117 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:43:30 ID:H7Ypvn9Y
…窓の外の光の明るさに そっと目を閉じる
明かりのある世界が 一人道行く旅人でもないのに
どうしてこんなにも 愛おしいの
私は薄暗い部屋の中 そればかり
天に届かない手を いつまでも伸ばして
光に届かない虚しさを 思い出して
天国と地獄の一睡の夢の狭間で今日も生きる――
毎週火曜日の放課後、高等部二年の空き教室(多目的室)には
桃色の髪の歌姫の声を聞くために学年、年齢を問わず大勢の人が押し掛ける。
歌姫の名は高等部二年の鞍院 楽種(くらいん らくす)
彼女は学園にも数少ないSランク能力の保持者である。
歌が終わると自然に聴衆からスタンディングオベーションが起こった。
その他にもアンコールを求めるやら口笛を吹くやら様々だ。
しかし楽種は手の平をゆっくりと聴衆に向け、宴の終わりを知らせる。
「皆さん、今日はわたくしの歌会にお集まりいただき有り難う御座いました
…では、少しつまらないかもしれませんが私の話を聞いて下さい。お帰り下さっても結構ですが」
聴衆は殆ど動かない。まるで何かに魅せられているかの様に――
「学園都市に争いを呼ぶものが見えました。
…悲しいことに、それが私達と同じく生徒同士であることに私は憤りを覚えています。
争いは何も生み出しません。
唯一生み出される破壊は感情のうねりと共に伝染し、いずれ…恐慌となります。
そして理性が失われると人は大切なものという概念から解き放たれて
人は自由に生きる身と成ってしまう。
字面だけ取ればどれだけ幸せなことでしょうか…
しかし私達を縛り付ける檻は硬く、そして無惨なのです
私達は学園という鳥籠の中でしか生きられない鳥として
人ならざる扱いを外界から受けていることを忘れては成りません。
なら、私達がいがみ合っている場合では無いでしょう?
みんなで助け合ってこの学園を良くして行きましょう
それが、わたくしの思いです」
再び沸き上がる歓声、異常とも言える熱気が教室を抜けて階下まで伝わる。
泣いて崇拝する者もいれば、更なる活気に燃える者もいる。
そんな絶対教主の歌会が学園に広まりつつあった…
118 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:44:59 ID:H7Ypvn9Y
新聞部にも既に彼女の情報が届いていた。
部長である導 慶(たお けい)はその話の胡散臭さにどうも気乗りしない様子である。
部員達は朝のHR一時間前から三十分間、夜間にタレ込まれた情報の整理を行っている。
情報自体は少ないながらも朝刊に載せる記事を選別するのに毎朝苦労しているのだ。
今日も慶は部下であるしらせの入れた薄いコーヒーを片手にメールボックスをチェックする。
「またカ…」
「またですか?あのクラスザー様の歌ってやつ」
「争いを呼ブ者などレ○プしてくれルわ!…っテ違うだロ、ラ・ク・スだ」
「でも実際、アレってどうなんでしょうね~。観客の8割が感動するとかありえないでしょうし」
「何らかの能力であるコトは明白ダ、現にSランク保持者なのだからナ」
「でも、名簿を見ても名前はあっても能力のことが書かれてないですね…」
「絶対教主の歌、か…一度、私自ら出向いて見るかネ」
「え、部ちょ」
「編集長」
慶が右手を払うとデスク脇に常備されている四機の紙飛行機が離陸し
一斉にしらせのおでこに突撃した。
「…痛ぃ。すいません、編集長」
「なあに心配するナ、私は歌なドに興味はなイ。ただ、少々見てみたくてナ…」
「…付いて行っちゃ駄目ですか?」
少し意外なしらせの発言に慶は少し黙って考える。
「…足手まといにならないと誓うカ?」
「歌聞きに行くぐらいなら多分!」
「65点ぐらいの決意だネ、まあ一緒に行こうカ」
「編集長…素敵です!」
「くははハ、もっと素敵に崇めロ!」
ちょっとしたヘブン状態が終了して、落ち着いた二人は念の為にボディガードを雇うことにした。
「誰が良いでしょうか?」
「…ドイツもコイツもボッタくってるナあ」
二人が読んでいるのは傭兵斑課帳、いわゆる学生傭兵のカタログである。
学生傭兵はBランク以上の無所属のアクター生徒の志願制で構成される。
傭兵はは基本日雇いでランク、能力によって値段はピンキリである。
今までほぼ無用の長物だったのだが、
金の有るリフィター生徒は常に傭兵を雇うといった状況も最近では珍しく無かった。
ちなみにメディア事変の際に生徒会の放った密偵、アルフレッド・シズクもここに名を連ねているらしい。
「なあ升目ぇ、お前のコネで何とかならないカ?」
「コネですか…あ、淑女部隊のみんなはどうです?」
「何かいつもあの子達のお世話になってるネ…私達」
「それが無所属の限界なんじゃないんでしょうか。さ、先輩もたまには頭下げて下さいよ」
「だガ断る。私の頭は大統領、主席、総書記、首相にしか下げヌ!」
「法王は?」
「…腕を上げたナ、升目。私の負けダ、放課後にでも交渉しに行クぞ。奴の取材は明日ダ」
119 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:45:54 ID:H7Ypvn9Y
――場面は変わって朝の職員室。
一部の教職員達の間でも絶対教主の歌が広まりつつあった
今朝も事務室での暇を持て余した事務員の一条さんは
職員室で『人形』の調整をしていた白衣に半裸の科学教師、
理琵戸 八朗(りびと はちろう) に話しかけた。
「そういや理琵戸先生は知ってます?あの絶対教主の歌会」
「サンプルとしては非常に興味深い生徒だが、歌自体に価値があるとは思えん。
その歌会がどうした?」
「い、いや…あの…怒ってます?」
「当然だ。今話しかけられたことでこの『ディリータ』の神経回路接続を失敗した」
八郎は自分の収集する『生徒の感情を人形化したもの』を整備、改造することが日課である。
『ディリータ』は最近校則を破って島から抜け出そうとした生徒の感情から作られた人形だ。
「繋ぎ直しだ…一条、お前の能力で焼けた回路を治せ」
「すみませんね、では早速」
一条さんは『ディリータ』の神経回路が詰まっている頭部にそっと触れた。
すると、『ディリータ』の脳波ステータスが
赤いランプ(停止状態)から青いランプ(微動)に変わっていった
一条さんの能力は『触れた物体(損傷したもの)を修復できる』といった物だ。
この能力の発展には10年もの歳月をかけたドラマが有るそうなのだが今回は割愛。
「…そいつの話がしたければ別の奴にでも聞け、俺はこいつの整備に忙しいんだ」
「あの…高田先生、ちょっと雑談でも」
「ウッホ…(何かな、一条君)」
今度は教科の割に真っ黒に焼けたゴリラのような体格を持つ
物理教師の高田 真に話を持ちかける。
「絶対教主の歌ってご存じですか?」
「ウホウホウッホ…?(あの高等部二年の歌姫の歌だろう?)」
「そうです、アレです…どうしたんですか先生、声がまんまゴリラですよ」
「ウホッホウホ、ウホホウッホホ(生徒にイタズラされてな、意味は通じるが声はkonozamaだ)」
「大変ですね…バナナあげるんで頑張って下さい」
「ウホオッウホ!(馬鹿者、治して行かんか!)」
一条さんは真の喉に触れた――
どの先生に聞いても要領を得られなかった一条さんは事務室に戻ると一人ごちた。
「うーん…結局、誰も『知ってるけどそれだけ』なんだなあ…何で彼女は急に歌い始めたんだろ」
120 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:47:13 ID:H7Ypvn9Y
放課後、しらせと慶は風紀委員淑女部隊の詰め所を訪れた。
「彼女が…あのしらせさんをスパルタ教育してるという部長さん?」
「隊長、それはいくら何でもっ…」
黒薔薇の君=冷村冷耶が隊長=朱鷺塚楓子を止めにかかるも、それより先に慶が食ってかかった。
「それは愛の鞭ダ。そして私のコトを部長と呼ぶナ」
「では、なんとお呼びすれば良いのかしら。名前を名乗っていただかないと」
「お前に名乗ル名なド…」
しらせが慶の制服の裾を引っ張る。
ここでようやく自分が熱くなっていることを思い出した。
「…導 慶ダ。導で良イ」
しらせが胸を撫で下ろすと冷耶はサムズアップをしてみせる。
(互いに苦労してますね…しらせさん)
(本当、大変ですよ…冷耶さん)
場所は詰め所内に移る。
まだ会合の時間でも無いので来ている部隊員はまばらだ。
歓迎会の際のテーブルと椅子を引っぱり出して早速話に入る事にした。
「絶対教主の歌…聞いたことはありますわ」
「それで…いざという時の為に部隊のみんなに応援を求めに来たんですけど」
「だけど、放課後でしょ?部隊のみんなも部活があったりで都合の着く人は…」
※部活に所属する者は夜の会合の欠席も許される。
※ただ、よほどのことがない限りは巡回に参加しなければならない。
※そのため、『淑女のこころえ』の朗読は時々休んだ人の部分の押し付け合いになることがある。
「…そうだわ、黒薔薇の君。貴女、明日の手芸部は?」
「えと、顧問の先生が『整備』に忙しいので明日は来れないと言ってましたから…」
「決まりね。新聞部の君の頼みよ、付いていってあげなさい」
「それは喜んで。…隊長もどうですか?」
「…べ、別に行きたいとかそんなんじゃ無いんだから!」
「じゃあ、行かないんですね」
「能力と同じく冷たいわね…黒薔薇の君」
「冗談ですってば!サッと見て帰ったら部隊の活動にも支障は出ないでしょうし…」
「フフ、分かっているわ。…私も行きますわよ」
話が一段落したところで話題は慶の事に移る。
「では、貴女はあの外界の中国という国から?」
「ウム。向こうの学園都市はここ以上に厳しくてナ…何度も死のうカなんて考えたヨ」
慶は少し顔を曇らせて「これはイカン」と顔を左右に振り、話を続ける。
「…向こうはとにかく学園都市内の情報すら様々な規制が入っタ。
だから、私はこの学校に自由なメディア体制をもたらそうとしているのサ」
しらせは初めて聞く編集長の真意に涙ながらに感心する。
「…編集長にも信念が有ったんですね!」
「アレ?お前には言ってナカタか。まあ、そういう訳ダ。…後で説教ナ」
――対歌会作戦会議
「…まず、私達は耳栓で歌を遮断すル。
洗脳系能力者の場合焼け石に水だガ…無いヨりましダ
ここで何にもないと判断できたら、後でテープに撮った物を使って音声を検証する。
まあ、肉声でないと効果が出ない物も多いケド…その場合は歌声が能力と言うコトになル」
「やけに厳重ですわね。ゆっくりと歌を聴けないのかしら」
「少し上手い素人の歌に年齢学年問わず8割の観客が感動してるんだゾ?いくら何でもそれハおかしイ」
「では、一人だけ比較のために耳栓無しで聞いてみるのはどうでしょうか」
「みすみす洗脳に晒すのカ…どんな洗脳か読めなイ以上は危険ダが」
冷耶の提案に少し難色を示す慶。
「なら…あたしがやります!」
「しらせさんが!?」
「止めなさい。導の言う通りそれは危ないわ」
しかし慶はそれを咎めようとはしない。
「…危なクなったらアレ(念話)使ヱ、お前のそのチャレンジ精神を私は信じてル」
「ありがとうございます、部長!」
「編集長だと言うとろうガ…バカチン」
いつもは体罰を持って叱りつけるものの、今回は何もせず出された紅茶を黙って啜っていた。
口では言ったものの内心は心配で溜まらない。
この二人の信頼のし合いっぷりに淑女の二人も感心するやら同情するやらである。
121 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:48:25 ID:H7Ypvn9Y
翌日――の放課後。
歌会は再び開かれた。
開催される度に増えていく観客に対応する為、学生傭兵による警備員が雇われる程の規模となっていた。
会場も空き教室から中庭に移動するほどの大所帯である。
女子四人が空き教室のドアに張られた張り紙を見て仕方なく中庭に移動。
そんな中、見慣れない影達が彼女らを追尾していた。
「隊長さン、誰かに追跡(つけ)られてるネ」
「ええ…数は二人と言ったところかしら」
「流石は風紀委員の一部隊長ネ。式紙で見てもビンゴだヨ」
「え、え!?何処に?」
後ろを振り返っても誰も居ない。
戦闘能力のないしらせからしたら気配も感じない為、動揺することしか出来ないのは当然である。
「…確かに、二人分の気迫を感じますね」
「これはほぼ間違いナく歌姫の手の者ダ、怪シい素振りを見せなイ限りは向こうからは仕掛けて来ないはずだガ」
「恐らくね。お相手をすることも無いわ、行きましょう」
中庭は歌姫がまだ居ないにも関わらず熱気に包まれていた。
普段それを見に来ない客達も噂からの興味本位で続々と集まって行く――
一網打尽を防ぐため四人は一旦二手に分かれた。
ステージ右側にしらせと冷耶が。左側には慶と楓子といった布陣である。
しらせは普段見ない溢れ返った人の波を見て少しはしゃいでいる。
「ひゃー…この学園ってこんなに人が居るんですね」
「学園だけでも一万人以上居るんですよ!…転入式の時は人の密度の濃さに吐きそうになったぐらいで」
「転入式ってもしかして、あの人達全てが…生徒だったんですか?」
「そう、校内行事は全校生徒が参加するのが決まりって後から聞いたの。しらせさんは今年からの転入生でしたよね?」
「はい!もともとサイタマの方の普通の中学校に通ってたんですけど…去年、能力に目覚めまして」
「自分の能力(ちから)は好き?」
「…そんなには。でも、正直戦う能力でなくてホッとしてます」
「どうして戦う能力じゃ駄目なの?」
「駄目って訳でもないんです、時々羨ましくもなるし。でも、戦う能力が戦いを呼んでるんじゃないのかなって思うんです」
「考えてみればそうかも。でも、避けられない戦いの時が有るからってわたしは割り切ってるなあ」
「あたしには戦う目的も守るべき物も無いんです。だから…」
122 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:48:59 ID:H7Ypvn9Y
「それこそが素晴らしいのです」
キャップを深く被った女子がしらせと冷耶にいきなり話しかけてきた。
キャップからは長いピンク色の髪がこぼれている。
「それこそが争いのない、平和な学園を築く礎に成るのです。
人は何ら目的を持たないから、一度戦うことを義務付けられたらそれに執着します
そして、目的という停止線を失った者が際限なく戦いの輪を広げていく…
これが争いの末端。そして基礎にある物。
戦うことに目的を持ったり、守るべき物という考えをすることも
結局は争いを拡げるだけの人間の言い訳なのです」
「君は…?」
冷耶が突然現れ当然の如く話し出した珍入者に尋ねる。
「…ご紹介が遅れました、私は鞍院 楽種。武勲ははかねがね耳に致しておりますわ、黒薔薇の君」
「そんなに大したことはしてないんだけどなあ…ステージに上がらないのかい?」
「まだ…少し歌う気分には成れませんの。…少し、お付き合いしていただけますか?もちろん、お二人とも」
「わたし達で良ければ。…しらせさん?」
さっきまで隣に居たはずのしらせが居なくなっている事に気付く。
冷耶は慌てて周囲を見回すも何処にも姿は無い。
「あら、迷子になられたのですか?こうも人が多いと分かりませんね…」
「…楽種、君の目的は何だ?」
あくまで冷耶は冷静に対処する。急いで左側のチームにこのことを伝えねばならない――
「私は平和を望んでいるだけです。その為にここに来てくれた新しい賛同者達に新曲をプレゼントしているんです」
「君の目的が読めたよ。でも、当然わたしをただで帰すとは思えない…ね!」
冷耶は後ろ手に背後から襲ってきた襲撃者の刃を凍らせる。
「…出来ますね。しかし、それは平和に対する反逆の意志の現れと取りますが…皆さん!」
楽種は帽子の中に隠し持っていたマイクロマイクに思いっきり呼びかけた。
「この黒い服を着た生徒は私の友人に能力を行使し、怪我を負わせたのです。
このような暴挙をみすみす見逃せるものでしょうか?今こそ、私達の結束を見せるのです」
周囲の視線が獲物を見る野獣の様に鋭い。
リフィター達は急いで下がり、アクター達が引き続きの攻勢に入る。
四人ほど軽く凍らせたところで冷耶は物量を前にいなしきれなくなっていた。
「(キコエルカ)」
「っ…声?」
「(返事を心の中に思ヱ)」
「(こう…ですか?)」
「(上出来ダ、今から救援に入ル)」
「(彼女は…しらせさんは?!)」
「(…式紙の反応も無イ、連れ去らレた様ダ)」
「(…出来るだけ早く、救援をお願いします!)」
123 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:49:35 ID:H7Ypvn9Y
フフ、いいザマね。黒薔薇の君…冷村さん」
冷耶に立ちふさがったのはロングドレス、金髪ドリルヘアーが特徴的な
高等部二年の女子、自然能力系B アリス・ストレーツェルである。
彼女は黒いゴスロリドレスの冷耶をライバルとして目の敵にしている。
「…君の相手をしている暇は」
「有るわよね?今日こそ貴女を越えていずれはドレスマスターの称号を得ますの。だから、邪魔をしないで」
「やれやれ、聞き分けのないお嬢様だ」
アリスの能力は土のゴーレムの使役。
一度合図を交わせば、土がある限り何処でも生成出来る。
さらに、土の上にいる限りボディを自動回復するため非常に厄介な相手である。
「イゴール。今度こそ叩き潰しておしまい」
『了解です、お嬢様』
3mはあろう巨体のゴーレムが身に合わぬ俊足で迫る。
ゴーレムが軽く地面に拳を撃つだけで1m弱の穴ボコが穿たれた。
「さらに練度を増してるね…」
「当然よ、貴女を倒すためにチューンアップしてる様な物ですもの」
冷耶にゴーレムの拳が迫るも、凍らせた地面を滑りながらギリギリで回避する
すっぽ抜けたゴーレムのパンチが他の刺客達を跳ね飛ばしていくも、アリスは無視して戦闘を続けた。
「くっ、しぶといですわね…Mode spead!」
ゴーレムの余分な土が着脱され、人間大の大きさに成っていく
先程までのスピードを遙かに上回る俊敏性でついに冷耶の鳩尾に拳の一撃を加えた。
「がぁッ…こ、コイツ…速い…!」
「新モードSpeadの威力はどう?すばしっこい貴女でも交わしきれない高速の攻撃に…何処まで耐えられるかしら」
「…仕方ない、こっちも新技で御相手するよ」
冷耶は動きを止めて静かに呼吸を整え始めた。
アリスのゴーレムは躊躇無く冷耶にトドメを指しに掛かろうとするが…
『…体が、動きません』
「そ、そんな馬鹿な!?稼働熱であの女の冷気も効かないはず…あれは?」
よく見るとゴーレムの関節に黒く長い髪の毛のような針が刺さっている。
それが動きを阻害しているのか。
「凝結針、朧髪(おぼろがみ)。…そして」
冷耶は即座にゴーレムに近づくと頭部に軽く掌底を当てた。
「ゆっくり眠ると良いさ…永遠★吹雪(エターナルフォースブリザード)、お前は死ぬ」
ゴーレムは一瞬で飛び散る凍った粘土の破片と化した――
「…認めませんわ、そんなテイルズ臭い技で私のゴーレムを!」
アリスは粉々になったゴーレムの破片を拾い上げては指の隙間から落とす。
「だけど君が負けたのは事実だ…それに」
戦闘中、ゴーレムのパンチに吹っ飛ばされた楽種の刺客達がアリスにも獣のような視線を向ける。
「…もしかして怒ってらっしゃるの?」
「もしかして、じゃなくて怒ってるんだと思うよ…あと、これで君も反逆者だ」
「興味本位で彼女の歌を聴きに来ただけなのになんてザマですの!
…とは言え、この人数は一人では逃げ切れませんわ。嫌々ながらここは協力しましょう、冷村さん」
「空気が読める人で助かるよ…!」
「やぶれかぶれですわ…出なさい、イゴールzwel!」
124 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:51:08 ID:H7Ypvn9Y
一方、ステージ左側チームも刺客達の攻撃に遭っていた。
「隊長さン!引力で相手の武装を引きつけテ!」
「言われなくても!」
これで3割の刺客は戦闘続行が困難になったものの、まだまだ数は多い。
「…さテ、ここらが年貢ノ納め時かねヱ…」
「不吉なことを言わないで!…まだ、買ってきたハゲジャネーッツノ(アイス)を開けてないのに死んでたまるものですか!」
「良いモノ買って来たじゃないカ、何味ダ?」
「…新発売のスープカレー味よ」
「これまたアイスに合わねヱ味だなあ、オイ。…帰っタら食わせロ」
学校の屋上。狙撃の君=エリィ・マドリーア は偶然見つけた楽しいイベントに
ライフルによる狙撃で参加していた。
「…死んだ生徒だけが良い生徒だ!」バン
部隊長一行を狙う刺客達をゴム弾で一人づつ容赦なく眠らせていく。
「…口から糞を垂れる前と後ろにサーを付けろ!」バン
「…楽しい?」
傍らで能力を使って中庭の様子を見ている映見の君=葉村 奈々が声をかける。
「…うん」バン
「何か、ストレス溜まることでもあったの?」
ゴム弾を装填する指先に力が入る。
「…鈴泉先輩が言い寄ってくるのが胃に来る」バン
「ああ、分かる。面白いんだけど時々ウザイよねー」
「…分かってくれて何より…で」バン
「何?」
「…早く、助け呼んで来なよ」バン
「あ、忘れてた!」
再びステージ左側。
慶は手持ちの札を失い、残るは式紙と練気だけである。
「ゴキブリか、コイツらハ!」
「ワラワラワラワラとか弱い女性二人に…ねえ?」
「…とは言ヱ、式紙じゃ数を倒せなイ。真剣にマズいヨ」
「それを何とかするのよ!貴女、頭は良いんでしょ?」
「テンパるなヨ、今考え中ダ」
刹那、慶達の周りはビームの帯に包まれた。
「うおッ、まぶシっ!」
「廃敷物全焼(ハイマットフルバースト)…吉良大和、ストライキフリーダム(働かないけど自由に)、行(生)きます!」
突如現れた吉良大和を名乗る警備員風の男(恐らくは学生傭兵か)の登場により
攻勢はさらに激しさを増した――。
最終更新:2010年01月22日 19:12