アットウィキロゴ

したらばSS作品 ◆LMBwMUyKG. 4-2

「クソ、どこだよ……」
 秋は苛立っていた。
 咲との通話を終えてから四十分、そろそろ見つかってもおかしくないのだが。
 学園校門をすぐ右に折れ、とりあえず道なりに走ってみても、あるのは山への道だった。誰も居ないこともないが、誰かに追われているような人間は居ない。
 一旦駆け足で校門前に戻り、膝に手をついて呼吸をする。あまり時間がかかっては、連絡がない以上いい予感はしない。
「では雫にも応援を――」
「あれ? 秋じゃん」
 と、見かねた様子のティナが言いかけた丁度その時に、知った声が校舎の方から聞こえた。
 長槍を担いでふらふらと歩いてきたのは、間違いなく友人の霞沢雫だ。栗色ショートと、迷彩服のジャケットは相変わらず。
「雫? なんで」
「私は拳君のフォローをしなくてはなりませぬ」
 びっ、と親指を立てながら即答する雫。
「拳がなんかやらかしたのか、珍しい」
「うんそういうわけで暴漢を止めます!」
 びっ、と親指を立てながら即答する雫。
「元気いいですね」
「こいつは普段からこんなんだろ」
 びっ、と中指を立てながら受け流す秋。
「最低……」
 ティナが恐ろしい声で呟いたのですぐやめた。
「わぁ、秋ってほんと最低……私いたいけな女の子なのに……」
「うっせ、今切羽詰まってんだ。咲の居場所わかんないか?」
 ううん? と不思議そうな顔をして、雫は首を捻った。
「咲、携帯持ってるじゃん」
「今電話するのはきついんだよ」
「あれ? そうじゃなくてさ、環凪の携帯GPS情報って強制的に開示されてるんじゃなかったっけ」
 三人はその場で沈黙した。雫とティナは秋を見た。
「…………」
「…………」
「…………その手があったか! マイナー機能過ぎて知らなかったぜ!」
 実際はどの手も探そうとせずに走りまわっていただけなのだが、とりあえずその手は重要ものだった。
 そしてぽちぽちと携帯をいじる。
「……どうやって見るんだ?」
 自分の位置がわかるGPSはあるが、探しても他人の位置を捜索することは無理そうだった。雫はぽんと手を叩く。
「あ、学園の機関じゃないと見られないのかもね。プライバシーに関わるし」
 また三人は沈黙した。これでは咲が探せないではないか、と秋は思った。
「おっと、秋。なんでお前達一緒に居るんだ?」
 そこに、てきぱきと歩く拳がやってきた。
「咲が暴漢に襲われて大変なんだ、なんとかしてくれ」
「……」
 拳は口を真一文字に閉じた。
「そうか……牧原だったか……確かにここに居ない……」
 次には落胆した様子で。
「何が」
「いや、瓦煉隆盛という戦闘狂にお前達の名前を教えてしまったのは俺なんだ。すまん」
「んん?」
「それと、今日の放課後すぐに、大男に追われる三年女子が居たという話だった。今風紀委員に行ってきたんだが、ああ」
 要領が悪いな、と秋は思う。もったいぶった言い方は今特に必要ない。
「三行で頼む」
「やばい」
 拳は言った。
「三文字じゃねえよ」
「まあ、まあ。ああ。瓦煉隆盛のGPSデータはリアルタイムで俺の端末に送信されることになっている。これから奴を追いかけるんだが、当然行くよな?」
「話が微妙に読めないけど、そいつが咲を襲ってるってことでいいんだな?」
「それでいい」
「なら、それでいい。行こう」
 ぴた。と拳は携帯をいじり、難しい顔になった。
「どうする? 四人で固まって行くか」
「今の場所はどこだ」
「今は繁華街に向かってる。さっき風紀委員会室で見たときは、ある程度の速度で海岸線を移動していたようだった」
 未だマラソン中だということだろうか。
 しかしそれは瓦煉隆盛の位置情報であるので、既に彼の目的が果たされてしまっている可能性もないわけではない。
「とにかく急ごう。必要があれば二手に分かれる。今のままじゃ移動が読めないからな」
 拳の言葉を聞いて、ふと秋は思い出した。
「いや」
「どうした」
「出来る限りこっちに向かってるはずだ。遠回りしていても、最終的には」


 無力は人の弱さを浮き彫りにする。
 どうしたって敵わないとなれば逃げ出すしかない、立ち向かってへし折られるよりは向き合わなくていい。
 しかし逃げるということはつまり、その弱さを自分で受け止めなくてはならない。
「先輩、苦しいです」
 中等部の後輩は喚いた。剣道部だと言っていたが、根性がないのか。
「待てぇい!」
 背後には頭のおかしな男が詰めてきているのに。
 違う、詰めてきているから、彼女は辛いのだ。先程打ち砕かれた彼女の誇りは、そう簡単に元通りになるものではない。
 目上の人間の諍いに飛び込んできたところ、それなりの自身はあったのだ。事実、正面からぶつかれば咲よりも明らかに強い。
 それでも現在彼女が泣きだしそうになっているのは、あの男があまりにおかしな存在だからだろう。
 あの彼の自身は、彼女の持つものとは質が違うのだ。
 おそらく過去にも、その決定的な経験の差で勝利を収めてきたことが大半なのだろう。
 彼女を壊しそうになったあの時、彼は自分の傷をいとわなかった。
 おそらく、自分は傷を負わないと信じていたのだ。未だ隠し玉があるのか。それとも彼女の能力を分析した結果か。
 楽しそうに笑って追いかけてくる彼の表情からは何もつかめないが、確かにそれはあったのだ。
「限界か」
 咲は後ろの少女に聞こえるように言った。
「辛いです」
 それはどちらが? と聞くのは無粋だと思った。
「……わかった。二分は耐えるから、急いで学園に戻れ」
 咲はそう言って、走るのを徐々にやめた。今回は手ぶらで止まってしまったので、何かを防ぐ手段があるわけでもなかった。
「えっ」
「いいから行け」
 歩みを止めそうだった少女に後押しをして、咲は男の接近に身構える。
「おっと! あまり追うのも面倒になっていたところだ、その潔さは褒めてやりたい」
「潔いわけじゃない」
「さあ避けられるなら避けてみろ! 粛清するのはお前だけじゃないんでな、そろそろ加減はしないぞ!」
 ばきん、と彼の両肩から赤の槍が展開された。
「行け!」
 走りながらその槍に指示を出すと、一瞬の間を置いてから、ミサイルのような勢いで二つは飛び出した。
「……」
 それを見ながら、彼が死なない程度に加減していることを信じて、咲は諦めた。
 さすがに咲も、限界だったのだ。


「止まった、か?」
 繁華街に向けて走っているところで拳が言った。
「何処だ」
「中心街の外れだ」
 秋はできるだけ急ごうと思った。止まってしまったのなら、それはつまりろくな事にはなっていない。
 咲が助けを呼んでいたのだ、少なくとも武器は持っていないことは明白だろう。
「ん?」
 秋は、道の正面からふらふらと走っている少女を見つけた。確かに見覚えがある、最近ちょっとトラぶった相手。
「あ……!」
 少女は泣きそうな顔のままで、秋の姿を認めたようだった。
「な」
「あなた……」
 何故かすがるような視線を送ってきたのは、秋の気のせいではなかった。
 彼女は秋の目の前まで駆けてくると、息も絶え絶えにして、懇願するような眼で見つめてきた。
「ねえ、頼み、聞いて」
「え」
 雫が心配そうに少女の様子をうかがうも、少女には秋しか見えていないらしい。
「先輩、ガレンなんとかって人が」
「秋」
 拳が即座に反応した。秋は頷き、少女の肩を掴んではっきりと言う。
「大丈夫だ」
 そのまま雫と目を合わせると、雫はその少女を支えに歩いてきた。
 秋が触れたその肩は少しだけ震えていて、少なくとも楽しいことがあったわけではないことは簡単に想像がつく。
「私の槍、持ってく?」
 雫は肩にかけた槍を指す。秋は首を横に振った。
「いい」
「先輩、私の剣は」
 雫に背中を支えられた少女は、弱々しく手から剣を産み出した。
「いいって。それはお前の剣だろ?」
 ふぅ、と秋は少しだけ息を吐いて、
「行くぞ」
「ああ」
 拳とティナに走ることを促した。
 秋の頭に残っていた少女の姿とのあまりの差に、妙に胸が重くなった。
 雫は直前にその時の秋の表情を見ていたのだが、秋はそれを見た雫の顔を確認することはなかった。



 彼の突撃槍は確かに殺意を持っているということはなかった。
 それは刺すための道具としてでなく、完全に殴るための道具として成立していたのだ。
「うむ。そろそろ次に行くか」
 次というのは、誰のことを指しているのか。
 道場破壊の件ならば、雫か、秋か、ティナが該当するのだろうか。
 それは嫌だ。その誰もがこの男と相対することになるなんて。友人の傷つく姿は見たくないし、こんな男と戦う姿も見たくない。
 特に、秋。
 彼は必ず、この男の行動を目の当たりにすれば激昂する。能力は戦うための力ではない。人を傷つけるための力ではないのだと。
 秋はAランクの位置にいながら、それも攻撃能力にしか使えないものであるのに、過剰にそれを力として振るうことはない。
 彼は自ら線引きをしている。強大な力は簡単にふるっていいものではないと自覚している。
 だからこそ、それをわきまえていない人間に出くわしたらどうするか。
 見せつけるのだ。能力がいかに強大で、使いようによっては全く人道的でないものなのだということを。
 愚かなことをしているのだと、相手に刻みつけるまで。
 しかし、それでは秋も傷ついてしまう。
 他人のために力をふるっているのに、自分まで傷つける。
 本当はそれ以外の方法も探せればいいが、現状で能力者に対しそれほど手っ取り早くスマートな方法など、ない。
「待て」
 だから咲は絞り出した。相手がこんな人間だと知る前に助けを呼んでしまった。呼んでしまえば、彼は必ず来てしまう。
 それならばその前に、自分の状況を周囲に認識させて、この男を風紀委員にでも自警団にでも連れていって欲しかった。
 しかしながら、この男は自警団だ。
 なんと皮肉なものか。
「牧原咲、お前はもう戦えない。粛清は終わりだ」
 そういう問題ではなかった。咲はとにかく彼の足を止めようと思った。
「自警団はこんな頭のおかしな者しかいないのか」
「……」
「ただの自己満足で弱者を踏んで満足か」
 男は怒った様子もなく、表情を変えずに言う。
「それを言われても答えることはできんな。オレは、戦うことでしか自分を見出せない」
 すると、彼は咲の体をひょいと肩に担いだ。打撲で傷ついた体がじんと痛む。
「戦意はあっても、お前はもう戦えないんだ。それは認めておけ」
「……」
 この男の行動は、咲にとって全く理解できないものだった。
 戦うことでしか、というのならば、秋とは全く対極に位置する者なのだろうか。
 そんな人間には触れたことがない。躊躇の無い者にもほとんど関わったことはない。
 わからないまま、繁華街の外れから、声が響いてきてしまった。
「咲!」
 間違いなく、秋の声だった。
「おお、水瀬秋か……」
 咲にしか聞こえない程度の声で、男は呟いた。
「…………」
 秋は無言で歩いてくる。咲の耳に足音が近づいてくる。
 あと何人か、もしかしたら雫もティナも居るのかもしれなかった。
「ええと、お前、瓦煉隆盛だよな?」
「そうだ」
「とりあえずそいつ降ろせ。どこ連れてく気だよ」
 秋は言った。男は少し無言になり、ややあってから口を開いた。
「嫌だ。と言ったらお前はどうする」
「腕」
「そうか」
 咲には秋の表情は見えなかった。しかし、彼の声ははっきりと聞こえている。
 この声色は冗談でもなんでもない。これでは本当に、この男の腕の機能を奪いかねない。
「おい、私を、降ろせ」
 咲は声を絞った。
「……ああ、わかった、わかったよ。さすがに腕を持っていかれるのは嫌だ」
 そう言うと、瓦煉隆盛は咲を軽く担ぎなおし、秋に抱えさせた。
「拳、咲頼むわ。あ、一応女だから気使えよ」
 秋は瓦煉隆盛からずりずりと離れると拳を呼びつけ、その肩に咲を預けた。
 瓦煉隆盛が動いたのは、その瞬間のことだった。
「隙だらけだぞ水瀬秋!」
 巨大な槍が具現化し、咲の表情を伺っていた秋に向かって勢いをつけて飛び出した。
 速度は高速を誇り、少なくともAランクを仕留めようという気概だけはあった。
「隙だらけですよ水瀬秋」
 しかし飛び出した槍の勢いは、繁華街の舗装道路を突き破って現れた白の柱に阻まれた。
 ばきん、ばきん、といくらかは突き破ったその一撃だが、逆に柱に突き破られて霧散した。
「お前がユスティーナと……むう、成程」
 瓦煉隆盛は頷いた。
「ティナ、いいって」
 秋はティナに冷たい声で言うと、制服のポケットからカッターナイフを一本取り出した。
「ぼろぼろじゃねえか」
 秋は言った。これは瓦煉隆盛に向けたものだ。
「これは粛清のためだ。オレもそれ以上は望んでいない」
「俺はお前のそれ以前だって望んでねえ。そんな話はどうでもいいんだっつの」
 ちきちき、と刃を伸ばした。
「何だと思ってんだよ、ほんと」
 秋はカッターナイフを振った。何度も何度も何度も振った。
「させんぞ!」
 瓦煉隆盛は槍を一気に四本具現化させ、両手に二つ、浮遊するものが二つ、秋に向けて四方向から突き出した。
「もう遅いって」
 秋は右手を軽く振りながら、向けられた槍を不快そうな顔で見つめていた。
 空間に貼りつけた刀身の数は、もはや秋にも把握しきれるものではなかった。
 が、の連続音が槍を滑った。発生する斬撃の位置は秋の外側を向くように弧を描くように配置され、前に進めようにもだんだんとずれる。
「なんと重い! そのカッターナイフでそれだけの負担をこちらにかけるとは、面白い力だな!」
 四本の槍の先端は全て見当違いのところまでずれ、瓦煉隆盛はそれでも臆さず、ずれたそこから槍の腹で殴るように秋に振り下ろした。
「面白くねえよ、全然」
 未だに秋はカッターナイフを振るっていた。
「お前のような力があれば、オレも今のような疑問を持つこともないのだろうな!」
 四槍流は秋に向け、全力で攻撃を仕掛けることを決定した。
 縦にも横にも前にも、隙などは一瞬すら見せないよう、嵐のように連続で槍は暴れ回った。
 まるで四本の触手のように縦横無尽に秋に向けて叩きつけられ、しかしそのどの一撃も、秋に通ることはなかった。
「言い訳だ」
 秋はさらにカッターナイフを振った。
「オレは何処まで強くなれるのか!」
「詭弁だ」
 秋はさらに振った。
「戦うことで何を得られるのか!」
「そんな逃げ口上はどうだっていいんだ」
 秋は呟いて、カッターをポケットに入れた。
「この戦いの高揚で、オレは何処まで満たされるのか!」
「俺達が持つ力は、自分のためだけに使うものじゃない」
 その瞬間。
 瓦煉隆盛の四槍流は粉々に粉砕され、彼の手のひらには浅い傷がいくつもいくつも引かれた。
 やがて体中の皮膚だけをほんの浅く、無数にわたる赤の線が一方向に走り抜け、ふつふつと滴り落ちる雨のような血を流させた。
「フッハハハハッハハハ! 熱いな、熱すぎるぞ水瀬秋! 体中が熱い!」
 瓦煉隆盛はその場で立ったまま吠えた。もう一度その血まみれの状態で槍を具現化したが、やはり粉々に散った。
「繁華街にも一応病院はある。さっさと行かないと死ぬぞ」
 秋は病院の位置も把握していた。どれだけちんたら行っても、むしろ彼が自ら行かなくても、死ぬことはない程度の痛みを刻みつけた。
 熱い、熱い、と瓦煉隆盛は言い、秋は血で埋まってるであろう彼の視界から離れた。
 固い表情の拳とティナ、そして、泣いてしまっていた咲の表情を見て、秋は胸が痛くなった。
「あ、そうだ拳。処分は受けるつもりだから安心していいからな」


秋はティナと寮の自室に戻り、拳からの連絡を待っていた。
「つーか、お前いつまでついてくんの? もういいよ」
「監視です」
 テーブルで頬杖をついて、ティナはぶっきらぼうな印象を与えるように言った。
「あまり一人にしていると自殺でもされそうですから」
「しねえよ。どこ見て言ってんだよ」
「咲の顔を見たあなたの表情ですが」
 ティナが見た彼の表情は、後悔とも謝罪とも、悲しみとも言えない妙な表情だった。
 あの時の咲に向けて一体彼が何を考えていたのか、全く知る由もない。
「それに自殺した方がお前的にはオッケーじゃねえの」
「私と友人関係にいる人間が突然自殺されては目立ってしまいます」
「あ、俺って一応友達なの?」
 へらへらした様子で言う秋に、ティナはゴミを見る目を向ける。
「周りから見ればそう見えるでしょう? ちなみに、雫と咲は私の友人です」
「うわ、一個下のくせに偉そうに…………」
 と、ぷるるる、という音が秋の方で鳴った。
「あ、拳から」
 取った。
 ティナはその様子をぼーっと見つめ、思い出したように今の時刻を見た。
 夕方だ。いろいろあったような気もしたが、それほど経ってはいない。
「ふーん、そっか。……ん? ああ、わかった。はーい」
 秋の通話が終わったらしい。
「いやあ、めんどくせえ」
「何かありましたか」
「とりあえず、二週間寮に缶詰めは確定。反省文と謝罪文を二百枚」
「それはどうでもいいです。咲のほうは」
「あいつは全身にいろいろ打撲負ってたって。骨には異常はないし、大げさな怪我でもないってさ」
「雫のほうは?」
 ティナがごく自然に訊いていると、秋は変なものを見たような顔をした。
「……お前、意外といろいろ気にするんだな」
「……」
 ティナ自身、言われてみないとそれは気付けないことであった。
 できるだけここでは、希薄な関係しか他人と結ぶつもりはなかったのだが、結局今日も流されるままに秋やその友人と過ごしてしまった。
「えーっと」
 ティナの沈黙に気まずくなったのか、秋が続きを話し始めた。
「雫が送ってった子は別に問題なし。ちょっとビビってただけだってさ。いやぁ、後で何もなければいいんだけどな……」
 遠い目をして秋は言った。以前にも何か似たようなことでもあったのだろうか。
「そうですか」
 突然、秋は身体を伸ばした。
「よし! ティナ!」
「はい?」
「これから二週間謹慎なんだ、せっかくだから今から出るぞ!」
「あと二時間もしないうちに寮の時限ですけど」
「気にすんなって! 俺どうせ関係ねえし!」
 へらへら笑った。
 ティナも仕方ないから笑った。
「つーわけで、拳に書き置きっ……と?」
 先程適当にぶん投げた鞄をあさり、ルーズリーフを取り出したところで、秋の動きが止まった。
「あ……ちょ、おい」
「なんですか」
「ボールペン返せよ」
 ティナは返事をしなかった。



 おしまい

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月19日 13:01
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。