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したらばSS作品 ◆SluRnZA63g

『けど私、馬鹿です』
『え?…うん、がんばって』
彼女と僕の、はじめての会話。

彼女が此処に搬送されてきた時、既に彼女は自分の能力を完璧に理解している様子で、僕達教員は胸をなでおろした。
能力者に見られる特有の痣が見られるだけでどんな能力か全くわからない、なんて子が来ることも間々有る話で、そんな時は職員会議に入る以前の問題だ。
教職員としての義務から離れることも出来ず、数週間缶詰めになったとか恐ろしい話も聞いた。僕も二日間くらい拘束された経験が有るから、彼女のような子は実際とても有り難い子だった。
能力分類では若干意見が割れたものの、それなりにすんなりと会議も終わりを迎える。ああ今回の子はなんて癖のない、手間のかからない子なんだろう!

『次の日本語を、英語になおしなさい。』
『これはペンです』
(Kore)(ha)(pen)(desu)

僕達は頭を抱えてこの子を『入学』させる方法を考える羽目になった。

『ダメでしたか?』
『ダメだけど、ダメじゃなかった』
『……?』
『うん、説明がてら、此処を案内するよ……ハァ』
彼女と僕の、繋がりのはじまり。

学園都市。日本国某島に作られた能力者の楽園―――自由な監獄
能力者の管理、育成を建前に能力者を隔離することに成功した治外法権のクニ
しかし建前上どうしても通らなければいけない関門がある。つまり、入学試験である。
僕を含めた三人の教職員が顔を合わせて目の前の数枚の建前を見て呻いている。
「……ふざけているんじゃぁ無いか?」
今年不惑に至る男性職員が乾いた笑い声と共に希望的観測を述べる。だったらどれだけ楽なことか。
「……残念ながら事実です。参考資料が、ここに……」
「あぁ、あぁ!もういい。わかった、わかったからその電信柱だらけの通信簿をしまってくれ!」
つまらない冗談をいう程度には余裕が残っているらしい。羨ましい。
「で?どうするんですか?ここに勤めて日が浅い僕としては年長者の意見が聞きたいのですが」
「……更生目的でしょっぴかれた奴らと同じ扱いなら、出来んことは無いんだが」
初老の男はがりがりと薄い髪の毛が悲鳴を上げそうなほど乱暴に頭を掻きながら呟く。
「隔離島行き寸前の問題児供同様に?彼女の素行や素性で申請が通るとは思えないのですが」
「そこら辺は偽造だ偽造。結局此処は建前より本音を通すんだよ」
能力者を隔離すること。全てはそれに集約される。本土からきた人間として、少し彼女の境遇に哀れみを感じる
しかし同情(それ)は同情(それ)。仕事(これ)は仕事(これ)だ。新たな手続きの為に僕たちは話題を進める。
「となると、規則上ではどうなるんなるんでしたっけ」
「主島では教員一人が監視員に当たる事になるね。ま、そこら辺は融通するよ。
 なにしろ人手が足りん。単なる脳タリンに割く人員などないからね、ウチも」

「待ちたまえ」

今まで一言も言葉を発しなかったこの場で唯一の戦闘能力者(アクター)
白衣を纏った金髪の男。目の下には深い隈に針のような模様、そして何故か半裸という実に印象的な人物
「理琵戸先生?どうしたんですか?」
「そう、君のことを考えていた」
意味がわからない。男――理琵戸 八朗――はにやりと顔を笑みの形に歪めながら
未だ言葉の意味を測りかねている僕に言葉を向けた。
「君、本土からの新人だったろう?彼女のような『問題児』を抱えてみれば
 少しは教職員としての成長が出来るんじゃないかい?
 我々もまた、彼ら生徒を育成する者として成長する義務がある!だろう?」

「ちょ、待って下さい!そんな、理不尽な……第一、彼女は」
「こんな臨時の会議を開かせる時点で私の中では問題児確定だよ。
 まあ、諦めたまえ。理不尽に晒された時、人は決断を迫られる」
中身に何かが湛えられた一本のアンプルを理琵戸が取り出し、彼の能力たる少女人形を出現させる
「即ち抗うか、諦めるかだ。抗ってみるかね?もちろん私は大歓迎だよ?」
サディスティックな笑みを隠そうともせず、理不尽は僕に決断を迫る。

「幸いなるかな彼女本人の説明を聞くに、彼女は正真正銘リフィターだ。理不尽な死はなさそうで何よりだよ」

なんの慰めにもならない。こうして僕は彼女の監視員という訳の分からない職業に就かされる事と相成ったのである。

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最終更新:2010年07月09日 03:54
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