春のファン大感謝祭からしばらく経ったある日、一人のトレーナーが中庭のベンチに腰かけていた。
「トレーナーになって数年、何人ものウマ娘と接してきたが彼女たちのことについてまだまだ分からないことが多すぎる。彼女たちが走ったり生活をしている時、どんな景色が見えているのだろうか。ウマ娘からみたトレーナーとはどんな存在なのだろうか。そしてウマ娘とは一体何なのだろうか。トレーナーとして彼女たちに寄り添うにはちゃんと知っておきたい。願わくば、ウマ娘になって自分の視点から答えを探してみたい。」
「そこのトレーナー、ウマ娘になりたいと言ったか?」
そんな声が聞こえた気がして彼はあたりを見まわしたが、誰もいない。
「私たちだよ、三女神だよ。」
「三女神様⁉一体どういうことなんですか?」
「君がウマ娘になりたいと呟いていたから顔を出してみたわけだよ。トレーナーとして彼女たちのことについて知るのは大事なことだからな。願いを叶えてあげようと思って。」
「なれるんですか?僕も」
「もちろん。ほら、私たちの前まで来てくれ。」
トレーナーは立ち上がり、三女神像の前まできた。
「それじゃあ、今から君をウマ娘にするわけだが、一つだけ忘れないで欲しいことがある。」
「忘れないで欲しいこと?」
「ウマ娘は別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る存在だというのはよく知っていることだろう。君も同じように受け継いでいるということをどうか忘れないで欲しい。」
「はい、わかりました。」
そう彼が言うと、体が光に包まれて先ほどまでトレーナーが立っていたところには一人のウマ娘の少女が立っていた。
「ウマ娘になった気分はどうだい?」
「どう表現したらわからないのですが、なんか不思議な気分です。というか、背が少し縮んだ気がするのですが、気のせいですかね?」
「いや、気のせいなどではない。せっかくウマ娘になるのなら、実際にトレセン学園の生徒として生活したほうが君のためにもなると思って身長を少し小さくさせてもらった。あと、高等部の生徒として生活してもらうぞ。」
「ということはしばらくの間、トレーナーとして働くことはできないし、趣味のドライブやお酒を嗜むことも出来なくなるのですか?」
「そういうことになる。少しの間だが我慢してくれ。それと君がウマ娘になったこと、高等部で生活することは私たちの口から理事長や秘書に伝えておくからその点は安心してくれ。」
「トレセン学園で生活するということは筆記試験・実技試験・面接を受けたり、制服とかを用意する必要があるということですね?」
「一応、受けてもらうことにはなりそうだな。そこら辺は理事長たちに直接聞きにいって欲しい。」
「わかりました。そういえば、私の名前ってどうなんですか?」
「あー、そうだ。今日から君の名前はトキヲコエテだ。この名前で生活してもらう。」
「トキヲコエテですか。なるほど。今から理事長のもとに行って今後のことについて聞いてきます。」
「わかった。いってらっしゃい、トレーナー。いや、トキヲコエテ。」