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したらばSS作品 新聞部 ◆Yx1H.SDyn6 4-2

200 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[sage] 投稿日:2010/01/13(水) 23:04:19 ID:mqoorPSY
中編 

前編のあらすじ
学園の教師陣の中に居るとされる『本島からの不純物』
偶然それを知った科学教師の理琵戸は自警団と共同で秘密裏に『不純物』の排除を目論む。
しかし、某生徒の悪戯(ハッキング)により作戦依頼メールは新聞部に渡ってしまう。
新聞部長の導慶は学園の平和を守るため理琵戸を無理矢理説き伏せ、
嫌がる後輩の升目しらせを後目に自らの部活をこの騒動の渦中に放り込んだのである…。

「ぶっちゃけるとその『不純物』を見てみたいってのも有るんだよネ。好奇心って奴は大変ダ」
「やっぱり新聞に載せちゃうんですか?」
「馬鹿ちんガ。載っけたところで生徒会の奴らに検閲されるのが落ちダ。
最初から『○○先生暁に死す?!』位に抑えとくつもりヨ」
「勝手に殺しちゃ駄目なんじゃないですか?
…アイデアとしては外界の東スポと同レベですよ」
「面白いと思うんだけどナぁ」


――放課後、理琵戸は一週間後に迫った月刊の学園新聞の記事作成に
てんやわんやの新聞部室の戸を叩いた。
「どうぞー」
「私だ」
いきなり現れた白衣の教師に驚きつつしらせは部屋の隅へ隅へデスクチェアごと下がっていく。
「…何だ升目、そんなに科学の補習を受けたいのか?」
「あ、ごめんなさい…」
科学教師の一言でようやく我を取り戻し少し席を前に戻す。
まだ少し引き気味なのは彼が居る限りこれ以上動かし様もないだろう
やれやれと理琵戸は手近なチェアを取り、ノートパソコンと睨めっこを続けるこの部屋の長に
ふと思った疑問を投げかけた。

「…まず導。お前の補助系の力は認めよう。しかし攻撃力に欠ける面がある。
何故、攻撃符を使わなかった?」
「高いんだヨぉ」
系はノートパソコンの右側に親指と人差し指を輪にした手をかざす
「…確かに、攻撃の術符は一級の術士ぐらいしか込めることは出来ないからな。そこで」
「そこデ?」
「自警団から補充人員を付けてやる。勿論、不自然にならないようにその人員を
新聞部に入部させる事が約束出来るならな」
「お安いご用デ。で、何名ほど?」
「三名だ。ここ最近風紀委員との抗争で潰れたチームの生き残りだが腕は立つ」
「了解でス、後で三名の資料を回すように自警団の人に言っておいて下さイ」
「…そう言えばやたら嫌われていたな、自警団に朝の経緯を話したら怪訝な顔をされた」
「風紀委員に友達が居まして…時折力を貸して貰ったりして」
会話の隙間を見つけたしらせが小さな声で言う
「ほう。升目、是非今度紹介したまえ。少し話をしてみたい」
「(この人、絶対戦う気だ…)か、考えておきます」

この後も理琵戸は別段省略しても良い事前説明を暫く続け、
平行して行っている作業のせいか目がショボショボしてきたしらせは
気付けにとコーヒーメーカーに手を伸ばした。
「升目、私にも一杯頼む」
「へ?あ、はい…」
「一杯400円ネ、支払いはカードが使えますヨ」
「生憎だが現金至上主義でね。それに、君にカードを預けてもろくな事になりそうにない」
まさぐる白衣の右ポケットはジャリジャリと小銭が擦れる音がした。
どうも確認せずにピッタリの金額を出したいのか、
なかなか右手は冬場のこたつ猫の様にもぞもぞして出て来ない。
普段見せない得意げそうな顔で掴みだした四枚の硬貨はぴったり400円。
これ以上ボろうと考えていた慶はすっかりその気が失せて渋々400円に手を伸ばす。
「ちぇ…めいど有りヨ」

201 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[sage] 投稿日:2010/01/13(水) 23:04:53 ID:mqoorPSY
理琵戸はまだ半分中身の入ったコーヒーカップを片手にしらせの方に向き直った。
コーヒーもは予想外に旨かったらしく、更に400円を払ってお代わりした二杯目である。
「次に升目。お前はリフィターである上に戦いに使える力は無い雑魚と判断して良いな?」
「そこまで言うこと無いじゃないですか…」
「だが事実だ。よって、今回の作戦では後方に回って貰う」
「後方…とは?」
息吐き変わりに一飲み。
「導は前衛に回って我々の計画のアシストをして貰う、つまり新聞部はお前一人になる」
「え、いやでも、三人入るって…」
「それは導の指揮下に入れるということだ。お前には新聞部の看板を背負って必死に逃げて貰う」
「ちょ、待って下さい!逃げるって」
「恐らく向こうもいずれ我々が自分を追っていることに気付く。
その時に真っ先に狙われるのは当事者の一員であり、非戦闘員のお前だ」
「…それに関して自警団からは」
「勿論兵は割けない。しかし、どうにかこうにか生き延びて我々に連絡が通ればそいつは一網打尽だ」
「無防備の釣り餌になれって事ですか…」
また一飲み。
「防備はしてくれたって構わない。その不純物がどれほどの強さか分からない以上、
下手に人員を配置して奴を刺激してもどうかと言う自警団長の判断だ」
「私一人犠牲にすれば済む話なんですね…そんなの、分かりません」
「…私とて教師だ、雑魚と言えど自分の講座を取っている生徒をむざむざ見殺しにしたりはしない。
…いざとなればこれを使え」
理琵戸は赤いスイッチの付いた手の平サイズの端末を手渡す。
「そのスイッチを押すと学園内の最寄りの人形が急行し、スイッチを押した主を自動的に防衛しようとする。
ただ、人形も学園中にそんなにある訳じゃない。お守り程度に思ってくれ」

「はは、先輩…冗談ですよね…?」
しらせはノートpcに隠れた自分の主に訴える
しかし慶は黙ってノートのキーボードを叩き続ける
「何とか言って下さいよ、編集長!」
キーボードの音が止み、ファンの音だけが場を跳梁する。
「…作戦なんだヨ、それにお前がやらなくても自警団長は別の釣り餌を持って来ル」
「そんな…」
「分かってクれ!…お前の今までを知っているかラ、こうして頼んで居るんダ。
升目なら生き残れル、そう信じてるから」

考え込む。
何故自分がそんな目に合わなくてはならないのか
それこそ言っては悪いが自警団の弱い人でも餌になる
生き残る自信なんて有る訳無い
嫌だ嫌だ嫌だ
…何で嫌なんだろ?
考えたら嫌がる理由もろくに言えないじゃないの
結局、自分も部長の無茶に付き合う内に感化されてしまっているんだ
ダサいかも知れないけど正義感ってやつ?
誰かが犠牲になるのは嫌
自分なんて『能力』が有っても役立たずの部類だ
自分が犠牲になっても誰の損にもならない
個人的には嫌だけど…その嫌という根拠も説明は出来ない。
ならさ

「…やります、編集長、理琵戸先生。でも、死ぬのは怖いんで早めに助けに来て下さいね…」
「分かった。約束しよう」
「済まなイ…しらせ」
「良いんです部長、私なn…わぶッ」
どこからともなく飛んできた『淑女のこころえ 村人を口説く五十の言葉編』
の背表紙に頭をドツかれる。
「編・集・長ダ。…馬鹿ちんが」
気丈に振る舞ってみたものの、先程から手元のコーヒーには一口も付けない。
カップの取っ手に手をかけてすらいない。
――良いコーヒーは気分の良い時に飲みたいもんダね
慶は二年ほどぶりにコーヒーに砂糖とクリームを加えた。
「…辛ッ」
しらせが今まで用意していた砂糖(と思われていた)袋は塩だった。


へぇ、あんたさどこの村出身かえ?
うちはど田舎もど田舎よ。
へへぇ、あんたさ結構良い村済んでるじゃけぇ
うちのとこは電車すら通っとらん

       ~05~

開け放たれたページは空しく天を指したまま、
壁の時計が部活動終了時刻に差し掛かったのを見た三人は解散した。

先生の話では補充人員は明日から来るらしく、編集長が特に何も言わない限りは
その三人で作戦を遂行するらしい。
しかし、あたしは不安です。
『外界からの不純物』と言ってもこの学園に入って来れたのだから
能力的には結構秀でてると見て良い。
それがリフィター、アクターのどちらであっても潜入向き、
そしてある程度の火力を備えているはず。
逃げ切れるでしょうか、すんごく不安です。
明日もこの日記を書けるでしょうか?
滅多に神には頼らないけど、今日からAmenです
~Sの日記~

202 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[sage] 投稿日:2010/01/13(水) 23:07:31 ID:mqoorPSY
学生寮から学校と正反対に進むと、所謂島民憩いの場である『モール』に出る。
常に本土の首都から最新の物が送られてきているため、生活水準は島のハズなのにすこぶる高い。
ただ、外界の一般市民が言うモールとは少し毛色が違う。
元々のショッピングモールに加え、病院、駐在、モール外側には自衛軍駐屯地まで存在する。
所謂主要施設をごちゃっと固めたようなものを『モール』と島民は称しているのだ。

学園から遠く離れたモール東側の隅に位置する居酒屋『いざよい』、
この店の客は殆どがマスターの晴枝さん目当てである事は言うまでもない。
彼女は34歳にしてこの店のマスターをやっていて、何故か無能力者であるらしい。
とは言え、来るのはほとんどこれから酔っぱらう客。気付くこともなかろう。
『その可愛さが能力なんですよー!』とは常連の男性会社員(42)談。

そんな居酒屋に時折現れ、人気のカウンター席を常に一つキープしている
学園の用務員が一人、奥村智和(オクムラ トモカズ)(35)
坊主頭に少し肉の多いガッチリとした身体に無精髭、
つなぎを着ていたらウホッされそうになったという話も。
彼も無能力者であると言う噂が立っているものの
用務員と言った地味な仕事柄、気付かれることは無さそうだ。
そんな彼が『いざよい』を訪れるのには理由がある。

「奥村はん、またお仕事ですか?」
「まただ。シケたクライアントと向き合ってちゃ、大金詰まれても情報はやれねえ。
やっぱり晴枝さんの笑顔を見ながらの仕事は最高や!癒される!」
「んもぅ、褒めても何も出ぇへんよ?」
「へへ、すんませんなぁ…お冷や一杯頼むわ!」
「はいはいっ…」

彼はこうして時折場所を変えながら、島唯一と言って良い『情報屋』をやっている。
この島の最大勢力とも言える『学園』の用務員の役職に就いているにもかかわらず
用務員室に居ることは極めて少ない。
ちなみに本土に妻子を残してきているものの離婚審議中。
この店に訪れるのも若き日の妻によく似た晴枝さんに思いを馳せているからだろうか。

「ところで奥村はん、この前酔いつぶれた時有るやろ?
あん時しきりに呟いてたんは何なん?教えてぇや」
「ん?あぁ、ちょっとそれ小声で言ってくれないかい」
「『本島からの不純物』…とか、横におった先生はんも何か顔青くしとったし」
「…うーん、リビトにバレちまったか。アイツなら率先して炙り出しに行くだろうな」
「え、どういうことなん?教えてーや」
「駄ぁ目。晴枝さんでもこれ以上はお金取っちゃうよ」
「いけず。今月の売り上げ、そんなに無いの知ってますやろに」

203 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[sage] 投稿日:2010/01/13(水) 23:18:12 ID:mqoorPSY
ガララ
木とガラスで作られた引き戸が新しい来客を招き入れる。
ただ、その客はさらりと流した長い黒髪に際どいスリットの開いた青いチャイナ服を着こなす美女。
たちまちノリで振り返った客達も釘付けになる。
それは智和も晴枝も同様である。

「あらやだ、初めて見るべっぴんさん」
「はーっ…この島にこんな娘居たのか」
チャイナ服の女性は何も言わずに丁度開いていたカウンター前の智和の横に座る。
またアイツか。
店内のサラリーマン達の憤懣が色づけされて智和に突き刺さる。

「…もしかして、お客さん?」
「あ、そうでス。少し欲しいのが有りますネ」
「晴枝さん、ちょっと」
「はいはい。ちょっと他のお客さんに浮気してきます」
「ええ、そんなぁ…」
「うちはみんなの良妻さん、でしょ?」
「分かってる分かってる。行って来いや!」
晴枝さんはカウンターを少し離れてテーブル席に座るお客さんにお酌を注いで回り始める。

「…もしかして、学生さんか?一応未成年には『危ない情報』を売らんのがポリシーなんやけど」
真っ正面からチャイナ服の女性を見つめる。
何度もスリットに目をやりそうになるが気合いで目線を上に上げると
今度は胸元に目が行きそうになる。やりきれない。
「いいエ、そんなに若く見えまス?」
女性は胸を寄せて訴える
「…ああ、もう!」
智和は傍らの手荷物から緑色のジャージ(上下)を取り出し、慌てて女性に差し出す。
「落ち着かねえんだよ!これに着替えてからにしてくれ」
「…着用済みが目当てデ?」
「返せなんて言わねぇや!だからとっとと着替えて来ぃ…頼む」
「ハーイ」
数分後
「ハァ…危なかった、良くやった俺の理性」
「大変ですなあ、あんなに美人さんやったら浮気しとうもなるでしょ?」
お酌を一周終えてカウンターに戻ってきた晴枝さんがまたお冷やを差し出す。
「んぐ…浮気ちゃいますよ!仕事です、仕事!」
「ふーん、ならええけど。そろそろ戻ってくるんとちゃいます?」
「もう、勘違いせんどいて下さいよ?」
「智和はんもね」
晴枝さんはまたカウンターを立った

204 名前:新聞部 ◆Yx1H.SDyn6[sage] 投稿日:2010/01/13(水) 23:20:42 ID:mqoorPSY
「ほっ…何か落ち着いたわ」
「お待たせしましたネ」
落ち着いた上下緑色のジャージはいとも簡単に色気を奪い去った。
格好とは恐ろしい。心なしか胸まで萎んで見える。
「で、どう言った情報をご所望で?」
「『本島からの不純物』についてデ」
「あちゃー、リビト先生の差し金?」
「そう言うことにしときまス」
「んじゃあ、これ貰おうか」
智和は右手に銭のマークを作る。
「これで、どうでス?」
女性はジャージの入っていた紙袋に入れた青いチャイナ服を差し出す。
「(…ゴクリ)い、良いのか!?」
「お金の変わりになるなラ、どうぞ」
智和は震える手でそっと紙袋を受け取った。

「…リビトも幸せもんだな、こんなべっぴんさんを部下に持っとるなんて」
「情報ヲ」
「ああ、すまねえ。所謂『不純物』は本島からも離れた『大陸』からの奴だ」
「それは…一体どノ?」
「…これ以上明かすと俺が危ない、出自はこれぐらいや」
「他にハ?」
「他ねえ、奴は特殊部隊出身の強化人間でその国の国家組織に所属しているな」
「…目的ハ?」
「学園に欲しい物があるんだとさ、その欲しい物は皆目見当が付いていない」
「ありがとうございまス、参考になりましタ」
「そうかい?かなりオブラートに包んだつもりなんだがなあ…あと、これ」
智和は紙袋を女性に手渡した。
「これ、良いんですカ?」
「そんな抜け殻貰ってどうしろってんだ。あと、これを見ちゃなあ」
紙袋の中にはチャイナ服の胸からこぼれ落ちる紅茶パックの図。
「ア…」
「…ま、うちの嫁さんも無いチチで悩んでたけどな。子供生めばデカチチなんてすぐだ、な!」
「言うな!!!…でス。でも、情報ありがとうございまス…」
ジャージの女性は顔を両手で抑えながら『いざよい』を泣き泣き飛び出し、夜の街に消えていった。

「女の子泣かせたらあきまへんでしょ?」
晴枝さんはもうテーブル席を三周してヘトヘトのハズである、
それでも入店時と変わらない笑顔を智和に向けている。
「いやあ、流石にちょっと気使おと思ったらやってまうねん…ごめんなあ、チャイナ服の学生ちゃん」
「…そう言えば、ここ最近ずっとお金貰ってませんでしょ?玉弾き(パチンコ)もやってて生活大丈夫なん?」
「学園の給料だけで十分食ってけとるのよ。余った分をパチンコに回してるだけやからなあ。
…同じ機種でも外本土のはもっと出るんだろうな」
「玉弾きなんてどこでも一緒です。…でも、そう言う不器用なのも嫌いじゃないですよ」
「へへっ、んじゃあ調子に乗ってもう一杯」
「お冷やですか?」
「…そろそろ酒でお願い」

中編 完   

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最終更新:2010年01月22日 19:17
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