「進化―――なんと甘美な響きであることか……」
宵の口―――新雪の様な白髪と漆黒のコートを潮風になびかせて狂気の男は独り語散る。
否、一人ではない。その背後には不気味な仮面をつけた3人組が微動だにせず控えている。
環凪島の最南端の埠頭、灯台のふもとに佇む狂気の男は赤い瞳を潤ませた。
その眼に映るのは学園都市―――能力者の楽園を彩る雑多な光の渦。
「人、人となりて数万年! 長きに渡り、捕え得ず、逃れ得ず、夢見、恐怖し、渇望の果てに手にした『力』!」
男が指を鳴らした刹那―――灯台は炎に包まれ黄昏の空を赤く染める。
仮面の3人組は静かにうなずき夜の闇へと消えていく。
「衆愚の手により封じられし数多の力! 行き着く果ては前人未到! その可能性、正しく無限!」
歓喜と恍惚に酔いしれる男の独白はなおも続く。
「我は闘争と狂乱の指揮者(コンダクター)! 奏者、名優の演舞を加速せしめ、観覧の座の凡夫に戦慄を与える者!
いざ異形なる力を超常の域へと進化、深化、神化せしめん!!」
怒号か布告か、あるいは予言だったのか―――“白い狂気”の姿は忽然と消え、燃え上がる灯台のみが残された。
さながら魔術師の蝋燭の如く―――
4日後、生徒会室―――
「…これが件の灯台。目撃者の…と言っても何キロも先から偶然目にしたって程度ですが…証言によると一瞬で炎上したそうです」
一戸 遥の声は厳しい余韻を伴って響く。ホワイトボードに張られた写真を指す指も緊張からか、あるいは恐怖からか微かに震えていた。
「埠頭の沖の海底からは大破した小型快速船が見つかっています。そして4日間の内に起きた一般人区画での惨殺事件11件、
学園区画で重体被害者4名の発生。被害者の証言と照らし合わせても島の外部から侵入があったことに間違いありません」
外部からの侵入、それと同時に始まった連続殺傷事件―――それも恐らく侵入者による―――前代未聞の事件である。
「で、とどのつまり何が言いたいの? 時間が掛かるだけの会議って嫌いなんだけど」
横槍を指したのは弱冠11歳で生徒会の一員を担う天才児、一之瀬玲途である。
「一般人区画は既に警察の厳戒態勢下。学園区画は…ちょっと気に入らないけど自警団の面々が活動してる。
後は僕ら生徒会がどう動くか…それだけなんだけど? それも決められないの? 会長サン?」
目上の者を敬う心が全くないのか――― 一之瀬は侮蔑を込めた視線を1人の男に投げかけた。
視線の先に居るのは紛れもなく、この会議の長―――生徒会の頂点に立つ者―――極ヶ原 強也であった。
会議が始まった時から何か考えているのか―――ひたすら腕を組み続け微動だにせず、
目も口も堅く閉ざし、一之瀬の挑発にも眉一筋動かさない―――その顔を夕暮れの光が茜色に染める。
「どの犯行推定時刻も20時から3時の間。あと2時間ちょっとで正体不明の“敵”の時間がやってくる。
敵も能力者だったら…僕らはともかく、一般人や警察なんて良い標的だよ? どうするのさ?」
「会長、決断を」
落ち着いた、しかし決して焦りを隠せぬ声を発したのは角松だ。
角松の一声を待っていたが如く、極ヶ原はゆっくりと目を開き、重々しく言い放った。
「待ち人、未だ来らず…それだけのことだ」
「…は?」
「どういう意味さ」
「…お前らは会議を進めてたつもりだったろうが、既に決定は為されていたんだよ。
場合が場合だけに俺とごく数名でとっくに行動方針は決めていた…事後承諾を求める形になったのは謝罪する」
極ヶ原は皆に深々と頭を下げた。あまりのことに誰しもが言葉を忘れる。
普段の豪快な様子からは想像もつかない姿を初めて垣間見る者が大半だったのだ。
「だから一体―――」
「口を慎め、一之瀬。会長、続けてください」
「…皆、承知の通り、現在の学園区画は自警団の勢力による活動下だ。不本意ながら生徒会と風紀委員との対立が昨今著しく、
このような事態になっても両組織間の指揮系統がほとんど機能していないのが現状だ。
反面、自警団は精鋭たる『十王』の半数以上が現場に出払って見事な統制を見せている…今回ばかりは“承認”することになった」
ふう、と一息ついて極ヶ原はボールペンをくるくると回し始めた。夕日の光が反射して生徒会室に乱舞する。
「自警団からも打診がありましたので…双方の同意によるものなので“黙認”ではなく“承認”なのです」
次に言葉を紡ぐのは副会長たる一戸。
「更に穏健派で知られるスカーレット・メイディランドの派閥が遊撃戦力として提供されました。
彼女らはしばらくの間、我々の指揮下に属することになります」
あまりに突然の告白。予想もしなかった内容。会議室はどよどよと喧騒に包まれつつあった―――
「話を聞けい!」
―――それを沈めたのはやはり極ヶ原の一喝。そして一戸とバトンタッチ。
「学園区画はそれで収める。一部の不良(ボンクラ)どもが悪い意味で熱に当てられてるが、それは俺が何とかしよう。
一番の問題は―――」
回転を止められたペンの先端がカッと叩き付けられる。それが指すものは―――
「先ほど一之瀬の指摘にされた一般人区画だ。現に生徒が4名、重体を負った。敵が能力者である可能性は高い。
能力の内容によっては殺戮劇が繰り広げられることになる。絶対に許されん事だ。
そこで俺達生徒会によって2名を選び、その2人に“有事特別外征権限”が付与されることになった」
ざわめきは先ほどと比較に成らないほど大きくなった。感嘆の声を上げる者もいる。
“有事特別外征権限”―――普段、能力者は一種の隔離施設たる環凪島に押し込められる。
島内でも一般人区画に立ち入ることは許されない。しかし、能力者の力が必要とされる場合には、
一時的ながら特例として行動の自由、各種機関への応援要請及びその指揮権が―――軍、研究機関の監視下ではあるが―――認められる。
この権限が認められたのは環凪島の完全確立以降でも10回にも満たない。
それほどまでに今回の“事件”は危険性の高いものだと上層部は判断したのだろう。
「1人はスカーレットに決定している…入って来てくれ」
会議室のドアが開くと入って来たのは溜息をつくほど美麗な女性だった。
「…会長のご紹介の通りです。皆さま、どうかお力をお貸し頂けるよう、宜しくお願い致します」
流石は公明正大で知られる才女である。彼女の人格を知る者に反対の声を上げる者はなく、
一部の反発の火種も本人を目の前にすると立ち消えとなった。
「会長、もう一人は―――パートナーと言ってよろしいかは分かりませんが―――その方はどちらに?」
「…まだ来ていない。角松、すぐ来るように伝えてくれ」
「あいにく、俺は知りません。そもそもあと1人とはいったい誰です?」
一瞬、極ヶ原は角松と目を合わせる。
(あまり有名にならない方がよかったんだが…仕方ない)
意を決して言葉を紡ぐ。
「所属は風紀委員。対立著しいながらも例外的に生徒会に忠実であってくれる、俺の良き友。
―――『夜魔』の二つ名―――聞いたことはないか?」
『夜魔』―――その二つ名を聞いてもピンと来る者は一人もいないようだ。
「皆目、見当がつきません…風紀委員『五賢帝』の一人ですか? いや、それなら誰しも知っているはず…まさか、いわゆる番外位?」
「そんな四天王(5人)みたいなもんじゃあない。そもそも奴さんが風紀委員だとは身内でさえ知らんのがほとんどだろうな」
「…ただのサボり魔? ま、僕としては有能ならそれで構わないんだけど…スカーレットさんはどうなのさ」
一之瀬はスカーレットに視線を向ける。しかし、そこにはやはり欠片ほども尊敬の念はこもらない。
「…私は構いません。今は生徒会の指揮権に服する身。その最高責任者の信頼を得うる程の人物ならば、寧ろ願ってもない人選です」
「ふーん…貴女がいいって言うんなら、それでいいかな…でも、それにしても遅すぎるよ」
既に太陽は深紅の輝きを伴いながらも水平線の彼方へ沈む寸前だった。
あと数十分で一般人区画では夜間外出が禁止され、警察の総力を挙げた警備が敷かれるだろう。
「その人、やる気あるの? 例の“権限”は今日の19時から付与されるけど、同時に一般人区画での治安活動を半強制的に実施させられる、
義務の側面もあるんだ。もう30分切ってるんだよ? 御大層な“権限”を貰っておいて肝心の本人が居ないんじゃ―――」
「―――待たセ、タな―――」
「「「「!?」」」」
一之瀬の言葉を遮ったのは紛れもなく、遂に現れた来訪者。だが一同を驚かせたのは突然の来訪そのものではない。
その声は生徒会室のドアから聞こえてきたのだが、そこには全く人影がないのだ。
「遅レた事は詫びヨウ。しかし、俺にモ都合といウものがアってナ…」
不自然な抑揚を伴った姿なき者の声。しかし、それは―――“彼”は確かにそこに存在した。
ドアの隙間から銀色に煌めく“霧”が入り込んで来たのだ。そして声の発生源は間違い無く、その霧そのものであった。
「今日は紫外線が強スぎル…こノ時間になってヨうやク外に出ラレた」
銀色の霧は夕日の光の届かない所に密集し、徐々に人の形を取り始める。
「ソれニしても一之瀬、相変わラず尊敬の念ヲ抱くことを知らヌ餓鬼のまマだな。
おまケに無駄に喋り過ぎる…言葉に重みが無くなるぞ。今の俺のようにな」
声は静かながらも朗々と響くものに変わり、霧は完全に人型となり、そこには灰色のロングコートを纏った男が居た。
襟を立てて口元を覆い、目深に軍帽じみた帽子を被り、手袋にロングブーツ…更にそれらの隙間を閉じるべく念入りにテーピングを施した奇怪な風体。
真正面に立たない限り、その表情を窺い知ることは出来ない。
驚きながらも一同は確信した。これが極ヶ原が切った最後のカード、『夜魔』の二つ名をもつ者―――
「―――織(しき)・ディートリヒ・伽雅弥(かがみ)…只今到着しました」
「半年ぶりくらいか? 織?」
「そんなところか…それにしても強也、何度か一之瀬を目にする機会があったが…年長者として多少躾けてやっても良かろうに」
「いずれな。まぁ、とにかく役者は揃った―――全員傾注!」
雷鳴の様な極ヶ原の一喝。全ての視線が集中する。
「生徒会リフィターは情報収集、指揮を行う。アクター及び自警団メンバーはそれに基づく遊撃。
織とスカーレットは今から一般人区画へ移動。敵の危険性の如何によっては…言い難いが抹消も許可されている。
―――気を抜くな!」
10分後、一般人区画と学園区画を隔てるゲート―――
「…スカーレット・メイディランド、網膜走査完了。織・ディートリヒ・伽雅弥、網膜走査完了。
両者の本人確認を完了しました。今より“有事特別外征権限”を付与します。
―――ゲート解錠」
余りに物々しい門である。2つの区画を寸断するその扉は正に鋼鉄の塊と言って差し支えない。
轟音をあげて開いてゆくゲートを眺めながらスカーレットは密やかに耳打ちする。
「…余りにも仰々しすぎませんか? 1万人弱の少年少女を封じ込める為だけにこれ程の…」
「それだけ俺達が恐れられているということ…連中の様子、見てみろ」
どこから取り出したのか、織の手には掌にすっぽり収まるほどの水晶が握られている。
それを弄びながら顎で示した先に居たのはゲートを管轄する軍の一部隊。
ほんの一瞬だけ視線が交錯する。その眼に映っていたのは紛れもなく“恐怖”の色だった。
同胞でなければ決して理解できぬ『力』。その力を有するか否かで、そこには決定的な差異がある。
“理解”が及ばぬモノを“未知”と定め、それ故に恐れ怯える矮小なる人間の思考。
あるいは能力者の呼称の1つ―――『超越する者(トランセンド)』―――が示す通り、もはや別種の生物に分化しつつあるのだろうか?
「おまけにさっき渡された通信機…こいつには俺達の生体反応の変化を解析して研究所の頭でっかち共に送信する機能まで付いてる。
監視カメラも殺人鬼の捜索よりも俺達の監視に当てられる台数の方が多いって話だ。
…全く奴等にとってどっちが敵なのか…」
「それでも私達の為すべきは唯一つ、でしょう?」
「まあ、な」
「ところで何故、水晶なんか持っているのですか?」
「…爆裂水晶の収集が趣味でね」
そんな会話を交わしながら、2人はゲートをくぐり抜けていた。
直後、再び鋼の門は閉ざされ始める。
それをどこか恨めし気に眺めていた織は、扉が閉まるのと同時に水晶を握る手に力を込めた。
刹那、透明な結晶体に無数の亀裂が迸り、夕日の最後の一条の光が美しく乱反射した。
―――夜が来る。
一般人区画と一言で表そうにも、その面積は広く、また数多くのエリアに更に分割される。
環凪島の雑務を担当する部署が集結したビル街、職員とその家族が住む居住区、軍の駐屯地、
島の北端に位置する大研究所、未開発の自然保護区域、環凪島のスポンサーたる企業連合の支社が集結するエリア、
物好きな富裕層が能力者に畏怖と憧憬を抱きながら優雅に暮らす高級住宅街、過去に破棄された各種施設がそのまま残されている廃墟…通称、魔窟、etc…
「しかし、2人で敵を捕捉し排除しろと言われても何処から手を付けたものか分かりませんね…」
「警察の情報によると11件の事件の内の8件は住宅街で起きている。残りは魔窟。
明らかに無能力者だから狙われている。網を張るなら住宅街だ」
「魔窟での3件は?」
「3人の被害者は警察官。大方、敵の拠点を見繕ったところで不幸にも大当たり。それで殺されたってオチだろう」
「では二手に分かれて調査をするということですか?」
「それが妥当だろう…聞こえるか軍部?」
唐突に織は通信機のスイッチを入れ、監視係兼増援の軍部に連絡を取った。
「ミス・スカーレットと合流し廃墟群に向かって欲しい」
≪…了解した。君はどうするつもりだ?≫
「俺は単独で市街地へ向かう。俺の能力では取り巻きが居るとかえって邪魔だ」
≪了解した。幸運を≫
「ところで能力者の増援は可能か?」
≪残念ながら不可能だ≫
「…了解。これにて通信を終了する」
廃墟群と市街地は正反対の方向にある。織とスカーレットは互いに踵を返した。
「本当に1人で良いのですか?」
「無論。可能なら『剣帝』を呼びたかったがね…何も問題ない」
「…どうか無事に帰って来て下さいね」
スカーレットが振り向いた時、織の姿は銀色の霧と化して夜風に乗って消えていった。
(どうにも嫌な予感がするのです。私達が今ここに居るのも、全て敵の掌の上の様な気がして…)
30分後、スカーレットは6人の軍人を取り巻くような形で引き連れて廃墟群へ向かっていた。
増援と言えば頼もしいが彼らは監視係としての側面も持つ。下手な行動をすれば捕縛されるのは彼女の方だ。
―――彼らにとって敵はどちらなのか―――先程の織の言葉が頭をよぎる。
そんな事はどうでも良い、6人の仲間と協力し殺人鬼を捕えることが最優先事項だ…そう自分に言い聞かせているものの、
彼女は1人の男には頭を抱え込みたくなる程に辟易としていた。
「…つまり貴女の能力は音に着火するパイロキネシス。しかしそれだけでは発火物がないと炎は発生しない。
音そのものが炎と化しているという事ですな。かと言って音はあくまでも音のまま…
貴女の能力は音を音でありながら同時に炎と化す。それも化学反応ではなく炎がそれ自体で存在する…実に興味深いですな…」
レコーダーを胸からぶら下げ、スカーレットを質問攻めにする瓶底眼鏡の小男である。
間違い無く研究機関からの回し者だった。他の5人と違ってこれといった武装もせず、ラップトップコンピューターのキーを忙しげに叩いている。
それに応じて周囲の監視カメラがスカーレットに追従する形で忙しく作動する。
「…工藤博士、いい加減にして頂きたい。上からの命令で貴方も特別に同行することになった。
それ自体は問題ない。しかし1人の少女を実験動物でも扱う様な眼で観察し、質問攻めにするのは私個人としては不愉快だ」
「おお、それは済まなかった」
しかしその言葉はスカーレットに向けられたものではなかった。
その事に気づくや、流石の軍人達も彼女に同情する様な視線を向け、謝罪のつもりか頭を下げる者も居た。
(この人達は優しいんだ…)
初めて環凪島へやって来た能力者たちは研究機関で能力の調査を受ける。
良家の令嬢ながら幼くして環凪島で暮らす―――あるいは収監される―――事になった彼女とて例外ではなかった。
だが能力の一端が解明されAランクの判定を受けるまでに彼女が受けた処遇は、決して人の温もりを感じさせるモノではなかった。
中には人体実験と言って差し支えない恐ろしい処置を受けた者も居ると聞く。
未だに自身の過去と、他の能力者が辿って来た道のりには戦慄を覚える時がある。
しかし多くの同胞と、同胞ならずとも暖かな心を分け与えてくれる人々によって、彼女はスカーレット・メイディランドとして今ここに立っている。
それを打ち崩そうとしている殺人鬼が、彼女は絶対に許せなかった。
「ミス・スカーレット。最後に一言だけ良いかな?」
「なんでしょう」
「音はすなわち波動。そして人間は聴覚、触覚によってそれを認識する。だがそれでは自身が受けた音波しか知覚しえない。
もしそうなら貴女自身が丸焼けになるか周囲を無差別に焼き払ってしまう。
だがそんな事はかつて一度もない…率直に聞きます…“視えている”のですか?」
「……ええ…“視えています”。音波自体が飛び交うのが私には認識できる。例えるなら、まるで赤い陽炎…」
「なるほど、良い収穫でした…ああ、貴女にこれを」
工藤博士がスカーレットに手渡したのは2本の超指向性マイクだった。
「300メートル先まで、ほぼ一直線に高周波を放出できます。ランダムに飛び交う音を利用するより確実でしょう…っと着きましたね」
7人は遂に魔窟の異名で呼ばれる廃墟群の入口へと至った。
枯れ果てた街の一際高い鉄塔の頂で、音もなく佇む影が―――不気味な仮面の下で―――嗤った。
同時刻、住宅街の公園―――
昼間なら子供達が駆け回り、時に笑い、時に泣き、時に喧嘩もするであろう公園。
夕暮れには「また明日」などと無邪気に約束をして次の遊びを考えながら各々の家に帰るのだろう。
そして普段なら、この時間帯でも家路を急ぐ親の姿がここからでも見えるのだろう。
しかし織の姿を除いて、今ここには何者も居はしない。
1メートル先はもはや影しか見えぬ銀色の濃霧に包まれて、織は噴水の縁に座っていた。
無数の水滴が水面を叩く音のみが響く中で彼はひたすらに待つ。
闘いを、闘いが始まる瞬間を。公園をその舞台に選んだ事に特別な意味はない。ただ広くて闘いやすい、それだけのことだ。
能力故か、あるいは生まれもった性なのか、織は心の奥底に強烈凶暴な闘争本能を秘めている。
爆発寸前のそれを強靭な理性で抑えながら、唯ひたすらに待つ。
そんな中、織はふと思い出していた。1人の研究者が自身の能力について示した見解。そして1つの“仮説”を。
―――君の“祖先”も香り立つ闘争の甘美さに身を焦がしていたのかもしれない―――
最初は鼻で笑ったものだ。その仮説とやらの荒唐無稽さに、腹を抱えて笑いだすところだ。
だが己の能力と遺伝子が解明されるにつれて、仮説は一説へと変わっていった。
頭の中で逡巡するうちに、それは―――水面を打つ飛沫と静寂を切り裂いて―――それは遂に襲来した。
水のベールを突き破り、織の背後に躍りかかったのは異形の仮面。
その手首から伸びるのは古の暗殺者が用いたと言われる細身のブレード。
刃は鈍色に輝きつつ織の左胸を―――心の臓腑を―――振り返る暇もなく貫いた―――
「!?」
―――はずだった。
だが何の手応えも無い。貫いたはずの胸からは一滴たりとも血が噴き出さない。
「―――待っていた」
夜の公園に響いたのは他の誰でもない織の声。同時に胸を貫かれたその姿は、白銀の微粒子へと崩れ霧散した。
そして声は仮面の男の真正面のベンチに座る影から聞こえてくる。
「遅かったな殺人鬼。聞いておこう、お前たちの目的は―――」
全てを言う間もなく、仮面の男は信じがたい跳躍を見せて両腕から伸びたブレードを振り抜く。
マイクロ秒の差でそれをかわすも、帽子と服の襟が僅かに切られる。
余裕の表情で横へとステップを踏んだ織だったが、
「ッ!」
その背後から再び十文字の一閃。帽子は縦に両断されて吹き飛び、服の襟もとは完全に消失した。
微かに切られた首の傷跡から滴る血を拭いつつ、織は獣のように回転しながら跳躍し、街灯の上に着地。
その動きに残像の様にコートが追従する。そしてスカーレットも見ていなかった織の顔が明らかになった。
黒い絹の如き長髪、雪の様に白い肌、サファイアを思わせる青い瞳。
「…2人。それも全く同質の能力…双子か?」
そう、背後からの斬撃は高速で回りこまれたものではなかった。碧眼が見下ろす先には全く同じ仮面を付けた男が2人。
先程の斬撃も只の刃物によるものではない。2人の手首から、手の甲から、骨が変化したかの様な刃が生えていた。
突如、霧が晴れていく。織の体に銀色の微粒子が吸い込まれていく。指先は鋼の如き爪に変わり、犬歯が唇を突き破るほどに伸びていく。
「貴様らの能力は良く馴染みそうだ、余裕があれば“喰らう”としよう…闘争の時間だ」
廃墟群―――
スカーレット率いる部隊は廃墟の中心へと向かっていく。軍人達の顔は極限の警戒心で強張っていた。
そして一際高い鉄塔に差し掛かった時―――ピキッ―――という音が一同の鼓膜を打った。
「今のは…?」
「老朽化が進んだ建造物のどれかが軋んだのだろう。それより―――」
ガギギッ―――金属を捻じ切るような音が響き渡る。その音源は紛れもなく一同の頭上、すなわち鉄塔だった。
「!!」
最も若い兵士が驚きのあまり銃を上へと向けた瞬間、それは起きた。
突如、轟音を上げて風が渦を巻き7人を翻弄する。渦の中心は他ならぬ鉄塔の頂点。
鉄骨の各部が滑らかな弧を描くように一瞬で切断され、バラバラに分解されたと思うが否や、錐揉みに回転し更に分解していく。
気が付けば鉄塔の頂点を中心とした球状の空間に風が吹き荒れ、無数の鉄塊が乱舞していた。
「一体これは!?」
部隊長が驚愕の叫びをあげた瞬間、空間が破裂したかの如く―――空間が破裂という表現が正しいかは別として―――
百を超える鉄塊は三次元の渦の鎖から解き放たれ、直径数十センチの散弾となって一同の頭上に降り注ぐ。
「総員退避!」
余りにも無駄な試みだ。この鉄の雨から無傷で逃げ延び、あるいは耐え抜くのは全くもって不可能。
それを悟ったスカーレットの決断は迅速だった。
既に降り注ぐ鉄の半分は地に落ちている。そして残りは轟音とともに頭上に迫っている。
ならば―――焼き尽くしてしまえば良い。味方を巻き込みかねないが、それ以外に策はない。
「『赤の女王(スカーレット・クイーン)』――――――!」
「!?」
全身全霊を能力に込める。全ての音を発火点にして、この上ない純度の炎に変えて―――
「総員! 耐火炎装備!」
「焼き払ええぇぇぇぇ―――!!!」
6人が装備に身を包むのと、スカーレットの絶叫は同時だった。
その瞬間、空から降り来る全てが炎に包まれ、それら自体が次から次へと湧き起こる炎に飛び込んでいく。
総重量数十トンはあろうかという鉄の弾丸全てが空中で融解し、深紅の蒸気と化して霧散した。
だが炎獄と化した空を貫き、地に降り立った者が居た。
「くっ…あ…う…」
「スカーレット! 無事か!? 怪我は!?」
頭を押さえて膝をつく彼女に部隊長はあわてて駆け寄る。最大出力で放った能力の反動は筆舌に尽くしがたいものだった。
頭は割れるように痛み、全身の力が抜ける。五感が完全に麻痺してしまった。
「私のことはいい…それ…よりも…何か居る…」
「何だと!」
「炎を掻い潜って…何かが降りてきた…!」
指差す先に博士を除く全員が銃口を向けた―――そこに現れたのは幼さを残した小柄な少女。
だが皆は理解していた。この少女があの恐ろしい鉄の嵐を巻き起こした張本人だと。
「う、撃てええぇぇ!!」
狂乱した5人の軽機銃から放たれる弾丸の雨―――だがそれは少女には届かない。
突如、3つの漆黒の球体が少女の前方と両脇に出現すると弾丸の軌道は乱れに乱れ、あらぬ方向へと散っていく。
「あなたたちにようはないの」
少女の言葉と共に5人の軽機銃は滑らかに弧を描いて切断され、彼らは一瞬の浮遊感を感じた直後、吹き飛ばされた。
「ようがあるのはそこのおねえさんだけ。さあ、あそぼ」
「…何者かは知りませんが、これ以上はさせません!」
織とスカーレット―――両者の前に謎めいた敵が立ちはだかる。
普段なら実力行使は最終手段。スカーレットのスタイルはあくまで説得である。
だが今回ばかりは相手が相手だ。島に不法侵入し11人もの犠牲者を出した恐るべき勢力の1人。
―――危険性の如何によっては抹消も許可されている―――
極ヶ原の言葉が頭をよぎる。本来なら相手を捕え、尋問し、その正体と目的を明らかにするべきだ。
だが今のスカーレットに迷いはなかった。超指向性マイクを少女に向け、『赤の女王』を発動する。
だが音速の炎は届かない。銃弾が迷走したのと同様に黒い球体の前に散っていく。
「おねえさん、じゅうりょくってしってる?」
スカーレットの足元に滑らかな亀裂が走る。コンマ数秒飛び退くのが遅れていたら右足を切り落とされていただろう。
「おねえさんはおとをつかうんだね。でもおとはつたわるのにくうきをつかうでしょ。このこたちはじゅうりょくそのもの。
だからくうきがうごいちゃって、おねえさんのちからのとおりみちがまがっちゃってるのとおなじなの」
「くっ…」
周囲の建物は再び切断され、その破片が空中で竜巻の様に飛び回る。
(私諸共、これで仕留めるつもりですか…)
だがスカーレットには勝算があった。2回の相手の能力をつぶさに観察し、その特性を読み解きつつあったのだ。
1つ、少女が作りだす黒い球体は重力の発生源であり、能力の出発点である。
2つ、球体を中心として球状に能力の有効範囲を決定する。その際に有効空間は周囲の空間を切り裂く。
3つ、恐らく球体を中心として有効空間そのものを回転させ、任意に解放する。
4つ、各段階に移行する時に数秒のタイムラグが存在する。
ならば、そのタイムラグの瞬間に全てを賭ける―――
「みじかかったけど、さようなら、おねえさん」
解き放たれた無数の鉄塊、再び焼き尽くす炎の海。
凄まじい頭痛に苛まれるも、それを無視してスカーレットは一気に彼我の距離を詰めた。
「ひっ!」
「…さようなら、ね」
両腕に装備した超指向性マイクをXに交差しつつ、『赤の女王』の力を放つ。
それはさながら巨人の振るう炎の剣。少女は為す術も無く焼き尽くされるはずだった―――
「惜しいがそこまでだ、お嬢さん」
―――パキッ―――指を鳴らす音と共に少女の前に白色のキューブが現れ、炎の剣を飲み込んだ。
そして少女とスカーレットの間に降り立つ影。病的に白い肌と白髪の男が黒の衣装に身を包み佇んでいた。
「何者!」
「…語る名など無い。我は究極の進化を求め彷徨う者。」
再び男が指を鳴らす。先程姿を消した炎がスカーレット達の足元を薙ぎ払う。
「くっ!」
眼前の視界を取り戻した時には、少女と男は姿を消していた。
「…逃げられましたか…」
同時刻、公園―――
仮面の2人組は骨の刃を振りかざし、間隙なく攻め立ててくる。織はその攻撃を受けかわす一方だ。
だが、その守りは揺るがない。鋼の如き爪は一筋の傷も付くことなく無数の斬撃を力強く弾き返している。
受け切れぬ攻撃は体を霧と化すことで、ゆらりゆらりと危なげ無くかわす。
織は感じていた。仮面の男達の焦燥と驚愕を―――そして己の内に湧き立つ失望と怒りを。
織の能力の1つ「因子感染」―――己の血液を媒介として他者に因子を感染させ、テレパシーで精神を支配する。
先程の一太刀で受けた傷から滴る血を銀色の霧の中に散布し、相手が呼吸する時に吸い込ませていたのだ。
微量なため精神を支配するには至らない。だが相手の精神状態・思考を読み取るには必要にして充分な量だった。
(狩れん、獲物にしては強すぎる…これでは我らの喜びが得られぬではないか…)
(獲物の恐怖と驚愕と絶望の表情。それこそが我らの喜び。殺戮者としての誇り…)
焦りが頂点に達したのか、2人は両サイドから一気に織の首を切り落とすべく踏み込んだ―――
「―――ふざけるな!!」
一喝と共に4本の刃が根元から折れて宙を舞う。重機の如き一撃を受けて2人組が吹き飛ばされる。
織は宙を舞う刃の全てを掴みとると、いつの間にか全ての歯が牙と化した口にそれを放り込み、“喰らった”。
「貴様らノ行いは闘争のソれではなイ…殺戮者の誇りダト!? 全身全霊ノ力ヲ尽くして戦うコとトハ程遠い!
力の衝突が生み出ス歓喜を知ラぬ輩が! 殺戮者ダと!? イイだろウ。今! 此処デ! 体現シてくレるわ!!」
2人はようやく気付いた。街灯の光を受けて煌めく織の髪が漆黒ではなく白銀であることに。
体のそこかしこが既に人間のそれではなくなっていた事に―――
突如、織の全身が再び白銀の微粒子と化して霧散した。だがデコイが崩れ去った時とは全く違う。
今までよりも遥かに濃く、大量の霧。それがなんの前触れもなく逆巻き、蠢き、渦を巻く。
「「!?」」
2人は見た。銀色の渦の中から生まれ来るモノを。
「「…!」」
驚愕の震えは恐怖のそれへと変わった。
現れ出たのは煌めく水晶の爪と牙。青く本能にギラつく瞳。全長10メートルを超えようかとする銀毛の巨狼だった。
「―――オウルルォオオオアアアアアアアアア!!!」
異形の咆哮が環凪島に轟いた。
その叫びは環凪学園の生徒会室の窓ガラスを震わせ、果てには共振崩壊を引き起こした。
「なっなっなっなんなんだ今のは!?」
斜に構えた態度を粉砕されて飛び上がったのは一之瀬である。
そんな彼を鼻で笑って極ヶ原はスカーレットとの通信を終え、独り語散た。
「…勝ったな」
「は!?」
「相手が高位の概念使いでもない限り、もはや大局は決した。真の力を解放した以上、織の勝ちだ」
「一之瀬、あいつのランクがいくつか分かるか?」
「会長サンの信頼を受けるぐらいなんだからAってとこじゃないの?」
逞しいと言うべきか生意気と言うべきか、一之瀬はいつの間にか斜に構えた態度を取り戻していた。
「その通り、ただしあと一歩でSに届くレベルのAランクだ」
「…あの人そんなに強いの?」
ふふん、と鼻で笑いながら極ヶ原は先程おぞましい咆哮が轟いてきた方角に目を向ける。
「2年前に喧嘩を通してあいつと知り合ったが半端じゃない。止めを刺す時は本気の30%は使ったかな?
とんでもない成長性に加えて他人の能力を吸収する事も出来る奴だ。俺以外でここにいる全員でも敵わんかもな。
…あー、暴走してなきゃいいんだが…」
遥か昔、リオプレウロドンという生物が存在した。それは地球史上最強の海洋生物と言われている。
―――ならば、最強の陸生生物は?―――
その答えの一つが仮面の男達の眼前に君臨する白銀の巨狼なのかもしれない。
織の最強にして真の能力「白銀魔狼」。その巨体を目にした2人組はもはや戦意を喪失しつつあった。
最後に一矢報いようというつもりなのか、片割れが全身を白色の甲殻で包み、両腕に刃を生やして突撃した。
「…良イ覚悟ダが、無駄ダ」
刹那、全ての刃が微塵に砕け、男はその体を水晶の顎に捕われていた。
バキバキと甲殻が砕ける音が響き渡る。男はもがきにもがいた末に吐血し、それっきり動かなくなった。
「殺シはセン。貴様らニは聞ク事が山ホドアる」
いつの間に回り込んだのか、その声は呆然と立ち尽くす仮面の男の背後から聞こえてきた。
「―――!!」
恐怖からか、あるいは反射的にか、無駄と分かっていながらも男は刃を巨狼へと付きたてるべく動いていた。
しかし織の姿は刃が届く寸前に再び霧散する。そして霧の中から出てきた姿は半人半獣。
まさに『狼男』としか呼べないモノだった。
「無駄だと言ってイルだろウ?」
銀毛に覆われた腕が骨の刃をがっしりと掴み、へし折り、次の瞬間に右腕を首へと伸ばす。
首を締めあげられながら体をゆっくりと宙吊りにされた男は、今度こそ一切の抵抗手段を失った。
直後、織の肉体は腕を残して三度銀の霧と化し、腕を除いて完全に人間に戻った。
「尋問しても答えまい? かと言って拷問は趣味じゃない…そこでだ」
突然、己の左手首を切り裂き、流れ出る血を口に含む。相手の仮面を一気に剥ぎ取る。
「貴様の精神を支配し、情報を根こそぎ頂く」
織は躊躇うことなく男に口づけし、己の血を飲ませ始めた。
「―――!?」
男の必死の抵抗も空しく全ての血を飲み込ませる。次の瞬間、男の目から光が消え崩れ落ちた。
「…ふぅ。なるほど、なるほど―――強也、聞こえるか?」
≪…終わったか?≫
「ああ、俺は連中の情報を頭にしっかりと刻み込んだぞ」
≪ご苦労。今後の処理は?≫
「軍に連絡して2人の男を刑務島に送る必要がある。大至急、要請してくれ。以上」
≪了解した。明日生徒会で全てを話してくれ。以上で通信を終了する≫
話を終えた織は噴水に向かって腰を落とすと、目にもとまらぬスピードで腕を振るった。
刹那、水の粒が両断され水面へ向けて落ちていく。その両腕には水晶の刃が生えていた。
「人狼ならぬ刃狼と言ったところか…はははは…」
これがこの奇怪な夜の最後だった。
翌日の17時、生徒会室―――
「いつの間にUVカットのガラスと取り換えたんだ? 俺は助かるが…」
「…お前が昨晩、ことごとく叩き割ってくれやがったんだろうが。費用はてめえ持ちだ。
近いうちに請求するからな」
極ヶ原の言葉に頭を抱えた織だったが、数秒で気を取り直し言葉を紡ぎ始めた。
「―――侵入者は合計4人。昨日俺が交戦した2人と、ミス・スカーレットが交戦した2人だ。
俺が相手した2人の役目は環凪島における混乱の発生とその加速。
あと1人はとある男の直属の護衛。まあ、昨夜は立場が逆転したようだが…
そして最後の男というのが―――」
実際に会った当人にちらりと流し目を送る織。
「―――本人曰く、『究極の進化を求め彷徨う者』だそうです」
「その男は俺達“能力者”―――超越する者(トランセンド)、変異種(ミューテイションズ)、不可解なるもの(エニグマ)、
新世代(ニュージェネレーションズ)、与えられし者(ギフティ)、サードフェイズ―――呼び方なんぞどうでもいい。
とにかく自身も能力者でありながら、能力者という存在の出現に興味を持ち、そこから『進化』という命題に取り付かれた狂人だ」
ざわざわと喧騒が広がっていく。
「己との闘いの中で相手の力を成長させることに喜びを見出し、粉砕し、立ち上がる姿を見ては恍惚に包まれる。
進化した存在が更なる進化を遂げていく事に価値を見出す男。まあ、他人の成長が楽しみですってだけなら問題ないが、
そいつは成長の見込みがないと相手を殺しちまうらしい。重体の4人も再び標的にされる可能性がある。
その時に前回を上回る実力を披露できなければ―――」
「―――殺されるってか?」
「そういうことだ」
喧騒はざわざわからどよどよに変わりつつあった。一体どうすれば対処できると言うのか。
その4人の警護に全力を尽くす? いや、それでは結局戦いが起きて次なる標的が増えるだけ。
何よりいずれは狂気の男に襲われる者が必ず出てくる。警察や軍で太刀打ちできる相手ではない。
「この情報は学園全体に広報しよう。結局は通り魔を返り討ちにする様な方法しかないんだからな」
溜息混じりに結論を出したのは―――結論と呼べるほどまともな結論でもないが―――極ヶ原である。
「既に『一般人区画の繁華街で起きた連続猟奇殺人事件』は噂になって広まっている。
少々気に食わないが情報操作をして、殺人事件の全てをそのガイキチ野郎の仕業に仕立て上げる。
そんでもって…力を持て余してる不良共でも先兵にしてブチ当てる。
後は……名前が必要だな。スカーレット、その男の特徴は?」
「…雪の様に白い肌、白髪、赤い瞳、黒いコスチューム…そうですね織の2Pカラーってところでしょうか」
「…人を変態野郎の親戚みたいに言うな…」
がっくり肩を落とした織の背中をばんばんと叩く極ヶ原。
「何かの因縁になるかも知れんぞ? 神様が用意したお前の宿敵かもしれん。そうだな、名前は―――」
幾人かの声が重なる。
―――狂える白(マッド・ホワイト)
To Be Continued To 「喧嘩風雲録」…?
最終更新:2010年08月18日 21:12