書籍紹介「図解臨床ガイド トラウマと解離症状の治療」
著者:サンドラ・ポールセン
出版社:東京書籍
発売日: 2012/3/21
ISBN: 978-4487805297
出版社:東京書籍
発売日: 2012/3/21
ISBN: 978-4487805297
概要/レビュー
自我状態療法は、John G. Watkins(1993)によって考案、「単一の人間の中で”自分内家族”を構成するさまざまな”自我状態”のあいだで起きる葛藤を解決するために、グループセラピーや家族療法と似た方法を用いる」と定義されている。
著者はDIDから軽度の解離を含む「解離性連続体」に対して、自我状態療法が有効であるとした上で、「会議室テクニック」、「EMDR」を中心に解離やトラウマに対する治療法を紹介していく。
キーワード
解離、自我状態療法、会議室テクニック、自我のパーツ、EMDR
目次
- 著者について
- 図版一覧
- 日本語版への序文(サンドラ・ポールセン)
- 第1章 導入と概略
- はじめに
- 適切な距離と視点を獲得するための自我状態療法
- 自我状態療法は、程度の異なる解離症状を示す人々(解離性連続体)に効果的なEMDR治療を施す鍵となる
- 治療における<ACT-AS-IF>の段階
- 自己の構造
- 異なる機能の間の壁となる”解離障壁”
- 健康な境界と解離障壁との違い
- 解決されていないトラウマは”再現”というかたちで現在の行動に影響を与える
- 幼少期の想像上の友人
- フロントパートの役割は、知らないままでいること
- 状態依存学習
- 安心感を確保するために加害者像を取り込む
- 攻撃者との同一化:加害者の投影
- 第1章・まとめ
- 第2章 アセスメント
- はじめに
- トラウマ治療の準備となるアセスメント
- 解離のアセスメントを行うさまざまな手法
- アセスメントでは赤信号を見落とすな
- ”あの人たちは自分じゃない”という信念は、治療すべき対象となる
- 治療の同意事項に従わないクライエント
- 第2章・まとめ
- 第3章 封じ込めと安定化
- 解離の治療――道筋は分岐する
- 感情調整困難
- 良好な境界を確立し維持する
- 最適な覚醒範囲
- セッションの開始と終了時は、リソースによってクライエントを力づける
- 治療における中立性――”私はその場にいなかったから”
- 治療中の”共鳴”
- 解離のテーブル――”会議室をよく見て、なにか見えてきたら話してください”
- ”トーキング・スルー”――助けになってくれるパーツを通じてほかのパーツと話をする
- 愛着の傷――絶望する子ども
- 愛着の傷を癒やす一歩――心の目に映る情愛
- 取り込み像の修復――内在化された親の像を修復する
- 怒りや恥を抱えたままの、切り捨てられたパーツを修復する――モンスターをなだめる
- 一方通行の”共意識”を利用する
- スピリチュアルなリソースを歓迎する――助けになるものはなんでも使おう
- エネルギッシュな癒しの場――より大きな力の存在
- エネルギー感度と直感力
- ”共鳴”はクライエントの自我を強くし、感情耐性を向上させる
- クライエントのリソースの開発――心強いリソースチームを作っておく
- 過剰に結びついた自我状態を分離する
- ”グラウンディング”は治療初期において不可欠なリソース
- 力と落ち着きを感じるための自我強化法
- メタ認知によるリフレーミング――新たな枠組みを作るための思考法
- 解離症状を利用した治療のペース配分
- Paulsenの2つのステップ――Step1:行動・感情・感覚・知識(BASK)要素を封じ込める
- Paulsenの2つのステップ――Step2:自我化されたパーツのしまい込み
- 不完全な終わり方――”あまり気分はよくないけれど大丈夫”
- 感情は調節できる、という自信を育む
- ”戦略的統合”では、健忘障壁のうしろで治療することもある
- 第3章・まとめ
- 第4章 トラウマ記憶へのアクセス
- はじめに
- トラウマ記憶との距離が調節できる解離のテーブル
- すべてのパーツにはそれ相応の機能がある
- 両側性刺激を用いた危機介入法――トラウマ記憶を思い出させること無くベースラインに戻す
- 解離を成立させる原理――抜け出すことのできない”ダブルバインド”
- ダブルバインドの思い込み――”私のせい。だけど私にはどうしようもない”
- 最優先すべきこと――もっとも権威あるパートと接触する
- 解離したBASK要素――”コンテナ・キッズ”
- 幼少期の傷をきちんと認め、共感する
- 時・場所・人に対する混乱
- クライエントの葛藤――接近するか回避するか
- 攻撃者との同一化――加害者の目を通して外界を見る
- 相反する感情による古くからの葛藤は、歴史的遺物のように保存されたままである
- 人に対する方向づけ――同じ体にいてくれますか?
- 人に対する方向づけ――あちらの椅子へ移動してくれますか?
- 時に対する方向づけ――いまが何年だか知っていますか?
- 防衛的であるがゆえの、敵意ある反発――モンスターとの対面
- 愛着の傷は不信と疑いを生む
- モンスターに感謝することで、抵抗するパーツを味方につける
- モンスター化した加害者の取り込み像をおだやかにするためのチェックリスト
- 自己愛に関わる傷
- モンスターのコスチュームを脱ぐと、傷ついた子供が現れる
- 子供時代に満たされなかった依存心
- 分裂した対象と、相容れない自我状態
- 人に対する混乱――”そんな人たちは見えません。あの人たちは私じゃありません”
- ダッシュボードについた感情の計器――ワイヤーはつながっているか?
- 身体感覚――”体のどこでそれを感じますか?”
- 投影による情報の再現
- 投影同一視による情報の再現――セラピストが角をはやしているように見えるとき
- 心の目に見える庭で、過去を称える
- 第4章・まとめ
- 第5章 除反応による融合
- はじめに
- Porgesによる”ポリヴェーガル理論”の覚え方
- 戦略的統合では、計画的な除反応作業を行うことが大切
- 部屋を一度に掃除すると、ますます混乱する
- 細分化は望ましいアプローチ
- 誤ったアプローチでトラウマを除去しようとすると、フラッディングが起きる
- 細分化はより望ましいアプローチ
- 複雑なトラウマに対してEMDRを使う時の<ARCHITECTS>アプローチ
- <ARCHITECTS>――接触(Access)のA
- <ARCHITECTS>――絞り込み(Refine)のR
- <ARCHITECTS>――同意(Consent)のC
- <ARCHITECTS>――催眠(Hypnosis)のHとイメージ(Imagery)のI
- <ARCHITECTS>――滴定(Titration)のT
- <ARCHITECTS>――EMDRのE
- 両側性刺激によって、解離した情報経路(BASK)を結合する
- ルーピングや抵抗に対する解決策
- <ARCHITECTS>――終了(Closure)と封じ込め(Containment)のC
- <ARCHITECTS>――落ち着き(Tranquility)のT
- <ARCHITECTS>――安定化(Stabilize)と統合(Synthesize)のS
- 第5章・まとめ 除反応作業で全てが完了するわけではない
- 第6章 スキルの構築と強化
- はじめに
- EMDRを用いてパフォーマンスを向上させる――”くぼみや岩”にたとえられるスキル不足や障害物
- 第6章・まとめ
- 第7章 統合
- はじめに
- 第7章・まとめ
- 第8章 フォローアップ
- 最終段階
- 第9章 結び
- <ACT-AS-IF>――治療プロセスの流れ
- 複雑なトラウマ事例におけるEMDRセッションの流れ――<ACT-AS-IF>の2番目のAに含まれる<ARCHITECTS>の各段階
- <ACT-AS-IF>の締めくくり段階
- カセクシス理論についての補足
- 第9章・まとめ
- 終わりに
- 監修者あとがき(新井陽子/岡田太陽)
- 参考文献と資料
- さくいん(事項/人名)
- 臨床家と治療を希望される方へ
販売元紹介文
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)はトラウマ(心的外傷)ケアに有効とされています。
しかし、著者サンドラ・ポールセン博士は、トラウマに加え解離症状もあるクライエントの場合、EMDRの標準的な手順では治療に行き詰まりがちなことに気づきました。その解決策として、彼女はジョン・ワトキンズ博士が開発した自我状態療法とEMDRを組み合わせた手順を構築し、その治療効果は広く注目されるところとなりました。
本書は、この治療手順をわかりやすく解説するために、著者自身によるオリジナルなイラストを添えて作られたものです。
ポールセン博士は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に際しては、悪夢やフラッシュバック、それらの引き金となる出来事を避けるといったPTSD特有の症状だけでなく、時の感覚の喪失や健忘など、解離性障害の症状の有無の確認を行うように強く勧めています。
そのため本書では、解離症状に対する“構造化されたアセスメントと治療の手順”が紹介されます。それらの実施によって治療中に陥りがちな交代人格が増えていくという問題を防ぐことができるようになります。
この日本語版では、一層のわかりやすさを心がけ、巻末に和英併記のさくいんを加えました。本書が関係者の理解と研究、そして効果的な治療に役立つことを願っています。
しかし、著者サンドラ・ポールセン博士は、トラウマに加え解離症状もあるクライエントの場合、EMDRの標準的な手順では治療に行き詰まりがちなことに気づきました。その解決策として、彼女はジョン・ワトキンズ博士が開発した自我状態療法とEMDRを組み合わせた手順を構築し、その治療効果は広く注目されるところとなりました。
本書は、この治療手順をわかりやすく解説するために、著者自身によるオリジナルなイラストを添えて作られたものです。
ポールセン博士は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に際しては、悪夢やフラッシュバック、それらの引き金となる出来事を避けるといったPTSD特有の症状だけでなく、時の感覚の喪失や健忘など、解離性障害の症状の有無の確認を行うように強く勧めています。
そのため本書では、解離症状に対する“構造化されたアセスメントと治療の手順”が紹介されます。それらの実施によって治療中に陥りがちな交代人格が増えていくという問題を防ぐことができるようになります。
この日本語版では、一層のわかりやすさを心がけ、巻末に和英併記のさくいんを加えました。本書が関係者の理解と研究、そして効果的な治療に役立つことを願っています。