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したらばSS作品 ID:vEIEHpUA

「此処ではだめか……」
つまらなそうに独りごちる男の周囲の光景は言うならば白い闇。纏う黒衣の輪郭すらぼかしてしまうほどの純白。
闇とは正反対の色でありながらどこまで目をこらしてみても一切の事象も物体も観測できない。ならそれは闇と同義ではないか?
「"進化"と言う名の真理を求め彷徨い幾星霜」
己の名も忘れ流離ううちにいつしか狂い人として人々から恐れられるようになった男。
数多の強者と対峙しながら唯々その他者の進化のために彼らを葬るという矛盾した世界の中で嗤い続けてきた彼が
今確かにその世界に絶望していた。この虚無の世界は男の絶望が染み出したものか、はたまた世界の虚無が男の心を侵したのか。
「もはやこの世界は閉じつつある。それが意味する所即ち"停滞"」
いつからだろう? 此処に自分の求めるものは無いと分かってしまった。
「物語は終わらない……が、進みもしない」
「ならばそれは衰退ですらない。ただの停滞……我が忌むべき最たるモノだ」
進化の対極たる衰退ならば次の段階が存在する。言うなれば負の方向へと向かう進化と言えなくもない。
しかし停滞は駄目だ。全く駄目なのだ。ページをめくっても後にあるのは白い、ひたすら白い紙の束。
隆盛も衰退も退化も進化もないただの"場"としての世界。それは彼にとっては全くの無意味にして無価値。
「この世界にこれ以上進化を求められぬなら……なるほど未練など無い」
男の纏う黒衣の端がじわじわと背景の白に食われていく。
すでに限界が来ている。まもなく全ての存在は消失するだろう。もはやここには世界そのものを維持する力しかないのだから。
「ならば」
もう男は胸まで白に溶け込んでいた。闇に包まれていく男の貌に表情はない。ただ一言呟いた。
「世界よ、永遠(とわ)に在るが良い。"在ること"だけで貴様が満たされるならな」


なんとか白い世界は残った。残っただけだった。

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最終更新:2011年09月26日 23:09
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