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したらばSS作品 生徒会書記録◆r77gGG6uoY 五ページ目

 五ページ目-後小橋川司

 非常事態にも関わらず、環凪島は落ち着きを保っている。二度目だし。当然といえば当然。前回は史上初の島内全域へ非常事態を知らせるサイレンに叩き起こされた島民達が、即座に情報戦を繰り広げ、事の真相を!その対処法を!と、1%でも生存率を上げる為、あれでもないこれでもない、ここは安全ここは危険と、嘘も真実も背びれも尾ひれも全て飲み込み、限界まで膨れ上がった情報が爆発してパニックが起こる寸前までいったなぁ、と思い出に耽る余裕すらある。
 なんだか眠くなってきた。このままシエスタと洒落込みたい気分だ。
 そんなまどろみ始めた私とは対照的に、テキパキと環凪島も環凪島で準備に忙しない。何の準備かと言えば、戦争の準備。戦い、争うための準備。今回において、それは、戦うと言うよりは守るための準備に近い。これからこの環凪島に襲い掛かってくる苛烈な攻撃から島を守るための準備。なんせ相手は日本国の軍隊。日本を守る為の設備が日本国民を攻撃しようというのだ。全くもって笑えない。国籍を盾にしても、銃弾は防げないのだから。
 現在の日本の軍隊の経緯は複雑で、その存在は極めて厳しい規律の下にある。第二次世界大戦後、一度は放棄した戦力を特殊能力者による国家転覆、そして能力者の存在を理由に復活させたのだ。当然、あんなことがあったにもかかわらず未だに平和ボケし続けているパシフィストからの反発も強く、地球連合(旧国際連合)からもいい顔はされていない。しかし「(*´・ω・)能力者って怖いし、仕方ないよねー(・ω・`*)ネー」といった感じで黙認されている状態である。勿論、専守防衛。血迷っても侵略などという行為には及ばないと誓っている、らしい。何に誓ったのだろうか。神か天皇か太陽か。言を折る、と書いて、誓い。本当は、何を誓ったのだろうか。
 力とは麻薬のようなものだ。持ってしまったら、使わずにはいられない。有意義に無駄に。世の為人の為、私利私欲の為に、使わずにはいられない。
「そろそろ道具が届きます」
「苦手なんだよね。あの子たち」
「七五三野先輩にも苦手な人っているんですね」
「どういう意味だ」
 午後5時15分00秒。生徒会本部のドアが開く。1秒の狂いもなく、指定された時間ピッタリに到着したのは、七人の男女。七つの道具。

 第空道具(零番)、有卦者 食(うけもの みけ)
 第惨道具(参番)、九尾借 小鶏(くびかり ことり)
 第屍道具(肆番)、刺殺 禊(さしそぎ みそぎ)
 第護道具(伍番)、礫圧 王柩(れきあつ おうごく)
 第切道具(質番)、霧咲 孔雀(きりさき くじゃく)
 第苦道具(玖番)、捻錐 真弓(ねじきり まゆみ)
 第銃道具(拾番)、宝華木 遊奈(ほうげき ゆうな)

 この七人こそ、生徒会の荒事専門。生徒会、防衛部、第壱行動部隊所属『七つ道具』
 戦闘能力だけで言えば、学園トップクラス。だが、必要以上に恐れることはない。彼らは「道具」だ。どんなに道具として優れていたとしても、使い手がいなければ、ただの「物」でしかない。
 そう、使われることで真価を発揮する優秀な道具たち。
 七人は我々に軽く挨拶し、同じ円卓に着くと思い思いに紅茶を淹れ始めた。何だか、どこぞの暗躍専門機関に所属している殺人専門腕利き特殊部隊のような肩書きの彼らだが、まぁ、素顔はぶっちゃけただの学生である。今日も、普通に授業を受けてきているはずだ。因みに部隊や道具の名付け親は、蓬世円とかなんとか。何だよ。仕方なくやっているみたいな雰囲気だったのに、旧大文字なんて使っちゃってノリノリじゃないか。「七番目の刀」で「切(る)」道具、か。割と上手いな。上手いのか? そこら辺のセンスは私にはよく分からないけど。元々「七」という字は小刀で骨を切る様子を表す象形字であるし。
 ということは、霧咲孔雀の能力は「切断」なのだろうか。
 霧咲孔雀。霧咲、孔雀。
 きりさきくじゃく。きりさきくじゃっく。きりさきじゃっく。きりさき、じゃっく。切り裂きジャック。
 ハハっ、まさかね。
 我先にと円卓に置かれていたクッキーに飛びつき、同じく『七つ道具』である、切れ長の目の美人さん、確か、宝華木優奈に行儀が悪い、と怒られている栗色のセミロングの、まだあどけなさの残る可愛らしい少女の名前に、何やら伝説の殺人鬼的な不穏なものを感じてしまった。なんてことだ。人の名前に対して失礼極まりない。反省。…ナイフとか持ってないよね?
反省。
 そして、歓談。歓談である。猥談ではない。この楽しい時間を歓談の一言で片付けてしまうのは、時間の無駄使いにおいて右に出るものはいないと称されたらいいなぁ、と思っている私にとって心苦しいものではあるが、ただでさえ長いこの話しを、さらに意味の無い会話で何ページも消費していくのは、流石に自重しておくことにする。
 決して、いきなり7人も新キャラが登場して描写が面倒だから省いた訳ではないし、全員の名前以外のプロフィールが完成していないわけでもない。昔から、なんで「四天王」とか必ず一人ずつ登場するんだろう? 一気に4人出れば主人公倒せるんじゃね? とか、思っていたが、制作側に回ってみると、その謎が解けた。
 七五三野先輩は先ほど言っていた通り、普段の無駄に洗練された無駄のない無駄話は何処へやら、といった感じだったが。基本的に八方美人な私は『七つ道具』と貴重な歓談を楽しんでいた。やはり人間、実際にこうして触れ合うことでお互いを理解できるというものだ。どうやら『七つ道具』は、九尾刈さん、刺殺さん、霧咲さん、捻錐さんがボケで、礫圧さんと宝華木さんがツッコミのようだ。有卦者さん(というか有卦者ちゃん、と言った方がいいのだろうか)という名前の、遺伝子の色素情報が狂っているかのような金髪赤眼の幼女は終始、アンパンについている胡麻を一つ一つ丁寧に剥しては紅茶に浮かべるという作業に没頭していたので良く分からない。
 行動からみてもボケの部類だ。多分。っていうか電波だ。まぁ、七人もいれば一人くらい電波がいても対処できるだろう。いや、礫圧さんと宝華木さんが完全にスルーしているところから見ても対処できていないのかもしれない。恐るべし、電波。いや、電波というより幼さゆえに暇を持て余しているのだろうか。っていうか年はいくつだよ。七五三野先輩曰く、見てくれに関係なくレディに年齢と体重を聞くと二度と太陽の下で生きていけなくなるらしいので自重しておくことにする。
 その七五三野先輩もついに耐え切れなくなったのか、テーブルの上に散らばっていたクッキーの欠片を黙々と掃除しだした。『七つ道具』から見ればこの人も電波だろう。人の印象ってこういう勘違いから固まっていくんだなぁ。
 正直なところ『七つ道具』には良い話しが無い。戦闘専門だし、最強の懐刀だし、その実体は謎に包まれている、くらいの勢いだ。本当は学生ではなく、七人の構成操作系能力者が創りだした七つの戦闘兵器の総称だ、なんて噂もある。まぁ、実際は、これなんだけどね。何だろう。安心したような、残念なような、未来の可能性を一つ潰した気分だ。
 それにしても『七つ道具』という割に、存在しているのは、0番、3番、4番、5番、7番、9番、10番(分かりやすいようにアラビア数字にしてみた)だけ。残りの1、2、6、8はどうしたのだろう。まぁ、七つ揃っているので数的に問題は無いのだろうが。だったら1~7みたいにすればいいのに。そんな疑問が頭に浮かんだような気もしたが『七つ道具』自身に聞く前に現れた面々のインパクトで、一瞬で、意識の外側へと流されてしまった。
 生徒会本部のドアを蹴破るようにして、風紀委員と自警団。それも、委員長と団長という組織のトップがそれぞれの組織の実力を誇示するが如く、自慢の配下を引き連れてぞろぞろと、この生徒会本部へとやってきたのだ。
 正直、カチコミかと思った。ついに生徒会に対し総攻撃が始まるのかと思った。そして、蹴破るように入ってきたのは自警団団長だけである、と風紀委員と団長以外の自警団メンバーの面子のために書き記しておこう。
尊大不遜。高慢無礼。倣岸不屈。
 自警団団長、玄清十郎の生徒会に対する態度は概ねこんな感じだ。これは彼の性格ではない。自警団と生徒会という関係のせいで、彼は憎まれ役を演じているに過ぎない。本来は、竹を割ったようなサッパリとした性格とのこと。頭は切れるが馬鹿正直で楽観主義。嘘がなによりも嫌いで、嘘がつけない。つかないのではなく、つけない。嘘をつくという脳が無い。良い言い方をすれば正直者。唯一、嘘と言うものを理解できる我々人類の中でも素晴らしく奇特な種類の人間だろう。
「・・・なんだか今、すごく馬鹿にされたような」
 モノローグを読まれた!?
 脈絡も無く、突然、玄清十郎がティーカップを傾けながら、ぼそりとそんなことを呟いた。大して気にしていない様子で、すぐに暇そうに足を組み、自分の髪を弄り始めたが。人間の直感って怖い。
 円卓に着いているのは、自警団団長、玄清十郎。自警団は十王が一人、御神本紫鶴。風紀委員長、夕雁紅葉。風紀委員の期待の新星「両面切札(ダブルジョーカー)」こと小林優。何故、生徒会員の私が風紀委員である彼女の通り名を知っているのかと言うと、風紀委員長の夕雁紅葉があちこちで言いふらしているからだ。
 結局、夕雁紅葉と玄清十郎が席に着くなり、2組織合わせて50名近くいた人は、その全てが「お騒がせしました」と一礼して(特に自警団の方々は深々と腰を折ってから)帰ってしまった。本当に力を誇示するためだけに連れてきたらしい。大名行列かよ。権力者の思考回路は良く分からない。
 円卓に着いているのは、我々が2名、七つ道具が7名、風紀委員が2名、自警団が2名、計13名。言い忘れていたが、この円卓は13人掛けであり、普段は十二席の会議の為に使用されているものである。
 冒頭の生徒会の説明で既に理解されているものとは思うが、改めて紹介しておこう。
 環凪学園生徒会『十二席』。
 その実体は、代表部代表、諜報部代表、広報部代表、総務部代表、防衛部代表、特別監査会代表、初等部代表、中等部代表、高等部代表、大学部代表、そして生徒会副会長と生徒会長という12名の生徒会の最高幹部とも言える各部代表達によって構成される学生最高の権力を持つ組織の通り名である。
 では何故、12名用なのに13の席が用意されているのか。それは、申し訳ないが、正直なところ分からない。
 いくつかある話しには、教師や顧問や理事の方々や学園長や、所謂、大人の為の席とか。十二席に直接意見できるレベルのお客様の為の席だとか。昔は13の部署があったとか。数十年前の大戦のパラディンをイメージしているとか。謎の欠番、13番目の幽霊生徒会員の為の席だとか。十二席が発足したのが13日だったからとか。言われれば、あぁ、そうか。と納得できそうなものから、都市伝説や怪談、冗談レベルのものまである。
 真相は闇の中に。
 まぁ、別に13席あったからと言って困る事はない訳だし。別にいいんじゃないかなぁ。伝統や仕来り、みたいなものだろうか。というか、風紀委員と自警団が来てから、場の空気が若干ピリピリしている。緊張感とでもいうのだろうか。不快さは無く、いい感じに場の空気が引き締まっている感じ。
『ようこそ生徒会へ』
 突然、そう響いた声に円卓の面々が反応する。声はするが姿が無い。そして唐突に切り替わるは、壁に埋め込まれているモニターの、その一部。前、生徒会『十二席』の4人。

 生徒会代表部代表、唐柿 傘悟(からがき さんご)
 生徒会大学部代表、霜鳥 伊里弥(しもとり いりや)
 生徒会諜報部代表、国鎌江 冷女(くにがまえ れいこ)
 生徒会総務部代表、庵々 歴船(あんどう れきふね)

 生徒会の役職は生徒会長と同じく、2年周期で部署ごとに小さな選挙をして変わる。選挙時期は会長選挙から1週間以内。違う点があるとすれば、引継ぎがある、ということ。生徒会長と副会長は連続して執る事が出来ないが、その他の役職は引き続けて執ることが可能なのだ。モニターに移っているのは1週間以内に引退が決定している4人。まぁ、大体こういうのは選挙をするまでもなく、決まっているものだ。おぉ、代表部代表様がおられる。生徒会長と副会長が選挙中で不在となっている今、生徒会の最高指揮権は代表部代表が持っている。相変わらず汚ねぇな。風呂入れや。
『ごめんね。歓待したいところなんだけど、非常事態で全員出払っているからさ。モニターから失礼するよ』
 そう言ったのはボッサボサに伸び放題の髪の、一見、浮浪者にも見える汚らしい男。環凪学園生徒会、十二席筆頭にして代表部代表、唐柿傘悟。
 全員というのは十二席のことだろう。
「聞きたいことが、山ほどあるんだが。十二席」
 食って掛かったのは自警団団長、玄清十郎。
『どうぞ』
 と唐柿傘悟。
「生徒会長選挙はどうなった?」
『一旦、休止中よ』
 と、霜鳥伊里弥。
「この非常事態の原因は?」
『会長候補の2人が殺し合いをして、その余波が島外にまで及んだので』
 と、国鎌江禮子。
「大講堂辺りが立入禁止になっているのは?」
『危険と判断した』
 と、庵々歴船。
「そこにいた連中は?」
『非難済みだよ。一戸遥さんの能力はいいねぇ。彼女のおかげで避難がスムーズだったのなんの。素行も問題ない、というか素晴らしいし。是非、ガハラ君と一緒に時期生徒会を担ってもらいたいくらいだよ。僕が副会長辺りに推薦しちゃおっかな? いや、ホント』
 代表部代表である唐柿傘悟が推薦するという事は、ぶっちゃけもう決定みたいなものである。
 生徒会だ。十二席だ。風紀委員だ何だと言っても、まぁ、所詮、学生の組織ごっこに変わりはない。功績云々関係なく雰囲気でも決まるものは決まるのだ。今の言葉から察するに、十二席としても生徒会長は極ヶ原強也にするつもりだったようだ。待て。現十二席には極ヶ原強也と蓬世円もいる。副会長と防衛部代表として。あぁ、なんか、この2人の名前書くの久しぶりな気がする。
「時期生徒会は、極ヶ原と、その一戸遥ってことか?」
『それは今は関係無いよね』
 お前が今、振った話しだろうが。玄清十郎が呆れたように呟く。
「ところで問題児2人はどうした?」
『あぁ、そうだね。そこら辺も含めて、非常事態発令後から今までの説明をお願いしたいんだけどいいかな? 六道くん』
「あ、えっと・・・」
 突然、話しを振られて面食らったのは私。
 全員の視線が集中する。風紀委員と自警団の視線が痛い。玄さんと御神本さん、それは睨みを効かせるってやつですよ。六道太平はチキンなのでそんなに睨まれると萎縮してしまいます。
 やっぱ自警団って怖えー。コホン、と咳払いを一つ。さて、どこから説明したものか。
『あぁ、そうだ。その前にやっときゃなきゃいけないことがあるね』
 モニター越しに唐柿傘悟が話しの腰を折る。そうだ。ここからの会話は絶対に誰にも聞かれてはいけない。玄清十郎はフン、と鼻を鳴らすと、御神本紫鶴に視線だけで合図を送る。御神本紫鶴は周囲を見回しながら何度か瞬きを繰り返すと。
「半径30km圏内の電磁波に乱れは無い。不可解な電波も視られない。盗聴器の類は無いとみていい。監視・遮断を継続する」
 続いて、居心地が悪そうに目を伏せている暗藍色の髪の少女、小林優に全員が目を向ける。小林優は見られていることに萎縮しているのか益々、縮こまってしまう。何だか親近感。夕雁紅葉が横から声をかけた。
「優。お願い」
「あ、はい・・・。で、では・・・、この場において、全ての特殊能力の発動としょの効果を‘無効’とします」
 噛んだ。
 しばしの沈黙。
「え、・・・あの」
 暗藍色の髪の少女だけがおろおろと戸惑う。そして「マジか」「まさかこのようなことが・・・」「本当に何も使えねぇ」と、口々に自らの能力が一切の効果を発揮しない事に驚く。私もいつもと同じ様に目を瞑ってみるが、瞼の裏が見えただけだった。噂に違わぬ実力だ。
「フッフーン。ウチの優を舐めてもらっちゃ困るねぇ」
 上機嫌で風紀委員長、夕雁紅葉が啖呵を切る。
「でも、この状態で普通に盗聴されたら抵抗できないですよね?」
 六道太平から素朴な疑問。
「あ、じゃあ・・・、こ、この場に対しての、外部からの特殊能力の発動とその効果を‘無効’としまひゅ!」
 自由だなぁ。いいなぁ。その能力。勢い余ってまたしても噛みかけていたが、誰も指摘しない。こういう娘はそこに突っ込んでしまうと、多分、死んでしまうからだ。恥ずかしくて、恥死してしまう。優しさである。
「っていうか、盗聴行為そのものを何とかすればいいんじゃねぇの?」
 玄清十郎から素朴なアイデア。
「え、にゃ、なら!こ、この場に対しての、外部からの特殊能力の発動とその効果を含む全ての干渉を‘無効’としましゅ!」
 何でもアリか。すげぇ。さすがSランク。また噛んでたけど誰も何も言わない。優しさこそ世界を救うのだ。慈しみの心である。そして、もう誰も意見しない。なぜなら同じボケは3度までだからだ。
 始めよう。準備は整った。さぁ、唐柿代表、音頭を取ってくれ、と見上げたモニターには何も移っていなかった。「通信機器に異常発生!」と生徒会員が慌てふためいている。
 Sランクってやっぱすげぇ。
『急に繋がらなくなったから、ビックリしたよ。いや、ホント』
 あっはっは。と唐柿傘悟が快活に笑う。「ごめんなしゃい・・・」と小林優。
 なんだろう、この娘。同じボケは3度までと言ったというのに。喋ると必ず噛んじゃう呪いにでも罹っているのか? ならば病院だ。いや教会だ。彼女に必要なのは、優しさでも投薬でもなく聖水と神への祈りだ。そんなに繰り返すとキャラ的に定着してしまうぞ。可愛らしくサ行を噛みやがって。萌えるだろうが。舌っ足らずキャラが生きるのは幼女って相場は決まってるんだよ。大体、お前キャラ設定に噛み癖なんて無かっただろうが。それ以上続けると一生、喋るたびに噛み続ける事になるぞ。他のSS書きが書くときも噛むんだぞ。時空を越えて噛み続けるんだぞ。どれだけ面倒だと思ってるんだ。
 そういえば、私のキャラも少しずつ崩壊している気がする。割と知的な雰囲気を最初は纏っていたはずなのに。地文でこんなにフランクに喋るほうだったっけ。小粋な雑学なんかを織り交ぜつつ状況説明をしていたはずだったのだが。少しずつ脳内の色々なものが漏れ始めている気がする。まぁ、アレだ。漫画の1巻と最新刊で絵柄が変わってしまった感じ。人は常に進化しているのだ、具体的には過去1万文字くらいで。急激な進化である。これが私の真価ということか。退化かもしれない。支払った対価は知的な雰囲気というイメージか。
『じゃ、仕切り直しってことで、始めよう』
 パン、と拍手を打ち、唐柿代表が音頭を取る。
『って、アレ? なんで紅茶にアンパン? 紅茶にはドラ焼きでしょう。ちょっと庵々くーん!どういうことー!?』
 無視。
「それでは、皆さん。環凪大戦の事は記憶に新しいと思いますが――」
 七五三野先輩と自警団の2人以外の以外の面子は意味が分からないという顔。
 そうか。居なかったもんね。新キャラ含め登場していなかったから経験していないのか。うーん。どうしようかな。そこを詳細に説明をすると非情に長くなってしまう。2年かかってしまう。そもそもあの災厄は極めて特殊な部類の事例なのだ。経験したものは経験しているし、経験していないものは経験していない。うん。そうだね。意味が分からないね。うーん。なんて言うかな。同じ世界同じ次系同じ空間で存在している者でも、関わっていない者に対しては何も無かったとされてしまっている。あの、忌み疎み称えるべき魔法使いの非常識なまでに非常識すぎる能力のせいだ。しかし忌み疎み称えるべき魔法使いがいなければ今、こうして普通に生活を送ることも出来ていなかったのも事実。元気かなぁ、あのパツキンのねーちゃん。
「略します」
 宣言した。
「この生徒会選挙は、とある能力者によって仕組まれていたものであり、その能力者とは、数十年前に世界に対し攻撃を仕掛けた13人組(パラディン)の生き残り「死唱の魔法使い」です。で、その目的とは蓬世円代表がこの環凪島に住まう全ての能力者に対し創ったルールを覆すこと。手口は刑務島より同じく13人組(パラディン)の生き残りである「直死の魔眼」を脱獄させ、その両眼を研究所所長である月居龍彦氏の手によって、秘密裏に製造していた生物兵器に移植し、環凪島に対し攻撃を仕掛けるというものでした。その計画が座礁に乗り上げていた「死唱の魔法使い」は手っ取り早く計画を遂行しようと生徒会長選挙に目を付けました。本来は生物兵器を蓬世円にぶつける予定でしたが、同じく対抗できそうな極ヶ原強也をぶつけることにしました。特級保持者の機密をばら撒き、蓬世円を極ヶ原強也の対立候補として擁立させ、極ヶ原強也には蓬世円と直接対決するよう仕向けました。結果は、この非常事態です。しかし、その程度で蓬世円がルールを書き換えるとは「死唱の魔法使い」も思ってはいません。最終的には全能力者と日本国軍隊をぶつける予定でした。しかし、そこで問題が発生します。私がこの世界に存在したことです。私の能力を持ってすれば、その計画はどんなに隠しても筒抜けてしまう。そこで、世界の未来から私を抹消し、私の視点を動かすことで未来視を狂わせました。しかし「死唱の魔法使い」は七五三野先輩の事を知らなかった。高ランクでもなければ、特級保持者でもない能力者になど目を止めなかった。私は七五三野先輩の助言で本来の未来を、私が存在するこの世界の未来を視ることに成功しました。そして、その事実を極ヶ原強也、蓬世円の両名に伝えました。2人は現在、研究所に殴りこみに向かっています。我々がやらなければいけないことは、2人が主犯をぶっ飛ばすまで、この環凪島を守ることです。という訳で、この生徒会総会、そして生徒会長選挙というのは、主犯にとってかっこうの的だった。という訳です」
 一息に喋り、私はティーカップを傾ける。13名の前で、私は事のあらすじを説明し終えた。現時点では、忌み疎み称えるべき魔法使いは我々の敵でしかない。だから主犯。いや、違うな。主犯は、月居龍彦。その黒幕こそが魔法使い。うん。これならしっくりくる。
 ふん。ネタバレなど構うものか。人生がネタバレの嵐である私にとって、この程度のネタバレはネタバレのうちに入らない。環凪大戦に反応した3人は「そういうことか」と頷いている。
「え――っと、つまり・・・、どういうことだってばよ?」
 風紀委員長、夕雁紅葉がどこぞの金髪の忍者ばりの意味不明な質問をしてきた。その内、「六道ェ・・・」とか言い出しかねない。どうやって発音してるんだそれ。早くこっちに戻さないと。
「つまり、原因は蓬世円の創った一つのルール。今、やらなければいけないことは軍の攻撃から環凪島を守ることです」
「一つのルールってのは、何?」
 おおっと、それを聞いちゃいますか。まぁ、それも話さないといけないのだけれど。
「環凪島で死者ってあんまりいないですよね」
「・・・なんの話?」
「いえいえ。不思議じゃないですか? これだけの能力者が集まって、いざこざなんて日常茶飯事で。行事となれば、こんな殺し合いのまがいものみたいなことまでしてるのに」
「そう言われると・・・、」
「所詮、この学園そして環凪島でいくら殺し合いと叫んでも、規律の保護が有る限り死に至る事は難しいのですよ。学生や島民は気づいていないでしょうが、あるルールに縛られている。指一本で人を殺せるような能力者が集まるこの環凪島で、その儚い命を常に守ってくれている、とあるルール」
「・・・」
「学園は全ての能力者を受け入れます。例えそれがどんな能力者であっても。なのに何故、学園は破綻しないのでしょうか? 方舟部隊という強大な力を持った組織が睨んでいるから? 「Ancient Ability」という他を圧倒する混沌が存在するから? 学園自体が混沌であり破綻すら飲み込むから? 否、学園には秩序が存在します。全ての混沌を支配する秩序が」
「・・・」
「何故、平和を守るのが風紀委員と自警団で、生徒会は秩序を守ると規程されているのか。ルールを創るという至高の能力を持った能力者がたった一つ。たった一つだけ創ったルール。それが事の発端です」
 ウザイくらいにもったいつけて話す私の語りを夕雁紅葉は真剣な面持ちで聞いている。調子に乗りすぎて、一つとんでもないネタバレまでしてしまったが、この雰囲気に飲まれている彼女は気付いていないだろう。危ない。危ない。
「・・・じゃあ、その、主犯は環凪島で殺し合いをしたいってこと?」
「いえ、それもあるでしょうが、正確には蓬世円を葬ってしまいたかったんでしょう。事実、それだけの能力を有していますから「死唱の魔法使い」は。そこに「直死の魔眼」と最強の生物兵器2体に加え、研究所と所長の月居龍彦氏、さらに環凪島の能力者に日本軍まで加われれば、流石の彼女も寝起きならちょっとキツイかもしれません」
「それでちょっとなんだ・・・」
「彼女は「最強」ですから。彼女と真面目に戦うなら地球を賭ける必要があります」
「星間戦争クラス!?」
「スターウォーズですね。勝っても負けても地球が壊れるので、結局みんな死にます」
「それでも彼女は生き残りそうだね」
「事実、可能ですね。しないだけで蓬世さんは生身で宇宙遊泳どころかブラックホールに突撃できますから」
「帰ってこれないじゃん!」
「事象の法則を無視してしまえば可能です。蓬世円という存在を中心に事象の地平線を否定しますので。元々、時空間を日常的に弄繰り回している彼女なら呼吸するレベルの行動です。もっと簡単にするなら『絶対規律』で蓬世円という存在そのものを絶対的に反則的に永久的に不可侵的に固定してしまえば、いいだけです。もうそうなったら、その能力を覆さない限りビッグバンですら彼女を傷つけられません。まぁ、可能だとしても彼女はやらないでしょうけど」
「生徒会の行動部代表はバケモノか・・・!」
「どこにでもいる女の子の一人ですよ。彼女は」
「なんという紳士!」
 なんだろう。すごく話しやすい。安心する。
「んで、環凪島を守るって具体的にはどうするんだ?」
 こちらもこちらで絶妙なタイミングで入ってきたのは自警団団長、玄清十郎。
「軍の攻撃ですが、ミサイルと最新の機巧兵器だけです。この攻撃には能力者相手に軍の新兵器を思う存分ぶっ放したい、という策略もあるので、全力で潰しにくる、という感じではないです。建前上、攻撃しなくちゃいけなくて、どうせなら色々やりたかったことやっとこう、って感じですね」
「なにそれ酷い。私達で人体実験ってこと?」
「当たらずとも近からず、ってとこでしょうか」
「全然、違うってことだよね!?」
「ミサイルと最新の機巧兵器だけ、っつっても結構なもんだぜ?」
「その辺は心配入りません。島内のSランクを有する生徒全員に出動要請が出ていますから。さらには非常事態に関する取り決めの第16条により、生徒会からは『七つ道具』の出動が決定していますので、負けることは無いと思います」
「そいつは楽しいケンカになりそうだな。風紀委員も出るのか?」
 玄清十郎が不敵に笑う。
「当たり前じゃない!今回は特例だわ。この件に関しては私も面倒とは言ってられないし…」
「ハッ・・・『門前払い』のセリフとは思えんな」
「な――私だって常識は持ってるわよ・・・!」
「どうだか。2ヶ月前の事件を俺達に丸投げしたのは誰だ?」
「あ、アレは、諸事情により、その、なんていうか、仕方なかったのよ!」
「仕方ない、ねぇ?」
「何よ?」
「ところで理事会は?」
 風紀委員と自警団の小競り合いを横目に七五三野先輩。
「今回も関わらない方針のようです」
 環凪学園は割と放任主義なのだ。大戦の時は大いに関わったが。生徒が起こした問題は生徒が片付けるのが環凪島流である。例えそれが何であろうと、だ。裏設定を知らない学園にとって、この事態は学生がはっちゃけ過ぎた結果、政府が怒った、くらいにしか認知されていないだろう。教わる側が能力者なら教える側もまた能力者なのである。
「まぁ、Sランクに召集をかけたところで何人集まるかは分かりませんが、4~5人いれば十分でしょう。区分は・・・、どうしましょう」
『あぁ、それについては用意してあるよ』
 再び登場、浮浪者風代表部代表、唐柿傘悟。
『こんな感じ』
 その言葉と同時に、モニターが切り替わる。
 そこには、分かりやすく環凪島のマップに3組織がそれぞれ何処を担当するのかが描かれていた。
『ま、別にこんなの気にしなくていいし、好き勝手やってもらって構わないよ。いや、ホント』
「そうか」
 胡散臭くにっこりと宣言した唐柿傘悟を一瞥し、玄清十郎が席を立つ。
「丁度いい機会だ。好き勝手、やらせてもらうぜ。・・・行くぞ紫鶴」
「ガッテン」
「ハルモン」
 自警団語だろうか。そのまま2人は、あっさりと生徒会本部を出ていってしまう。
「じゃ、私達もこれで」
 次に席を立ったのは風紀委員組み。その背中を見送りつつ、私は何だか物語が動き出しそうな気配を感じていた。なんだろう。ティータイムは終わりなのだろうか。まぁ、流石に「生徒会本部で打ち合わせをしました」という16文字で説明できる事柄だけで、普通原稿用紙35枚分以上も楽しめば十分といえば、十分だけど。
「冷めたな」
「淹れなおしますか」
 時刻は午後6時半前。にしても2組織が来てから『七つ道具』は静かだ。一言も発していない。ただ置物のようにそこに佇んでいる。まぁ、それも道具たる故。道具は意見しない。意思を見せてはいけない。それが道具としての正しい姿。ただ、持ち主の望むように動き、望む結果を手繰り寄せるだけ。ここに道具を取り寄せたのは、事前に立場と現状を把握しておいてほしいからである。
 彼らの使い方を知っているのは、ただ一人。彼らを使いこなせるのは、ただ一人。彼らが持ち主として認めているのは、ただ一人。
 最強の持ち主が使う七つの道具たち。七人の能力者を使いこなすは最強の能力者。
 だからこそ彼らは強く、無敵なのだ。

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最終更新:2011年09月26日 22:47
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