前書き
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この記事は:
「ああ、私の凱旋門遠征かい?」シリーズ https://bbs.animanch.com/board/5978858/ https://bbs.animanch.com/board/6017959/ https://bbs.animanch.com/board/6085030/ の内容に後日から文脈を付け加えて再編纂を目指していくSS群の一(となる予定)です。 ご存じの方には重複ととられるような内容ですが、よろしければお楽しみいただければと存じます。 |
現在
日本ウマ娘トレーニングセンター学園、その図書室の一角を占める謎めく空き部屋・「図書準備室」。
扉の端に誰の気にも止まることなく存在しているプラ板は、ホーロー看板めいて古めかしく、ただ「管理責任者 土筆 真梨」という最低限の情報をそこに掲示している。
扉の端に誰の気にも止まることなく存在しているプラ板は、ホーロー看板めいて古めかしく、ただ「管理責任者 土筆 真梨」という最低限の情報をそこに掲示している。
はて。新入りの女子生徒、"私"は首を傾げた。
本の虫にありがちなことらしく文字があれば何でも読む気質。それゆえに好んで図書委員会に配属となったけども。
当然、文字という情報があればそこに思考が差し挟まる。
本の虫にありがちなことらしく文字があれば何でも読む気質。それゆえに好んで図書委員会に配属となったけども。
当然、文字という情報があればそこに思考が差し挟まる。
(誰?)
世の中には70億の人間が存在し、すなわち世界の人名のおよそ100%を自分の知るよしのない文字列が占めることになるわけだが、さて、ここに文字が刻まれているということは学園の関係者であるはずなのだから、その確率は100%から……まあ、100%より少しだけ小さい数に引き下げられて当然なわけである。
ありていに言えば、わけもなく興味をひかれていて、そのまま10秒、20秒とその扉の前で立ち尽くしていたらしい。
ありていに言えば、わけもなく興味をひかれていて、そのまま10秒、20秒とその扉の前で立ち尽くしていたらしい。
ふと、「おー」というなんとも表現しがたい、妙に癖になる平板な声がそんな私のすぐ真後ろから響いてきたのである。
「のああっ?!」、とでも文字起こしするべき、なんとも気の抜けた挨拶をしてしまったが、彼女が今代の図書委員の中心メンバーということらしい。
「随分と細かいことを気にするんだねー」
相も変わらずその小さな白い板切れから目線を外せないでいた私に、目の前の少女、ミスカトニアンはこう答えた。
「真梨せんせーはこの図書室の司書、図書委員会の顧問って言った方がいいかな」
「ピンとこないなら、"『七不思議の元凶』キセキモノローグ"そのひとだよ。」
「真梨せんせーはこの図書室の司書、図書委員会の顧問って言った方がいいかな」
「ピンとこないなら、"『七不思議の元凶』キセキモノローグ"そのひとだよ。」
七不思議、ねぇ。なんだかろくでもないものに巻き込まれていそうな気がするなぁ、なんてことを呟いた。
今日は蔵書の貸出状況と配架情報を管理しているシステムをどうこう、という話で呼び出しを受けていたつもりだが、チャイムが鳴って静寂になったころになっても未だにこの二人以外に集まっている人がいないのがなおのことに不安を掻き立ててたまらないというものである。
今日は蔵書の貸出状況と配架情報を管理しているシステムをどうこう、という話で呼び出しを受けていたつもりだが、チャイムが鳴って静寂になったころになっても未だにこの二人以外に集まっている人がいないのがなおのことに不安を掻き立ててたまらないというものである。
「たんてーさん気質ってやつなのかな?」
それで唯一の話し相手になる先輩はソワソワする人間を見てじっとりとした笑顔を向けてくる。厄ネタの匂いしかしないが、ここまでくるとどれだけ腰が引けていても、後ずさりというのがまず難しいのだ。
それで唯一の話し相手になる先輩はソワソワする人間を見てじっとりとした笑顔を向けてくる。厄ネタの匂いしかしないが、ここまでくるとどれだけ腰が引けていても、後ずさりというのがまず難しいのだ。
「ま、だから選ばれたというか、最終試験をさせてもらったんだけど、運が悪いことに"合格"なんだよね」
「気に留めるべきじゃないことに細かくこだわってしまって、思考を飛ばしてしまいがちなデイドリーマーさん」
「気に留めるべきじゃないことに細かくこだわってしまって、思考を飛ばしてしまいがちなデイドリーマーさん」
アンチャーテドシーと名乗ったその人物の、まるで何度も演じ慣れた舞台の科白を諳んじるかのような語り口に言葉を差し込むこともできぬまま、扉は開け放たれた。
やあ。
模造紙にスズランテープ、ごみ袋にOA用品に……学園のバックヤードにならどこにでもありがちなものから、一生のうちに触れることになるとは思っていなかった羊皮紙のロール、パピルスに竹簡……図書"室"ではさすがに扱えないだろうと思える類のものまで。
おいてあるものにギョッとするというか、驚きはするものの、乱雑にものが置かれているさまはどうしようもなくシロウトの仕事場という気がして安心する側面もあった。
その棚に圧殺されそうな談話室の中に声の主がいるのではないかと思ったが。
探してもそれらしい存在が見当たらない。
声のする場所に向かってみても、存在するのは丸いテーブル、座ってしまえばうたた寝をしてしまいそうな、でも黴臭そうなカウチ。
それから、1つの飲みさしのティーカップと、A4の紙に印刷された「ご挨拶」から始まる文字。
声のする場所に向かってみても、存在するのは丸いテーブル、座ってしまえばうたた寝をしてしまいそうな、でも黴臭そうなカウチ。
それから、1つの飲みさしのティーカップと、A4の紙に印刷された「ご挨拶」から始まる文字。
⸺つくし・まり/キセキモノローグ。
十数年前に卒業した学園生で、トゥインクル・シリーズでの実働をしながら卒業すると、トレーナーとして〈アズミディ〉というチームを編成し、しかしそれも長くは続かず、大学に通って司書資格と教員免許を取得して中等部の座学を担当。
十数年前に卒業した学園生で、トゥインクル・シリーズでの実働をしながら卒業すると、トレーナーとして〈アズミディ〉というチームを編成し、しかしそれも長くは続かず、大学に通って司書資格と教員免許を取得して中等部の座学を担当。
「これは"図書準備室"に詰めるにあたってのオリエンテーションだと思ってほしいな」
「ボク、キセキモノローグが"ポルターガイスト"として存在している理由を見事に探り当ててほしい」
「ボク、キセキモノローグが"ポルターガイスト"として存在している理由を見事に探り当ててほしい」
困ることだらけだろうからそこの黒髪銀縁モノクルを存分に頼ってくれ、とアンチャーテドシーの長い髪先が風に攫われる。
「改めて、ようこそ『百物語編集委員会』へ」
勘弁してほしいな、と耳をペタリと寝かせた。
目線の端の黒鹿毛の耳も、空気から聞こえてるとしか思えない怜悧と気怠さのミルクティーのような声も、情報の整理がつかない私をただただ優しく放っていること、それがなおのこと私を混乱させていた。
目線の端の黒鹿毛の耳も、空気から聞こえてるとしか思えない怜悧と気怠さのミルクティーのような声も、情報の整理がつかない私をただただ優しく放っていること、それがなおのこと私を混乱させていた。