他の先生だと、にべもなく没にされるようなレポートを持ちこんでも、いつも『独創的だね』と笑いながら修正点や理論の穴を指摘してくれる緑の髪の小さな先生。
でも今日持ち込んだレポートをめくった先生の反応はいつもと違っていた。
標題は【異界の魂と幻獣・獣の融合による合成獣の開発】
自分としては新種開発なんてとっても燃えるテーマだし、きっと先生も面白いって褒めてくれると意気込んでたんだけど、先生は自分には採点できそうにないなぁって小さく呟いて
「ねぇ、合成してできたキメラに自我が宿ったとして、それって誰のものなのかな?合成元になったどれかの意思?、それともキメラという存在が見出した別のものなのかな……前者だとしたら、残らなかった意思はどこへいくのかしら、それとも残ったモノが食べちゃったのかな」
何を訊かれたか判らなくて戸惑ったのも束の間、先生は小さく笑って……
「はい、これは返しておくわ。……できたら、この実験はして欲しくないなぁ」
そう言って、レポートを返してくれた。
いつも元気な先生の、あんな顔は初めてだった。
どうしてあんなに辛そうで、どうしてあんなに悲しそうに笑ったんだろう。
それにあの質問の意味は一体……
最終更新:2012年06月23日 01:44