「何か言ったらどうなんだ!」
会議室に怒号が鳴り響く。
中央に設えられた円卓にはマキナ、フィーティン、そしてヴェルスタンドの要人たち。一同に会するのは錚々たる顔触れ。そこにはフィーティン王やマキナの首相の姿もあった。そして怒鳴られているのは最奥の席に腰を下ろす、白髭を蓄えた老人だった。
老人は目を閉じたまま、黙して何も語らない。
「各地では新種のグメーシスが現れて被害を起こしている」
「グメーシスと言えば、かつてヴェルスタンドが生み出した精神兵器のひとつですな。これをどう説明されるおつもりで?」
マキナやフィーティンの代表者たちはヴェルスタンドに猛烈な抗議を送った。
それに対してこの白髭の老人、ヴェルスタンド大統領は否認の意を述べた。
「我がヴェルスタンドは今回の一件には一切関与していない。どうか私を信じてくれないか…」
大統領が嘆願するが、マキナやフィーティンは厳しい視線でそれに応える。ヴェルスタンドの大臣たちは口々に反論し、返す言葉で他の二国はそれをきつく罵る。会議室には怒号が鳴り響いていた。
(ガイスト…。もし、おまえがここにいてくれたなら……おまえなら、どうした?)
老人は一人遠い眼をしながら虚空を眺めた。
我々はこの老人を知っている。いや、かつての眼差しとはその眼に宿った意志の力はまるで違う。彼はもう、ただの一介の医師ではない。彼の名はヘルツ。そう、かつてヴェルスタンドの精神科医だった男。そしてヴェルスタンド第108代大統領である男!
会議室に怒号が鳴り響く。
中央に設えられた円卓にはマキナ、フィーティン、そしてヴェルスタンドの要人たち。一同に会するのは錚々たる顔触れ。そこにはフィーティン王やマキナの首相の姿もあった。そして怒鳴られているのは最奥の席に腰を下ろす、白髭を蓄えた老人だった。
老人は目を閉じたまま、黙して何も語らない。
「各地では新種のグメーシスが現れて被害を起こしている」
「グメーシスと言えば、かつてヴェルスタンドが生み出した精神兵器のひとつですな。これをどう説明されるおつもりで?」
マキナやフィーティンの代表者たちはヴェルスタンドに猛烈な抗議を送った。
それに対してこの白髭の老人、ヴェルスタンド大統領は否認の意を述べた。
「我がヴェルスタンドは今回の一件には一切関与していない。どうか私を信じてくれないか…」
大統領が嘆願するが、マキナやフィーティンは厳しい視線でそれに応える。ヴェルスタンドの大臣たちは口々に反論し、返す言葉で他の二国はそれをきつく罵る。会議室には怒号が鳴り響いていた。
(ガイスト…。もし、おまえがここにいてくれたなら……おまえなら、どうした?)
老人は一人遠い眼をしながら虚空を眺めた。
我々はこの老人を知っている。いや、かつての眼差しとはその眼に宿った意志の力はまるで違う。彼はもう、ただの一介の医師ではない。彼の名はヘルツ。そう、かつてヴェルスタンドの精神科医だった男。そしてヴェルスタンド第108代大統領である男!
『大いなる意志』
序章「前提の提示」
かつて、この大樹の大陸には様々な争いが起こってきました。
あるときは未知なる物質ブラックボックスを巡って。あるときは精神兵器の登場によって。またあるときは精神体の暴走によって。この大陸はいつも戦乱の渦の中にありました。とくに精神体の暴走は大陸のマキナ、フィーティン、ヴェルスタンド三国を巻き込む大規模な問題へと発展し、この戦いは後に様々な名で呼ばれましたが、すべての原因になった精神体の特徴からこれを『HiveMind』と呼ぶこともありました。
HiveMindの英雄は四人。
一人はガイスト。精神体理論の権威であり、精神体を生み出した男。ガイストは先頭に立って精神体の暴走を止めるためにすべてを指揮しました。
一人はゲンダー。サボテン型自走式機。フィーティン軍と共に戦場を駆け、精神体との戦いをサポートしました。
一人はメイヴ。ブラックボックスを搭載した超高性能機。そのギガスペックを活かしての技術的サポートは問題の解決に大いに貢献しました。
一人はヘルツ。ヴェルスタンドの医師であり、ガイストの友として苦悩する彼を助けました。
四人の名は英雄として大陸中に知れ渡り、救国の四人として称えられることになります。そしてその後、四人は様々な運命を辿ったといいます。
そして、HiveMindから20数年後……
あるときは未知なる物質ブラックボックスを巡って。あるときは精神兵器の登場によって。またあるときは精神体の暴走によって。この大陸はいつも戦乱の渦の中にありました。とくに精神体の暴走は大陸のマキナ、フィーティン、ヴェルスタンド三国を巻き込む大規模な問題へと発展し、この戦いは後に様々な名で呼ばれましたが、すべての原因になった精神体の特徴からこれを『HiveMind』と呼ぶこともありました。
HiveMindの英雄は四人。
一人はガイスト。精神体理論の権威であり、精神体を生み出した男。ガイストは先頭に立って精神体の暴走を止めるためにすべてを指揮しました。
一人はゲンダー。サボテン型自走式機。フィーティン軍と共に戦場を駆け、精神体との戦いをサポートしました。
一人はメイヴ。ブラックボックスを搭載した超高性能機。そのギガスペックを活かしての技術的サポートは問題の解決に大いに貢献しました。
一人はヘルツ。ヴェルスタンドの医師であり、ガイストの友として苦悩する彼を助けました。
四人の名は英雄として大陸中に知れ渡り、救国の四人として称えられることになります。そしてその後、四人は様々な運命を辿ったといいます。
そして、HiveMindから20数年後……
『HiveMind』では、その結末が4つに分岐しました。
ひとつはゲンダーがその身を犠牲にしながらも、人々に未来を託して精神体を抹消した世界(Hive10A)
ひとつはメイヴと共にガイストが、すべての責任を一身に背負って精神体を葬り去った世界(Hive10B)
ひとつは彼らの仲間、グメーシスのグメーがすべての罪を背負って精神体と共に消えた世界(Hive10C)
ひとつは誰一人として犠牲になることなく、最良の形ですべてを解決することができた世界(Hive10D)
突如としてグメーシスの亜種が現れて、各地に被害を出し始めたという20数年後のこの世界。それぞれの4つの世界ではこれを一体どう解決することになるのでしょうか。ひとつの運命に挑むのは4つの異なる前提。そこから導かれるのは4つの異なる結末。それぞれの前提は一体どんな未来を導き出すのか、それがこの『大いなる意志』の物語です。
ひとつはゲンダーがその身を犠牲にしながらも、人々に未来を託して精神体を抹消した世界(Hive10A)
ひとつはメイヴと共にガイストが、すべての責任を一身に背負って精神体を葬り去った世界(Hive10B)
ひとつは彼らの仲間、グメーシスのグメーがすべての罪を背負って精神体と共に消えた世界(Hive10C)
ひとつは誰一人として犠牲になることなく、最良の形ですべてを解決することができた世界(Hive10D)
突如としてグメーシスの亜種が現れて、各地に被害を出し始めたという20数年後のこの世界。それぞれの4つの世界ではこれを一体どう解決することになるのでしょうか。ひとつの運命に挑むのは4つの異なる前提。そこから導かれるのは4つの異なる結末。それぞれの前提は一体どんな未来を導き出すのか、それがこの『大いなる意志』の物語です。
これを読み進めるにあたって、まずは「前提」をひとつ選んでください。
前提は上記の4つ。すなわち、
【ゲンダーがいないAルート】【ガイストとメイヴがいないBルート】【グメーがいないCルート】【全員生存のDルート】
『大いなる意志』には、1章A、1章B…のように、複数の並行した章が存在します。
Aルートを選んだ場合は1章Aへ。Bルートなら1章Bへ。Cルートは1章Cへ。Dルートは1章Dへ……というように、あなたの選んだルートの文字が付く章を追っていくのが、この『大いなる意志』の読み進め方です。
より前提背景を理解したいのなら、先に『メイヴの謎』?や『HiveMind』を読み終えておくのも良いかもしれません。
前提は上記の4つ。すなわち、
【ゲンダーがいないAルート】【ガイストとメイヴがいないBルート】【グメーがいないCルート】【全員生存のDルート】
『大いなる意志』には、1章A、1章B…のように、複数の並行した章が存在します。
Aルートを選んだ場合は1章Aへ。Bルートなら1章Bへ。Cルートは1章Cへ。Dルートは1章Dへ……というように、あなたの選んだルートの文字が付く章を追っていくのが、この『大いなる意志』の読み進め方です。
より前提背景を理解したいのなら、先に『メイヴの謎』?や『HiveMind』を読み終えておくのも良いかもしれません。
まとめると、
2章A Aルートを選んだ場合はここに進みます。Bなら2章Bへ。C、Dも同様に。
3章 何も表記がないものはどのルートでも共通の章になります。
4話ABD これはABDルートの世界軸でのみ起こる内容の章になります。この場合、Cルートは4章Cへと進みます。
つまり、自分が選んだ前提A~Dルートと同じアルファベットが付いている章を選んで読み進んでいく形になるわけですね。
2章A Aルートを選んだ場合はここに進みます。Bなら2章Bへ。C、Dも同様に。
3章 何も表記がないものはどのルートでも共通の章になります。
4話ABD これはABDルートの世界軸でのみ起こる内容の章になります。この場合、Cルートは4章Cへと進みます。
つまり、自分が選んだ前提A~Dルートと同じアルファベットが付いている章を選んで読み進んでいく形になるわけですね。
さあ、あなたの選ぶ「前提」はもう決まりましたか?
グメーシス亜種の出現というひとつの運命に対して、果たしてどの前提がどんな結末を導き出すのか。全員生存の「前提」こそ、やはり最善の結果をもたらす? それともグメーシスを含む精神体が完全に消滅している「前提」のほうが良い結果に? それは選んでみないことにはわかりません。さすがに未来のことまでは、私のデータベースの中にも入ってはいませんからね。
あなたの「前提」が決まったら、さっそくそれぞれの第1章が始まります。
大丈夫、あなたならきっと最善の前提を選べます。私、メイヴを……いえ、ここはこう言ったほうが適当でしょうね。
『あなたの直感を信じてください』
グメーシス亜種の出現というひとつの運命に対して、果たしてどの前提がどんな結末を導き出すのか。全員生存の「前提」こそ、やはり最善の結果をもたらす? それともグメーシスを含む精神体が完全に消滅している「前提」のほうが良い結果に? それは選んでみないことにはわかりません。さすがに未来のことまでは、私のデータベースの中にも入ってはいませんからね。
あなたの「前提」が決まったら、さっそくそれぞれの第1章が始まります。
大丈夫、あなたならきっと最善の前提を選べます。私、メイヴを……いえ、ここはこう言ったほうが適当でしょうね。
『あなたの直感を信じてください』
前提が変われば未来も変わる。1つの運命を4つの世界が巡る。
大樹大陸譚完結編。『大いなる意志』
大樹大陸譚完結編。『大いなる意志』