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したらばSS作品 新聞部 ◆Yx1H.SDyn6 3-2

125 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:52:27 ID:H7Ypvn9Y
「それでも!!守りたい生活(せかい)が有るんだっ!」
極太のビームが中庭を焼き払っていく。
二人は済んでの所で回避を繰り返しつつ、異質な敵の出方を探る。
「…思い出しました。彼の名は吉良大和『働かない男』ですわ」
「どういうやつダ?」
「自分が働かない限り、ほぼ無敵なビームを放射し続けられると言う変種のSランク…」
「でモ、あの警備員は殆ドが学生傭兵(働いて賃金を受け取る)のハズなのに…」
「僕は楽種の為ならロハで戦える!…早く、ここから撤退するんだ!…面倒臭いし」
吉良は形のいい顔に面倒くささを力いっぱい形作る。
「出たナ、あれが本性…」

中庭へ下りる東階段から声が聞こえる…
「ヌハハハ、手こずっているようだな。導慶、それに朱鷺塚!」
細いながらも、筋肉でパンパンに膨れ上がった制服を身に纏う生徒会ただ一人の肉体派Sランク!
高等部三年、彼の名は…極ヶ原 強也(きわめがはら きょうや)!!
「これまた暑苦しいのが来たわね…」
「ガチムチさン来た!これで勝つル!」
階段から飛び降り、仮面ライダーのライダーキックよろしく強也は群衆の群れに蹴り行った。
尚、彼の足には相当量の闘気が注がれている為、
落下地点の能力者達は無双される雑兵のように吹き飛ばされていった。

冷静に身体を起こし、戦闘体制に入る強也だったが
群衆に見知った強者の顔を見て、疼きの侭に従い精神は高ぶっていた。
「よう、久しぶりだな…吉良。春のSランク集会以来だ」
毎年春の5月頃、新入生を交えたSランク限定の講習会が開かれる。
内容はいわゆる『与えられた能力に甘んじることなく、更なる発展と自重を共存して暮らして欲しい』
といったものである。
「君はまだ生徒会に居るのか…」
「吉良、お前も一緒に来い!」
「僕は…僕は!」
飛び散る極太ビーム。
強也は豪腕で地面の砂を巻き上げ、光を減退させる。
そして真正面からビームを受けてみせる。
「…ぬるい、ぬるいぞ!」
「もう止めろ!」
しかし、強也はビームの帯から退こうとしない。
「終わりにしたいだけなんだ。俺だって。こんな戦いはな…」
「阿修羅乱(アスラン)…!?」
吉良は在りし日の親友の顔を思い出す――

「…早く行け!吉良が俺に気を取られている内にな」
「分かりましたわ。…意外にやるじゃないの」
「はー、ガチで強いなァ…正攻法で戦わなくっテ良かっタ」
楓子と慶は強也に吉良を任せ、急ぎ冷耶達の救援に向かった。

126 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:54:23 ID:H7Ypvn9Y
「しかし…これほどの数を相手にしていたとはな」
肌の表面が焼けて少し焦げ臭くなった強也は吉良の後ろでビームの巻き添えを受けないように
下がっている刺客達を見て呟いた。
「手伝おうか?ただし、真っ二つだけどな!」
突如飛んできた鉄杭のような蹴りが後ろの群衆を蹴り裂いていく
「…神野木、よくぞ来てくれた!」
神野木 飯太 高等部二年 自然能力系B 。
強也の一番弟子であり、能力と武術を融合させるセンスは天性の才と言われている。
特技は身体に風を纏っての高速移動、高速格闘。
ピザなのがたまに傷だが『動けるデブ』の異名を持ち、持ち前の優しい人柄もあってかその人望は厚い――

いつの間にか飯太は強也の背後に陣取り、改めてこの惨状を見回していた。
「へへっ、先輩でも手こずることは有るんスね!」
「やかましい。無駄口を叩く暇があったら少しでも敵を減らしてくれ…峰打ちでな」
「へいへい…あくまで峰打ちスか」
再び風を纏い、疾風の鉄杭は敵陣に突貫する――。

――ステージ右側。
「ハア…ハア…まだ、その助けとやらは来てくれませんの?!」
「もうすぐ…もうすぐ来るはずだ」
アリスと冷耶は疲弊しきっていた。
途方もない数に途方もない時間、集中して能力を使用して居た為に
能力の精度も下がり、二人の陥落の時が近づいていた。
「ああっ、イゴール!」
『…モウシ…ワケ』
精度の足りなくなったゴーレムはいつの間にか人の形を保てずに自壊していた。
「これまで…か」

127 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:55:27 ID:H7Ypvn9Y
冷耶が諦めかけたその時、アリスと冷耶は突然鉄格子の檻に包まれた。
「久しぶりだね、淑女の嬢ちゃん」
「貴女は…いつぞやの魔剣士さん」
現れたのは淑女部隊密着取材の際に立ちふさがった女生徒、
治初 刃香(ちぞめ やえか) ――の覚醒体、治初 刃刀(ちぞめ やえは)である。
(しかし公の存在で無い為、冷耶達からしたら凄く強い正体不明の生徒)

「…オレはこのパーティーにふらりと立ち寄っただけだ。本来ならあんた達を助ける義理なんかありゃしない
けどよ、`オレの庭でオレの許可無く殺生されるのは見ちゃいられないんだよ」
檻の中で寄り添う二人を見て、刃刀の中では研究所時代がフラッシュバックされていた。


双子として生まれたオレとやえかは生まれた時から能力者だったらしい。
物心付いたときには研究所でお揃いのベットで隣同士。
いつもいつも身体にメスを入れられていた。
何度も、何ヶ所も、何日も、何年も
――気が付いたらわたし!…いや、オレは一人になっていた。
「わたしも混ぜてよ!」
「やえか…回想に割り込むんじゃない」
「良いじゃないの、それよりちゃっちゃと済ませないと。
いくら精神時間とか言い訳使うにも限度って物があるよ」
「ムグ…邪魔はするなよ」

――そうだ、アイツらは二人の人間をパーツとして見てやがった。
形の合う箇所をとっかえたら能力は変わるか?
それとも一体化するか?共存するか?
そんなどうでも良い疑問を満たすためにオレたちは引き裂かれた。
最後の実験でついに研究者達はやえかの身体にオレの脳を移植することで
能力の強化という結論に辿り着いた。
しかしそれは間違いだとばかりにオレは研究所の人間を皆殺した。
やえかの身体にはやえかの思念と能力が、
オレの脳にはオレの記憶と能力が残されていた。
それを足し算して生まれたのは
二つの強化された能力と二つの人格を持った生ける屍(リビングデッド)――
どうして生きてるのかなんて分からない。
だから、乾きを満たすためにわたし!…オレたちはこの学園に居るんだ。

「学校に行きたかったんだよね~」
「学校なんてどうでもいい。ただ、能力者共を狩るのは楽しい。…それよりまた邪魔したな!」
「また見てね~♪」
「こ、こら!こんな時だけ精神の奥に引っ込むな!…チッ」

128 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 22:56:36 ID:H7Ypvn9Y
この間、二秒ほど沈黙。
「…とにかく、お前達は檻(そこ)で静かにしてろ。もう少ししたら、この雑音も消える」
光で書かれた物質召還式が刃刀の足下に浮かび上がる――

「止めて下さい!…学生の殺傷は禁止されているのを――」
「なら、お前達の力でコイツらを止めて見せろよ」
「…ッ」
刃刀は中庭で起こっている事柄など実際は感傷の外だった。
いかに血が流れるか、流させるか。
叫び声が、悲鳴が、怨鎖の声が、ただ自分の乾きを満たすのを味わうだけなのである。
二人を助けたのも狩人の気まぐれに過ぎない。
(お嬢ちゃんの言うことももっともだけど、それは力の有る者がようやく言霊を得る事だ…)
冷耶とアリスが何も出来ない事を悟ると足下の召還式から宝具を取り出した。

「貫き通さぬ矛盾、大泥棒のマント、十束剣(トツカノツルギ)…一斉開放」
刃刀の姿は消え去り、残されたのは縦横無尽に空を舞う盾状の矛と
――黒い一閃。
群衆は矛に貫かれ、切り裂かれ、黒い炎に焼かれて倒れていく。

「ああ…あああ…何ですの…あの子は!?」
今まで見たこともない地獄絵図にアリスは驚愕していた。
「あれが…学園に潜む悪魔。悔しいけど…何もできない」

「…黒薔薇の君、諦めるのは少し早くてよ」
「――隊長、それに慶さんも!」
「あの人が…淑女の姫…」
ようやく仲間と合流した事に少し安堵を覚える冷耶、
しかし消耗している自分は足手纏いじゃないのかという疑問が脳裏を過ぎる
一方、アリスは初めて見る楓子に少々眼を奪われていた。
こんな異常事態にも澱まない立ち振る舞いの一つ一つに感心と畏敬の念を感じていた。
(…ドレスマスターはまだまだ遠いですわね)

「少し遅くなったネ、さア、ここからは反撃の時間ダ」
「…何です、この檻。全く開きませんわ」
楓子は何度も檻の鍵穴にヘアピンでピッキングを試みたが
ヘアピンは全く鍵穴の内部機構に触れる気配がない。
「…こりゃア宝具ダ、教科書にも載ってル。闇の遺物、バスティーユの檻」
「もしかしてコレって…」
「…使用者が解除するまで出られなイ、もしくは壊すカ」
しかし、鉄以上の強度を誇る宝具の破壊が出来る余力はこの場に居る者達には無かった。

「―わたしたちに構わず行って下さい!隊長、慶さん!」
「こんな所に置いて行けるものですか!」
「しかし、この檻を簡単にどうにも出来ないのは敵も同じです。…行って下さい!」
冷耶の決意は固い。
楓子は再び冷耶の眼を見て、しょうがないわねと溜息をついた
「…お守りを頂戴。もうしばらくの辛抱だから…今は耐えて」
「分かってます楓…隊長、…これを!」
冷耶が檻の隙間から胸に掛けていた十字架を楓子に投げ渡す。
「…ん。貴女の分まで戦って来ますわ、冷耶。そして、貴女の分も」
楓子は傍らのアリスに眼をやる
「―お、お願いしますわ…」
まさか自分にも言ってくれると思わなかった為かアリスはすっかりアガっていた。
程なくして、楓子と慶はこの場を後にした。

129 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 23:01:46 ID:H7Ypvn9Y
「心では平和を望んでいるのに何故、人は争うのでしょうか…」
楽種は警備員の一人、インビジ系能力者アルフレッド・シズクの助けを借りて
中庭の地下へと逃げ延びていた。
本来、ライブ画像を録画するはずだった機材は中庭の惨景を映し出している――
「それは、人が元来争いも望んでいるからじゃよ」
ここには今は自分以外誰も居ないはず。
楽種が慌てて後ろを振り返ると背筋をはっきりと伸ばした黒いスーツに身を包む白髪の老人の姿が映った。
「学園長…先生」

「フム…講習会での儂の言葉はお前さんの耳には届かなかった様じゃの」
「…そんな事はありません。私はただ、この能力で皆の平和を望む意志を統一させて…
この学園に潜む魔を一掃しようと――」
「そんなことわざわざせんで良いわい。お前さんのした事は思想の押し売りじゃ」
「押し付けてなどいません。この力もあくまで私に賛同した者にしか発動しません」
「人が理性で止まっていることを後押しし続けて見ろ、世界は容易く崩壊する。
お前さんのランクSは危険と判断されたからのSなのじゃ」
「そんなことはあり得ません」
「…その割には、この騒ぎも意図的だった様じゃの」
学園長は一枚の小さく真っ白な紙切れを見せる。
「この紙に触れて見ろ。これはお前さんの声じゃないのか?」

『私は平和を望んでいるだけです。その為にここに来てくれた新しい賛同者達に新曲をプレゼントしているんです』
『…出来ますね。しかし、それは平和に対する反逆の意志の現れと取りますが…皆さん!』
『この黒い服を着た生徒は私の友人に能力を行使し、怪我を負わせたのです。
このような暴挙をみすみす見逃せるものでしょうか?今こそ、私達の結束を見せるのです』

「…これは」
「隣の部屋は音響室だったかのう…そこに賛同者を連れて歌を聴かせて洗脳。
そして、お前さんは更なる賛同者の確保を邪魔した侵入者達を信者を使って叩きのめそうとした…違うか?」
「誰かの陰謀です!こんな…」
ガチャ
誰かが録画室の扉を開けた。

「あたし…あの人が群衆を扇動するところ、連れ去られるときに見ました!」
「あなたは…?!」
扉を開けたのはしらせであった
服はボロボロになり、命からがら逃げ出した様な状態である。
「楽種様、平和教育室の被験者が…アアッ、こ、校長?!」
鞭を持った学生がしらせを捕らえようとしたが、校長の鋭い睨みを浴びると
すぐに萎縮し正座しだした。
「ほほう…教育室のぅ…詳しく聞かせて貰おうか?なあ、お前さん」
「ぼ、僕達は楽種様の親衛隊…」
「ほほう…儂の言う事が聞けんのだな…?」
校長の目が赤く光ると、学生は目を虚ろにして今までのことを洗いざらい話した。
それは殆ど校長の推理と合致した物であった。

楽種は焦った。
ここで自分が捕まったら二度とこの学園に平和は訪れない。
そんな事はさせない、校長で有ろうと平和に染めてみせる――

…窓の外の闇の濃さに そっと目を開ける
光の無い世界が 朝顔の花でもないのに
どうしてこんなにも 息苦しいの
私は電灯の光の下 そればかり
地に届かない手を いつまでも伸ばして
闇に届かない愛しさを 胸にしまって
天国と地獄の一睡の夢の狭間で明日を生きる――

「歌い終えて満足か、のぅ?」
楽種が歌い終えるのと同時に学園長は楽種の鳩尾に拳を入れた。
「儂は歌なぞ百恵ちゃんしか分からん。だが、せめてもう少しましなステージで歌ったらどうだったじゃろうな…」
楽種が気を失ったのを確認すると録画設備の電源を落とし、しらせに話しかけた。
「この紙は君のかの?」
「はい、私の能力で少しでも状況を伝えるためにと…」
学園長はしらせを筋張った手で頭を優しく撫で回した。
「わ、わっ」
「ほっほっほ…よく頑張ったのう、偉いぞ。名はなんと言う?」
「升目…升目しらせです」
「しらせ君…ウム、覚えておくぞ」

楽種を肩に担ぎ、しらせを連れて録画室を出ようとした時、
ゴリラの様な体格を持つ教員、真田 真が学園長達の前に現れた。
「ウホ…学園長、地下施設に囚われていた生徒達を開放しました」
「ご苦労じゃった真田君…その声、まだ治っておらんかったのか?」
「ゴッホ…どうにかして欲しいですよ、全く…」
真の声は未だゴリラの様に低く、注意して聞いていなければゴリラの鳴き声にしか聞こえない程だった。

130 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 23:02:20 ID:H7Ypvn9Y
地上では未だ吉良と強也、刃刀と慶達との戦いが続いていた。

強也は戦闘中にもかかわらず携帯を片手に本部の報告を受ける。
「…フン、貴様の嫁が捕まったそうだ」
「な…楽種が!?僕は…守れなかった…」
楽種の逮捕を聞き、吉良はその場で気を失う。
強也は生徒会本部に吉良を連行した――


一方、刃刀の攻撃は激しく、楓子と慶は依然彼女に近づけずに居た。
「弱ったわね…こう姿が見えないんじゃ対処のしようもないわ」
「狙撃の君に連絡したラどうダ?」
楓子は携帯を取り出し、慶に暫くの間時間を稼ぐ様に伝えた
「私が死ヌまでに手短にナ…」

「もしもし、狙撃の君かしら?」
『…はい、さっきから狙っています』
「でも命中弾が見えないわ」
『…敵は盾を自動防御で動かしています。…恐らく、それで攻撃をキャンセルされているのかも』
「なら、私を狙って頂戴。貴女は今何処に?」
『…B棟の屋上、貯水タンク付近』
「私と貴女の間に彼女が入ってきたら撃って。…切るわよ」
ブツッ

楓子は急いで電話を切ると兎に角走った。
「何故、電話を切ったネ?」
電話の間を何とか生き延びた慶は楓子に併走する。
「『作戦』よ。バレたら困るじゃないの」
「…狙撃の君はあそこダ、やっこさんは追っかけてくるだろうから、
B棟側から私達が逃げレば自動的に『作戦』の射程距離に入ルはすダ」
慶は念話で狙撃の君の位置を伝える。
「…成る程、作戦まで見えてるなんて冴えてるじゃないの」
「自軍の駒を把握してナイと勝てル戦も勝てんヨ。…さア、追っかけて来イ」

「…ッ、逃げるのか?強いんならもうちょっと遊んでくれよ…」
刃刀は今まで嬲っていた獲物を放り出して二人を追い始める。

――B棟屋上
「…Bモード軸合わせ、良し」
エリィはポケットから一発のライフル用弾丸を取り出す。
弾丸の表面には『RankA BREAK』とだけ刻まれている
「…前は準備不足で遅れを取ったけど、今度はそうは行かない」
弾を装填するとエリィは付ける必要もない狙いを定めた――

銃声が響くと同時に楓子はB棟側に向き直り、自分の前方に向けて放射状に能力を発動する。
引力に引かれた弾丸は同じく引力の網に捕まる刃刀に向かって奔る、
自動防御に走るも引力で鈍る盾の速度を超越し、ついに弾丸は刀刃の右肺を貫いた。

「がぁッ!」
本体の損傷と共に宝具の存在がキャンセルされ、刀刃は裸同然の状態で倒れている。
(上着も宝具な為、宝具がキャンセルされると元々着てるボンテージしか残らない)
「…今度こそ捕まって貰うわよ」
駄目押しに手足を冷却させる楓子。
「有無を言わさズ縛符~」

「…ちっ、調子に乗るんじゃねえぞオイ」
「…ッ!立ち上がっタ?!」
刃刀は慶の縛符を引き千切り、凍っていた手足も熱を帯び、弾丸が貫通した傷口も次第に回復を始めていた。
「この超感覚を使うのも久しぶりだァ…」
刀刃の能力は二つある。
一つ目は自分の知識に有る限りの宝具の召還式無しの生成。(本物には劣る)
二つ目は超感覚。魔力の流れ、気の流れ、あらゆる流れを支配する超感覚を10分間だけ発動させる。
刀刃は超感覚を使い血流と患部の気の流れ、更に細胞の活性を支配し傷口を回復させたのだ。
とは言え、超感覚の使用後は相当量のリバースも待っているため、刃刀自身これ以上の戦闘継続は無理だと判断した。
「勝負はお預けだ…これ、使えよ」
刃刀は召還したばかりの粉の入った包みを楓子に投げ渡した。
「悪魔の薄力粉、傷口に擦り付ければ治りが良くなる。あそこで倒れてる連中にでも使ってやれ」
「こんな物でこの惨劇が看過されると思っているの?」
「(誰かにも言ったけど)…お前達の力だけでこの惨劇を止められたのか?
…オレにはこんな事しか出来ないからそれをするだけだ」
「…行きなさい。ただ、次はもう容赦しないわよ」
「――お利口だね。…恩に着る」

「やえかには…ただ平穏な学園生活を送る子で居て欲しいんだ」
誰にも聞こえない消え入りそうな声で呟くと、
刃刀は再び大泥棒のマント(透明化)を召還し何処かへと消えていった。

131 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 23:04:44 ID:H7Ypvn9Y
この"第一次"クライン事変は誰の記憶にも残っていない。
残っているとしたらそれは口封じをする当事者達だ

事件から3時間後
学園長は大学棟から一人の男を呼び寄せた。
彼は全く名前を名乗らないことから便宜上『名無しの』と呼ばれる。
そもそもこの男の能力、『宣言したほぼ全ての事柄が現実になる能力』は
散々学園側も研究を重ねてきたはずだが未だに謎が多い。
その能力の特殊性故か、学園の暗部の隠滅にも使用されることが多い――

「いよう、名無しの。また一つ頼み事じゃ」
「何ですか」
男は能力の性質故、必要以外は口にしようとしない。
学園長もそれを知っているからそれを『了承』と受け取り、話を進める。
「事件に間接的にでも関わった生徒達の記憶、楽種に関わった生徒は関わった分、上手い具合に改変してくれ。
そして楽種という生徒からは思想を取り除いてな」
「本当によろしいのですか」
「流石にこの事件をほったらかしには出来んよ。根幹を絶ち、二度とこんな事が起こらん様にせねばのぅ…」
「分かりました」

学園長はスーツの右ポケットにしらせの能力の産物たる『事件の詳細が入った紙切れ』を握り締めていた。
「…もう起こさぬ、必ずじゃ」


以後は生徒会裁判の記録である。
有罪
生徒会公務執行妨害 吉良大和(寮での謹慎)
能力『暴発』による一部生徒の暴徒化 鞍院楽種(寮での謹慎)
暴動に乗じての多数の生徒への暴行 女生徒(不在のため刑が確定せず)
※報復が怖いのもあってか生徒会はSランク容疑者達(一人は不明だが)に対して強硬な判決に出られなかった。
無罪
楽種の歌の『暴発』に巻き込まれた生徒達。

学園長、兼裁判長は判決を上記で確定。
書類上での事件は終結した。
――だが、一人の天才の悪意は終わらない。

132 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[] 投稿日:2009/11/18(水) 23:05:23 ID:H7Ypvn9Y
「…暴動による搾取も失敗か」
島内、地下遺跡研究室。
若い博士が一人で切り盛りしているこの研究室には研究機材を除くと殆ど何も残らない。
その中で唯一残る物こそが博士の野望の根源、学園地下で採掘した小さな結晶体である。

「誰があの自警団を作る手伝いをしてやったというのだ!私の恩を忘れて戦いもせず何をしている…」
――拾い上げた結晶体は「能力を行使する為のエネルギーを欲している」と女性的な透き通った声で話した。
「それが叶うのなら、私で何をしても構わぬ」とも。

博士は学園の三大勢力の対立を作り、『悪意の力』を集めようとしているのだが、
戦力の拮抗により搾取のチャンスが予想よりも少ないことに気付く。
この状況を打開すべく、男はあるSランク生徒に密かに暴動を起こすように囁いたのだ
『この学園の悪意共から自由と正義を取り戻せ』と。

「なあ、起きてくれよ。全能なる結晶体よ…何が、何が足りないんだ?理論は完璧なはずだ…」
最初に会話して以来、結晶体は全く口を聞かない。
辛うじてエネルギーは吸収してくれているようだが――

博士は結晶体の正体に関して様々な仮説を立てた。
一つは『能力を持った古代生物が琥珀と化した物』
しかし、採掘した層はかなり浅いのでこの可能性は極めて低い。
もう一つは『結晶体自体は何らかが変化した物』
今のところ有力な説がこれだ。
結晶体には明らかに生命反応がある。脈拍もある。
ただ言葉を介さなくなったことから
掘り出されてしばらくして仮死状態に入ったものだと思われる。
そこで電気エネルギーによる覚醒実験も実施したが、期待したほどの成果は得られなかった。
結局今のところの頼りはきちんと吸収してくれる『悪意の力』しか無いのだ。

「そうさ、理論に間違いは無い。いずれ覚醒させて見せる…ッ」

――博士がある少女と出会う三大勢力動乱の時代より少し前のお話。

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最終更新:2010年01月22日 19:14
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