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17スレ第24戦(2)

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今回の勝負はフランちゃんの寝顔撮影。勝負に先駆け、先に手を打ったのは四季映姫だった。
これがファイトであることを伏せて、情報を警察(是非曲直庁直属)にリークしたのだ。
いわく、射命丸文が紅魔館に不法侵入し、幼女の寝込みを襲おうとしている、と。
結果、射命丸文を待ち構える形で警察(地獄の獄卒たち)が紅魔館内部に配属され、
紅魔館門番隊やメイド隊らと共に警護に当たる形になった。
さらに、それが地獄の獄卒である以上、当然、四季映姫の部下でもある。
彼らに事前に話を通しておくことによって、映姫は文より先に、悠々と紅魔館内に潜入することに成功。
後は、頭の切れるメイド長や魔女をなるべく避けながら地下へと向かえばいい。

そう考えていた映姫の意識は、その途上、紅魔館の廊下でぶっつりと途切れた。

ブラックアウトから復活する映姫。気絶した時間は、せいぜい数分か。
だが、その数分のうちに景色がすっかり変わっていた。
廊下の絨毯はズタズタにちぎれ、シャンデリアは崩落し、数少ない窓はどれも粉々になっている。
妖精メイドも獄卒も、皆が一様にズタボロになって倒れ伏している。
一体何が、と思い、瞬時に理解する。それは、高速で何かが通り過ぎた跡だと。
文に違いない。
だが、馬鹿な。
混乱しながら通り跡を追いかける映姫。
先ほどのブラックアウト、映姫の後方から文が通り過ぎた、その衝撃波によるものだろう。
だが、映姫は文の気配を、全く感知できなかった。
考えられる理由は一つ。文が、感知できるよりも遥かに速い速度で通り過ぎたからだ。
だが、そうすると文はその時、音速を遥かに超えていたことになる。
空気の壁を裂き、音よりも速く飛ぶ――
なるほど、衝撃波は相当のものとなるだろう。そして同時に、文の体も耐えられないはずだ。
追いかける映姫。破壊の跡は地上階からそのまま図書館を過ぎ、地下のフランドールの部屋へと続く。
その途中で瀕死の重傷を負っている魔女とメイド長、彼女らを介抱する小悪魔は見なかったことにする。
そして、ついに到達した妹様の部屋。
そこにいたのは、レミリア、フランドール、そして射命丸文。
まずフランドール。部屋が大破しているにも関わらず、ベッドでぐっすりと眠っている――おそらくレミリアが運命操作で守ったか。
そのレミリアは、見るも無残な有様だった。何せ、右半身が丸ごと消失している。
そして、文――こちらもまた満身創痍だった。両腕は指先から肩まで複雑骨折、
頭部も強くぶつけたか、顔面が大きく腫れ上がり、額からはだくだくと流血している。
だがそれでも、折れた両腕で抱えるカメラだけは無傷だった。

「カメラだけは守り通したか、射命丸文」
「……」

左半身のみで立ち上がるレミリア・スカーレット。
おそらくレミリアは、恐ろしい速度で突っ込んできた文を真正面から受け止めたのだろう。妹を守る、その一心で。
だがその結果、右半身がグングニルごと吹き飛ばされることとなった。

「だが……まだだ! まだ終わっては……!」

げに恐ろしきは吸血鬼の再生力よ。
まるごと消滅していたはずの右半身が、じわじわと治り始めている。
そして、何よりもその表情。明確な殺意が、文に向けられる。
対する文は、無表情。
その虚ろな瞳で、レミリアの殺意をぼうっと眺める。
意識があるのかどうかが、既に怪しいのでは――そう思われた、刹那、
文が消えた。
否。動いていた。目も眩む速度でレミリアに肉薄。
左上段蹴り――レミリアの右半身はまだ回復していない、左腕で無理やり受け止める――直後、その勢いのままに右回し蹴り。
天狗の速度での二段蹴りに、数歩後退させられるレミリア、
文は、その口に、葉団扇をくわえていた。
突風。
スペルでもなんでもない、ただ強力なだけの暴風に、体勢を崩されていたレミリアは吹き飛ばされる。
フランの部屋からさらに外、地上のほうへと、押し流された。
沈黙が降りる。
文が、映姫のほうに向き直った。はっと我に返る映姫。

「…………おや、閻魔様。ごきげんよう」

文が口を開いた。葉団扇は奥歯の端に引っ掛けたままだ。

「どうしました閻魔様、そんなところに突っ立って?」
「う……」
「四季映姫さん、貴方、レミリアさんが吹っ飛ばされる前から来てましたよね? 私、ちゃんとわかってたんですよ?」

文の表情はいまだ虚ろなままだ。なのに紡がれる言葉はいつも通りの飄々とした風。
映姫は――動けない。

「閻魔様、どうされました? どうしてさっきの隙に写真を撮りに行かなかったんです?」
「…………」
「閻魔様ならできたはずです、私が同じ立場ならそうしてました、何も迷うことなくそうしてました」
「そう……ですか」
「そうですよ。閻魔様、私は気付いたのです。
 ファイトではずたぼろにされ、公衆の面前で肌を晒し、しまいには家も焼けちゃいました。
 そこまでされて、ようやく気付いたんです。私には――もう、これしか無い。
 潜入して、写真を撮って、記事を書き、新聞を作り、配る。
 もう私にはそれしか無いんです、だったら、それのためなら何だってやります。
 体が壊れたっていい、誰を敵に回しても構わない、もう何を失っても惜しくは無い。
 だから、これだけは――新聞だけは、譲らない。
 閻魔様……私は、間違っていますか? 私の罪を、説教しますか?」
「…………」

映姫は答えない。
間違っているか、と問うのなら、間違っている。これは明らかに断罪すべき所業だ。

「ああ……そうか、これは、ファイトでしたね。映姫さんはまず、説教より先に、写真を撮るんでしたっけ」

文が視線を向ける、映姫の手の中にもカメラはあった。
文のような私物ではない、今回のファイトのために河童に借りた一品だ。

「困ったな、この体じゃ、閻魔様より早くシャッターを切れないかも知れません」

文の言葉は事実だ。何せ指が全部折れ曲がっている。
だが、と映姫は思う。それでもこの天狗は、折れた指でシャッターを切る。

「しかも、直接の妨害はファイトのルールで禁止されている……直接対決がありなら、まだ、勝ちの目はあったんですけどね」

瀕死と言っていい状態で、そう言ってのける射命丸文。
本気で言っている……当然ながら、正気では無いだろうが。

「じゃあ、やりましょうか。フランドールさんの寝顔に近づいて、シャッターを切ったほうの勝ち、で」
「……まだ、やるつもりですか?」
「譲れない、と言いましたよ」

冷静に考えて。
自分が勝つ、と映姫は考える。位置的に有利というのもあるし、文のあの手ではまともにカメラを構えられない。
それに、文の撮影を妨害することもできる。
文のカメラを白黒はっきりつけてしまえば、文が撮る写真は、真っ黒にしかならなくなる。
――だが。

「……その腕で、シャッターを切れますか?」
「切ります。意地でも」
「そこまではいいとしましょう。撮った写真で――記事が、新聞が書けますか。筆が持てますか?」
「何なら足の指で書いてもいいですよ」
「そのボロボロの体で、新聞を配達できますか?」
「動きさえすれば問題ありません」
「では……そんな貴方の新聞を、誰が読みますか?」
「…………」
「貴方が書く新聞は、幻想郷の人妖を面白おかしく過ごさせるための新聞だったはずです。
 そんな……悲壮な貴方の新聞を、誰が読みますか」
「製作者の意思は関係ありませんよ。新聞は、書かれれば、誰かが読んでくれます」
「いいえ。貴方の意思が大切なんです。貴方の抱いた志が反映されなければ、新聞は、ただのモノに成り下がる」
「モノでもいい、事実を伝えられれば!」
「そんな新聞、私は読みたくない」
「!」

映姫は背を向け、フランの部屋の外に足を向けた。

「これは閻魔からではなく、いち新聞ファンからのお願いです。
 あなたの新聞を、読ませてください」
「…………」
「椛さんに連絡を入れておきます、すぐに迎えに来てもらえるように。
 紅魔館の皆さんにも伝えておきます。貴方の手当てをするように、そして、怪我が治らないうちは貴方に仕返ししたりしないように。
 今回の新聞は、椛さんに代筆してもらえばいいでしょう……無理に貴方が書く必要はありません」

ああ、それと、と映姫は振り返って。
優しい笑みを向け、そっと告げた。

「怪我が治ったら知らせてください。その時こそ、説教させていただきますから」



勝者:射命丸文
なお、今回の顛末は後日、文々。新聞にて、面白おかしく報道されたという。


































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