権狙いでうちに入学したがる人形師志望の子も結構いるそうですね。
大別して個人参加枠と団体参加枠の二つで、どちらも勝ち抜き戦方式です。
個人参加される学生は大抵魔人形教室の生徒ですが、団体で出場する場合は魔鍛冶教室の子や、仕掛け魔術担当で一般の術士課程の生徒が混ざっていたりとチームごとに特色がありますね~。
新聞部が発行している参加者やチームレポートを纏めた冊子を読むと、より楽しめますよ♪……と、宣伝してくれって後輩に頼まれたんですけどね、でも本当によく纏まってて観戦するならぜひ読んだ方がいいですよ。ちなみに1部120キアラなのです。
あ、あと学生は出場権があるといっても、あくまで人形の評価が目的ですから、姿かたちには拘りませんが、強力な魔術を撃ちだす為だけの砲台みたいな擬体や、一般にゴーレムと呼ばれる簡易組成人形を使用することはできません。
あれ、首を捻っていますね。分かりにくかったですか?
つまりは土や岩、泥や鉄屑などに魔術で形を与えて人形とするもの、器の組成と維持が魔術で行われるものは擬体技術を評価する大会の参加対象外だと思って頂ければ問題ありませんね。
操作は操者が居ても、自律思考型でも問題ありません。
出場に関する制限などはこんなものですかねぇ……。
え?外部参加者が優勝したりしないのかですか?
厳正な大会ですからね、勿論学院と関係ない参加者やチームが優勝することもありますよ。
でも対戦相手が学生だけの部門を選ぶこともできますし、あえて強敵揃いの外部参加戦に出場して途中敗退しても、学生の身分として正当な評価を行いますので、そういった場合の為に特別表彰が設けられています♪
私個人としては腕に覚えがあるなら、途中敗退したとしても外部の猛者と当たる部門に出場して欲しいところですし、現に学生部門よりも外部参加者とぶつかりたいって生徒の方が多いんですよ~。
うちの生徒さんもそうですが、外部の技術者さんたちも熱い方が多いみたいですからねぇ。
団体戦で敗退したチームとか毎年泣き崩れてたりしますもんね、青春って感じです~。
あ、土を持って帰るのは何年か前に寮母が激怒して禁止されちゃいましたからダメですよぉ?
ここ数年うちの人形教室の生徒はレベルが高いって話ですし、今年はこないだ夏の鉱山実習から戻った生徒が出場登録の人形を取り下げて素材レベルからの見直しを急ピッチで始めたりされてて、なんだか活気づいてて楽しみなんですよ~。
あ、随分話し込みすぎちゃいましたね。
そろそろお昼休みもおしまいです。
また何かありましたらいつでも広報課にいらしてくださいね♪
最終更新:2013年04月18日 20:45